表皮水疱症NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック
表皮水疱症とは
表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa: EB)は、皮膚や粘膜の脆弱性を特徴とする遺伝性疾患群です。軽微な外傷や摩擦により、皮膚や粘膜に水疱(みずぶくれ)や皮膚剥離が生じることが主な症状です。
表皮水疱症は、皮膚の構造と強度を保つために重要な役割を果たすコラーゲンなどのタンパク質をコードする遺伝子の病的変異によって引き起こされます。これらのタンパク質は、表皮と真皮を結合させる構造に不可欠であり、変異により皮膚の構造的安定性が損なわれます。
表皮水疱症の有病率は約30,000人に1人と推定されており、稀な疾患です。症状の程度は軽度から致命的なものまで幅広く、病型によって大きく異なります。症状は通常、出生時または乳幼児期に認められますが、軽度の場合は成人になってから診断されることもあります。早期の正確な診断により、適切な管理と治療介入が可能になります。
症状と病態
表皮水疱症の主要な症状は、軽微な外傷や摩擦によって生じる皮膚や粘膜の水疱形成と皮膚剥離です。症状の重症度は病型によって大きく異なり、軽度の水疱形成のみから、広範な皮膚損傷、瘢痕形成、さらには生命を脅かす合併症まで様々です。
主要症状
- 軽微な外傷や摩擦による水疱形成
- 皮膚の剥離・びらん
- 瘢痕形成(病型により異なる)
- 爪の肥厚または脱落
- 手足の皮膚肥厚(特に手掌・足底)
- 口腔粘膜の水疱・びらん
- 歯のエナメル質形成不全・う蝕
- 粟粒疹(治癒した部位にできる白い小丘疹)
- 毛髪の異常・脱毛
重症型の合併症
重症型では以下のような深刻な合併症を伴うことがあります:
- 感染症:広範な皮膚損傷により細菌感染のリスクが高まります
- 脱水・電解質異常:広範な水疱形成により体液が失われます
- 栄養障害:口腔・食道の病変により摂食が困難になります
- 貧血:慢性炎症や栄養障害により貧血が生じます
- 食道狭窄:食道の瘢痕化により狭窄が生じることがあります
- 手指の癒合:反復する水疱と瘢痕形成により手指が癒合することがあります
- 関節拘縮:瘢痕形成により関節の可動域が制限されます
- 扁平上皮癌:慢性的な皮膚損傷部位に皮膚癌が発生するリスクが高まります
- 呼吸器合併症:気道粘膜の病変により呼吸困難が生じることがあります
表皮水疱症の主要4病型
表皮水疱症は、水疱形成の解剖学的レベルに基づいて4つの主要な病型に分類されます:
1. 単純型表皮水疱症(EBS)
表皮内で水疱が形成されるタイプです。最も頻度が高く、多くの場合、常染色体優性遺伝形式をとります。症状は軽度から中等度で、主に手足に水疱が生じます。瘢痕形成は通常ありません。
2. 接合部型表皮水疱症(JEB)
表皮と真皮の接合部(基底膜領域)で水疱が形成されるタイプです。常染色体劣性遺伝形式をとり、重症型では乳児期に生命を脅かす症状を呈することがあります。粘膜病変、爪の異常、歯のエナメル質形成不全を伴います。
3. 栄養障害型表皮水疱症(DEB)
真皮層で水疱が形成されるタイプです。常染色体優性または劣性遺伝形式をとります。劣性型(RDEB)は重症で、広範な水疱形成、瘢痕形成、手指の癒合、食道狭窄、扁平上皮癌のリスク上昇などを伴います。
4. キンドラー症候群
複数の層で水疱が形成される稀な病型です。常染色体劣性遺伝形式をとり、光線過敏症、皮膚の色素沈着異常、皮膚萎縮を特徴とします。
進行と予後
表皮水疱症の予後は病型によって大きく異なります。単純型の多くは比較的予後良好で、成人になると症状が軽減することもあります。一方、重症型の接合部型や劣性栄養障害型では、乳幼児期の死亡率が高く、生存した場合も重篤な合併症を伴います。長期的には、慢性的な皮膚損傷部位に扁平上皮癌が発生するリスクが著しく高くなることが重要な問題です。
遺伝形式と原因遺伝子
表皮水疱症は遺伝学的に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝または常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとります。現在までに20以上の原因遺伝子が同定されており、これらの遺伝子は皮膚の構造タンパク質をコードしています。
主要な原因遺伝子と病型
単純型表皮水疱症(EBS)の原因遺伝子
主に常染色体優性遺伝形式をとります:
- KRT5遺伝子、KRT14遺伝子:ケラチン5および14をコードし、表皮の基底細胞の細胞骨格を構成します。最も頻度の高い原因遺伝子です
- PLEC遺伝子:プレクチンをコードし、細胞骨格の結合に関与します。劣性遺伝形式もあり、筋ジストロフィーを合併することがあります
- DSP遺伝子:デスモプラキンをコードし、細胞接着に関与します
接合部型表皮水疱症(JEB)の原因遺伝子
常染色体劣性遺伝形式をとります:
- LAMA3遺伝子、LAMB3遺伝子、LAMC2遺伝子:ラミニン332(旧ラミニン5)の3つのサブユニット(α3、β3、γ2)をコードします。基底膜の主要な構成成分です
- COL17A1遺伝子:XVII型コラーゲンをコードし、ヘミデスモソームの構成成分です
- ITGA3遺伝子、ITGB4遺伝子:インテグリンα3β4をコードし、ヘミデスモソームの一部です
- CD151遺伝子:テトラスパニンタンパク質をコードし、インテグリンと相互作用します
栄養障害型表皮水疱症(DEB)の原因遺伝子
常染色体優性または劣性遺伝形式をとります:
- COL7A1遺伝子:VII型コラーゲンをコードし、係留線維(アンカリングフィブリル)の主要な構成成分です。優性型と劣性型の両方の原因となります
- MMP1遺伝子:マトリックスメタロプロテアーゼ1をコードし、コラーゲンの分解に関与します
キンドラー症候群の原因遺伝子
常染色体劣性遺伝形式をとります:
- FERMT1遺伝子(旧KIND1遺伝子):キンドリン-1をコードし、インテグリンのシグナル伝達に関与します(※本パネルには含まれていません)
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な13遺伝子を対象としています。これにより、単純型、接合部型、栄養障害型表皮水疱症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの表皮水疱症遺伝子パネル検査の特徴
「表皮水疱症 NGSパネル検査」とは、現在表皮水疱症の原因として報告されている13の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、表皮水疱症に関連する13遺伝子を一度に調べられる「表皮水疱症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で表皮水疱症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、表皮水疱症に関係するとされる13の遺伝子を一度に調べられる「表皮水疱症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える表皮水疱症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「表皮水疱症 NGSパネル検査」の場合、13の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から表皮水疱症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「表皮水疱症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な13の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「表皮水疱症 NGSパネル検査」では、表皮水疱症に関係するとされる13種類の遺伝子(CD151、COL17A1、COL7A1、DSP、ITGA3、ITGB4、KRT14、KRT5、LAMA3、LAMB3、LAMC2、MMP1、PLEC)をまとめて検査します。
「表皮水疱症 NGSパネル検査」は、表皮水疱症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【表皮水疱症の個人歴または家族歴のある方】に
「表皮水疱症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・軽微な外傷や摩擦で水疱ができやすい方
・出生時から皮膚が脆弱な方
・原因不明の水疱が繰り返し出現する方
・爪の異常(肥厚・脱落)がある方
・手足の皮膚が厚くなっている方
・口腔粘膜に水疱やびらんがある方
・歯のエナメル質形成不全がある方
・粟粒疹(治癒部位の白い小丘疹)がある方
・表皮水疱症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、表皮水疱症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な創傷管理、感染予防、栄養管理、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病型の特定による予後予測
・適切な創傷管理とスキンケア方法の指導
・感染症予防策の立案
・栄養管理の最適化
・食道狭窄などの合併症の早期発見と管理
・扁平上皮癌のサーベイランス計画の立案
・外傷を最小限にする生活様式の調整
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は両親が保因者であれば子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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CD151, COL17A1, COL7A1, DSP, ITGA3, ITGB4, KRT14, KRT5, LAMA3, LAMB3, LAMC2, MMP1, PLEC ( 13遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・CD151遺伝子:
テトラスパニンタンパク質CD151をコードする遺伝子。インテグリンα3β4と相互作用し、ヘミデスモソームの機能に関与します。接合部型表皮水疱症の原因となります。
・COL17A1遺伝子:
XVII型コラーゲン(BP180、BPAG2)をコードする遺伝子。ヘミデスモソームの膜貫通構成成分であり、表皮と真皮の接着に重要な役割を果たします。接合部型表皮水疱症の原因となります。
・COL7A1遺伝子:
VII型コラーゲンをコードする遺伝子。係留線維(アンカリングフィブリル)の主要な構成成分であり、表皮と真皮を強固に結合させます。常染色体優性遺伝形式の場合は優性栄養障害型表皮水疱症(DDEB)、常染色体劣性遺伝形式の場合は劣性栄養障害型表皮水疱症(RDEB)の原因となります。RDEBは最も重症な表皮水疱症の一つです。
・DSP遺伝子:
デスモプラキンをコードする遺伝子。デスモソームの主要な構成タンパク質であり、細胞間接着に関与します。単純型表皮水疱症の原因となり、心筋症を合併することがあります。
・ITGA3遺伝子:
インテグリンα3サブユニットをコードする遺伝子。インテグリンα3β4を形成し、ヘミデスモソームの構成成分としてラミニン332と結合します。接合部型表皮水疱症の原因となります。
・ITGB4遺伝子:
インテグリンβ4サブユニットをコードする遺伝子。インテグリンα3β4を形成し、ヘミデスモソームの構成成分です。接合部型表皮水疱症の原因となります。
・KRT14遺伝子:
ケラチン14をコードする遺伝子。表皮基底細胞の細胞骨格を構成する中間径フィラメントの一つです。KRT5とヘテロダイマーを形成します。単純型表皮水疱症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つで、常染色体優性遺伝形式をとります。
・KRT5遺伝子:
ケラチン5をコードする遺伝子。表皮基底細胞の細胞骨格を構成する中間径フィラメントの一つです。KRT14とヘテロダイマーを形成します。単純型表皮水疱症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つで、常染色体優性遺伝形式をとります。
・LAMA3遺伝子:
ラミニン332(旧ラミニン5)のα3鎖をコードする遺伝子。ラミニン332は基底膜の主要な構成成分であり、ヘミデスモソームを介して表皮と真皮を接着させます。接合部型表皮水疱症の原因となります。
・LAMB3遺伝子:
ラミニン332(旧ラミニン5)のβ3鎖をコードする遺伝子。接合部型表皮水疱症の原因となり、重症型では致死的Herlitz型JEBとなります。
・LAMC2遺伝子:
ラミニン332(旧ラミニン5)のγ2鎖をコードする遺伝子。接合部型表皮水疱症の原因となり、重症型では致死的Herlitz型JEBとなります。
・MMP1遺伝子:
マトリックスメタロプロテアーゼ1(コラゲナーゼ1)をコードする遺伝子。コラーゲンの分解に関与し、VII型コラーゲンの代謝に影響を与えます。栄養障害型表皮水疱症の修飾因子として作用することがあります。
・PLEC遺伝子:
プレクチンをコードする遺伝子。中間径フィラメント、微小管、アクチンフィラメントを架橋する細胞骨格結合タンパク質です。単純型表皮水疱症の原因となり、常染色体劣性遺伝形式の場合は筋ジストロフィーを合併することがあります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、13の原因遺伝子のみを対象としています。キンドラー症候群の原因遺伝子であるFERMT1遺伝子など、一部の原因遺伝子は含まれていません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と皮膚生検による診断が引き続き重要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 軽微な外傷や摩擦で水疱ができやすい方、出生時から皮膚が脆弱な方、原因不明の水疱が繰り返し出現する方におすすめします。また、爪の異常、口腔粘膜の水疱、歯のエナメル質形成不全などがある場合や、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 表皮水疱症にはどのような種類がありますか?
- 表皮水疱症は水疱形成の解剖学的レベルに基づいて主に4つの病型に分類されます。単純型表皮水疱症(EBS)は表皮内で水疱が形成され比較的軽症、接合部型表皮水疱症(JEB)は表皮と真皮の接合部で水疱が形成され重症型もあります。栄養障害型表皮水疱症(DEB)は真皮層で水疱が形成され瘢痕を残し、キンドラー症候群は複数の層で水疱が形成される稀な病型です。当検査により原因遺伝子を特定することで、病型の確定と予後予測が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親が保因者であれば子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは13の主要な原因遺伝子を対象としていますが、すべての表皮水疱症原因遺伝子を網羅しているわけではありません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と皮膚生検による診断が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、病型の特定、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 表皮水疱症の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法は限られていますが、適切な創傷管理、感染予防、栄養管理、疼痛管理などが行われます。水疱の適切な処置、非粘着性ドレッシング材の使用、感染症の早期治療、栄養サポートなどが重要です。重症型では、食道狭窄に対する内視鏡的拡張術、手指癒合に対する外科的治療、扁平上皮癌のサーベイランスなども必要になります。
- 予後はどうですか?
- 予後は病型によって大きく異なります。単純型の多くは比較的予後良好で、成人になると症状が軽減することもあります。一方、重症型の接合部型や劣性栄養障害型では、乳幼児期の死亡率が高く、生存した場合も重篤な合併症を伴います。長期的には、慢性的な皮膚損傷部位に扁平上皮癌が発生するリスクが著しく高くなることが重要な問題です。適切な管理により、多くの患者さんはQOLを維持できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な13の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
- 皮膚生検は必要ですか?
- 遺伝子検査は表皮水疱症の診断を確定し病型を特定するために有用ですが、皮膚生検による免疫組織化学検査や電子顕微鏡検査も診断に重要な情報を提供します。両方の検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら