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致死型多発性翼状片症候群

疾患概要

MULTIPLE PTERYGIUM SYNDROME, LETHAL TYPE; LMPS
lethal form of multiple pterygium syndrome (LMPS)

致死型多発性翼状片症候群(LMPS)は、染色体2q上に位置するCHRNG遺伝子のホモ接合体または複合ヘテロ接合体変異によって引き起こされます。この遺伝子は、アセチルコリン受容体(AChR)のγサブユニットをコードしており、その変異は筋肉と神経の接続部である神経筋接合部の機能障害をもたらします。

CHRNG遺伝子の変異は、非致死性のEscobar変異型多発性翼状片症候群(EVMPS;265000)の原因となることもあります。EVMPSは、LMPSよりも軽度の症状を示し、適切な治療により生存可能です。

また、CHRNA1(100690)およびCHRND(100720)遺伝子の変異も、致死性の多発性翼状片症候群を引き起こすことがあります。これらの遺伝子は、それぞれAChRのα1サブユニットとδサブユニットをコードしており、その変異はファストチャンネルまたはスローチャンネルの先天性筋無力症候群(それぞれ608930および601462)を引き起こすこともあります。これらの疾患は、神経筋接合部の異なる機能障害によって特徴づけられ、筋力低下や筋疲労感などの症状が現れます。

致死型多発性翼状片症候群とその非致死型変異、および関連する先天性筋無力症候群の研究は、これらの遺伝子変異に基づく疾患の理解を深め、将来的な治療法の開発に貢献する可能性があります。遺伝子検査による正確な診断が、これらの疾患の管理と治療の鍵となります。

臨床的特徴

致死的多発性翼状片症候群(LMPS)は、CHRNG遺伝子の変異により引き起こされる重篤な先天性疾患で、胎児期に多数の翼状片(皮膚の余分な襞)と関節の拘縮を特徴とします。過去の研究では、この疾患が脊椎癒合や先天性骨癒合を伴う異なる病型を持つ可能性が示唆されており、症例報告には自然流産した胎児での症例や、嚢胞性ヒグローマや水腫を特徴とする症例が含まれます。この疾患は、超音波検査での早期発見が可能であり、出生前診断による管理が推奨されます。

特に、Moermanらによる研究では、LMPSが頸部リンパ管閉塞と初期の重症胎児アキネジアの症状を組み合わせた疾患であることが示唆されており、胎生期アキネジアが病因における重要なメカニズムである可能性が指摘されています。

Meyer-Cohenらによる研究では、X連鎖劣性遺伝の可能性に疑問を呈し、非血縁の両親から生まれた4人の男性胎児でLMPSが報告されています。さらに、過去の文献レビューでは、男性胎児におけるLMPSの発生が多く報告されているものの、X-連鎖性の明確な証拠は限られています。

この疾患に関する研究は、遺伝的要因の理解を深め、適切な遺伝カウンセリングと出生前診断のための基盤を提供します。また、致死的多発性翼状片症候群の診断には胎児の身体検査と補助的検査が重要であり、特に超音波検査による早期発見が治療計画において重要な役割を果たします。

分子遺伝学

Hoffmannら(2006)とMorganら(2006)は、多発性翼状片症候群の致死型を引き起こすCHRNG遺伝子の突然変異を発見しました。Michalkら(2008)は、同様に、CHRNA1遺伝子とCHRND遺伝子にも致死型多発性翼状片症候群を引き起こす突然変異を同定しました。これらの発見は、多発性翼状片症候群の遺伝的基盤の理解を深め、特定の遺伝子変異がこの病態の発生にどのように関与しているかを明らかにしました。

疾患の別名

PTERYGIUM SYNDROME, MULTIPLE, LETHAL TYPE

参考文献

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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