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先天性角化不全症NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

先天性角化不全症NGS遺伝子検査|ミネルバクリニック

先天性角化不全症とは

先天性角化不全症(Dyskeratosis Congenita: DC)は、テロメア維持機能の障害を背景とした遺伝性疾患です。テロメアとは染色体の末端部分にあるDNAの繰り返し配列で、細胞分裂のたびに少しずつ短くなります。先天性角化不全症の患者さんでは、テロメアが生まれつき極端に短い、または急速に短縮することにより、様々な症状が引き起こされます。

古典的な先天性角化不全症は、爪の萎縮、口腔内白斑、皮膚色素沈着(特に上胸部や頚部のレース状網状色素沈着)の3主徴を特徴としますが、すべての患者さんにこれらの症状が揃うわけではありません。本疾患は進行性骨髄不全を高頻度に合併し、約半数の患者さんが40歳までに骨髄不全を発症します。

先天性角化不全症は、臨床像が非常に多様な疾患です。古典型のほかに、最重症型であるHoyeraal-Hreidarsson症候群、Revesz症候群、Coats plus症候群などの関連疾患があります。また、身体的特徴が目立たず、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、家族性肺線維症としてのみ症状が現れる不全型も存在します。これらはすべてテロメアの異常な短縮を共通の病態とする「テロメア生物学的障害(TBD)」と総称されます。発症頻度は100万人に1人程度とされる稀な疾患です。

症状と病態

先天性角化不全症の症状は非常に多彩で、重症度も患者さんによって大きく異なります。テロメアの短縮により、特に細胞分裂が活発な組織(皮膚、粘膜、骨髄など)が影響を受けやすくなります。

主要症状(古典的三徴候)

  • 爪の萎縮:爪が薄く、小さく、脆くなります。爪甲形成不全として現れることもあります
  • 口腔内白斑:口腔粘膜に白色の病変(白板症)が出現します
  • 皮膚色素沈着:特に上胸部や頚部にレース状の網状色素沈着が見られます

これらの皮膚・粘膜症状は多くの場合、10歳までに出現しますが、軽症例では目立たないこともあります。

血液系の症状

最も重要な合併症は進行性の骨髄不全です。約80%の患者さんで血球減少が進行し、約半数が40歳までに骨髄不全を発症します。汎血球減少(赤血球、白血球、血小板すべてが減少)を呈することが多く、重症例では輸血依存や造血幹細胞移植が必要となります。

  • 進行性の汎血球減少
  • 骨髄低形成(骨髄での血球産生の低下)
  • 骨髄異形成症候群(MDS)への移行リスク
  • 急性骨髄性白血病(AML)の発症リスク増加
  • 免疫不全(T細胞、B細胞、NK細胞の減少と機能低下)

その他の重要な合併症

  • 肺線維症:約20%の患者さんで発症します。40~50代の成人期に初発症状として現れることもあります
  • 肝障害・肝硬変:肝機能障害が進行性に悪化することがあります
  • 固形癌:頭頸部の扁平上皮癌や肛門性器癌のリスクが高くなります
  • 消化管異常:食道狭窄、消化管毛細血管拡張症などが見られます
  • 眼科的異常:眼瞼下垂、眼瞼炎、睫毛貧毛症、両側滲出性網膜症(Revesz症候群)
  • 歯科的異常:歯牙欠損、歯の形成異常
  • 骨格系異常:低身長、骨粗鬆症、大腿骨頭無腐性壊死
  • その他:頭髪の消失・白髪、発達遅延、小頭症、小脳失調など

重症型の特徴

Hoyeraal-Hreidarsson症候群:最重症型で、小脳低形成、小頭症、子宮内発育遅延、重度の発達遅延、免疫不全などを伴います。

Revesz症候群:両側滲出性網膜症と頭蓋内石灰化を特徴とし、重度の再生不良性貧血、小脳失調、精神運動発達遅滞を伴います。

Coats plus症候群:両側滲出性網膜症、網膜毛細血管拡張症、頭蓋内石灰化、骨減少症、消化管血管拡張症、発達遅延などが認められます。

進行と予後

疾患の進行速度は原因遺伝子や患者さんによって大きく異なります。軽症例では骨髄機能がほぼ正常で身体的所見も最小限のこともありますが、重症例では早期に骨髄不全や重篤な合併症を発症します。罹患していない人のテロメア短縮速度が年間約60塩基対であるのに対し、先天性角化不全症患者さんでは年間約120塩基対と約2倍の速度でテロメアが短縮します。適切な医療管理とサーベイランスにより、生活の質を維持し、合併症を早期に発見・治療することが重要です。

遺伝形式と原因遺伝子

先天性角化不全症は遺伝学的に非常に多様性が高く、X連鎖性遺伝、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに16以上の原因遺伝子が同定されており、これらはすべてテロメアの維持に関与しています。

X連鎖性劣性遺伝形式

約35%の症例がこの遺伝形式をとります:

  • DKC1遺伝子:ジスケリン(dyskerin)をコードする遺伝子で、テロメラーゼ複合体の重要な構成要素です。X連鎖性遺伝形式の最も頻度の高い原因遺伝子です

常染色体優性(顕性)遺伝形式

約5~10%の症例で認められます:

  • TERC遺伝子:テロメラーゼRNA成分をコードし、テロメア伸長の鋳型となります
  • TERT遺伝子:テロメラーゼ逆転写酵素をコードし、テロメラーゼの触媒サブユニットです
  • TINF2遺伝子:シェルタリン複合体の構成要素で、テロメアの保護に関与します
  • RTEL1遺伝子:DNAヘリカーゼをコードし、テロメアの複製と維持に関与します
  • ACD遺伝子:シェルタリン複合体の構成要素であるTPP1をコードします

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

比較的稀ですが、重症型が多い傾向があります:

  • NHP2、NOP10遺伝子:いずれもテロメラーゼ複合体の構成要素をコードします
  • WRAP53遺伝子:TCAB1をコードし、テロメラーゼの細胞内輸送に関与します
  • CTC1遺伝子:CST複合体の構成要素で、テロメアの複製に関与します
  • PARN遺伝子:poly(A)特異的リボヌクレアーゼをコードし、TERC RNAの安定性に関与します

先天性角化不全症/テロメア生物学的障害の臨床診断基準を満たす患者さんの約80%において、これらの遺伝子のいずれかに病原性変異が同定されています。しかし、約20%の症例では既知の遺伝子に変異が見つからず、未同定の原因遺伝子が存在すると考えられています。当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な11遺伝子を対象としています。

遺伝カウンセリングの重要性

遺伝形式によって家族の発症リスクが大きく異なります。X連鎖性遺伝の場合、保因者の女性から生まれる男児の50%が発症します。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親がともに保因者であれば、お子さんが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、世代が進むにつれテロメア短縮の進行と発症年齢の低下(表現促進現象)が見られることがあり、家族の遺伝学的評価と適切な遺伝カウンセリングが重要です。

ミネルバクリニックの先天性角化不全症遺伝子パネル検査の特徴

「先天性角化不全症 NGSパネル検査」とは、現在先天性角化不全症の原因として報告されている11の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、先天性角化不全症に関連する11遺伝子を一度に調べられる「先天性角化不全症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で先天性角化不全症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、先天性角化不全症に関係するとされる11の遺伝子を一度に調べられる「先天性角化不全症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える先天性角化不全症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「先天性角化不全症 NGSパネル検査」の場合、11の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から先天性角化不全症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「先天性角化不全症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な11の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「先天性角化不全症 NGSパネル検査」では、先天性角化不全症に関係するとされる11種類の遺伝子(ACD、CTC1、DKC1、NHP2、NOP10、PARN、RTEL1、TERC、TERT、TINF2、WRAP53)をまとめて検査します。

「先天性角化不全症 NGSパネル検査」は、先天性角化不全症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【先天性角化不全症の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性角化不全症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・爪の萎縮、口腔内白斑、皮膚色素沈着のうち1つ以上の症状がある方
・原因不明の血球減少(汎血球減少、貧血、白血球減少、血小板減少)がある方
・若年での骨髄不全、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群と診断された方
・原因不明の肺線維症がある方
・原因不明の肝硬変、肝機能障害がある方
・家族性肺線維症の家族歴がある方
・頭頸部の扁平上皮癌や肛門性器癌を若年で発症した方
・低身長、発達遅延、小頭症などがある方
・先天性角化不全症またはテロメア生物学的障害の家族歴がある方
・Flow-FISH法やサザンブロット法でテロメア長の著明な短縮が認められた方
・免疫不全(T細胞、B細胞、NK細胞の減少)がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、先天性角化不全症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、定期的なサーベイランス、適切な支持療法、造血幹細胞移植の適応判断などを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の骨髄不全症候群や遺伝性疾患との鑑別
・骨髄不全に対する適切な治療選択(蛋白同化ステロイド、造血幹細胞移植など)
・定期的な血液検査によるモニタリング
・固形癌(特に頭頸部扁平上皮癌)のサーベイランス
・肺機能検査による肺線維症の早期発見
・肝機能モニタリング
・消化管異常(食道狭窄など)のスクリーニング
・眼科的検査による網膜症の早期発見
・歯科的管理と口腔衛生指導
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。X連鎖性遺伝の場合、保因者の女性から生まれる男児が発症するリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACD, CTC1, DKC1, NHP2, NOP10, PARN, RTEL1, TERC, TERT, TINF2, WRAP53 ( 11遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ACD遺伝子:
シェルタリン複合体の構成要素であるTPP1(ACD)をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとり、テロメアの保護と維持に関与します。

・CTC1遺伝子:
CST複合体の構成要素CTC1をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、テロメアのC鎖複製に重要な役割を果たします。Coats plus症候群の原因遺伝子としても知られています。

・DKC1遺伝子:
ジスケリン(dyskerin)をコードする遺伝子。X連鎖性劣性遺伝形式をとり、テロメラーゼRNA成分(TERC)の安定化とリボソームRNA修飾に関与します。先天性角化不全症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。

・NHP2遺伝子:
H/ACAリボ核タンパク質複合体の構成要素NHP2をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、テロメラーゼ複合体の安定性に関与します。

・NOP10遺伝子:
H/ACAリボ核タンパク質複合体の構成要素NOP10をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、テロメラーゼ複合体の機能に必要です。

・PARN遺伝子:
poly(A)特異的リボヌクレアーゼをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、TERC RNAの3’末端プロセシングと安定性に関与します。特発性肺線維症の家族性症例の原因遺伝子としても知られています。

・RTEL1遺伝子:
レギュレーター・オブ・テロメア・エロンゲーション・ヘリカーゼ1をコードする遺伝子。常染色体優性または劣性遺伝形式で、テロメアの複製とT-loopの解消に関与します。Hoyeraal-Hreidarsson症候群の原因遺伝子の一つです。

・TERC遺伝子:
テロメラーゼRNA成分(hTR)をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとり、テロメア伸長の鋳型として機能します。特発性肺線維症や再生不良性貧血の家族性症例でも変異が見つかることがあります。

・TERT遺伝子:
テロメラーゼ逆転写酵素をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式をとり、テロメラーゼの触媒サブユニットとして機能します。特発性肺線維症や再生不良性貧血の家族性症例でも頻繁に変異が見つかります。

・TINF2遺伝子:
シェルタリン複合体の構成要素TIN2をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、テロメアの保護と長さの制御に関与します。最も重症の表現型を示すことが多く、Revesz症候群の原因遺伝子としても知られています。

・WRAP53遺伝子:
TCAB1(テロメラーゼ・カハール体タンパク質1)をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、テロメラーゼの細胞内輸送とカハール体への局在化に関与します。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、11の原因遺伝子のみを対象としています。約20%の先天性角化不全症/テロメア生物学的障害症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。また、TYMS、DCLRE1B、NAF1、POT1、RPA1、STN1、ZCCHC8などの他の原因遺伝子は本パネルに含まれていません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床診断とテロメア長測定(Flow-FISH法など)も診断に重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
爪の萎縮、口腔内白斑、皮膚色素沈着のうち1つ以上の症状がある方、原因不明の血球減少や骨髄不全がある方、若年での肺線維症や肝硬変がある方におすすめします。また、家族に先天性角化不全症や原因不明の骨髄不全、肺線維症がある場合も検査をご検討ください。特に、テロメア長測定で著明な短縮が認められた場合は、遺伝子検査により原因を特定することが重要です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
テロメアとは何ですか?
テロメアとは染色体の末端部分にあるDNAの繰り返し配列(TTAGGG)で、染色体を保護する役割があります。細胞が分裂するたびにテロメアは少しずつ短くなり、極端に短くなると細胞は分裂できなくなります。先天性角化不全症では、テロメアを維持する遺伝子の異常により、テロメアが生まれつき極端に短い、または急速に短縮します。
テロメア長の測定も必要ですか?
テロメア長の測定(Flow-FISH法やサザンブロット法)は診断に非常に有用です。先天性角化不全症患者さんでは、年齢に比べてテロメアが異常に短いことが特徴的です。テロメア長測定と遺伝子検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。X連鎖性遺伝の場合、保因者の女性から生まれる男児の50%が発症します。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。また、世代が進むにつれて発症年齢が早まる(表現促進現象)ことがあるため、家族歴の評価も重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約20%の先天性角化不全症/テロメア生物学的障害症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。また、本パネルに含まれていない他の原因遺伝子が存在する可能性もあります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状とテロメア長測定に基づいた診断が可能です。疾患を完全に否定することはできませんので、臨床的なフォローアップが引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。X連鎖性遺伝の場合は保因者の女性から生まれる男児の50%が発症、常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
先天性角化不全症の治療はどのように行われますか?
根本的な治療法は現在のところ確立されていませんが、対症療法と定期的なサーベイランスが重要です。骨髄不全に対しては蛋白同化ステロイド(ダナゾールなど)が有効なことがあり、重症例では造血幹細胞移植が検討されます。また、定期的な血液検査、肺機能検査、肝機能検査、固形癌のスクリーニングなどが推奨されます。
予後はどうですか?
疾患の重症度と進行速度は原因遺伝子や個人によって大きく異なります。軽症例では身体的所見が最小限で、骨髄機能もほぼ正常なこともあります。一方、重症例では早期に骨髄不全や重篤な合併症を発症します。適切な医療管理とサーベイランスにより、合併症を早期に発見・治療し、生活の質を維持することが可能です。
造血幹細胞移植は有効ですか?
重症の骨髄不全に対しては造血幹細胞移植が有効な治療選択肢となります。しかし、先天性角化不全症患者さんでは移植に伴う合併症のリスクが高く、減弱前処置レジメンの使用が推奨されます。また、移植により骨髄不全は改善しても、成長に伴って肺線維症や肝硬変などの他臓器の症状が出現する可能性があるため、移植後も継続的なフォローアップが必要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な11の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら