疾患に関係する遺伝子/染色体領域
疾患概要
この疾患は、X連鎖遺伝のパターンで遺伝し、主に男性に影響を及ぼします。DLG3遺伝子は、神経細胞において重要な役割を果たすSAP102というタンパク質をコードしており、特にNMDA受容体との相互作用を通じて、神経のシグナル伝達やシナプスの可塑性に関わっています。DLG3の変異がこの相互作用を阻害し、知的障害や発達遅延を引き起こすと考えられています。
臨床的特徴
Philipsら(2014年)は、X連鎖知的発達障害90(XLID90)のフィンランド人家族2組を報告しました。これらの家族には、次のような特徴が見られました:
1. D172家族:
– 3人の患者男性に、言語発達の遅れを伴う精神運動発達の遅れ、軽度から中程度の知的障害が認められました。
– さらに、狭胸郭、臼歯低形成、短い指などの形態異常も見られました。
2. D301家族:
– 5人の患者男性は、運動および言語発達に遅れがあり、中程度から重度の精神発達障害を示しました。
– ADHDが3人に見られ、1人は小児期にてんかん発作を経験しました。また、3人に斜視がありましたが、その他の恒常的な形態異常は報告されていません。
– さらに、この家系には60歳の女性も含まれ、影響を受けている可能性が示唆されています。
● まとめ
これらの報告により、DLG3遺伝子の変異が、言語や運動の発達遅延、知的障害、形態異常を伴うX連鎖知的発達障害(XLID90)に関与していることが示唆されています。また、同じ遺伝的変異があっても、家族によって症状の程度や表現型が異なることが分かります。
マッピング
この研究は、X連鎖知的発達障害(XLID)の原因となる遺伝子がXq13の狭い領域に存在することを示しており、XLIDの分子遺伝学的解析において重要な発見です。この領域には、後にDLG3遺伝子が同定され、精神発達障害との関連が示されました。
分子遺伝学
また、Philipsら(2014年)は、XLID90を持つ2つの無関係なフィンランド人家族の罹患者において、DLG3遺伝子(300189.0005および300189.0006)の2つの異なるスプライス部位変異を特定しました。これらの変異は、X染色体エクソームシーケンスを通じて、X連鎖性知的発達障害を持つフィンランド人家族14家系で発見されたものです。
この研究により、DLG3遺伝子の変異がX連鎖知的発達障害の重要な原因であることが強く示唆されています。