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女性不妊症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

女性不妊症NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

女性不妊症とは

不妊症は、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合と定義されています。不妊症の原因は複雑で多くの症例では原因が不明ですが、不妊症の半数以上は遺伝的な問題が関与していると考えられています。

カップルの約10~15%が不妊症を経験し、そのうち約50%は女性(通常46,XX)側に、20~30%は男性(通常46,XY)側に原因があります。残りの20~30%は男女双方の要因によるもの、または原因不明です。遺伝的異常は、染色体の数的・構造的異常と、特定の遺伝子に影響を及ぼす遺伝子変異の2つに大別されます。

女性不妊症の主な原因は卵形成(卵子の産生・成熟過程)に関係しています。不妊症全体の中で、約50%は女性側の要因が関与しており、遺伝学的な検査により原因遺伝子が同定されることで、適切な診断や治療方針の決定、家族計画に役立つ情報を得ることができます。

症状と病態

女性不妊症には様々な病態が含まれます。主なものとして、早発卵巣不全、卵巣形成不全、卵母細胞成熟障害、初期胚発育停止、多嚢胞性卵巣症候群、反復流産などがあります。これらの病態は単一遺伝子の変異により引き起こされることがあり、遺伝子検査により原因を特定できる可能性があります。

早発卵巣不全(POF:Premature Ovarian Failure)

早発卵巣不全は、40歳未満の女性において卵巣機能が低下または停止する病態です。卵胞の発育障害により生じる一般的な疾患であり、生化学的には性腺ホルモン(エストロゲン)の低下と性腺刺激ホルモン(LHおよびFSH)の上昇を特徴とします。

主な症状:

  • 40歳未満での無月経または月経不順
  • 更年期様症状(ほてり、のぼせ、発汗、動悸など)
  • 不妊
  • エストロゲン欠乏による症状(腟乾燥、性交痛、骨密度低下など)
  • 抑うつ、不安、疲労感

発症頻度:
・40歳未満の女性の約1%
・30歳未満の女性の約0.1%
・無月経の原因の約10%

長期的健康リスク:
早発卵巣不全を放置すると、骨粗鬆症、心血管疾患、神経学的障害(アルツハイマー病など)のリスクが高まります。そのため、早期診断と適切なホルモン補充療法が重要です。

早発卵巣不全には症候群性(他の症状を伴う)と非症候群性があります。BMP15、ERCC6、FANCM、FIGLAなどの遺伝子が早発卵巣不全に関連しています。

卵巣形成不全(Ovarian Dysgenesis)

卵巣形成不全は、性腺(卵巣)の発育が障害され、性腺刺激ホルモンに対する抵抗性を示し、二次性徴の発現に影響を及ぼす病態です。PSMC3IP遺伝子などが卵巣形成不全に関連しています。

主な特徴:

  • 性腺(卵巣)発育の障害または欠如
  • 原発性無月経(初経が来ない)
  • 二次性徴の発現不全または遅延
  • 性腺刺激ホルモン(LH、FSH)の高値
  • エストロゲン値の低下

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovary Syndrome)

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵障害を主体とする内分泌疾患で、生殖年齢女性の約5~10%に見られる比較的頻度の高い疾患です。卵巣に多数の小卵胞が形成され、月経異常や不妊の原因となります。

診断基準(日本産科婦人科学会):

  • 月経異常(月経不順、無月経)
  • 超音波検査で両側卵巣に多数の小卵胞を認める(ネックレスサインと呼ばれる特徴的所見)
  • 血中男性ホルモン高値またはLH高値

主な症状:

  • 月経不順、無月経
  • 排卵障害による不妊
  • 肥満(インスリン抵抗性による)
  • 多毛、ニキビ(男性ホルモン過剰による)
  • 将来的な2型糖尿病、心血管疾患のリスク増加

関連する病態:
多嚢胞性卵巣症候群の患者さんの約10~30%に高プロラクチン血症を合併します。また、インスリン抵抗性が認められることが多く、将来の糖尿病や妊娠糖尿病のリスクが高まります。

その他の女性不妊症関連病態

卵母細胞成熟障害:
卵子の成熟過程に障害があり、受精能のある卵子が形成されない状態です。

初期胚発育停止:
受精は成立するものの、胚の初期発育段階で発育が停止してしまう病態です。

反復流産:
2回以上連続して流産を繰り返す状態で、一部には遺伝的要因が関与しています。

遺伝形式と原因遺伝子

女性不妊症の遺伝的原因は非常に多様です。常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式も報告されています。現在までに多数の原因遺伝子が同定されていますが、まだ原因が特定されていない症例も多く存在します。

主な原因遺伝子と関連する病態

早発卵巣不全関連遺伝子:

  • BMP15遺伝子:骨形成タンパク質15をコードし、卵胞発育に重要な役割を果たします
  • FIGLA遺伝子:卵母細胞の発育と生存に必須の転写因子をコードします
  • FOXL2遺伝子:卵巣の発育と維持に関与する転写因子で、変異により早発卵巣不全を引き起こします
  • FMR1遺伝子:脆弱X症候群に関連する遺伝子で、前変異保因者の約20%が早発卵巣不全を発症します
  • FSHR遺伝子:卵胞刺激ホルモン受容体をコードし、変異により性腺刺激ホルモン抵抗性を示します
  • GDF9遺伝子:成長分化因子9をコードし、卵胞発育の調節に関与します
  • NR5A1遺伝子:ステロイド合成と性腺発育に関与する転写因子をコードします

卵巣形成不全関連遺伝子:

  • PSMC3IP遺伝子:卵巣形成不全の原因として知られています
  • WT1遺伝子:Wilms腫瘍遺伝子で、性腺発育に重要な役割を果たします
  • NR0B1遺伝子:副腎および性腺の発育に関与します

多嚢胞性卵巣症候群関連遺伝子:

  • FSHR遺伝子:卵胞刺激ホルモン受容体の変異が多嚢胞性卵巣症候群に関連することがあります
  • LHCGR遺伝子:黄体形成ホルモン受容体をコードし、排卵調節に関与します

ホルモン合成・代謝関連遺伝子:

  • CYP19A1遺伝子:アロマターゼをコードし、エストロゲン合成に必須です
  • CYP11A1遺伝子:ステロイドホルモン合成の初発酵素をコードします
  • CYP17A1遺伝子:ステロイドホルモン合成に関与する酵素をコードします
  • HSD17B3遺伝子:性ホルモン合成に関与する酵素をコードします

性分化異常関連遺伝子:

  • AR遺伝子:アンドロゲン受容体をコードし、変異により性分化異常を引き起こします
  • SRY遺伝子:Y染色体上の性決定遺伝子で、異常により性分化に影響します
  • RSPO1遺伝子:卵巣発育に関与し、変異により性分化異常を引き起こします

当検査パネルでは、これらを含む臨床的に重要な102遺伝子を対象としています。これにより、女性不妊症の遺伝的原因を効率的かつ包括的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの女性不妊症遺伝子パネル検査の特徴

「女性不妊症 NGSパネル検査」とは、現在女性不妊症の原因として報告されている102の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、女性不妊症に関連する102遺伝子を一度に調べられる「女性不妊症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で女性不妊症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、女性不妊症に関係するとされる102の遺伝子を一度に調べられる「女性不妊症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える女性不妊症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「女性不妊症 NGSパネル検査」の場合、102の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から女性不妊症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「女性不妊症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な102の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「女性不妊症 NGSパネル検査」では、女性不妊症に関係するとされる102種類の遺伝子をまとめて検査します。これらの遺伝子には、早発卵巣不全、卵巣形成不全、卵母細胞成熟障害、初期胚発育停止、多嚢胞性卵巣症候群、反復流産などに関連する遺伝子が含まれています。

「女性不妊症 NGSパネル検査」は、女性不妊症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【女性不妊症の個人歴または家族歴のある方】に
「女性不妊症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の不妊症がある方
・早発卵巣不全(40歳未満の無月経)と診断された方
・原発性無月経(初経が来ない)の方
・重度の月経不順がある方
・多嚢胞性卵巣症候群と診断された方
・反復流産の既往がある方
・卵巣機能不全の家族歴がある方
・性腺刺激ホルモン(FSH、LH)高値を指摘された方
・エストロゲン低値を指摘された方
・体外受精で卵母細胞成熟障害や初期胚発育停止を繰り返す方
・将来子どもを持つことを考えている方で、遺伝的リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、女性不妊症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なホルモン補充療法、排卵誘発療法、生殖補助医療の選択、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・不妊症の原因となる病態の特定
・適切な治療法の選択(排卵誘発法、ホルモン補充療法など)
・生殖補助医療(体外受精、卵子提供など)の適応判断
・ホルモン欠乏による長期的健康リスク(骨粗鬆症、心血管疾患など)の評価と予防
・将来の健康管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供(配偶子提供、代理母、体外受精、顕微授精、養子縁組など)
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

AIRE, AKR1C4, ANOS1, AR, AXL, BMP15, CBX2, CCDC141, CHD7, CLPP, CYP11A1, CYP17A1, CYP19A1, CYP21A2, DAP3, DHH, DUSP6, EIF2B1, EIF2B2, EIF2B3, EIF2B4, EIF2B5, ERAL1, ERCC6, ESR1, FANCM, FEZF1, FGF17, FGF8, FGFR1, FIGLA, FLRT3, FMR1, FOXL2, FSHB, FSHR, GALT, GDF9, GGPS1, GNAS, GNRH1, GNRHR, HARS2, HESX1, HFE, HFM1, HOXA13, HS6ST1, HSD17B3, HSD17B4, IL17RD, KIAA0391, KISS1, KISS1R, LARS2, LEP, LEPR, LHB, LHCGR, LHX3, LHX4, LMNA, MAP3K1, MCM8, MCM9, MRPL49, NOBOX, NR0B1, NR3C1, NR5A1, NSMF, NUP107, PADI6, PCSK1, PEX6, POLG, POU1F1, PRLR, PROK2, PROKR2, PROP1, PSMC3IP, RMND1, RSPO1, SEMA3A, SOHLH1, SOX3, SRA1, SRD5A2, SRY, STAG3, STAR, SYCE1, SYCP3, TAC3, TACR3, TUBB8, TWNK, WDR11, WNT4, WT1, ZP1 ( 102遺伝子 )

各遺伝子の主な機能と関連病態:

・AIRE遺伝子:
自己免疫調節因子をコードし、自己免疫性多腺性内分泌不全症候群に関連します。

・BMP15遺伝子:
骨形成タンパク質15をコードする遺伝子。卵胞発育と卵母細胞の質に重要な役割を果たし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。X連鎖遺伝形式をとります。

・CHD7遺伝子:
クロモドメインヘリカーゼDNA結合タンパク質7をコードし、CHARGE症候群の原因遺伝子です。性腺機能低下症を伴うことがあります。

・CYP11A1遺伝子:
コレステロール側鎖切断酵素をコードし、ステロイドホルモン合成の初発酵素です。変異により副腎不全と性腺機能不全を引き起こします。

・CYP17A1遺伝子:
17α-ヒドロキシラーゼ/17,20-リアーゼをコードし、ステロイドホルモン合成に関与します。変異により性分化異常と副腎機能不全を引き起こします。

・CYP19A1遺伝子:
アロマターゼをコードし、アンドロゲンからエストロゲンへの変換に必須の酵素です。変異により性分化異常や卵巣機能不全を引き起こします。

・CYP21A2遺伝子:
21-ヒドロキシラーゼをコードし、先天性副腎過形成の最も一般的な原因遺伝子です。

・ERCC6遺伝子:
DNA修復に関与するタンパク質をコードし、変異によりコケイン症候群を引き起こします。早発卵巣不全に関連することがあります。

・ESR1遺伝子:
エストロゲン受容体αをコードし、エストロゲンの作用発現に重要です。

・FANCM遺伝子:
DNA修復に関与するファンコニ貧血関連遺伝子。変異により早発卵巣不全のリスクが高まります。

・FGF8遺伝子:
線維芽細胞成長因子8をコードし、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)産生細胞の発生に関与します。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・FGFR1遺伝子:
線維芽細胞成長因子受容体1をコードし、変異によりKallmann症候群(嗅覚障害を伴う低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を引き起こします。

・FIGLA遺伝子:
卵母細胞特異的転写因子をコードし、卵胞形成と卵母細胞の発育・生存に必須です。変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・FMR1遺伝子:
脆弱X精神遅滞タンパク質をコードする遺伝子。前変異保因者(CGG反復配列が55~200回)の約20%が早発卵巣不全を発症します。X連鎖遺伝形式をとります。

・FOXL2遺伝子:
フォークヘッド型転写因子をコードし、卵巣の発育と維持に重要な役割を果たします。変異により眼瞼下垂・眼瞼裂狭小・内反症(BPES)と早発卵巣不全を引き起こします。

・FSHB遺伝子:
卵胞刺激ホルモン(FSH)のβサブユニットをコードします。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・FSHR遺伝子:
卵胞刺激ホルモン受容体をコードします。変異により性腺刺激ホルモン抵抗性卵巣症候群や早発卵巣不全を引き起こします。

・GALT遺伝子:
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコードし、変異によりガラクトース血症を引き起こします。女性患者では早発卵巣不全を発症することがあります。

・GDF9遺伝子:
成長分化因子9をコードし、卵胞発育の調節に重要です。変異により早発卵巣不全や多嚢胞性卵巣症候群を引き起こすことがあります。

・GNRH1遺伝子:
性腺刺激ホルモン放出ホルモンをコードします。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・GNRHR遺伝子:
性腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体をコードします。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・HFE遺伝子:
鉄代謝に関与するタンパク質をコードし、変異により遺伝性ヘモクロマトーシスを引き起こします。鉄過剰により性腺機能障害を引き起こすことがあります。

・HFM1遺伝子:
減数分裂に関与するタンパク質をコードし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・KISS1遺伝子:
キスペプチンをコードし、思春期発来と生殖機能の調節に重要です。

・KISS1R遺伝子:
キスペプチン受容体をコードし、変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・LEP遺伝子:
レプチンをコードし、エネルギー代謝と生殖機能の調節に関与します。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と肥満を引き起こします。

・LEPR遺伝子:
レプチン受容体をコードし、変異によりLEP遺伝子変異と同様の症状を引き起こします。

・LHB遺伝子:
黄体形成ホルモン(LH)のβサブユニットをコードします。変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・LHCGR遺伝子:
黄体形成ホルモン/絨毛性ゴナドトロピン受容体をコードします。変異により性腺機能障害や早発卵巣不全を引き起こすことがあります。

・LHX3遺伝子:
下垂体発生に関与する転写因子をコードし、変異により複合型下垂体ホルモン欠損症を引き起こします。

・LHX4遺伝子:
LHX3と同様に下垂体発生に関与する転写因子です。

・MCM8遺伝子:
DNA複製と減数分裂に関与するタンパク質をコードし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・MCM9遺伝子:
MCM8と同様にDNA複製に関与し、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・NOBOX遺伝子:
卵母細胞特異的ホメオボックス遺伝子で、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・NR0B1遺伝子(DAX1):
副腎および性腺の発育に関与する核内受容体をコードします。X連鎖遺伝形式で、変異により副腎形成不全と低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・NR5A1遺伝子(SF1):
ステロイド合成因子1をコードし、副腎と性腺の発育、ステロイド合成に重要な役割を果たします。変異により性分化異常や卵巣機能不全を引き起こします。

・POLG遺伝子:
ミトコンドリアDNAポリメラーゼγをコードし、変異により早発卵巣不全を含む多様な症状を引き起こします。

・POU1F1遺伝子:
下垂体特異的転写因子をコードし、変異により複合型下垂体ホルモン欠損症を引き起こします。

・PROK2遺伝子:
プロキネチシン2をコードし、変異によりKallmann症候群を引き起こします。

・PROKR2遺伝子:
プロキネチシン受容体2をコードし、PROK2と同様にKallmann症候群に関連します。

・PROP1遺伝子:
下垂体発生に関与する転写因子をコードし、変異により複合型下垂体ホルモン欠損症を引き起こします。

・PSMC3IP遺伝子(HOP2):
減数分裂における相同染色体対合に関与し、変異により卵巣形成不全を引き起こします。

・RSPO1遺伝子:
R-スポンジン1をコードし、卵巣発育に関与します。変異により性分化異常を引き起こします。

・SOHLH1遺伝子:
生殖細胞特異的転写因子をコードし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・SOX3遺伝子:
転写因子をコードし、X連鎖遺伝形式で変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こすことがあります。

・STAG3遺伝子:
減数分裂に関与するコヒーシン複合体の構成要素をコードし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・STAR遺伝子:
ステロイド産生急性調節タンパク質をコードし、変異により先天性副腎リポイド過形成と性腺機能不全を引き起こします。

・SYCE1遺伝子:
減数分裂における染色体対合に関与し、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・SYCP3遺伝子:
減数分裂に関与するシナプトネマ複合体の構成要素をコードし、変異により早発卵巣不全を引き起こします。

・TAC3遺伝子:
ニューロキニンBをコードし、変異により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こします。

・TACR3遺伝子:
ニューロキニンB受容体をコードし、TAC3と同様に低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連します。

・TUBB8遺伝子:
卵母細胞特異的βチューブリンをコードし、変異により卵母細胞成熟障害や初期胚発育停止を引き起こします。

・WNT4遺伝子:
Wntシグナル伝達経路に関与し、女性の性分化と卵巣発育に重要です。変異により性分化異常を引き起こします。

・WT1遺伝子:
Wilms腫瘍遺伝子で、性腺と腎臓の発育に重要な役割を果たします。変異により性分化異常やDenys-Drash症候群、Frasier症候群を引き起こします。

・ZP1遺伝子:
透明帯タンパク質1をコードし、変異により卵母細胞成熟障害を引き起こすことがあります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:FMR1遺伝子のCGG反復伸長、HOXA13遺伝子やSOX3遺伝子の三塩基反復伸長)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

遺伝子特異的な注意事項:

FMR1遺伝子:現在の検査方法ではCGG反復配列の伸長(前変異および完全変異)は評価されません。早発卵巣不全のリスク評価のためにFMR1前変異の検査が必要な場合は、別途専門的な検査が必要です。

HOXA13遺伝子:現在の検査方法では三塩基反復伸長は評価されません。

SOX3遺伝子:現在の検査方法では三塩基反復伸長は評価されません。

※この検査パネルでは、102の原因遺伝子のみを対象としています。女性不妊症の多くの症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、女性不妊症を完全に否定することはできません。また、染色体の数的・構造的異常(ターナー症候群など)はこの検査では検出されないため、必要に応じて染色体検査を別途行う必要があります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の不妊症がある方、40歳未満で無月経(早発卵巣不全)と診断された方、初経が来ない(原発性無月経)方、重度の月経不順がある方におすすめします。また、多嚢胞性卵巣症候群と診断された方、反復流産の既往がある方、卵巣機能不全の家族歴がある方も検査をご検討ください。性腺刺激ホルモン(FSH、LH)高値やエストロゲン低値を指摘された方も対象となります。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
早発卵巣不全とは何ですか?
早発卵巣不全(POF)は、40歳未満の女性において卵巣機能が低下または停止する状態です。無月経、エストロゲン低下、性腺刺激ホルモン(FSH、LH)上昇を特徴とし、更年期様症状や不妊の原因となります。40歳未満の女性の約1%、30歳未満の女性の約0.1%に発症します。当検査により、早発卵巣不全の遺伝的原因を特定できる可能性があります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)も遺伝子検査で原因が分かりますか?
多嚢胞性卵巣症候群は多因子疾患であり、遺伝的要因と環境要因が複雑に関与しています。当検査パネルには、PCOSに関連する遺伝子(FSHR、LHCGRなど)が含まれており、一部の症例では遺伝的原因を特定できる可能性があります。ただし、すべてのPCOS症例で遺伝子変異が検出されるわけではありません。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんや兄弟姉妹が発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合は、男性と女性で発症リスクが異なります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
女性不妊症の多くの症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、不妊症を完全に否定することはできません。染色体異常(ターナー症候群など)や環境要因、他の未知の遺伝的要因が関与している可能性があります。臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が検出された場合は、その遺伝子の機能、関連する病態、遺伝形式、家族への影響などを詳細に説明いたします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断、着床前診断、配偶子提供など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
女性不妊症の治療はどのように行われますか?
治療は原因によって異なります。早発卵巣不全の場合は、ホルモン補充療法により骨粗鬆症や心血管疾患のリスクを軽減します。多嚢胞性卵巣症候群の場合は、排卵誘発剤による治療が行われます。卵巣予備能が低下している場合や重度の卵巣機能不全の場合は、体外受精や卵子提供などの生殖補助医療が選択肢となります。遺伝子検査により原因が特定されることで、より適切な治療方針を立てることができます。
FMR1遺伝子の前変異とは何ですか?
FMR1遺伝子は脆弱X症候群に関連する遺伝子です。通常、CGG反復配列は5~44回ですが、55~200回の反復配列を持つ場合を前変異と呼びます。前変異保因者の女性の約20%が早発卵巣不全を発症します。ただし、当検査ではCGG反復配列の伸長は検出されないため、FMR1前変異が疑われる場合は別途専門的な検査が必要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な102の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
早発卵巣不全でも妊娠できる可能性はありますか?
早発卵巣不全と診断された後でも、約5%の女性が自然妊娠する可能性があります。卵巣機能が完全に停止しているわけではなく、断続的に排卵が起こることがあるためです。ただし、自然妊娠の可能性は低いため、妊娠を希望される場合は、体外受精や卵子提供などの生殖補助医療を検討する必要があります。遺伝子検査により原因が特定されると、より適切な治療選択肢を提案できます。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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