(更新日:2025/10/17)
ダイアモンド・ブラックファン貧血(先天性赤芽球癆)|ミネルバクリニック
ダイアモンド・ブラックファン貧血とは
ダイアモンド・ブラックファン貧血(Diamond-Blackfan Anemia: DBA)は、先天性赤芽球癆とも呼ばれ、赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症です。骨髄では赤血球系細胞のみが著しく減少し、末梢血では網赤血球が減少して大球性正色素性貧血を呈する疾患です。
本疾患は厚生労働省指定難病284号に指定されており、日本での医療受給者証保持者数は100人未満と報告されています。ほとんどが乳児期に発症し、約90%が1歳までに診断されます。約半数の患者さんに種々の奇形や低身長などの身体的特徴を伴うことが特徴です。
ダイアモンド・ブラックファン貧血は、1936年にHugh W. Josephsによって初めて報告され、1938年にアメリカの小児科医Louis K. DiamondとKenneth Blackfanによって先天性低形成性貧血として記載されました。その後、1951年にコルチコステロイドへの反応性が報告され、現在も治療の中心となっています。
症状と病態
ダイアモンド・ブラックファン貧血の主な症状は、赤血球のみが減少することによる貧血症状です。新生児期から顔色不良で発見されることが多く、進行すると重篤な貧血症状を呈します。
主要症状
重度の貧血(顔色不良、蒼白)
息切れ、動悸
めまい、易疲労感
頭痛
哺乳力低下(乳児期)
成長障害
網赤血球の著明な減少
大球性正色素性貧血
合併奇形
ダイアモンド・ブラックファン貧血の約50%の患者さんに、種々の先天奇形や身体的特徴が認められます:
頭頸部異常: 小頭症、口蓋裂、小顎症、低位耳介、両眼離開
四肢異常: 三指節母指(親指に3つの関節がある)、橈骨欠損、多指症
心血管系異常: 心室中隔欠損、心房中隔欠損などの先天性心疾患
泌尿生殖器異常: 腎形成不全、尿道下裂
その他: 低身長、頸部のwebbed neck(翼状頸)
血液学的特徴
ダイアモンド・ブラックファン貧血の診断において重要な血液学的特徴は以下の通りです:
大球性正色素性貧血(MCV高値)
網赤血球の著明な減少(20×10⁹/L未満)
白血球・血小板は正常(赤血球系のみの障害)
骨髄における赤芽球の著減または欠如
赤血球アデノシンデアミナーゼ(eADA)活性の上昇(約80%の症例)
赤血球還元型グルタチオン(eGSH)の上昇
胎児ヘモグロビン(HbF)の上昇
長期合併症
ダイアモンド・ブラックファン貧血の患者さんは、長期的に以下の合併症に注意が必要です:
悪性腫瘍: ファンコニ貧血より頻度は低いですが、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)、固形腫瘍(大腸がん、骨肉腫など)のリスクが増加します
鉄過剰症: 輸血依存症例では、鉄キレート療法が必要となります
ステロイドの副作用: 長期ステロイド治療により、成長障害、骨粗鬆症、白内障、クッシング症候群などが生じる可能性があります
治療と予後
現在の主な治療法は輸血療法とコルチコステロイド療法です。約82%の患者さんがコルチコステロイドに初期反応を示しますが、長期的には約40%がステロイド依存、約40%が輸血依存となります。造血幹細胞移植は根治的治療法として考慮されますが、適切なドナーの確保や移植関連合併症のリスクを慎重に評価する必要があります。
遺伝形式と原因遺伝子
ダイアモンド・ブラックファン貧血は遺伝性疾患であり、主に常染色体優性(顕性)遺伝、まれに常染色体劣性(潜性)遺伝やX連鎖遺伝の形式をとります。約40~45%の症例が家族性で、残りは孤発例です。
リボソームタンパク遺伝子
ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因遺伝子は、GATA1を除いてすべてリボソームタンパク質をコードする遺伝子です。リボソームは細胞内でタンパク質を合成する細胞小器官であり、40Sリボソーム小サブユニット(RPS:ribosomal protein small subunit)と60Sリボソーム大サブユニット(RPL:ribosomal protein large subunit)から構成されます。
主要な原因遺伝子
現在までに約25種類の原因遺伝子が同定されており、日本では約50%の症例で遺伝子変異が同定されています:
RPS19遺伝子: 最も頻度の高い原因遺伝子で、全症例の約25%を占めます。40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPL5遺伝子: 約7%の症例で変異が認められます。60Sリボソーム大サブユニットのタンパク質をコードします。
RPL11遺伝子: 約5%の症例で変異が認められます。60Sリボソーム大サブユニットのタンパク質をコードします。
RPS26遺伝子: 40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPS24遺伝子: 40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPS17遺伝子: 40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPS10遺伝子: 40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPS7遺伝子: 40Sリボソーム小サブユニットのタンパク質をコードします。
RPL35A遺伝子: 60Sリボソーム大サブユニットのタンパク質をコードします。
GATA1遺伝子
GATA1遺伝子: X連鎖遺伝形式をとる唯一の非リボソームタンパク遺伝子です。GATA1は赤血球系細胞の分化に必須の転写因子で、この遺伝子の変異により赤血球造血が特異的に障害されます。
病態メカニズム
リボソームタンパク遺伝子の変異により、リボソームの生合成や機能が障害され、特に赤血球前駆細胞の成熟が阻害されます。最近の研究では、リボソーム機能障害がGATA1転写因子の翻訳異常や、過剰な遊離ヘムによる酸化ストレスとアポトーシスを引き起こすことが明らかになっています。
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な10遺伝子を対象としています。これにより、ダイアモンド・ブラックファン貧血の主要な遺伝的原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックのダイアモンド・ブラックファン貧血遺伝子パネル検査の特徴
「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」とは、現在ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因として報告されている10の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、ダイアモンド・ブラックファン貧血に関連する10遺伝子を一度に調べられる「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でダイアモンド・ブラックファン貧血の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ダイアモンド・ブラックファン貧血に関係するとされる10の遺伝子を一度に調べられる「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるダイアモンド・ブラックファン貧血の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」の場合、10の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からダイアモンド・ブラックファン貧血を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な10の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」では、ダイアモンド・ブラックファン貧血に関係するとされる10種類の遺伝子(GATA1、RPL11、RPL35A、RPL5、RPS10、RPS17、RPS19、RPS24、RPS26、RPS7)をまとめて検査します。
「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」は、ダイアモンド・ブラックファン貧血の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【ダイアモンド・ブラックファン貧血の個人歴または家族歴のある方】に
「ダイアモンド・ブラックファン貧血 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・乳児期から幼児期に発症した重度の貧血がある方
・大球性正色素性貧血を呈する方
・網赤血球が著明に減少している方
・骨髄検査で赤血球系細胞のみが著減している方
・白血球や血小板は正常範囲の方
・三指節母指や口蓋裂などの先天奇形を伴う方
・低身長や成長障害がある方
・赤血球アデノシンデアミナーゼ(eADA)活性が高い方
・ダイアモンド・ブラックファン貧血または先天性赤芽球癆の家族歴がある方
・コルチコステロイド治療や輸血療法を受けている方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、ダイアモンド・ブラックファン貧血の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な治療選択、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の貧血性疾患(ファンコニ貧血、一過性赤芽球癆など)との鑑別
・適切な治療法(コルチコステロイド療法、輸血療法、造血幹細胞移植)の選択
・ステロイド反応性の予測
・悪性腫瘍発症リスクの評価と長期的なサーベイランス計画の立案
・鉄過剰症のリスク評価と鉄キレート療法の適応判断
・合併奇形(心疾患、腎疾患など)の早期発見と管理
・成長障害への対応
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。X連鎖遺伝(GATA1遺伝子)の場合は、男児が発症するリスクが50%となります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
GATA1, RPL11, RPL35A, RPL5, RPS10, RPS17, RPS19, RPS24, RPS26, RPS7 ( 10遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・RPS19遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S19をコードする遺伝子。ダイアモンド・ブラックファン貧血の最も頻度の高い原因遺伝子で、全症例の約25%を占めます。常染色体優性遺伝形式をとります。リボソームRNA(rRNA)のプロセシングに関与し、変異により18S rRNAの成熟障害が生じます。
・RPL5遺伝子:
60Sリボソーム大サブユニットタンパク質L5をコードする遺伝子。約7%の症例で変異が認められます。常染色体優性遺伝形式で、5S rRNAと結合してリボソーム形成に関与します。変異により、p53の安定化を介したアポトーシス促進が報告されています。
・RPL11遺伝子:
60Sリボソーム大サブユニットタンパク質L11をコードする遺伝子。約5%の症例で変異が認められます。常染色体優性遺伝形式で、RPL5と同様にp53制御に関与します。
・RPL35A遺伝子:
60Sリボソーム大サブユニットタンパク質L35Aをコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソーム大サブユニットの組み立てに関与します。
・RPS26遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S26をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソーム小サブユニットの成熟に関与します。
・RPS24遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S24をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、18S rRNAのプロセシングに関与します。
・RPS17遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S17をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソーム小サブユニットの組み立てに関与します。
・RPS10遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S10をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソーム機能に必須のタンパク質です。
・RPS7遺伝子:
40Sリボソーム小サブユニットタンパク質S7をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、リボソーム小サブユニットの核心構成要素です。
・GATA1遺伝子:
GATA結合タンパク質1をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式をとる唯一の非リボソームタンパク遺伝子です。GATA1は赤血球系細胞と巨核球系細胞の分化に必須の転写因子で、この遺伝子の変異により赤血球造血が特異的に障害されます。エキソン2の変異が多く報告されており、翻訳開始部位の変異により短縮型GATA1(GATA1s)のみが産生されることで発症します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、10の原因遺伝子のみを対象としています。約50%のダイアモンド・ブラックファン貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床診断基準(貧血、網赤血球減少、骨髄赤芽球減少、赤血球アデノシンデアミナーゼ活性上昇など)に基づいた総合的な評価が重要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
乳児期から幼児期に発症した重度の貧血がある方、網赤血球が著明に減少している方、骨髄検査で赤血球系細胞のみが減少している方におすすめします。また、三指節母指、口蓋裂、低身長などの先天奇形を伴う場合や、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。赤血球アデノシンデアミナーゼ(eADA)活性が高い場合も、ダイアモンド・ブラックファン貧血を強く疑う所見です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。乳幼児の場合も、頬粘膜スワブで検査できますので負担が少なく実施できます。
他の貧血性疾患との違いは何ですか?
ダイアモンド・ブラックファン貧血は赤血球系のみが障害され、白血球や血小板は正常です。これに対し、ファンコニ貧血では血球全系統(汎血球減少)が障害されます。また、一過性赤芽球癆(TEC)は通常自然軽快しますが、ダイアモンド・ブラックファン貧血は先天性で持続的な治療が必要です。遺伝子検査により正確な診断が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。GATA1遺伝子のX連鎖遺伝の場合、男児が発症するリスクは50%となります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。また、軽症例や不完全浸透の家系もあるため、家族歴の詳細な評価が重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約50%のダイアモンド・ブラックファン貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床診断基準(貧血、網赤血球減少、骨髄赤芽球減少など)に基づいた診断と治療が引き続き重要です。また、将来新たな原因遺伝子が発見される可能性もあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。特に、ステロイド反応性の予測や造血幹細胞移植の適応についても、遺伝子型に基づいた情報提供が可能です。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、X連鎖遺伝(GATA1遺伝子)の場合は男児が発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
ダイアモンド・ブラックファン貧血の治療はどのように行われますか?
主な治療法はコルチコステロイド療法と輸血療法です。約82%の患者さんがステロイドに初期反応を示しますが、長期的には約40%がステロイド依存、約40%が輸血依存となります。造血幹細胞移植は唯一の根治的治療法ですが、適切なドナーの確保や移植関連合併症のリスクを慎重に評価する必要があります。また、輸血依存症例では鉄キレート療法が重要です。
予後はどうですか?
生命予後は一般的に良好ですが、ステロイド療法や輸血療法の副作用・合併症により、長期にわたり生活の質が影響を受けることがあります。また、ファンコニ貧血より頻度は低いですが、急性骨髄性白血病(AML)や固形腫瘍などの悪性疾患を合併しやすいため、長期的なサーベイランスが重要です。適切な治療と管理により、多くの患者さんは社会生活を維持できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な10の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。乳幼児の検査にも対応しており、頬粘膜スワブで負担を最小限に実施できます。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら