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ALPL遺伝子は1番染色体短腕(1p36.12)に位置し、組織非特異型アルカリホスファターゼの産生に関わる重要な遺伝子です。この遺伝子の変異は低ホスファターゼ症という骨代謝疾患を引き起こします。本記事ではALPL遺伝子の構造と機能、関連する疾患、そして遺伝形式について詳しく解説します。
ALPL遺伝子の基本情報
ALPL遺伝子(Alkaline Phosphatase, Liver/Bone/Kidney Type)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP/TNAP)をコードしています。このアルカリホスファターゼは高いpH条件下で様々なリン酸モノエステルを加水分解する膜結合型糖タンパク質です。
基本情報:
- 染色体位置: 1p36.12
- ゲノム座標(GRCh38): 1:21,508,984-21,578,410
- 別名: TNSALP、TNAP(組織非特異型アルカリホスファターゼ)
- エクソン数: 12個(約50kb以上に分布)
ALPL遺伝子は肝臓、骨、腎臓を含む様々な組織で発現しており、骨の石灰化や歯の形成に重要な役割を果たしています。
ALPL遺伝子の機能
ALPL遺伝子がコードするタンパク質は、生体内で以下のような重要な役割を担っています:
- ホスホエタノールアミン(PEA)とピリドキサール-5′-リン酸(PLP)の脱リン酸化
- 骨の石灰化プロセスの調節
- ビタミンB6代謝への関与
- 細胞外マトリックスの代謝調節
特に注目すべきは、このタンパク質が細胞膜の外側に結合し、エクトホスファターゼ(膜外側に位置する脱リン酸化酵素)として機能することです。この機能は骨形成や歯の発達において不可欠であり、ALPL遺伝子の変異はこれらの過程に障害をもたらします。
ALPL遺伝子と低ホスファターゼ症
ALPL遺伝子の病的バリアント(変異)は低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia、HPP)を引き起こします。この疾患は血清アルカリホスファターゼの活性低下を特徴とし、症状の重症度に基づいて以下のように分類されます:
- 周産期型低ホスファターゼ症(最も重症)
- 乳児型低ホスファターゼ症
- 小児型低ホスファターゼ症
- 成人型低ホスファターゼ症
- 歯限局型低ホスファターゼ症(Odontohypophosphatasia)
周産期型や乳児型の重症例では、骨の重度の石灰化障害、呼吸不全、けいれんなどが見られることがあります。一方、成人型や歯限局型では症状が軽度で、主に歯の早期脱落や骨折のリスク増加などが認められます。
低ホスファターゼ症の症状について不安がある方は、遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。
ALPL遺伝子の変異と遺伝形式
低ホスファターゼ症は主に以下の遺伝形式で発症します:
- 常染色体劣性(潜性)遺伝:両親からそれぞれ変異遺伝子を受け継ぐ場合(複合ヘテロ接合体または同一変異のホモ接合体)
- 常染色体優性遺伝:一部の変異は優性効果を示し、片方の遺伝子の変異だけでも発症
重症型(周産期型・乳児型)は通常、常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとりますが、成人型や歯限局型は優性遺伝形式または劣性遺伝形式の両方がみられます。
遺伝子 | 疾患 | 遺伝形式 | 対象人口 | 保因者頻度 | 検出率 |
---|---|---|---|---|---|
ALPL | 低ホスファターゼ症 | 常染色体劣性(潜性) | 一般集団 | 1/158 | 95% |
欧州系集団 | 1/274 | 95% | |||
メノナイト集団 | 1/25 | 95% |
これまでにALPL遺伝子では400種類以上の病的バリアントが報告されており、その多くはミスセンス変異(アミノ酸置換)です。変異の種類と位置によって表現型(症状の現れ方)が大きく異なります。
主要なALPL遺伝子変異
低ホスファターゼ症の原因となる代表的なALPL遺伝子変異をいくつか紹介します:
- E174K変異(グルタミン酸からリジンへの置換):欧州系集団に比較的多く見られる変異で、様々な重症度の低ホスファターゼ症を引き起こします。
- G317D変異(グリシンからアスパラギン酸への置換):メノナイト集団で見られる周産期致死型低ホスファターゼ症の原因となる変異です。
- A99T変異(アラニンからトレオニンへの置換):優性遺伝形式を示す変異で、小児型・成人型・歯限局型低ホスファターゼ症を引き起こします。
- D378V変異(アスパラギン酸からバリンへの置換):比較的高頻度で見られる変異であり、様々な表現型と関連しています。
これらの変異は、タンパク質の活性部位や二量体形成部位、細胞膜との結合部位などの重要な領域に影響を与えることが多く、その結果としてアルカリホスファターゼの機能障害を引き起こします。
ALPL遺伝子検査と保因者スクリーニング
ALPL遺伝子の検査は以下のような場合に考慮されます:
- 低ホスファターゼ症が疑われる症状がある場合(診断確定のため)
- 家族に低ホスファターゼ症の方がいる場合(家族検査)
- 健康であっても、将来の家族計画のために保因者かどうかを知りたい場合(保因者検査)
ミネルバクリニックでは、拡大版保因者検査の一環としてALPL遺伝子の検査を提供しています。この検査では、約95%の変異を検出することができ、低ホスファターゼ症の保因者であるかどうかを調べることができます。
保因者頻度は一般集団で約1/158、欧州系集団で約1/274、メノナイト集団ではさらに高く約1/25となっています。保因者検査の結果が陰性の場合、残存リスク(検査で検出できなかった変異を持っている可能性)は著しく低下します。
ALPL遺伝子変異と遺伝カウンセリング
ALPL遺伝子の変異による低ホスファターゼ症は、症状の重症度や遺伝形式が多様であるため、専門的な知識を持つ医師による適切な情報提供が重要です。
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐しており、以下のようなサポートを提供しています:
- 遺伝子検査前後の詳細な説明と情報提供
- 家系図作成と遺伝形式の説明
- 次世代への影響や妊娠に関する相談
- 検査結果の解釈と今後のフォローアップについての提案
低ホスファターゼ症に関するご不安や、遺伝子検査についてのご質問がある方は、遺伝カウンセリングをぜひご検討ください。
まとめ:ALPL遺伝子と健康管理
ALPL遺伝子の変異は、重症な周産期型から軽症の歯限局型まで幅広い症状を示す低ホスファターゼ症の原因となります。適切な診断と遺伝カウンセリングを受けることで、個々の状況に応じた医療的対応や将来の家族計画についての情報を得ることができます。
遺伝子検査をご検討の方へ
ミネルバクリニックでは、ALPL遺伝子を含む拡大版保因者検査を提供しています。ご自身や将来のお子さんの健康について不安がある方は、まずは遺伝カウンセリングをご利用ください。
低ホスファターゼ症に関する最新の治療法や研究についても、定期的に医療機関で情報を得ることをお勧めします。早期の適切な診断と介入は、特に小児の症例において予後の改善につながる可能性があります。
参考文献
- Online Mendelian Inheritance in Man, OMIM®. Johns Hopkins University, Baltimore, MD. ALPL Gene. MIM Number: 171760.
- Mornet E. (2000). Hypophosphatasia: the mutations in the tissue-nonspecific alkaline phosphatase gene. Human Mutation, 15(4), 309-315.
- Whyte MP, et al. (2015). Hypophosphatasia: Natural history study of 101 affected children investigated at one research center. Bone, 93, 125-138.
- Mornet E, et al. (2021). Genetics of Hypophosphatasia: An Update. Clinical Reviews in Bone and Mineral Metabolism, 19, 25-39.

ミネルバクリニックでは、「未来のお子さまの健康を考えるすべての方へ」という想いのもと、東京都港区青山にて保因者検査を提供しています。遺伝性疾患のリスクを事前に把握し、より安心して妊娠・出産に臨めるよう、当院では世界最先端の特許技術を活用した高精度な検査を採用しています。これにより、幅広い遺伝性疾患のリスクを確認し、ご家族の将来に向けた適切な選択をサポートします。
保因者検査は唾液または口腔粘膜の採取で行えるため、採血は不要です。 検体の採取はご自宅で簡単に行え、検査の全過程がミネルバクリニックとのオンラインでのやり取りのみで完結します。全国どこからでもご利用いただけるため、遠方にお住まいの方でも安心して検査を受けられます。
まずは、保因者検査について詳しく知りたい方のために、遺伝専門医が分かりやすく説明いたします。ぜひ一度ご相談ください。カウンセリング料金は30分16500円です。
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