(更新日:2025/10/01)
FMR1遺伝子リピート伸長検査(脆弱X症候群・FXTAS・早期卵巣不全)|ミネルバクリニック
FMR1関連疾患とは
FMR1関連疾患は、X染色体上に存在するFMR1遺伝子の5’非翻訳領域におけるCGG三塩基リピート(繰り返し配列)の異常伸長により引き起こされる遺伝性疾患群です。リピート数によって、脆弱X症候群、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱X関連早期卵巣不全(FXPOI)など、異なる疾患を発症します。
正常なFMR1遺伝子では、CGGリピートは5~44回程度ですが、このリピート数が増加すると、世代を経るごとにさらに伸長する傾向があり、様々な症状を引き起こします。
CGGリピート数による分類:
・正常範囲:5~44回
・中間型(グレーゾーン):45~54回
・前変異(premutation):55~200回
・完全変異(full mutation):200回以上
完全変異を持つ場合は脆弱X症候群を発症し、前変異を持つ場合は本人に脆弱X症候群の症状は出ませんが、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)や早期卵巣不全(FXPOI)を発症するリスクがあり、また次世代で完全変異に拡大して脆弱X症候群を発症する可能性があります。
脆弱X症候群
脆弱X症候群(Fragile X syndrome: FXS)は、遺伝性の知的障害として最も頻度が高い疾患の一つで、ダウン症候群に次いで2番目に多い遺伝性知的障害の原因です。男性では約7,000人に1人、女性では約11,000人に1人の頻度で発症します。日本では男性10,000人に1人と推定されています。
症状と特徴
脆弱X症候群の症状は多様ですが、以下のような特徴が認められます:
認知機能の障害: 軽度から中等度の知的障害、学習障害、注意欠陥
行動面の特徴: 自閉傾向、多動性、不安、社会的コミュニケーションの困難、固執的な行動や発語
身体的特徴: 長い顔、大きな耳、突出した下顎と額、高口蓋、関節の過伸展、男性では思春期以降に大きな精巣(巨大精巣)
その他: 言語発達の遅れ、目を合わせることが困難、感覚過敏
男女での違い
X連鎖性遺伝形式をとるため、男性の方が女性よりも重症です。男性はX染色体を1本しか持たないため、変異を持つX染色体の影響をそのまま受けますが、女性は2本のX染色体を持つため、もう一方の正常なX染色体が部分的に症状を軽減します。そのため、女性では症状がないか、あっても軽度のことが多いですが、一部の女性では知的障害を呈することもあります。
病態メカニズム
FMR1遺伝子のCGGリピートが200回以上に伸長すると、遺伝子のメチル化が起こり、FMR1遺伝子が不活性化されます。その結果、FMRP(Fragile X Mental Retardation Protein)というタンパク質が産生されなくなります。FMRPは脳の発達、特に神経細胞のシナプス形成と機能に重要な役割を果たしているため、この欠損により知的障害や行動異常が生じます。
脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)
脆弱X随伴振戦/失調症候群(Fragile X-associated tremor/ataxia syndrome: FXTAS)は、FMR1遺伝子の前変異(55~200回のCGGリピート)を持つ中高年の男性に発症する神経変性疾患です。50歳以降に発症することが多く、進行性の運動障害と認知機能障害を特徴とします。
症状と特徴
主要症状:
企図振戦(動作をするときに手が震える)
小脳失調(バランスが悪くなる、歩行困難)
パーキンソニズム(動作の緩慢化、筋肉のこわばり、安静時振戦)
認知機能低下、認知症
その他の症状:
末梢神経障害(しびれ、感覚低下)
自律神経障害
精神症状(抑うつ、不安、情緒不安定)
画像検査所見: 頭部MRIで中小脳脚の高信号(MCP sign)が特徴的
発症頻度とリスク
前変異を持つ男性の約30~46%、女性の5~17%がFXTASを発症します。CGGリピート数が多いほど、また年齢が高いほど発症リスクが高くなります。50歳以上の男性では約1/3,000の頻度で発症すると推定されています。
病態メカニズム
前変異では、FMR1遺伝子は不活性化されず、mRNAが過剰に産生されます。この異常なmRNAが細胞内に蓄積し、神経細胞に毒性を発揮することでFXTASの症状が引き起こされると考えられています。これは完全変異による脆弱X症候群とは異なるメカニズムです。
早期卵巣不全(FXPOI)
脆弱X関連早期卵巣不全(Fragile X-associated Primary Ovarian Insufficiency: FXPOI)は、FMR1遺伝子の前変異を持つ女性に発症する卵巣機能不全で、40歳未満で月経不順や早期閉経を引き起こします。
症状と診断基準
診断基準:
・40歳未満で4ヶ月以上の無月経
・血中卵胞刺激ホルモン(FSH)が閉経レベル(25 IU/L以上)
主な症状:
・月経不順、無月経
・不妊
・更年期様症状(ほてり、発汗、気分の落ち込み)
・性欲減退
・腟の乾燥、性交痛
発症頻度とリスク
FMR1遺伝子の前変異を持つ女性の約15~20%がFXPOIを発症します。一般女性が40歳未満で閉経する確率は約1%ですが、前変異保因者ではそのリスクが大幅に高くなります。平均的には、一般女性よりも約5年早く閉経を迎えることが知られています。
合併症と管理
早期卵巣不全により女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏すると、以下のリスクが高まります:
これらのリスクを軽減するため、自然閉経年齢(約50歳)まではホルモン補充療法を行うことが推奨されています。
ミネルバクリニックのFMR1遺伝子リピート伸長検査の特徴
「FMR1遺伝子リピート伸長検査」とは、FMR1遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGG三塩基リピートの伸長を解析する検査です。この検査により、脆弱X症候群、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱X関連早期卵巣不全(FXPOI)のリスク評価や診断が可能になります。
FMR1遺伝子のリピート伸長検査は、次世代シークエンシング(NGS)では検出できない特殊な検査技術を必要とします。当院では、repeat-primed PCR(rpPCR)とアンプリコン長解析を用いた高精度な検査を提供しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でFMR1遺伝子のリピート伸長検査を行う場合、数万円から数十万円の費用がかかることがあります。
当院では、FMR1遺伝子のリピート伸長解析をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるFMR1遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。
当院で行う「FMR1遺伝子リピート伸長検査」の場合、約2週間程度で結果をお届けすることが可能です。
3.正確なリピート数の評価
当院の検査では、repeat-primed PCR(rpPCR)とアンプリコン長解析を組み合わせることで、CGGリピートの伸長を高精度で検出します。正常範囲から前変異、完全変異まで、幅広いリピート数に対応した検査が可能です。
オプション
至急オプション:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円(税込)
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「FMR1遺伝子リピート伸長検査」では、FMR1遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGG三塩基リピートの伸長を解析します。リピート数を正確に測定することで、正常、中間型、前変異、完全変異のいずれに該当するかを判定します。
この検査により、脆弱X症候群、脆弱X随伴振戦/失調症候群(FXTAS)、脆弱X関連早期卵巣不全(FXPOI)の診断確定や、次世代への疾患伝達リスクの評価が可能になります。
どんな人が受けたらいいの?
【FMR1関連疾患の個人歴または家族歴のある方】に
「FMR1遺伝子リピート伸長検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
脆弱X症候群が疑われる方:
・原因不明の知的障害がある方
・発達遅滞がある方
・自閉症スペクトラム障害がある方
・注意欠陥・多動性障害(ADHD)がある方
・特徴的な顔貌(長い顔、大きな耳)がある方
・家族に知的障害や自閉症の方がいる場合
FXTAS(脆弱X随伴振戦/失調症候群)が疑われる方:
・50歳以降に発症した原因不明の振戦がある方
・小脳失調、歩行障害がある方
・パーキンソニズム様の症状がある方
・進行性の認知機能低下がある方
・家族に知的障害や自閉症、早期閉経の方がいる場合
FXPOI(早期卵巣不全)が疑われる方:
・40歳未満で月経不順や無月経がある女性
・早期閉経を迎えた女性
・不妊で悩んでいる方
・家族に早期閉経の方がいる場合
・将来の妊娠を計画している保因者の女性
家族計画のために検査を希望される方:
・家族に脆弱X症候群の方がいる場合
・出生前診断や着床前診断を検討されている方
・キャリアスクリーニングを希望される方
この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、FMR1関連疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な早期介入、リハビリテーション、ホルモン補充療法、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
脆弱X症候群の場合:
・適切な診断の確立または確認
・早期療育介入(言語療法、作業療法、行動療法)の開始
・自閉症や注意欠陥・多動性障害などの合併症への適切な対応
・教育プログラムの個別化
・家族への遺伝カウンセリング
・出生前診断や着床前診断の選択肢提供
FXTASの場合:
・他の神経変性疾患(パーキンソン病、本態性振戦など)との鑑別
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・症状緩和のための薬物療法(振戦、パーキンソニズムに対する治療)
・転倒リスクの評価と予防
・認知機能低下への早期対応
・家族への情報提供と遺伝カウンセリング
FXPOIの場合:
・早期卵巣不全の診断確定
・ホルモン補充療法による症状緩和と長期的健康リスクの軽減
・骨粗鬆症、心血管疾患のリスク管理
・妊孕性温存(卵子凍結など)の選択肢提供
・不妊治療の方針決定
・家族計画における選択肢の提供
家族への影響:
・保因者である家族の特定
・将来の世代への疾患伝達リスクの評価
・家族計画における情報提供
・出生前診断や着床前診断の選択肢提供
前変異を持つ方の場合、ご本人は症状がなくても、次世代で完全変異に拡大して脆弱X症候群を発症する可能性があります。特に女性の前変異保因者から子どもへ伝わる際に、リピート数が増加するリスクが高いことが知られています。遺伝カウンセリングと併せて検査を受けることで、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査対象遺伝子
詳しくはこちら
FMR1遺伝子(Fragile X Mental Retardation 1 gene)
FMR1遺伝子は、X染色体長腕末端部(Xq27.3)に位置する遺伝子で、FMRP(Fragile X Mental Retardation Protein)というタンパク質をコードしています。
遺伝子の機能:
FMR1遺伝子がコードするFMRPは、神経細胞におけるタンパク質合成の調節に重要な役割を果たしています。特に、シナプスにおける局所的なタンパク質合成を制御することで、学習や記憶に関わる神経可塑性を調節しています。
CGGリピートの位置:
FMR1遺伝子の5’非翻訳領域(5′ UTR)には、CGG三塩基リピートが存在します。正常では5~44回のリピートですが、この領域が異常に伸長することで、様々な疾患を引き起こします。
リピート数による分類と疾患:
1. 正常範囲(5~44回)
通常の機能を持ち、疾患を引き起こしません。
2. 中間型/グレーゾーン(45~54回)
現世代では症状を引き起こしませんが、次世代でリピート数が増加する可能性があります。遺伝カウンセリングが推奨されます。
3. 前変異(premutation)(55~200回)
・本人は脆弱X症候群を発症しません
・男性の約30~46%がFXTAS(脆弱X随伴振戦/失調症候群)を発症
・女性の約15~20%がFXPOI(早期卵巣不全)を発症
・女性の約5~17%がFXTASを発症
・次世代へ伝わる際に完全変異に拡大するリスクがある(特に母から子への伝達時)
4. 完全変異(full mutation)(200回以上)
・遺伝子のメチル化が起こり、FMR1遺伝子が不活性化
・FMRPタンパク質が産生されない、または著しく減少
・脆弱X症候群を発症
・男性では中等度~重度の知的障害
・女性では軽度の知的障害~正常範囲(X染色体の不活化パターンによる)
遺伝形式:
X連鎖性遺伝形式をとります。男性はX染色体を1本しか持たないため、変異を持つと症状が出やすく、女性は2本のX染色体を持つため、症状が軽度であったり、保因者となったりします。
遺伝的不安定性:
CGGリピートは世代を経るごとに伸長する傾向があります(遺伝的予測現象:anticipation)。特に前変異を持つ母親から子どもへ伝わる際に、完全変異へと拡大するリスクが高くなります。父親から息子へはX染色体が伝わらないため、父親から息子への伝達はありません。父親から娘へは必ず前変異が伝わります。
検査の重要性:
FMR1遺伝子のリピート伸長は、次世代シークエンシング(NGS)や標準的な染色体検査では検出できません。そのため、特異的なPCR法(repeat-primed PCR)やサザンブロット法などの専用の検査技術が必要です。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべてのリピート伸長検査には限界があります。この分析は、repeat-primed PCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施され、FMR1遺伝子の5’非翻訳領域におけるCGGリピートの伸長を検出することを目的として設計されています。
検査の技術的限界:
・この検査は、FMR1遺伝子のCGGリピート伸長の解析に特化しており、遺伝子配列決定や欠失/重複分析は含まれません。これらの分析が必要な場合は、別途オーダーすることができます。
・リピート伸長解析では、大規模な伸長(特に200回以上の完全変異)の場合、正確なリピート数を決定できないことがあります。この場合、「200回以上」として報告されます。
・モザイク現象(体細胞モザイクまたは生殖細胞モザイク)の検出を目的として設計または検証されていません。
・この検査では、FMR1遺伝子の点変異、小さな欠失・挿入、イントロン領域の変異は検出されません。これらの稀な変異により脆弱X症候群類似の症状を呈することがありますが、本検査では同定できません。
メチル化解析について:
・この検査には、FMR1遺伝子のメチル化状態の解析は含まれていません。完全変異であってもメチル化されていない場合や、部分的にメチル化されている場合があり、これらは症状の重症度に影響を与える可能性がありますが、本検査では評価できません。メチル化解析が必要な場合は、別途オーダーすることができます。
遺伝カウンセリングの重要性:
・前変異の場合、次世代で完全変異に拡大するリスクがありますが、その確率は母親のリピート数、遺伝する子どもの性別などにより異なります。正確なリスク評価のためには、遺伝カウンセリングが不可欠です。
・中間型(グレーゾーン、45~54回)の場合、現在の世代では症状を引き起こしませんが、将来の世代でリピート数が増加する可能性があります。遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。
表現型の多様性:
・同じリピート数であっても、症状の重症度は個人によって大きく異なることがあります。特に女性では、X染色体の不活化パターンにより症状が大きく変動します。
・検査結果が正常範囲であっても、臨床症状から脆弱X症候群が強く疑われる場合は、遺伝子配列決定や他の遺伝学的検査を検討する必要があります。
その他の注意事項:
・この検査は診断の一助となるものであり、臨床症状、家族歴、他の検査結果と総合的に判断する必要があります。
・稀なケースとして、FMR1遺伝子以外の遺伝子変異により、脆弱X症候群類似の症状を呈することがあります。
・腫瘍組織での検査は適応外です。
結果が出るまでの期間
2週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の知的障害、発達遅滞、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害がある方におすすめします。また、50歳以降に発症した振戦や歩行障害、40歳未満での月経不順や早期閉経がある方も検査をご検討ください。家族に知的障害、自閉症、早期閉経の方がいる場合も検査が推奨されます。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
脆弱X症候群は男性だけの病気ですか?
いいえ、女性も発症します。X連鎖性遺伝形式をとるため、男性の方が症状が重症ですが、女性も軽度から中等度の知的障害や学習障害を呈することがあります。女性は2本のX染色体を持つため、もう一方の正常なX染色体により症状が軽減されることが多いですが、X染色体の不活化パターンにより個人差があります。
前変異とは何ですか?
前変異とは、CGGリピートが55~200回の状態を指します。前変異を持つ方は本人に脆弱X症候群の症状は出ませんが、男性はFXTAS(脆弱X随伴振戦/失調症候群)、女性はFXPOI(早期卵巣不全)やFXTASを発症するリスクがあります。また、次世代へ伝わる際に完全変異(200回以上)に拡大し、脆弱X症候群を発症する可能性があります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
はい、推奨されます。患者さんで変異が見つかった場合、血縁者も保因者である可能性があります。特に女性の保因者は、将来子どもを持つ際に脆弱X症候群の子どもが生まれるリスクがあります。また、前変異を持つ方は、ご本人がFXTASやFXPOIを発症するリスクがあります。遺伝カウンセリングと併せて、家族の検査をご検討ください。
妊娠中に検査を受けられますか?
はい、妊娠中でも母体の血液や唾液で検査を受けることができます。ただし、胎児の検査(出生前診断)を希望される場合は、羊水穿刺や絨毛検査が必要です。出生前診断については、遺伝カウンセリングで詳しくご説明いたします。
検査で異常が見つかった場合、治療法はありますか?
現在のところ、脆弱X症候群の根本的な治療法はありませんが、早期療育介入(言語療法、作業療法、行動療法)、教育支援、必要に応じた薬物療法により、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。FXTASでは症状緩和のための薬物療法やリハビリテーション、FXPOIではホルモン補充療法が有効です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。CGGリピート数、それが正常・中間型・前変異・完全変異のいずれに該当するか、ご本人や家族への影響、今後の対応などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
前変異または完全変異を持つ場合、子どもへの影響があります。女性の前変異保因者から子どもへ伝わる際に完全変異に拡大するリスクが高く、その場合子どもは脆弱X症候群を発症します。具体的なリスクは母親のリピート数により異なります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
FXTASとパーキンソン病の違いは何ですか?
FXTASはパーキンソン病と似た症状(振戦、動作の緩慢化など)を呈しますが、FXTASでは企図振戦(動作時の震え)や小脳失調が主体で、頭部MRIで中小脳脚の特徴的な所見(MCP sign)が認められることが鑑別点です。また、FMR1遺伝子の前変異が原因であることが明確に異なります。正確な診断のため、遺伝子検査が有用です。
早期卵巣不全(FXPOI)の場合、妊娠は可能ですか?
FXPOIと診断された後でも、自然妊娠が可能な場合があります(約4.4%)。ただし、排卵は不規則で予測困難です。妊娠を希望される場合は、早急に生殖医療専門医にご相談ください。卵巣機能が保たれている間に卵子凍結を行う、または卵子提供や胚提供などの選択肢もあります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では高精度なrepeat-primed PCRとアンプリコン長解析を用いた検査を行い、約2週間で結果をお届けします。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら