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早発性家族性アルツハイマー病NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

早発性家族性アルツハイマー病NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

早発性家族性アルツハイマー病とは

早発性家族性アルツハイマー病(Early-Onset Familial Alzheimer Disease: EOFAD)は、通常65歳未満で発症し、家族内に複数の患者がみられる遺伝性のアルツハイマー病です。進行性の認知機能障害を特徴とし、記憶障害、判断力の低下、運動機能障害、性格・行動変化、混乱などの症状が現れます。

本疾患は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、APP遺伝子、PSEN1遺伝子、PSEN2遺伝子のいずれかの病的変異によって引き起こされます。全アルツハイマー病症例の3%以下と稀な疾患ですが、若年で発症するため本人や家族への影響が大きく、遺伝カウンセリングを含めた適切な対応が重要となります。

早発性家族性アルツハイマー病(EOFAD)は、一般的な高齢者のアルツハイマー病(遅発性アルツハイマー病)とは異なり、明確な遺伝的原因があります。EOFADでは30~60歳代で発症することが多く、進行が比較的早いという特徴があります。家系内で病的変異が同定されている家系では、平均発症年齢が65歳以下であることが診断の重要なポイントとなります。

症状と病態

早発性家族性アルツハイマー病の主な症状は、成人期に始まる緩徐進行性の認知機能障害です。認知症の臨床症状は遅発性アルツハイマー病と類似していますが、発症年齢が若く、進行がやや速い傾向があります。

主要症状

  • 記憶障害(特に最近の出来事を忘れる)
  • 判断力の低下
  • 見当識障害(時間、場所、人の認識困難)
  • 言語障害(言葉が出てこない、会話が困難)
  • 実行機能障害(計画を立てる、段取りができない)
  • 性格・行動の変化(怒りっぽい、無関心)
  • 混乱、不安、抑うつ
  • 運動機能障害(進行例)

病期による症状の進行

初期(軽度)

初期段階では、短期記憶障害が中心となります。最近の出来事や会話内容を忘れる、約束を忘れる、物の置き場所を忘れるなどの症状が現れます。同じことを何度も尋ねる、身だしなみに無頓着になる、性格が変化するなど、本人や周囲が違和感を感じ始める段階です。日常生活に大きな支障はありませんが、仕事や複雑な作業に影響が出始めます。

中期(中等度)

記憶障害がさらに進行し、人との会話や行動に影響が出始めます。食事をしたことを忘れる、見慣れた場所で迷う、一人で着替えができなくなる、言いたい言葉が出てこずイライラするなどの症状が顕著になります。身の回りの世話が必要になり、徘徊などの行動・心理症状(BPSD)が出現することもあります。

後期(重度)

言葉を忘れて会話ができなくなり、最終的には歩行が困難となり寝たきり状態になります。家族の顔や名前を忘れる、トイレ介助が必要、失禁が増える、食べ物でないものを口に入れるなど、日常生活のすべての面で介護が必要となります。人格の変化や強い感情の起伏が見られ、コミュニケーションが著しく困難になります。

脳の病理学的変化

早発性家族性アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβ(Aβ)タンパク質が異常に蓄積し、老人斑(アミロイド斑)を形成します。また、タウタンパク質の異常リン酸化により神経原線維変化が生じます。これらの病理学的変化により神経細胞が死滅し、脳の萎縮が進行します。特に海馬、側頭葉、頭頂葉の萎縮が顕著です。

進行と予後

早発性家族性アルツハイマー病は進行性の疾患であり、症状は時間とともに悪化します。発症から診断までの期間は平均8~10年とされていますが、個人差があります。早期診断により適切な治療介入を行うことで、症状の進行を遅らせ、生活の質を改善できる可能性があります。

遺伝形式と原因遺伝子

早発性家族性アルツハイマー病は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとります。病的変異を持つ親から子どもへ変異が受け継がれる確率は50%です。現在までに3つの原因遺伝子が同定されています。

APP遺伝子(アミロイド前駆体タンパク質遺伝子)

APP遺伝子は21番染色体上に位置し、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein)をコードしています。APP遺伝子の変異はEOFADの10~15%を占め、AD1型と呼ばれます。APP遺伝子の病的変異により、アミロイドβの産生が増加したり、凝集しやすいアミロイドβが産生されたりします。

APP遺伝子の重複(遺伝子全体のコピー数増加)も稀にEOFADの原因となることがあります。ダウン症候群(21トリソミー)の患者では、APP遺伝子が3コピー存在するため、若年でアルツハイマー病様の病理変化が生じます。

PSEN1遺伝子(プレセニリン1遺伝子)

PSEN1遺伝子は14番染色体上に位置し、プレセニリン1タンパク質をコードしています。PSEN1遺伝子の変異はEOFADの原因として最も頻度が高く、全体の30~70%を占めます。AD3型と呼ばれます。

プレセニリン1はγ-セクレターゼ複合体の触媒サブユニットとして機能し、APPの切断に関与します。PSEN1遺伝子の病的変異により、長いアミロイドβ(Aβ42)の産生が増加し、脳内への蓄積が促進されます。PSEN1変異によるEOFADは、発症年齢が比較的若く(30~50歳代)、進行が早い傾向があります。

PSEN2遺伝子(プレセニリン2遺伝子)

PSEN2遺伝子は1番染色体上に位置し、プレセニリン2タンパク質をコードしています。PSEN2遺伝子の変異によるEOFADはAD4型と呼ばれ、全体の5%未満と最も稀です。

プレセニリン2もγ-セクレターゼ複合体の一部として機能し、PSEN1と類似した機能を持ちます。PSEN2変異によるEOFADは、PSEN1変異と比較して発症年齢がやや遅く、浸透率(変異保有者が発症する割合)が不完全である場合があります。

遺伝カウンセリングの重要性

EOFADの患者では、ほとんどの場合、両親のどちらかもアルツハイマー病を発症しています。患者の子どもが変異を受け継ぎ発症する確率は50%です。しかし、親の発症前の早期死亡や、年齢に関連した不完全浸透により、明らかな家族歴がない場合もあります。

PSEN1、PSEN2、APP遺伝子のいずれにも変異が認められない常染色体優性遺伝形式のEOFAD家系も報告されており、他にも原因遺伝子が存在する可能性があります。

ミネルバクリニックの早発性家族性アルツハイマー病遺伝子パネル検査の特徴

「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」とは、現在早発性家族性アルツハイマー病の原因として報告されている3つの遺伝子(APP、PSEN1、PSEN2)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、早発性家族性アルツハイマー病に関連する3遺伝子を一度に調べられる「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で早発性家族性アルツハイマー病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、早発性家族性アルツハイマー病に関係するとされる3つの遺伝子を一度に調べられる「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える早発性家族性アルツハイマー病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」の場合、3つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から早発性家族性アルツハイマー病を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な3つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」では、早発性家族性アルツハイマー病に関係するとされる3種類の遺伝子(APP、PSEN1、PSEN2)をまとめて検査します。

「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」は、早発性家族性アルツハイマー病の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【早発性家族性アルツハイマー病の個人歴または家族歴のある方】に
「早発性家族性アルツハイマー病 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・65歳未満でアルツハイマー病を発症した方
・家族内に複数のアルツハイマー病患者がいる方(特に65歳未満発症)
・進行性の記憶障害がある方
・判断力の低下や混乱が認められる方
・性格・行動の変化が著しい方
・運動機能障害を伴う認知症の方
・早発性家族性アルツハイマー病の家族歴がある無症状の方で、リスク評価を希望される方
・将来子どもを持つことを考えている方で、家族歴から遺伝リスクが懸念される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、早発性家族性アルツハイマー病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な薬物療法、非薬物療法、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の認知症疾患(レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)との鑑別
・適切な薬物療法の選択(コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬など)
・認知機能リハビリテーションの立案
・行動・心理症状(BPSD)の予防と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・心理社会的カウンセリングの提供
・介護サービスや支援プログラムへの接続
・患者と家族へのサポート体制の構築
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、子どもが変異を受け継ぎ発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。無症状のリスク保有者に対する発症前診断も可能ですが、十分な遺伝カウンセリングが必要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

APP, PSEN1, PSEN2 ( 3遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・APP遺伝子(アミロイド前駆体タンパク質遺伝子):
21番染色体(21q21.3)に位置し、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein)をコードする遺伝子です。APP遺伝子の病的変異はEOFADの10~15%を占め、AD1型と呼ばれます。APPタンパク質は神経細胞膜に存在する膜貫通タンパク質で、さまざまなセクレターゼ酵素により切断されます。APP遺伝子の病的変異により、アミロイドβ(特にAβ42)の産生増加や凝集促進が起こり、脳内への蓄積が進みます。エクソン16と17に病的変異が集中しています。稀にAPP遺伝子の重複(遺伝子全体のコピー数増加)がEOFADの原因となることもあります。

・PSEN1遺伝子(プレセニリン1遺伝子):
14番染色体(14q24.2)に位置し、プレセニリン1タンパク質をコードする遺伝子です。PSEN1遺伝子の病的変異はEOFADの最も頻度の高い原因であり、全体の30~70%を占めます。AD3型と呼ばれます。プレセニリン1はγ-セクレターゼ複合体の触媒サブユニットとして機能し、APPや他の基質の切断に関与します。PSEN1遺伝子の病的変異により、長いアミロイドβ(Aβ42)とAβ40の産生比が変化し、Aβ42の相対的増加が起こります。これにより脳内へのアミロイドβ蓄積が促進されます。PSEN1変異によるEOFADは、発症年齢が比較的若く(平均40歳代)、進行が早い傾向があります。現在までに200種類以上の病的変異が報告されており、ほとんどがミスセンス変異です。

・PSEN2遺伝子(プレセニリン2遺伝子):
1番染色体(1q42.13)に位置し、プレセニリン2タンパク質をコードする遺伝子です。PSEN2遺伝子の病的変異によるEOFADはAD4型と呼ばれ、全体の5%未満と最も稀です。プレセニリン2もγ-セクレターゼ複合体の一部として機能し、PSEN1と約67%のアミノ酸配列相同性を持ちます。PSEN2変異によるEOFADは、PSEN1変異と比較して発症年齢がやや遅く(平均50歳代)、浸透率(変異保有者が発症する割合)が不完全である場合があります。つまり、病的変異を持っていても必ずしも発症しない、あるいは高齢で発症する例があります。PSEN2変異は特定の地域や民族集団で見られることがあります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、APP、PSEN1、PSEN2の3つの原因遺伝子のみを対象としています。EOFAD家系の40~80%において、これらの遺伝子のいずれかに変異が見られますが、残りの家系では既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、PSEN1、PSEN2、APP遺伝子のいずれにも病的変異を持たない常染色体優性遺伝形式のEOFAD家系も報告されており、他の原因遺伝子が存在する可能性があります。

※無症状者の発症前診断については、家系内で既に発症している患者で病的変異が確認されている場合にのみ有効です。発症前診断は、発症年齢、重症度、症状、進行度の正確な予測には有効ではありません。発症前診断を希望される方には、十分な遺伝カウンセリングが必要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
65歳未満で進行性の記憶障害、判断力の低下、性格・行動の変化などの認知症状がある方におすすめします。特に、家族内に複数のアルツハイマー病患者がいる場合(家族性)や、65歳未満で発症した家族がいる場合は、早発性家族性アルツハイマー病の可能性が高くなります。また、無症状でも家族歴から遺伝リスクが懸念される方で、発症前診断を希望される場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。検査の前には必ず遺伝カウンセリングを実施し、検査の意義、限界、結果の解釈、家族への影響などについて十分にご説明いたします。
一般的なアルツハイマー病との違いは何ですか?
早発性家族性アルツハイマー病(EOFAD)は65歳未満で発症し、明確な遺伝的原因(APP、PSEN1、PSEN2遺伝子の病的変異)があります。常染色体優性遺伝形式をとり、家族内に複数の患者がみられます。一方、一般的な遅発性アルツハイマー病は65歳以上で発症することが多く、遺伝要因と環境要因が複雑に関与します。EOFADは全アルツハイマー病の3%以下と稀ですが、発症年齢が若く、進行がやや速い傾向があります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
患者さんで病的変異が同定された場合、子どもが変異を受け継ぎ発症するリスクは50%です。無症状のご家族(子ども、兄弟姉妹)が発症前診断を希望される場合、検査を受けることができます。ただし、発症前診断には十分な遺伝カウンセリングが必要です。検査を受けるかどうかは個人の自由意思によるものであり、強制されるべきではありません。検査結果が心理的・社会的に与える影響について、十分に考慮する必要があります。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
EOFAD家系の約20~60%では、APP、PSEN1、PSEN2遺伝子に病的変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。他の未知の原因遺伝子が存在する可能性もあります。臨床症状と画像検査、神経心理学的検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病的変異が同定された場合、その遺伝子型と臨床的意義、家族への遺伝リスク、発症前診断の選択肢などについてご説明いたします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
早発性家族性アルツハイマー病は常染色体優性遺伝形式をとるため、病的変異を持つ親から子どもへ変異が受け継がれる確率は50%です。子どもが変異を受け継いだ場合、将来EOFADを発症するリスクが高くなります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。ただし、成人期発症疾患に対する出生前診断には倫理的配慮が必要であり、十分な遺伝カウンセリングが不可欠です。
早発性家族性アルツハイマー病の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状の進行を遅らせる薬物療法(コリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、NMDA受容体拮抗薬:メマンチン)があります。また、認知機能リハビリテーション、運動療法、音楽療法、回想法などの非薬物療法も有効です。行動・心理症状(BPSD)に対する適切な対応、介護サービスの利用、家族へのサポートも重要です。早期診断により、症状が軽いうちから適切な治療介入を行うことで、生活の質を維持できる可能性があります。
予後はどうですか?
早発性家族性アルツハイマー病は進行性の疾患であり、症状は時間とともに悪化します。発症から診断までの期間は平均8~10年程度ですが、個人差があります。PSEN1変異による症例は発症年齢が若く(平均40歳代)、進行がやや速い傾向があります。PSEN2変異による症例は発症年齢がやや遅く(平均50歳代)、進行も比較的緩やかな場合があります。適切な治療と介護により、生活の質を維持することが重要です。
発症前診断について教えてください
家系内で病的変異が確認されている場合、無症状のリスク保有者(子ども、兄弟姉妹)に対する発症前診断が可能です。ただし、発症前診断には十分な遺伝カウンセリングが必要です。検査を受けるかどうかは本人の自由意思によるものであり、検査結果が心理的・社会的に与える影響について十分に考慮する必要があります。発症前診断は、発症年齢、重症度、症状、進行度の正確な予測には有効ではありません。また、不確かな症状がある段階での検査は、発症前診断とみなされます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な3つの原因遺伝子(APP、PSEN1、PSEN2)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。早発性家族性アルツハイマー病の遺伝子検査は、診断的意義だけでなく、家族への影響、発症前診断の問題など、倫理的・心理的配慮が必要な検査です。当院では、十分な時間をかけた丁寧な遺伝カウンセリングを提供しています。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら