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ファンコニ貧血遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

ファンコニ貧血遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

ファンコニ貧血とは

ファンコニ貧血(Fanconi Anemia:FA)は、DNA損傷修復の障害を背景に持つ先天性の遺伝性疾患です。進行性の汎血球減少、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病への移行、先天的な形態異常、易発がん性を特徴とします。

本疾患は1927年にスイスの小児科医Guido Fanconi博士によって初めて報告され、現在では日本において指定難病285として位置づけられています。発症頻度は世界的には16万人に1人とされており、日本での年間発生数は5~10人程度と推定されています。

ファンコニ貧血の細胞は、DNA架橋剤(マイトマイシンCなど)に対して高い感受性を示し、染色体不安定性が特徴的です。これは細胞の染色体がストレスに対して切れやすくなる「染色体脆弱性」と呼ばれる特徴であり、診断の重要な手がかりとなります。現在までに22の原因遺伝子が同定されており、日本では約90%の患者さんでいずれかの原因遺伝子の変異が見つかっています。

症状と病態

ファンコニ貧血の症状は多様で、血液学的異常と身体的異常の両方が認められます。多くの患者さんでは幼少期から若年成人期にかけて徐々に症状が現れ、個人差が大きいことが特徴です。

血液学的異常

ファンコニ貧血の最も重篤な症状は血液学的異常です。生下時は血算が正常値ですが、平均7歳頃から異常が現れ始め、40歳までに98%の患者さんが何らかの血液学的異常を発症します。

  • 進行性の汎血球減少(赤血球・白血球・血小板のすべてが減少)
  • 大球性貧血(異様に大きな赤血球)が最初の異常所見として現れることが多い
  • 血小板減少症(出血しやすい)
  • 好中球減少症(感染症にかかりやすい)
  • 10歳代のうちに50%以上の患者さんで重篤な汎血球減少
  • 骨髄異形成症候群(MDS)への移行
  • 急性骨髄性白血病(AML)の発症(50歳までに13%)

身体的異常

ファンコニ貧血患者さんの約75%に、以下のような先天的な形態異常が認められます。これらの異常は個人によって大きく異なり、すべての症状が現れるわけではありません。

  • 皮膚の異常:カフェ・オ・レ斑(周囲より暗い色の斑点)、色素減少(周囲より明るい部分)
  • 骨格の異常:低身長、親指や前腕の異常、骨格の形態異常
  • 頭部の異常:小頭症、水頭症
  • 眼科的異常:眼の形態異常、視覚障害
  • 耳の異常:耳の形態異常、難聴
  • 泌尿器系の異常:腎臓や尿路の形態異常、欠損
  • 消化器系の異常:胃腸の形態異常
  • 心臓の異常:心臓の形態異常
  • 生殖器の異常:性腺機能不全、不妊

悪性腫瘍のリスク

ファンコニ貧血患者さんは、一般集団と比較して悪性腫瘍を発症するリスクが著しく高くなります。特に思春期以降、成人期にかけてリスクが増加します。

  • 血液系腫瘍:骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病
  • 固形がん:頭頸部がん(舌がん、咽頭がん)、食道がん、皮膚がん、泌尿器系のがん
  • 小児がん:一部の遺伝子異常では幼小児期に小児がんや白血病を発症することがある

進行と予後

疾患の進行は個人によって大きく異なります。小児期に進行性の汎血球減少症を発症し、思春期から成人期にかけて骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病への移行が見られることが多いです。造血細胞移植は唯一治癒を期待できる治療ですが、移植後も固形がんの発症リスクは継続するため、長期的なフォローアップが必要です。

遺伝形式と原因遺伝子

ファンコニ貧血は遺伝学的に多様性が高く、現在までに22の原因遺伝子が同定されています。これらの遺伝子はすべてDNA修復経路、特にDNA鎖間架橋(interstrand crosslink:ICL)の修復に関与するファンコニ経路(FA経路)に関連しています。

主な遺伝形式

ファンコニ貧血の大部分は常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。この遺伝形式では、父母から受け継いだ両方の遺伝子に変異があることで発症します。両親はこの病気の保因者ではありますが、病気は発症しません。

  • 常染色体劣性遺伝:22の原因遺伝子のうち20遺伝子がこの形式をとります
  • X連鎖遺伝:FANCB遺伝子はX染色体上に存在し、X連鎖遺伝形式をとります
  • 常染色体優性遺伝:FANCR遺伝子の一部の変異(デノボドミナントネガティブ変異)

主要な原因遺伝子

ファンコニ貧血の原因遺伝子は、その機能によってFAコア複合体、ID複合体、下流修復因子の3つのグループに分類されます。

FAコア複合体を構成する遺伝子

  • FANCA遺伝子:欧米では最も頻度が高く(60-70%)、FAコア複合体の重要な構成要素
  • FANCB遺伝子:X連鎖遺伝形式をとる唯一の原因遺伝子
  • FANCC遺伝子:欧米では頻度が高いが、日本ではほとんど見られない
  • FANCE遺伝子:FAコア複合体の構成要素
  • FANCF遺伝子:FAコア複合体の構成要素
  • FANCG遺伝子:日本人では一定数見られる重要な原因遺伝子
  • FANCL遺伝子:E3ユビキチンリガーゼ活性を持つ
  • FANCM遺伝子:FAコア複合体の構成要素

ID複合体を構成する遺伝子

  • FANCD2遺伝子:FANCI遺伝子産物とともにID複合体を形成
  • FANCI遺伝子:FANCD2遺伝子産物とともにID複合体を形成

下流のDNA修復に関与する遺伝子

  • BRCA1、BRCA2遺伝子:乳がん・卵巣がんの原因遺伝子としても知られる
  • BRIP1遺伝子:BRCAと相互作用するタンパク質をコードする
  • PALB2遺伝子:BRCA2のパートナータンパク質をコードする
  • RAD51、RAD51C遺伝子:相同組換え修復に関与
  • SLX4遺伝子:DNA修復の複数の経路で機能する
  • ERCC4遺伝子:DNA修復酵素をコードする
  • RFWD3遺伝子:E3リガーゼとして相同組換えを制御

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な25遺伝子を対象としています。これにより、ファンコニ貧血の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

遺伝カウンセリングの重要性

常染色体劣性遺伝形式の場合、保因者同士のカップルから生まれる子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。家族計画において遺伝カウンセリングが重要な役割を果たします。

ミネルバクリニックのファンコニ貧血遺伝子パネル検査の特徴

「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」とは、現在ファンコニ貧血の原因として報告されている25の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ファンコニ貧血に関連する25遺伝子を一度に調べられる「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でファンコニ貧血の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、ファンコニ貧血に関係するとされる25の遺伝子を一度に調べられる「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるファンコニ貧血の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」の場合、25の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からファンコニ貧血を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」ならば、臨床的に重要な25の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」では、ファンコニ貧血に関係するとされる25種類の遺伝子(ATR、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CXCR4、ERCC4、ERCC6L2、FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FANCM、MAD2L2、PALB2、RAD51、RAD51C、RFWD3、SLX4、UBE2T、XRCC2)をまとめて検査します。

「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」は、ファンコニ貧血の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【ファンコニ貧血の個人歴または家族歴のある方】に
「ファンコニ貧血遺伝子パネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・進行性の汎血球減少がある方
・骨髄不全の診断を受けた方
・骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病の診断を受けた方
・低身長がある方
・皮膚の色素異常(カフェ・オ・レ斑、色素減少)がある方
・親指や前腕の骨格異常がある方
・小頭症や水頭症がある方
・眼、耳、腎臓、泌尿器系、消化器系、心臓などに先天的な形態異常がある方
・性腺機能不全や不妊の問題がある方
・ファンコニ貧血の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・染色体断裂試験で陽性を示した方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、ファンコニ貧血の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なモニタリング、支持療法、造血細胞移植の検討などを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の骨髄不全症候群との鑑別
・適切な治療法の選択(支持療法、造血細胞移植)
・血球減少症に対する適切な管理
・骨髄異形成症候群や白血病への移行の早期発見
・固形がんの発症リスク評価と定期的なスクリーニング
・DNA架橋剤など特定の化学療法剤への過敏性の認識
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ATR, BRCA1, BRCA2, BRIP1, CXCR4, ERCC4, ERCC6L2, FANCA, FANCB, FANCC, FANCD2, FANCE, FANCF, FANCG, FANCI, FANCL, FANCM, MAD2L2, PALB2, RAD51, RAD51C, RFWD3, SLX4, UBE2T, XRCC2 ( 25遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ATR遺伝子:
ATR(Ataxia Telangiectasia and Rad3-related)キナーゼをコードする遺伝子。DNA損傷応答シグナル伝達に重要な役割を果たします。

・BRCA1遺伝子:
乳がん・卵巣がんの原因遺伝子としても知られ、DNA修復、特に相同組換え修復に重要な役割を果たします。ファンコニ貧血の下流修復因子として機能します。

・BRCA2遺伝子:
BRCA1と同様に乳がん・卵巣がんの原因遺伝子としても知られ、RAD51との相互作用を通じて相同組換え修復に関与します。

・BRIP1遺伝子:
BRCA1と相互作用するタンパク質(BRCA1-Interacting Protein 1)をコードし、DNA修復に関与します。

・CXCR4遺伝子:
ケモカイン受容体をコードする遺伝子。FANCBの機能不全症例でWHIM症候群様の表現型を示すことがあります。

・ERCC4遺伝子:
XPF(Xeroderma Pigmentosum group F)タンパク質をコードし、DNA修復酵素として機能します。SLX4と複合体を形成してDNA鎖間架橋の切断に関与します。

・ERCC6L2遺伝子:
ERCC6様タンパク質2をコードし、DNA修復プロセスに関与します。

・FANCA遺伝子:
FAコア複合体の重要な構成要素をコードする遺伝子。欧米では最も頻度が高く(60-70%)、日本でも高頻度に変異が見られます。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCB遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。X染色体上に存在し、X連鎖遺伝形式をとる唯一のファンコニ貧血原因遺伝子です。

・FANCC遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。欧米では頻度が高いですが、日本ではほとんど見られません。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCD2遺伝子:
FANCIと共にID複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子。FAコア複合体によってユビキチン化され、DNA修復部位に局在します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCE遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCF遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCG遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。日本人では一定数見られる重要な原因遺伝子です。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCI遺伝子:
FANCD2と共にID複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCL遺伝子:
FAコア複合体のE3ユビキチンリガーゼ活性を持つタンパク質をコードする遺伝子。FANCD2とFANCIのユビキチン化を担います。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・FANCM遺伝子:
FAコア複合体の構成要素をコードする遺伝子。DNAトランスロカーゼ活性を持ちます。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・MAD2L2遺伝子:
MAD2L2(REV7)タンパク質をコードする遺伝子。DNA損傷バイパス経路に関与します。

・PALB2遺伝子:
BRCA2のパートナータンパク質(Partner and Localizer of BRCA2)をコードする遺伝子。BRCA2を核内に局在させ、相同組換え修復を促進します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・RAD51遺伝子:
相同組換え修復の中心的なタンパク質をコードする遺伝子。DNA二本鎖切断の修復に必須です。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・RAD51C遺伝子:
RAD51パラログの一つをコードする遺伝子。相同組換え修復に関与します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・RFWD3遺伝子:
E3ユビキチンリガーゼをコードする遺伝子。相同組換えの制御タンパク質であるRPAおよびRAD51のユビキチン化を介した除去に関与します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・SLX4遺伝子:
複数のDNA修復経路で機能する足場タンパク質をコードする遺伝子。DNA鎖間架橋の切断に関与します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・UBE2T遺伝子:
E2ユビキチン結合酵素をコードする遺伝子。FANCLと共にFANCD2とFANCIのユビキチン化に関与します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

・XRCC2遺伝子:
RAD51パラログの一つをコードする遺伝子。相同組換え修復に関与します。常染色体劣性遺伝形式をとります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、25の原因遺伝子のみを対象としています。約10%のファンコニ貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。染色体断裂試験などの機能的検査と併せて評価することが重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
進行性の汎血球減少(白血球・赤血球・血小板の減少)がある方、骨髄不全の診断を受けた方、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病の診断を受けた方におすすめします。また、低身長、皮膚の色素異常(カフェ・オ・レ斑)、親指や前腕の骨格異常、小頭症などの身体的特徴がある場合も検査をご検討ください。家族にファンコニ貧血の方がいる場合も重要です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
染色体断裂試験との違いは何ですか?
染色体断裂試験(マイトマイシンC試験)は、ファンコニ貧血の機能的診断に用いられるスクリーニング検査です。この試験で陽性の場合、遺伝子パネル検査によって具体的な原因遺伝子を特定することで、より正確な診断、予後予測、家族計画に役立つ情報が得られます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
ファンコニ貧血の大部分は常染色体劣性遺伝形式をとります。患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に妊娠を考えている方には保因者診断が推奨されます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約10%のファンコニ貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と染色体断裂試験に基づいた診断が重要です。新しい原因遺伝子の発見も続いており、将来的に再検査が有用な場合もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ファンコニ貧血は指定難病285であり、診断が確定した場合は医療費助成制度の対象となる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ファンコニ貧血の治療はどのように行われますか?
血球減少に対しては輸血や造血因子の投与などの支持療法が行われます。造血不全や造血器腫瘍に対しては、造血細胞移植が唯一治癒を期待できる治療です。固形がんを発症した場合は、手術による摘出が治療の基本となります。定期的なモニタリングにより、早期発見・早期治療が重要です。
予後はどうですか?
疾患の進行は個人によって大きく異なります。造血細胞移植により血液学的な問題は改善しますが、移植後も固形がんの発症リスクは継続するため、長期的なフォローアップが必要です。早期診断と適切な管理により、生命予後の改善が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な25の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
がんのリスクについて教えてください
ファンコニ貧血患者さんは、一般集団と比較して悪性腫瘍のリスクが著しく高くなります。50歳までに急性骨髄性白血病の罹患率は13%、成人期には頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、泌尿器系のがんなどの固形がんのリスクが増加します。定期的な検査とスクリーニングにより、早期発見が可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら