難聴(聴覚障害)とは
難聴とは、聴力が低下して音が聞こえにくくなる状態を指します。難聴は片側性(一側の耳のみ)または両側性(両耳)に発生し、その程度も軽度から重度までさまざまです。先天性難聴は新生児1,000人に1人の割合で発症する、先天性疾患の中で頻度が高い疾患の一つです。
難聴の分類
難聴は発生部位によって大きく3つに分類されます:
- 伝音難聴:外耳や中耳の障害により、音の振動が内耳に伝わりにくくなる難聴です。中耳炎や鼓膜穿孔、耳小骨の異常などが原因となります。
- 感音難聴:内耳(蝸牛)や聴神経、脳の聴覚中枢の障害により生じる難聴です。遺伝性難聴の多くは感音難聴です。
- 混合難聴:伝音難聴と感音難聴の両方の要素を持つ難聴です。
難聴の程度
難聴の重症度は聴力レベル(デシベル:dB)で評価されます:
- 正常:0~15 dB
- 軽度難聴:16~40 dB(小さな声や遠くの音が聞き取りにくい)
- 中等度難聴:41~70 dB(普通の会話が聞き取りにくい)
- 高度難聴:71~90 dB(大きな声でも聞き取りが困難)
- 重度難聴:91 dB以上(ほとんど音が聞こえない)
発症時期による分類
- 言語習得前難聴:言語発達以前に難聴が生じる場合です。先天性(出生時から存在)難聴はすべて言語習得前難聴ですが、言語習得前難聴のすべてが先天性ではありません。
- 言語習得後難聴:正常な言語発達の後に生じる難聴です。
遺伝性難聴について
先天性難聴の原因は多岐にわたりますが、最も高頻度に認められるのは遺伝子変異による遺伝性難聴で、約50~60%の症例に関与していると考えられています。「遺伝性難聴」というと、家族や親類に同じ病気の人がいると思われがちですが、実際には血縁者に難聴者がいない場合の方が多いです。
遺伝形式による分類
遺伝性難聴は、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝、ミトコンドリア遺伝のいずれの形式でも発症します:
- 常染色体劣性(潜性)遺伝:言語習得前非症候性難聴の75~80%を占め、最も頻度が高い遺伝形式です。両親は聴力正常でも、子どもに難聴が生じることがあります。
- 常染色体優性(顕性)遺伝:言語習得前非症候性難聴の20~25%を占めます。言語習得後難聴では、報告されている家系のほとんどが常染色体優性遺伝です。
- X連鎖遺伝:1~1.5%程度です。
- ミトコンドリア遺伝:母親から子ども全員に伝わる遺伝形式です。アミノグリコシド系抗生物質による難聴のリスクが高まることがあります。
非症候性難聴と症候性難聴
- 非症候性難聴:難聴以外の症状を伴わないもので、遺伝性難聴の約70%を占めます。外耳の目に見える奇形や他の関連疾患がない場合です。
- 症候性難聴:難聴以外の随伴症状を伴うもので、遺伝性難聴の約30%を占めます。外耳やその他の器官の奇形、あるいは他の臓器系の疾患を伴う場合です。現在までに400種類以上の症候性難聴が報告されています。
主な原因遺伝子
現在までに100以上の非症候性難聴関連遺伝子と、多数の症候性難聴関連遺伝子が同定されています。日本人の先天性難聴で最も頻度が高いのはGJB2遺伝子(コネキシン26)の変異で、次いでSLC26A4遺伝子(ペンドリン)の変異です。
症候性難聴の主な疾患
当検査パネルでは、以下のような症候性難聴の原因遺伝子も網羅的に検査できます:
アッシャー症候群(Usher syndrome)
先天性難聴と進行性の網膜色素変性症を主症状とする常染色体劣性遺伝性疾患です。難聴と視力障害を合併する疾患の中で最も頻度が高く、日本における有病率は人口10万人あたり約6~7人と推定されています。症状の程度と発症時期により3つのタイプに分類されます:
- 1型:先天性の高度~重度難聴、前庭機能障害によるバランス障害、思春期から視野狭窄が進行
- 2型:先天性の中等度~高度難聴(進行性)、前庭機能は正常、成人期に視野狭窄が進行
- 3型:難聴は進行性、前庭機能障害の程度は様々、視力障害も進行性
アルポート症候群(Alport syndrome)
腎機能障害、感音難聴、眼症状を3主徴とする遺伝性疾患です。指定難病218に認定されています。IV型コラーゲンの遺伝子異常により、腎臓の糸球体基底膜、内耳、眼の組織に障害が生じます。多くは進行性の腎機能障害を伴い、末期腎不全に至ることがあります。難聴は両側性の高音域から始まる進行性感音難聴で、通常10歳代から出現します。
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群(Jervell and Lange-Nielsen syndrome)
先天性の両側感音難聴と心電図上のQT間隔延長を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患です。QT延長により失神発作や突然死のリスクがあるため、心臓管理が非常に重要です。難聴は通常、先天性で高度~重度です。
ワールデンブルグ症候群(Waardenburg syndrome)
先天性感音難聴、虹彩・頭髪・皮膚の色素異常(白斑、虹彩異色症、前頭部白髪など)、眼角開離などを主徴とする遺伝性症候群です。1951年にWaardenburg博士により報告されました。症状の違いと遺伝的異質性から4つのタイプ(1型、2型、3型、4型)に分類されます。難聴の程度は軽度から重度まで様々で、片側性のこともあります。
鰓耳腎症候群(Branchiootorenal syndrome:BOR症候群)
頸瘻・耳瘻孔・外耳奇形などの鰓原性器官の形態異常、難聴、先天性腎尿路異常を3主徴とする常染色体優性遺伝性疾患です。指定難病190に認定されています。難聴は90%以上の患者で認められ、程度は軽度から高度まで様々で、伝音性、感音性、混合性のいずれもあり得ます。腎臓の形態異常を合併した患者の約30%が末期腎不全に至ります。
ペンドレッド症候群(Pendred syndrome)
先天性感音難聴と甲状腺腫を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患です。SLC26A4遺伝子変異が原因で、内耳奇形(前庭水管拡大症)を伴うことが多く、進行性難聴を呈します。日本人では比較的頻度が高い症候性難聴です。
これらの症候性難聴は、早期診断により適切な治療や管理が可能となり、合併症の予防や生活の質の向上につながります。当検査パネルにより、これらの疾患の原因遺伝子を包括的に検索することができます。
ミネルバクリニックの難聴遺伝子パネル検査の特徴
「難聴遺伝子パネル検査」とは、現在難聴の原因として報告されている181の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、難聴に関連する181遺伝子を一度に調べられる「難聴遺伝子パネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
日本の保険適用検査との違い
日本では、先天性難聴に対して13遺伝子46変異を調べる保険適用の遺伝子検査(インベーダー法)があり、診断率は約30%です。また、若年発症型両側性感音難聴(指定難病304)に対しては11遺伝子を対象とした保険適用検査があります。
しかし、これらの検査では限られた遺伝子・変異しか調べることができず、約60~70%の症例では原因が特定できません。当院の難聴遺伝子パネル検査は181遺伝子を網羅的に検査するため、より高い診断率が期待できます。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で難聴の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、難聴に関係するとされる181の遺伝子を一度に調べられる「難聴遺伝子パネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える難聴の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「難聴遺伝子パネル検査」の場合、181の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から難聴を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「難聴遺伝子パネル検査」ならば、臨床的に重要な181の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。非症候性難聴から症候性難聴まで、包括的に評価することが可能です。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「難聴遺伝子パネル検査」では、難聴に関係するとされる181種類の遺伝子を包括的に検査します。この検査には、非症候性難聴の原因遺伝子と、アッシャー症候群、アルポート症候群、ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群、ワールデンブルグ症候群、鰓耳腎症候群などの症候性難聴の原因遺伝子が含まれます。
「難聴遺伝子パネル検査」は、難聴の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【難聴の個人歴または家族歴のある方】に
「難聴遺伝子パネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・新生児聴覚スクリーニング検査で要精査となった方
・言語発達の遅れがある方
・聞こえにくさを自覚している方
・補聴器の使用を検討している、または既に使用している方
・人工内耳の適応を検討している方
・難聴の家族歴がある方
・症候性難聴(視力障害、腎機能障害、心疾患、色素異常など他の症状を伴う難聴)が疑われる方
・進行性難聴の方
・原因不明の感音難聴の方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、難聴の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、合併症の早期発見、適切な補聴手段の選択、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・非症候性難聴か症候性難聴かの鑑別
・難聴の進行や変動の予測
・めまい、視力障害、腎機能障害、糖尿病などの随伴症状の予測と早期発見
・補聴器の適応判断と効果予測
・人工内耳の適応判断(特にGJB2遺伝子変異は人工内耳の良好な適応)
・アミノグリコシド系抗生物質など聴器毒性薬剤の回避(ミトコンドリア遺伝子変異の場合)
・QT延長症候群などの生命に関わる合併症の早期発見と管理
・疾患の予後予測と長期的な管理計画の立案
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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ABHD12, ACTB, ACTG1, ADCY1, ADGRV1, AIFM1, ALMS1, AMMECR1, ANKH, ASAH1, ATP6V1B1, BCS1L, BDP1, BSND, BTD, CABP2, CACNA1D, CATSPER2, CCDC50, CD164, CDC14A, CDC42, CDH23, CEACAM16, CEP78, CHD7, CHSY1, CIB2, CISD2, CLDN14, CLIC5, CLPP, CLRN1, COCH, COL11A1, COL11A2, COL2A1, COL4A3, COL4A4, COL4A5, COL4A6, COL9A1, COL9A2, COL9A3, CRYL1, CRYM, DCDC2, DIABLO, DIAPH1, DIAPH3, DNMT1, DSPP, EDN3, EDNRB, ELMOD3, EPS8, ERCC2, ERCC3, ESPN, ESRRB, EYA1, EYA4, FGF3, FGFR1, FGFR2, FOXI1, GATA3, GIPC3, GJA1, GJB2, GJB3, GJB6, GPSM2, GRHL2, GRXCR1, GRXCR2, GSDME, HARS, HARS2, HGF, HOMER2, HOXB1, HSD17B4, ILDR1, KARS, KCNE1, KCNJ10, KCNQ1, KCNQ4, KITLG, LARS2, LHFPL5, LHX3, LOXHD1, LRP2, LRTOMT, MANBA, MARVELD2, MET, MIR96, MITF, MPZL2, MSRB3, MYH14, MYH9, MYO15A, MYO1C, MYO3A, MYO6, MYO7A, NARS2, NDP, NF2, NLRP3, OPA1, OSBPL2, OTOA, OTOF, OTOG, OTOGL, P2RX2, PAX3, PCDH15, PDZD7, PEX1, PEX6, PJVK, PMP22, PNPT1, POLR1C, POLR1D, POU3F4, POU4F3, PRPS1, PTPRQ, RDX, RIPOR2, ROR1, S1PR2, SEMA3E, SERPINB6, SIX1, SIX5, SLC17A8, SLC19A2, SLC26A4, SLC26A5, SLC4A11, SLC52A2, SLC52A3, SLITRK6, SMAD4, SMPX, SNAI2, SOX10, STRC, SYNE4, TBC1D24, TBL1X, TBX1, TCOF1, TECTA, TFAP2A, TIMM8A, TJP2, TMC1, TMEM132E, TMIE, TMPRSS3, TMPRSS5, TNC, TPRN, TRIOBP, TSPEAR, TWNK, TYR, USH1C, USH1G, USH2A, WFS1, WHRN(181遺伝子)
主要な遺伝子の詳細:
・GJB2遺伝子(コネキシン26):
日本人の先天性難聴で最も頻度が高い原因遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、非症候性難聴を引き起こします。人工内耳の良好な適応とされています。・SLC26A4遺伝子(ペンドリン):
日本人で2番目に多い原因遺伝子。ペンドレッド症候群(甲状腺腫を伴う)やDFNB4(非症候性難聴)の原因となります。前庭水管拡大症を伴い、進行性難聴を呈することがあります。・CDH23、PCDH15、USH1C、USH1G、USH2A、WHRN、CLRN1遺伝子:
アッシャー症候群の原因遺伝子。難聴と進行性網膜色素変性症を特徴とします。・COL4A3、COL4A4、COL4A5、COL4A6遺伝子:
アルポート症候群の原因遺伝子。腎機能障害、感音難聴、眼症状を伴います。・KCNQ1、KCNE1遺伝子:
ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群の原因遺伝子。先天性難聴とQT延長症候群を伴います。・PAX3、MITF、SNAI2、SOX10、EDN3、EDNRB遺伝子:
ワールデンブルグ症候群の原因遺伝子。難聴と色素異常を特徴とします。・EYA1、SIX1、SIX5遺伝子:
鰓耳腎症候群の原因遺伝子。難聴、鰓原性器官異常、腎尿路異常を伴います。・OTOA遺伝子:
偽遺伝子の干渉により、現在の検査方法ではエキソン20-28(NM_144672.3)の変異を確実に検出できません。・STRC遺伝子:
この検査では一般的なSTRC/CATSPER2連続遺伝子欠失を検出できます。偽遺伝子の干渉により、STRCの他の変異(部分的遺伝子欠失やSTRCの配列変異など)は通常評価されません。・TPRN遺伝子:
エキソン1は現在の配列決定法では解析が困難なため、この領域の配列決定および欠失/重複分析は実施されません。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
遺伝子特異的な制限事項:
・OTOA遺伝子:偽遺伝子の干渉により、現在の検査方法ではエキソン20-28(NM_144672.3)の変異を確実に検出できません。
・STRC遺伝子:この検査では一般的なSTRC/CATSPER2連続遺伝子欠失を検出できます。偽遺伝子の干渉により、STRCの他の変異(STRCの部分的遺伝子欠失やSTRCの配列変異など)は通常評価されません。
・TPRN遺伝子:エキソン1は現在の配列決定法では解析が困難なため、この領域の配列決定および欠失/重複分析は実施されません。
※検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。検査対象外の遺伝子や、検出できない種類の変異が原因である可能性があります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 新生児聴覚スクリーニング検査で要精査となった方、言語発達の遅れがある方、聞こえにくさを自覚している方、難聴の家族歴がある方におすすめします。また、視力障害、腎機能障害、心疾患、色素異常など他の症状を伴う難聴(症候性難聴)が疑われる方も、早期診断により合併症の管理が可能になるため、検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 保険適用の検査との違いは何ですか?
- 日本の保険適用検査では13遺伝子46変異(先天性難聴)または11遺伝子(若年発症型両側性感音難聴)しか調べられず、診断率は約30%です。当院の難聴遺伝子パネル検査は181遺伝子を網羅的に検査するため、より高い診断率が期待できます。また、症候性難聴の原因遺伝子も含まれるため、包括的な評価が可能です。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。検査対象外の遺伝子や、検出できない種類の変異が原因である可能性があります。また、環境要因による難聴の可能性もあります。臨床症状と聴力検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。症候性難聴の場合は、合併症のスクリーニングや管理についてもご相談いただけます。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 難聴の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ遺伝性難聴を根本的に治す治療法は確立されていませんが、補聴器や人工内耳による聴覚補償が可能です。原因遺伝子によって補聴器や人工内耳の効果が異なることがわかっており、遺伝子診断により最適な治療法を選択できます。また、症候性難聴の場合は、合併症の早期発見と適切な管理が重要です。
- 人工内耳の適応はどのように判断しますか?
- GJB2遺伝子変異による難聴は人工内耳の良好な適応とされています。遺伝子診断により原因が明らかになると、人工内耳の適応判断や効果予測に役立ちます。日本耳鼻咽喉科学会も、小児人工内耳適応基準の中で難聴遺伝子変異を有することを適応条件の一つとしています。
- アミノグリコシド系抗生物質との関係は?
- ミトコンドリア遺伝子(特にMTTL1遺伝子の1555 A-to-G変異)を持つ方は、アミノグリコシド系抗生物質(ゲンタマイシン、ストレプトマイシンなど)により難聴が引き起こされやすいことがわかっています。遺伝子診断によりこのリスクを事前に知ることで、これらの薬剤を回避し、難聴の発症を予防できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な181の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査や保険適用検査と比べて、より包括的な評価が可能です。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。



