エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック
エリス・ファン・クレフェルト症候群とは
エリス・ファン・クレフェルト症候群(Ellis-van Creveld syndrome: EVC)は、軟骨と外胚葉組織の発達障害を特徴とする遺伝性疾患です。別名、軟骨外胚葉異形成症(chondroectodermal dysplasia)とも呼ばれます。主な特徴として、四肢の短縮による低身長(小人症)、肋骨の短縮による胸郭の狭小化、手足の多指症、爪や歯の異常、そして約60%の患者さんで先天性心疾患が認められます。
この疾患は1940年にスコットランドのリチャード・エリス医師とオランダのシモン・ファン・クレフェルト医師によって初めて報告されました。極めて稀な疾患で、一般集団では新生児6万~20万人に1人の頻度で発生すると推定されています。ただし、米国ペンシルバニア州ランカスター郡のオールド・オーダー・アーミッシュ集団や西オーストラリアの先住民集団など、特定の創始者効果を持つ集団では頻度が高いことが知られています。
エリス・ファン・クレフェルト症候群は繊毛病(ciliopathy)の一種として分類されています。繊毛病とは、細胞の一次繊毛と呼ばれる構造の機能異常が原因で発症する疾患群のことで、この一次繊毛は細胞のシグナル伝達、特にソニック・ヘッジホッグシグナル経路に重要な役割を果たしています。この経路の異常により、骨格、心臓、歯、爪など多臓器にわたる発達障害が引き起こされます。
症状と病態
エリス・ファン・クレフェルト症候群の主な症状は、骨格系、心血管系、外胚葉組織(爪、歯、毛髪)の異常です。重症度は患者さんによって大きく異なり、家族内でも症状の程度にばらつきがあることが特徴です。
主要症状
- 四肢短縮型低身長(特に前腕と下腿が短い)
- 狭い胸郭(肋骨の短縮による)
- 両側性の手指多指症(通常は尺側、小指側に余分な指)
- 足趾多指症(手指よりは頻度が低い)
- 爪の形成不全または異形成
- 歯の異常(出生歯、歯の欠損、円錐歯、エナメル質形成不全)
- 上唇正中部の異常(上唇小帯の異常、口唇裂様の所見)
- 手根骨の癒合(有頭骨と有鉤骨の癒合が特徴的)
- 外反膝(膝が外側に彎曲)
- 凹足(土踏まずが高くなる足の変形)
先天性心疾患
約60%の患者さんで先天性心疾患が認められ、これが生命予後を大きく左右します。最も特徴的な心奇形は心房中隔欠損で、特に総心房(common atrium)と呼ばれる、心房中隔が完全に欠損した状態がしばしば見られます。その他、心内膜床欠損、心室中隔欠損なども報告されています。
呼吸器の問題
肋骨の短縮による胸郭の狭小化のため、新生児期から乳児期早期に呼吸困難を呈することがあります。重症例では呼吸不全により生後間もなく死亡することもあり、生後18か月までの死亡率は約50%と報告されています。呼吸困難を乗り越えた患者さんでは、成長とともに胸郭も発達し、呼吸機能が改善することが多いです。
その他の特徴
- 口腔内所見:複数の上唇小帯、上顎歯槽突起の部分的裂、高口蓋など
- 泌尿生殖器異常:まれに腎臓の異常(嚢胞性腎疾患など)、尿道下裂
- その他の骨格異常:脊椎の異常、寛骨の形成不全(三叉寛骨)など
- 知能と運動発達:通常は正常で、精神遅滞は一般的ではありません
進行と予後
新生児期から乳児期早期の呼吸器合併症と心疾患が生命予後の主な決定因子です。この時期を乗り越えた患者さんの長期予後は比較的良好で、適切な医療管理により成人期まで生存する患者さんも多くいます。最終身長の予測は困難ですが、通常は低身長が残ります。整形外科的な問題(外反膝、凹足など)に対しては、必要に応じて手術的治療が行われます。
遺伝形式と原因遺伝子
エリス・ファン・クレフェルト症候群は、主に常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとる遺伝性疾患です。両親がともに保因者(キャリア)である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常遺伝子のみを持つ確率は25%です。保因者である両親は通常、症状を示しません。
原因遺伝子
エリス・ファン・クレフェルト症候群の原因遺伝子として、主に以下の2つの遺伝子が知られています:
- EVC遺伝子(4p16領域):患者さんの約74%でこの遺伝子に変異が見つかります。EVCタンパク質は一次繊毛に局在し、ソニック・ヘッジホッグシグナル経路の調節に関与していると考えられています。
- EVC2遺伝子(4p16領域):患者さんの約26%でこの遺伝子に変異が見つかります。EVC2遺伝子はEVC遺伝子と頭対頭の配置で隣接しており、EVC2タンパク質もEVCタンパク質と協調して一次繊毛で機能すると考えられています。
これら2つの遺伝子の変異で、エリス・ファン・クレフェルト症候群と診断された患者さんの50~70%を説明できます。残りの症例では、原因となる遺伝子がまだ特定されていません。
関連疾患
EVC2遺伝子の特定の変異(特に最終エキソンの変異)は、ウェイヤーズ顔面指趾異形成症(Weyers acrofacial dysostosis)という別の疾患を引き起こすことがあります。この疾患は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、エリス・ファン・クレフェルト症候群よりも軽症で、低身長の程度が軽く、心疾患を伴わないことが特徴です。
最近の研究では、DYNC2H1、DYNC2LI1、GLI1、WDR35、SMO、PRKACA、PRKACBなどの遺伝子変異も一部の患者さんで報告されており、エリス・ファン・クレフェルト症候群の遺伝学的多様性が明らかになってきています。
ミネルバクリニックのエリス・ファン・クレフェルト症候群遺伝子パネル検査の特徴
「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」とは、現在エリス・ファン・クレフェルト症候群の主要な原因として報告されている2つの遺伝子(EVC、EVC2)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、エリス・ファン・クレフェルト症候群に関連する2遺伝子を一度に調べられる「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でエリス・ファン・クレフェルト症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、エリス・ファン・クレフェルト症候群に関係するとされる2つの遺伝子を一度に調べられる「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるエリス・ファン・クレフェルト症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」の場合、2つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からエリス・ファン・クレフェルト症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に最も重要な2つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」では、エリス・ファン・クレフェルト症候群に関係するとされる2種類の遺伝子(EVC、EVC2)をまとめて検査します。
「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」は、エリス・ファン・クレフェルト症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【エリス・ファン・クレフェルト症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「エリス・ファン・クレフェルト症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・四肢の短縮、特に前腕と下腿の短縮がある方
・狭い胸郭(肋骨の短縮)が認められる方
・手足の多指症(特に手指の尺側多指症)がある方
・爪の形成不全または異形成がある方
・歯の異常(出生歯、歯の欠損、円錐歯など)がある方
・先天性心疾患(特に心房中隔欠損、総心房)が認められる方
・上唇正中部の異常(上唇小帯の異常など)がある方
・手根骨の癒合が画像検査で確認された方
・新生児期から乳児期に呼吸困難があった方
・エリス・ファン・クレフェルト症候群の家族歴がある方
・出生前超音波検査で四肢短縮、胸郭狭小化、多指症が指摘された方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、エリス・ファン・クレフェルト症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な医療管理、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の短肋骨多指症症候群や骨格異形成症との鑑別
・先天性心疾患の早期発見と適切な管理
・呼吸機能障害のリスク評価と管理
・整形外科的問題(外反膝、凹足など)の早期発見と治療
・歯科的問題の適切な管理
・多指症に対する整形外科的治療の計画
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。保因者同士のカップルの場合、子どもが発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
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-
EVC, EVC2 ( 2遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・EVC遺伝子(Ellis-Van Creveld遺伝子):
染色体4p16領域に位置し、EVCタンパク質をコードする遺伝子です。EVCタンパク質は細胞の一次繊毛に局在し、ソニック・ヘッジホッグシグナル経路の調節に関与していると考えられています。この経路は、胚発生時の細胞の成長、分化、体の各部分の正常な形態形成に重要な役割を果たします。EVC遺伝子の変異は、エリス・ファン・クレフェルト症候群患者さんの約74%で見つかります。変異の多くは機能喪失型(ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライス部位変異など)で、短縮型の機能不全タンパク質が産生されると考えられています。
・EVC2遺伝子(Ellis-Van Creveld 2遺伝子):
染色体4p16領域に位置し、EVC遺伝子と頭対頭の配置で隣接している遺伝子です。EVC2タンパク質もEVCタンパク質と同様に一次繊毛に局在し、両者は協調してソニック・ヘッジホッグシグナル経路を調節すると考えられています。EVC2遺伝子の変異は、エリス・ファン・クレフェルト症候群患者さんの約26%で見つかります。特に最終エキソン(エキソン22)の変異は、軽症型のウェイヤーズ顔面指趾異形成症を引き起こすことが知られており、この部位は変異のホットスポットとなっています。EVC2遺伝子の変異も、多くは機能喪失型の変異です。
これら2つの遺伝子は、細胞の一次繊毛という構造で機能しており、繊毛病(ciliopathy)の一種としてエリス・ファン・クレフェルト症候群が分類される理由となっています。一次繊毛の機能不全により、ソニック・ヘッジホッグシグナル経路が正常に働かなくなり、骨格、心臓、歯、爪などの発達に異常が生じると考えられています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、2つの主要原因遺伝子のみを対象としています。約30~50%のエリス・ファン・クレフェルト症候群症例では、EVC、EVC2遺伝子に変異が見つかりません。これらの症例では、他の遺伝子(DYNC2H1、DYNC2LI1、GLI1、WDR35、SMO、PRKACA、PRKACBなど)の変異が原因である可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 四肢の短縮(特に前腕と下腿)、狭い胸郭、手足の多指症、爪や歯の異常がある方におすすめします。また、先天性心疾患(特に心房中隔欠損や総心房)が認められる場合や、新生児期から乳児期に呼吸困難があった場合も検査をご検討ください。家族に同様の症状やエリス・ファン・クレフェルト症候群の診断がある場合も重要な検査の適応となります。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 出生前診断は可能ですか?
- はい、可能です。家族内で病原性変異が同定されている場合、出生前診断や着床前診断を行うことができます。超音波検査で四肢短縮、胸郭狭小化、多指症、心奇形などが認められた場合、羊水検査や絨毛検査により遺伝子診断を行うことができます。詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 常染色体劣性遺伝形式のため、患者さんの両親は保因者である可能性が高く、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。将来的に子どもを持つことを考えている兄弟姉妹や親族の方は、保因者診断を受けることで、将来の家族計画に重要な情報を得ることができます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約30~50%のエリス・ファン・クレフェルト症候群症例では、EVC、EVC2遺伝子に変異が見つかりません。これらの症例では、他の遺伝子の変異が原因である可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と画像所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝形式のため、患者さんのお子さんは全員保因者となります。保因者同士のカップルの場合、子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- エリス・ファン・クレフェルト症候群の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、多臓器にわたる症状に対して対症療法が行われます。新生児期から乳児期の呼吸管理、先天性心疾患に対する心臓手術、多指症に対する整形外科的治療、外反膝や凹足などの骨格変形に対する矯正手術、歯科治療などが含まれます。多職種による包括的な医療管理が重要です。
- 予後はどうですか?
- 予後は主に新生児期から乳児期早期の呼吸器合併症と心疾患の重症度によって決まります。この時期を乗り越えた患者さんの長期予後は比較的良好で、適切な医療管理により成人期まで生存する患者さんも多くいます。知能と運動発達は通常正常です。
- ウェイヤーズ顔面指趾異形成症との違いは何ですか?
- ウェイヤーズ顔面指趾異形成症は、EVC2遺伝子の特定の変異(特に最終エキソンの変異)により引き起こされる常染色体優性遺伝の疾患で、エリス・ファン・クレフェルト症候群の軽症型と考えられています。低身長の程度が軽く、心疾患や胸郭狭小化を伴わないことが特徴です。多指症、爪や歯の異常は両疾患に共通して見られます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に最も重要な2つの原因遺伝子(EVC、EVC2)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら