(更新日:2025/10/01)
FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査(脊髄小脳失調症27B型)|ミネルバクリニック
脊髄小脳失調症27B型(SCA27B)とは
脊髄小脳失調症27B型(Spinocerebellar Ataxia Type 27B: SCA27B)は、FGF14遺伝子のイントロン1内のGAAリピートの異常伸長(250回以上)によって引き起こされる常染色体優性遺伝性の神経変性疾患です。2023年に原因遺伝子が同定された比較的新しく発見された疾患で、中年期以降に発症する緩徐進行性の小脳性運動失調を特徴とします。
本疾患はGAA-FGF14関連失調症とも呼ばれ、最近の研究により、従来原因不明とされてきた遅発性小脳失調症の最も頻度の高い原因の一つであることが明らかになってきました。特に下眼瞼向き眼振(downbeat nystagmus)を伴う症例が多く、特発性下眼瞼向き眼振症例の約48%がSCA27Bであることが報告されています。
脊髄小脳失調症(SCA)は、小脳や脊髄の神経細胞が徐々に変性・脱落することにより、運動失調症状を呈する遺伝性神経変性疾患群の総称です。現在、SCA1からSCA48まで多くの病型が知られていますが、日本ではSCA3(マシャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA31、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)が多く、これら4病型で遺伝性脊髄小脳失調症の60~70%を占めます。SCA27Bは最近になって注目されている病型であり、従来原因不明とされてきた遅発性小脳失調症の相当数を占めることが判明しつつあります。
症状と病態
脊髄小脳失調症27B型の主な症状は、中年期以降(多くは40歳代~60歳代)に発症する緩徐進行性の小脳性運動失調です。発症初期は純粋小脳型の失調症状を呈することが多く、小脳以外の神経症状は軽度です。
主要症状
進行性の小脳性運動失調(歩行時のふらつき、バランス障害)
下眼瞼向き眼振(下向きの不随意眼球運動)-最も特徴的な所見
小脳性眼球運動障害(注視誘発性眼振、滑動性眼球運動障害)
小脳性構音障害(ろれつが回らない、とぎれとぎれの話し方)
手指の巧緻運動障害(測定障害、企図振戦)
歩行障害(つまずきやすい、階段昇降困難)
発作性症状(一過性のめまい、ふらつきの増悪)
眼症状の特徴
SCA27Bでは眼症状が非常に特徴的で、診断の重要な手がかりとなります。特に下眼瞼向き眼振は本疾患の顕著な特徴であり、ほぼ100%の症例で認められます。下眼瞼向き眼振は、正面を向いているときに眼球が下方に向かって不随意に動く症状で、患者さんは下を向いているように見える症状や二重に見える症状を訴えることがあります。
その他、注視誘発性眼振(横や上を見たときに眼球が震える)、滑動性眼球運動障害(動く物を目で追うことが困難)なども高頻度に認められます。これらの小脳性眼球運動障害は、日常生活では読書困難、車の運転の際の困難、階段昇降時の不安定さなどとして現れます。
発作性症状について
SCA27Bの特徴的な症状として、発作性の症状増悪が認められます。約14%の患者さんでは、急性のめまい発作や失調症状の一過性増悪が起こり、これらが脳卒中、前庭神経炎、ウェルニッケ脳症、てんかん発作などと誤診されることがあります。これらの発作性症状は数時間から数日続き、その後改善しますが、背景には慢性進行性の小脳失調症が存在します。
末梢神経障害の合併
一部の患者さんでは軽度の末梢神経障害(感覚障害、腱反射低下)を合併することが報告されており、手足のしびれ感を訴える方もいます。ただし、これらは軽度であることが多く、主症状は小脳失調症状です。
進行と予後
疾患の進行は緩徐で、発症から数年~数十年かけて徐々に症状が進行します。SCA6やSCA31と比較すると、やや進行が早い傾向がありますが、患者さんによって進行速度には個人差があります。初期は純粋な小脳症状のみですが、進行すると歩行に補助具が必要となったり、車椅子が必要になったりする場合があります。ただし、生命予後は比較的良好です。
リピート数と臨床症状の関係
FGF14遺伝子のGAAリピート数は、発症年齢や症状の重症度と相関します。一般的に、リピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症となる傾向があります。300回以上のリピート伸長は完全浸透性(遺伝子変異を持つ人がほぼ確実に発症)とされ、250~299回のリピート伸長は不完全浸透性(発症しない場合もある)とされています。
遺伝形式と原因
脊髄小脳失調症27B型は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとります。これは、両親のどちらか一方から病的なFGF14遺伝子変異を受け継いだ場合に発症する可能性があることを意味します。患者さんの子どもが病的変異を受け継ぐ確率は50%です。
FGF14遺伝子とGAAリピート伸長
FGF14(線維芽細胞増殖因子14)は、13番染色体長腕(13q33.1)に位置する遺伝子で、主に小脳のプルキンエ細胞に発現しています。この遺伝子は電位依存性ナトリウムチャネルの活性を調節するタンパク質をコードしており、小脳神経細胞の正常な機能に重要な役割を果たしています。
SCA27Bの原因は、FGF14遺伝子のイントロン1内に存在するGAA(グアニン-アデニン-アデニン)の3塩基リピート配列が異常に伸長することです。正常な人では10~40回程度のGAAリピートですが、SCA27B患者さんでは250回以上に伸長しています。
病的意義のあるリピート数の閾値:
・正常範囲:10~200回未満
・グレーゾーン:200~249回(一部の患者さんで発症する可能性)
・病的範囲:250回以上(発症リスクが高い)
・完全浸透性:300回以上(ほぼ確実に発症)
発症メカニズム
GAAリピートの異常伸長により、FGF14遺伝子の機能が障害され、小脳プルキンエ細胞におけるナトリウムチャネルの機能異常が生じると考えられています。これにより神経細胞の興奮性が変化し、小脳の神経伝達に異常が生じ、運動失調症状が現れます。ただし、詳細な病態機序については現在も研究が進められています。
表現促進現象
SCA27Bでは、世代を経るごとにGAAリピート数が増加し、発症年齢が若くなる「表現促進現象」が認められることがあります。これは親よりも子どもの方が、より若い年齢で、より重症の症状で発症する可能性があることを意味します。
浸透率について
SCA27Bは年齢依存性の浸透率を示します。つまり、病的変異を持っていても、若年期には発症せず、加齢とともに発症リスクが高まります。300回以上のリピート伸長を持つ人では高齢までにほぼ確実に発症しますが、250~299回のリピート伸長では発症しない人もいます。
ミネルバクリニックのFGF14遺伝子GAAリピート伸長検査の特徴
「FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査」とは、脊髄小脳失調症27B型(SCA27B)の原因であるFGF14遺伝子のイントロン1内のGAAリピート伸長を調べる検査です。この検査により、GAAリピートの長さを測定し、病的な伸長があるかどうかを判定します。
従来、遅発性小脳失調症の多くは原因不明とされてきましたが、近年の研究によりSCA27Bが高頻度であることが判明しました。特に下眼瞼向き眼振を伴う小脳失調症では約50%がSCA27Bであることが報告されています。
ミネルバクリニックでは、最新の遺伝子検査技術を用いて、FGF14遺伝子のGAAリピート数を正確に測定し、SCA27Bの診断をサポートいたします。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で脊髄小脳失調症の遺伝子検査を行う場合、複数の遺伝子を調べる必要があり、費用が高額になることがあります。
当院では、FGF14遺伝子のGAAリピート伸長検査をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える脊髄小脳失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。
当院で行う「FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査」の場合、約2週間で結果が判明します。
3.専門医による遺伝カウンセリング
当院には臨床遺伝専門医が常駐しており、検査前後の遺伝カウンセリングを丁寧に行います。検査の意義、結果の解釈、家族への影響、今後の対応などについて、十分にご説明いたします。
遺伝性疾患の検査は、ご本人だけでなくご家族にも影響を及ぼす可能性があります。検査を受けるかどうかの意思決定から、結果開示後のサポートまで、専門医が継続的にサポートいたします。
オプション
リピート長解析 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
検査内容
「FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査」では、FGF14遺伝子のイントロン1内に存在するGAA(グアニン-アデニン-アデニン)の3塩基リピート配列の長さを測定します。
この検査により、脊髄小脳失調症27B型(SCA27B)の遺伝的診断が可能となり、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。
どんな人が受けたらいいの?
【脊髄小脳失調症27B型の症状がある方、または家族歴のある方】に
「FGF14遺伝子GAAリピート伸長検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・中年期以降に発症した進行性の小脳性運動失調がある方
・下眼瞼向き眼振(下向きの不随意眼球運動)がある方
・小脳性眼球運動障害(注視誘発性眼振、滑動性眼球運動障害)がある方
・歩行時のふらつきやバランス障害がある方
・小脳性構音障害(ろれつが回らない)がある方
・発作性のめまいや失調症状の増悪がある方
・MRI検査で小脳萎縮が認められる方
・他のSCA(SCA3、SCA6、SCA31、DRPLAなど)の遺伝子検査が陰性だった方
・脊髄小脳失調症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、脊髄小脳失調症27B型の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の疾患(SCA6、SCA31、多系統萎縮症など)との鑑別
・4-アミノピリジンによる症状改善の可能性評価(下眼瞼向き眼振に有効性が報告されています)
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・発作性症状への対応と誤診の回避
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・転倒予防などの日常生活指導
・末梢神経障害などの合併症の早期発見
・家族の発症リスクに関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、子どもが変異を受け継ぐリスクは50%です。ただし、変異を受け継いでも発症時期や重症度には個人差があります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
FGF14 ( 1 遺伝子 )
FGF14遺伝子(線維芽細胞増殖因子14):
13番染色体長腕(13q33.1)に位置する遺伝子で、主に小脳のプルキンエ細胞に発現しています。FGF14タンパク質は、電位依存性ナトリウムチャネルの活性を調節する細胞内タンパク質であり、小脳神経細胞の軸索始部における神経細胞の発火を調整しています。これにより、小脳プルキンエ細胞の正常な機能維持に重要な役割を果たしています。
FGF14遺伝子のイントロン1内には、GAA(グアニン-アデニン-アデニン)の3塩基リピート配列が存在します。正常な人ではこのリピートは10~40回程度ですが、脊髄小脳失調症27B型(SCA27B)の患者さんでは250回以上に異常伸長しています。このGAAリピートの異常伸長により、FGF14遺伝子の機能が障害され、ナトリウムチャネルの機能異常を介して小脳神経細胞の興奮性に変化が生じ、運動失調症状が現れると考えられています。
GAAリピート数は発症年齢や症状の重症度と相関し、一般的にリピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症となる傾向があります。300回以上のリピート伸長は完全浸透性(ほぼ確実に発症)、250~299回のリピート伸長は不完全浸透性(発症しない場合もある)とされています。また、世代を経るごとにリピート数が増加する「表現促進現象」が認められることもあります。
近年の研究により、従来原因不明とされてきた遅発性小脳失調症の最も頻度の高い原因の一つがFGF14遺伝子のGAAリピート伸長であることが明らかになってきました。特に欧米では遺伝性小脳失調症の約30%、日本でも相当数の症例がSCA27Bであることが報告されています。
検査方法
この検査は、repeat-primed PCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施されます。これらの方法により、FGF14遺伝子のGAAリピート配列の長さを正確に測定することができます。
repeat-primed PCRは、リピート配列の伸長を特異的に検出する方法で、大きなリピート伸長の存在を確認できます。アンプリコン長解析では、リピート配列を含むDNA断片の長さを測定することで、正確なリピート数を推定します。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべてのリピート伸長検査には限界があります。この分析はrepeat-primed PCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施され、FGF14遺伝子のイントロン1内のGAAリピート伸長の検査を目的として設計されています。
このリピート伸長解析では、大きなリピート伸長における正確なリピート数を決定できない場合があります。検査結果は「250回以上の伸長あり」または「250回未満」という形で報告されることがあり、正確なリピート数の測定が困難な場合があります。
この検査の対象範囲は、FGF14遺伝子のイントロン1内のGAAリピート伸長に限定されています。FGF14遺伝子の他の部位の変異(点変異、小さな欠失・挿入など)や、他の遺伝子の変異は検出されません。これらを調べるには、遺伝子配列決定検査や欠失・重複解析を別途実施する必要があります。
リピート配列内の中断配列(interruption)の有無や詳細な構造については、この検査では評価できません。中断配列は疾患の浸透率や発症年齢に影響を与える可能性が報告されていますが、その詳細な解析には長鎖シーケンシングなどのより高度な解析が必要です。
この検査は体細胞モザイクの検出を目的として設計または検証されていません。また、メチル化解析は含まれていません。
※検査で病原性変異が検出されなくても、脊髄小脳失調症を完全に否定することはできません。他の原因遺伝子(SCA3、SCA6、SCA31、DRPLAなど)による可能性や、まだ発見されていない原因遺伝子による可能性があります。臨床症状や家族歴に基づいた総合的な評価が重要です。
※200~249回のGAAリピート伸長については、病的意義が不明確な場合があります(グレーゾーン)。最近の研究では、一部の患者さんで200~249回のリピート伸長でも発症する可能性が報告されていますが、この範囲のリピート数の解釈には注意が必要です。
結果が出るまでの期間
2週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
中年期以降に進行性の小脳性運動失調(歩行時のふらつき、バランス障害)が出現した方、特に下眼瞼向き眼振(下向きの不随意眼球運動)がある方におすすめします。小脳性構音障害、手指の巧緻運動障害、発作性のめまいなどがある場合も、SCA27Bの可能性を考慮すべきです。また、脊髄小脳失調症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
他の脊髄小脳失調症との違いは何ですか?
SCA27Bの最大の特徴は、下眼瞼向き眼振が高頻度(ほぼ100%)に認められることです。SCA6やSCA31も純粋小脳型の失調症ですが、下眼瞼向き眼振の頻度は低いです。また、発作性症状がSCA27Bでは比較的多く認められます。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な治療選択が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
SCA27Bは常染色体優性遺伝形式のため、患者さんのお子さんが病的変異を受け継ぐリスクは50%です。ただし、変異を受け継いでも発症時期や重症度には個人差があり、250~299回のリピート伸長では発症しない場合もあります。ご家族の検査により、将来の発症リスクを評価し、家族計画に重要な情報を提供できます。検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングを通じて十分に検討することが重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
FGF14遺伝子のGAAリピート伸長が検出されなくても、他の原因遺伝子(SCA3、SCA6、SCA31、DRPLAなど)による脊髄小脳失調症の可能性があります。臨床症状や家族歴に応じて、他の遺伝子検査を検討することがあります。また、まだ発見されていない原因遺伝子による可能性もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。リピート数、その病的意義、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。特に200~249回のグレーゾーンの場合は、最新の医学的知見に基づいて慎重に解釈いたします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体優性遺伝形式のため、患者さんの子どもが変異を受け継ぐ確率は50%です。ただし、変異を受け継いでも必ずしも発症するとは限らず(特に250~299回のリピート伸長の場合)、発症時期や重症度にも個人差があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
脊髄小脳失調症27B型の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、対症療法として甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤(プロチレリン、タルチレリン)が運動失調症状に使用されます。また、下眼瞼向き眼振に対しては4-アミノピリジンの有効性が報告されています。理学療法などのリハビリテーションも重要で、適切な管理により症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持できます。
予後はどうですか?
SCA27Bは緩徐進行性で、発症から数年~数十年かけて徐々に症状が進行します。SCA6やSCA31と比較するとやや進行が早い傾向がありますが、個人差が大きいです。適切なリハビリテーションと対症療法により、長期間にわたって日常生活を維持できる方も多くいます。生命予後は比較的良好です。
4-アミノピリジンとは何ですか?
4-アミノピリジンは、神経伝達を改善する薬剤で、SCA27Bの下眼瞼向き眼振に対する有効性が報告されています。複数の研究で、4-アミノピリジンの服用により下眼瞼向き眼振が改善し、視覚症状や歩行障害が軽減することが示されています。ただし、個人差があるため、使用については主治医とよく相談する必要があります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では、最新のrepeat-primed PCR技術を用いて正確にGAAリピート数を測定できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。検査結果の解釈や今後の対応について、最新の医学的知見に基づいて丁寧にご説明いたします。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら