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X連鎖知的発達障害90

疾患に関係する遺伝子/染色体領域

疾患概要

X染色体遺伝知的発達障害90(XLID90)は、Xq13染色体上に位置するDLG3(300189)遺伝子の変異によって引き起こされることが証明されています。このため、DLG3遺伝子の関連疾患のエントリには、番号記号(#)が使用されています。

この疾患は、X連鎖遺伝のパターンで遺伝し、主に男性に影響を及ぼします。DLG3遺伝子は、神経細胞において重要な役割を果たすSAP102というタンパク質をコードしており、特にNMDA受容体との相互作用を通じて、神経のシグナル伝達やシナプスの可塑性に関わっています。DLG3の変異がこの相互作用を阻害し、知的障害や発達遅延を引き起こすと考えられています。

臨床的特徴

Tarpeyら(2004年)は、少なくとも2人の男性が中等度から重度の非症候性X連鎖精神発達障害を持つ4家族を報告しています。この障害は、DLG3遺伝子の変異によって引き起こされる可能性が高く、神経発達に影響を及ぼします。

Philipsら(2014年)は、X連鎖知的発達障害90(XLID90)のフィンランド人家族2組を報告しました。これらの家族には、次のような特徴が見られました:

1. D172家族:
– 3人の患者男性に、言語発達の遅れを伴う精神運動発達の遅れ、軽度から中程度の知的障害が認められました。
– さらに、狭胸郭、臼歯低形成、短い指などの形態異常も見られました。

2. D301家族:
– 5人の患者男性は、運動および言語発達に遅れがあり、中程度から重度の精神発達障害を示しました。
– ADHDが3人に見られ、1人は小児期にてんかん発作を経験しました。また、3人に斜視がありましたが、その他の恒常的な形態異常は報告されていません。
– さらに、この家系には60歳の女性も含まれ、影響を受けている可能性が示唆されています。

● まとめ
これらの報告により、DLG3遺伝子の変異が、言語や運動の発達遅延、知的障害、形態異常を伴うX連鎖知的発達障害(XLID90)に関与していることが示唆されています。また、同じ遺伝的変異があっても、家族によって症状の程度や表現型が異なることが分かります。

マッピング

Tarpeyら(2004年)は、X連鎖精神発達障害(XLID)を隔離する家族を対象に調査を行い、Xq13染色体上の2Mb領域に関連するMRX遺伝子座を特定しました。この遺伝子座は、マーカーDXS811とDXS559によって結合されました。

この研究は、X連鎖知的発達障害(XLID)の原因となる遺伝子がXq13の狭い領域に存在することを示しており、XLIDの分子遺伝学的解析において重要な発見です。この領域には、後にDLG3遺伝子が同定され、精神発達障害との関連が示されました。

分子遺伝学

Tarpeyら(2004年)は、X連鎖精神発達障害(XLID)を患う329家族の中で、4家族において、DLG3遺伝子(300189.0001-300189.0004)の終止変異を特定しました。この変異は、中等度から重度の知的発達障害を引き起こすことが確認されています。

また、Philipsら(2014年)は、XLID90を持つ2つの無関係なフィンランド人家族の罹患者において、DLG3遺伝子(300189.0005および300189.0006)の2つの異なるスプライス部位変異を特定しました。これらの変異は、X染色体エクソームシーケンスを通じて、X連鎖性知的発達障害を持つフィンランド人家族14家系で発見されたものです。

この研究により、DLG3遺伝子の変異がX連鎖知的発達障害の重要な原因であることが強く示唆されています。

疾患の別名

MENTAL RETARDATION, X-LINKED 90; MRX90

参考文献

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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