InstagramInstagram

脂肪酸酸化異常症(FAOD)遺伝子検査NGSパネル|ミネルバクリニック

脂肪酸酸化異常症(FAOD)遺伝子検査NGSパネル|ミネルバクリニック

脂肪酸酸化異常症とは

脂肪酸酸化異常症(Fatty Acid Oxidation Disorders: FAOD)は、体内で脂肪をエネルギーに変換する代謝過程に必要な酵素が欠損または機能不全を起こすことにより発症する、先天性代謝異常症の一群です。脂肪は、長時間の空腹時や運動時、発熱時などに、糖に代わる重要なエネルギー源として利用されます。

脂肪酸酸化異常症では、この脂肪からエネルギーを産生する過程(脂肪酸のβ酸化)が障害されるため、特に空腹時や体がストレスを受けた状態で、エネルギー不足による様々な症状が現れます。症状は、影響を受ける酵素の種類や程度によって大きく異なり、心筋症や不整脈などの心臓症状、肝機能障害などの肝臓症状、筋力低下や横紋筋融解症などの筋肉症状の3つのカテゴリーに分類されます。

脂肪酸酸化異常症は、乳児期、小児期、青年期に発症することが多いですが、筋症状を主体とする型では成人期に発症することもあります。早期診断と適切な治療により、臨床的な予後を大幅に改善できることが知られています。現在、新生児マススクリーニング検査の対象疾患にも含まれており、発症前に発見された患者さんの多くは良好な経過をたどっています。

症状と病態

脂肪酸酸化異常症の症状は、影響を受ける酵素や代謝経路によって多様ですが、主に心臓、肝臓、筋肉の3つの臓器に現れます。症状は通常、絶食、発熱、感染症、激しい運動などのストレス状況下で誘発されます。

主要症状カテゴリー

1. 心臓症状(心筋型)

  • 心筋症(心臓の筋肉が肥大または拡張する)
  • 不整脈(心拍リズムの異常)
  • 心不全
  • 乳児期に突然死するリスク

2. 肝臓症状(肝型)

  • 反復性の低血糖発作(血糖値が異常に低下する)
  • 肝腫大(肝臓が腫れる)
  • 肝機能障害
  • ライ症候群様の症状(急性脳症と肝機能障害)
  • 慢性的な嘔吐や悪心

3. 筋肉症状(筋型)

  • 筋力低下(hypotonia: 筋緊張低下)
  • 反復性の横紋筋融解症(筋肉の破壊)
  • 運動不耐症(運動により筋痛や脱力が生じる)
  • ミオグロビン尿(筋肉が壊れて尿が赤褐色になる)
  • 無気力感や疲労感

その他の共通症状

上記の3つのカテゴリーに加えて、以下の症状も認められることがあります:

  • 無気力(lethargy: 異常な眠気や活動性の低下)
  • 発育遅延
  • 摂食障害
  • 呼吸障害
  • けいれん発作
  • 網膜症(一部の病型)
  • 末梢神経障害(一部の病型)

特徴的な検査所見

脂肪酸酸化異常症の診断には、以下のような特徴的な検査所見が重要な手がかりとなります:

  • 非ケトン性低血糖:血糖値が低いにもかかわらず、尿中ケトン体が陰性または低値を示します。これは脂肪酸酸化異常症の最も特徴的な所見の一つです
  • 肝酵素の上昇:AST、ALTなどの肝酵素が上昇します
  • クレアチンキナーゼ(CK)の上昇:筋肉型では特に顕著に上昇します
  • 高アンモニア血症:血中アンモニア濃度が上昇することがあります
  • 代謝性アシドーシス:血液が酸性に傾きます
  • ジカルボン酸尿症:尿中に異常な有機酸が排泄されます
  • タンデムマス分析:血液中のアシルカルニチンプロファイルが異常を示します

発症年齢と重症度

脂肪酸酸化異常症の発症年齢と重症度は、酵素欠損の程度や影響を受ける代謝経路によって大きく異なります。新生児期から乳児期に重症な症状で発症する例もあれば、小児期から成人期に軽症の筋症状のみで発症する例もあります。発症のトリガーとしては、長時間の絶食、感染症による発熱、激しい運動、妊娠などが知られています。

遺伝形式と原因遺伝子

脂肪酸酸化異常症は、主に常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとる遺伝性疾患です。これは、両親がともに変異遺伝子を1つずつ持つ保因者(キャリア)である場合に、子どもが両親から変異遺伝子を1つずつ受け継いで発症することを意味します。保因者である両親自身は通常、症状を示しません。

遺伝形式

常染色体劣性遺伝:脂肪酸酸化異常症のほとんどがこの遺伝形式をとります。両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常である確率は25%です。

脂肪酸代謝の経路と原因遺伝子の分類

脂肪酸酸化異常症は、障害される代謝経路によって以下のように分類されます:

1. カルニチンサイクル異常症

脂肪酸をミトコンドリア内に輸送するカルニチンサイクルの異常です:

  • CPT1A、CPT1B遺伝子:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)欠損症の原因
  • SLC22A5遺伝子:全身性カルニチン欠乏症(原発性カルニチン欠乏症)の原因
  • CPT2遺伝子:カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT-II)欠損症の原因
  • SLC25A20遺伝子:カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症の原因

2. ミトコンドリア脂肪酸β酸化異常症

ミトコンドリア内での脂肪酸の分解過程(β酸化)の異常です:

極長鎖・長鎖脂肪酸代謝異常:

  • ACADVL遺伝子:極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の原因。最も頻度の高い病型の一つ
  • HADHA、HADHB遺伝子:三頭酵素/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(TFP/LCHAD)欠損症の原因
  • ACADL遺伝子:長鎖アシルCoA脱水素酵素(LCAD)欠損症の原因

中鎖脂肪酸代謝異常:

  • ACADM遺伝子:中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症の原因。最も頻度の高い脂肪酸酸化異常症

短鎖脂肪酸代謝異常:

  • ACADS遺伝子:短鎖アシルCoA脱水素酵素(SCAD)欠損症の原因
  • ACADSB遺伝子:2-メチルブチリルCoA脱水素酵素欠損症の原因
  • HADH遺伝子:短鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症の原因

3. 電子伝達系フラビン関連異常症

  • ETFA、ETFB、ETFDH遺伝子:多発性アシルCoA脱水素酵素(MAD)欠損症(グルタル酸尿症II型)の原因

4. ケトン体代謝異常症

  • HMGCL遺伝子:3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ(HMG-CoAリアーゼ)欠損症の原因
  • HMGCS2遺伝子:3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA合成酵素欠損症の原因

最も頻度の高い病型

中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症:脂肪酸酸化異常症の中で最も頻度が高く、特に北欧系の人に多く見られます。ACADM遺伝子の変異により発症し、新生児マススクリーニングの主要な対象疾患となっています。適切な管理により、多くの患者さんは無症状で経過できます。

ミネルバクリニックの脂肪酸酸化異常症遺伝子パネル検査の特徴

「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」とは、現在脂肪酸酸化異常症の原因として報告されている33の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、脂肪酸酸化異常症に関連する33遺伝子を一度に調べられる「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で脂肪酸酸化異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、脂肪酸酸化異常症に関係するとされる33の遺伝子を一度に調べられる「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える脂肪酸酸化異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」の場合、33の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から脂肪酸酸化異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な33の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」では、脂肪酸酸化異常症に関係するとされる33種類の遺伝子(ACAD8、ACAD9、ACADL、ACADM、ACADS、ACADSB、ACADVL、ACBD5、CPT1A、CPT1B、CPT2、ECHS1、ETFA、ETFB、ETFDH、GLUD1、HADH、HADHA、HADHB、HMGCL、HMGCS2、HSD17B10、HSD17B4、LPIN1、MLYCD、PPARG、SLC22A5、SLC25A20、SLC25A32、SLC52A1、SLC52A2、SLC52A3、TAZ)をまとめて検査します。

「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」は、脂肪酸酸化異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【脂肪酸酸化異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「脂肪酸酸化異常症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・反復性の低血糖発作がある方(特に非ケトン性低血糖)
・乳幼児期の原因不明の意識障害やけいれん発作
・肝腫大や肝機能障害がある方
・心筋症や不整脈がある方
・反復性の横紋筋融解症(筋肉の破壊)がある方
・運動不耐症や運動後の筋痛がある方
・ミオグロビン尿(赤褐色の尿)がある方
・原因不明の筋力低下や無気力感がある方
・ライ症候群様の症状を呈した方
・乳児突然死症候群のリスクがある方
・新生児マススクリーニングで異常を指摘された方
・脂肪酸酸化異常症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

早期診断と適切な治療により、脂肪酸酸化異常症の臨床的予後を大幅に改善できることが知られています。遺伝子検査により原因が判明すると、正確な診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・疾患特異的な管理計画の立案
・低血糖予防のための食事指導(頻回食、長時間絶食の回避)
・L-カルニチン補充療法の適応判断
・中鎖脂肪酸(MCT)オイルなどの特殊栄養療法の検討
・低脂肪・高炭水化物食の導入
・急性増悪時の対応方法の確立(緊急時の糖質輸液など)
・運動制限や生活指導の個別化
・心筋症や肝障害などの合併症の早期発見と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝であるため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。両親が保因者である場合、家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACAD8, ACAD9, ACADL, ACADM, ACADS, ACADSB, ACADVL, ACBD5, CPT1A, CPT1B, CPT2, ECHS1, ETFA, ETFB, ETFDH, GLUD1, HADH, HADHA, HADHB, HMGCL, HMGCS2, HSD17B10, HSD17B4, LPIN1, MLYCD, PPARG, SLC22A5, SLC25A20, SLC25A32, SLC52A1, SLC52A2, SLC52A3, TAZ ( 33遺伝子 )

各遺伝子の詳細:

・ACAD8遺伝子:
イソブチリルCoA脱水素酵素をコードする遺伝子。バリン代謝に関与します。

・ACAD9遺伝子:
アシルCoA脱水素酵素ファミリーメンバー9をコードする遺伝子。ミトコンドリア複合体Iの組み立てにも関与します。

・ACADL遺伝子:
長鎖アシルCoA脱水素酵素(LCAD)をコードする遺伝子。長鎖脂肪酸のβ酸化に関与します。

・ACADM遺伝子:
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)をコードする遺伝子。最も頻度の高い脂肪酸酸化異常症であるMCAD欠損症の原因となります。新生児マススクリーニングの主要な対象疾患です。

・ACADS遺伝子:
短鎖アシルCoA脱水素酵素(SCAD)をコードする遺伝子。短鎖脂肪酸のβ酸化に関与します。

・ACADSB遺伝子:
2-メチルブチリルCoA脱水素酵素をコードする遺伝子。分岐鎖アミノ酸代謝に関与します。

・ACADVL遺伝子:
極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)をコードする遺伝子。VLCAD欠損症の原因となり、心筋症、肝障害、横紋筋融解症などを引き起こします。

・ACBD5遺伝子:
アシルCoA結合ドメイン含有タンパク質5をコードする遺伝子。ペルオキシソーム機能に関与します。

・CPT1A遺伝子:
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)をコードする遺伝子。肝型を発現します。脂肪酸をミトコンドリアに輸送する最初のステップを担います。

・CPT1B遺伝子:
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)の筋型アイソフォームをコードする遺伝子。主に筋肉や心臓で発現します。

・CPT2遺伝子:
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT-II)をコードする遺伝子。CPT-II欠損症の原因となり、新生児型、乳児型、成人筋型の3つの病型があります。

・ECHS1遺伝子:
短鎖エノイルCoAヒドラターゼをコードする遺伝子。脂肪酸β酸化の第2ステップを担います。

・ETFA遺伝子:
電子伝達フラボタンパク質αサブユニットをコードする遺伝子。多発性アシルCoA脱水素酵素(MAD)欠損症(グルタル酸尿症II型)の原因となります。

・ETFB遺伝子:
電子伝達フラボタンパク質βサブユニットをコードする遺伝子。ETFA遺伝子と同様、MAD欠損症の原因となります。

・ETFDH遺伝子:
電子伝達フラボタンパク質脱水素酵素をコードする遺伝子。MAD欠損症の原因となります。

・GLUD1遺伝子:
グルタミン酸脱水素酵素をコードする遺伝子。高インスリン性低血糖症/高アンモニア血症症候群の原因となります。

・HADH遺伝子:
短鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素をコードする遺伝子。高インスリン性低血糖症を引き起こすことがあります。

・HADHA遺伝子:
三頭酵素のαサブユニットをコードする遺伝子。長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症の原因となります。

・HADHB遺伝子:
三頭酵素のβサブユニットをコードする遺伝子。三頭酵素欠損症(TFP欠損症)の原因となります。

・HMGCL遺伝子:
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAリアーゼ(HMG-CoAリアーゼ)をコードする遺伝子。ケトン体合成の最終段階を担い、欠損するとケトン体が産生できません。

・HMGCS2遺伝子:
ミトコンドリア3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA合成酵素をコードする遺伝子。ケトン体合成の初期段階を担います。

・HSD17B10遺伝子:
17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素10型をコードする遺伝子。短鎖脂肪酸代謝に関与します。

・HSD17B4遺伝子:
ペルオキシソーム多機能酵素2型をコードする遺伝子。ペルオキシソームでの脂肪酸酸化に関与します。

・LPIN1遺伝子:
リピン1をコードする遺伝子。反復性横紋筋融解症の原因となります。

・MLYCD遺伝子:
マロニルCoA脱炭酸酵素をコードする遺伝子。脂肪酸合成と酸化の調節に関与します。

・PPARG遺伝子:
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γをコードする遺伝子。脂質代謝の調節に関与します。

・SLC22A5遺伝子:
有機カチオントランスポーター2(OCTN2)をコードする遺伝子。全身性カルニチン欠乏症(原発性カルニチン欠乏症)の原因となります。L-カルニチンの大量投与により症状が改善します。

・SLC25A20遺伝子:
カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼをコードする遺伝子。ミトコンドリア内膜でのアシルカルニチンの輸送を担います。

・SLC25A32遺伝子:
ミトコンドリアフォレート輸送体をコードする遺伝子。葉酸代謝に関与します。

・SLC52A1遺伝子:
リボフラビン輸送体1をコードする遺伝子。リボフラビン(ビタミンB2)欠乏症の原因となります。

・SLC52A2遺伝子:
リボフラビン輸送体2をコードする遺伝子。リボフラビン欠乏症の原因となります。

・SLC52A3遺伝子:
リボフラビン輸送体3をコードする遺伝子。リボフラビン欠乏症の原因となります。

・TAZ遺伝子:
タファジンをコードする遺伝子。X連鎖性のバース症候群の原因となり、心筋症や好中球減少症を引き起こします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※脂肪酸酸化異常症は遺伝学的に非常に多様性が高く、臨床診断がついている患者さんでも遺伝学的診断が確定しない症例が一定数存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状や生化学的検査所見と総合的に判断することが重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
反復性の低血糖発作(特に非ケトン性低血糖)、原因不明の肝機能障害や心筋症、運動後の筋痛や横紋筋融解症などの症状がある方におすすめします。特に、絶食時や発熱時、運動後に症状が悪化する場合は、脂肪酸酸化異常症の可能性が高くなります。また、新生児マススクリーニングで異常を指摘された方や、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
非ケトン性低血糖とは何ですか?
血糖値が低いにもかかわらず、尿中ケトン体が陰性または低値を示す状態です。これは脂肪酸酸化異常症の最も特徴的な所見の一つで、脂肪からケトン体を作る経路が障害されているために起こります。通常の低血糖では尿中ケトン体が陽性となるため、非ケトン性低血糖は重要な診断の手がかりとなります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
脂肪酸酸化異常症の多くは常染色体劣性遺伝形式をとります。患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。両親はともに保因者であることが多いため、ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
脂肪酸酸化異常症は遺伝学的に非常に多様性が高く、臨床診断がついている患者さんでも遺伝学的診断が確定しない症例が一定数存在します。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状や生化学的検査所見(タンデムマス分析、尿中有機酸分析など)と総合的に判断することが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝形式の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
脂肪酸酸化異常症の治療はどのように行われますか?
治療の基本は、低血糖を予防するための食事療法です。長時間の絶食を避け、頻回食を心がけます。L-カルニチンの補充療法、低脂肪・高炭水化物食、中鎖脂肪酸(MCT)オイルの使用などが行われます。急性期には緊急で糖質を含む点滴を行います。病型によって治療法が異なるため、遺伝子診断により最適な治療を選択できます。
予後はどうですか?
早期診断と適切な管理により、多くの患者さんは良好な予後が期待できます。特に新生児マススクリーニングで発見され、発症前から管理を開始した患者さんは、無症状で経過することも少なくありません。ただし、長時間の絶食や感染症などのストレス時には急性増悪のリスクがあるため、生涯にわたる注意深い管理が必要です。
日常生活で気をつけることはありますか?
長時間の絶食を避けることが最も重要です。朝・昼・晩の食事に加えて、午前・午後・就寝前の間食を摂取し、8~10時間以上の絶食を避けるようにします。感染症や発熱時は早めに医療機関を受診してください。運動時はこまめにエネルギー補給を行い、マラソンなど長時間の激しい運動は避けることが推奨されます。
新生児マススクリーニングとの関係は?
現在、日本の新生児マススクリーニング検査では、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症など、複数の脂肪酸酸化異常症が対象となっています。マススクリーニングで異常を指摘された場合、遺伝子検査により確定診断を行い、適切な管理を開始することができます。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら