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複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)遺伝子検査|ミネルバクリニック

複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)遺伝子検査|ミネルバクリニック

複合下垂体ホルモン欠損症とは

複合下垂体ホルモン欠損症(Combined Pituitary Hormone Deficiency: CPHD)は、下垂体におけるホルモン産生を阻害する疾患です。脳の中心部に位置する下垂体は、体の成長、代謝、生殖機能など様々な生理機能を調節する重要なホルモンを分泌する器官です。

CPHDでは、成長ホルモン(GH)の欠乏に加えて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、2つの性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン:LH、卵胞刺激ホルモン:FSH)、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のうち少なくとも1つ以上のホルモン欠乏が認められることで生化学的に診断されます。

この疾患の最初の兆候は通常小児期に現れ、低身長や成長速度の遅延として認識されます。適切な診断と治療が行われなければ、患者さんの生活の質(QOL)や予後に大きな影響を及ぼします。思春期早期からのホルモンモニタリングと補充療法が必要です。

遺伝性複合下垂体ホルモン欠損症とは

CPHDには、孤発性(散発性)のものと、遺伝子変異に起因する遺伝性のものがあります。遺伝性CPHDは、下垂体の発生や機能に関与する特定の遺伝子に変異が生じることで発症します。

近年の遺伝学的診断技術の進歩により、PROP1、POU1F1、HESX1、LHX3、LHX4などの遺伝子変異がCPHDの原因となることが明らかになってきました。これらの遺伝子は、下垂体の発生過程や特定のホルモン産生細胞の分化に重要な役割を果たしています。

遺伝性CPHDの中には、単独のホルモン欠損症として発症するものもあれば、複数のホルモンが同時に欠乏する症候群性の形態もあります。症候群性CPHDでは、全前脳胞症(holoprosencephaly)、視神経低形成(septo-optic dysplasia)、聴覚障害、椎体異常などの特徴を伴うことがあります。

症候群性複合下垂体ホルモン欠損症について

視神経低形成症候群(Septo-optic Dysplasia)

視神経低形成症候群は、視神経の低形成、下垂体機能低下症、脳梁欠損を特徴とする症候群です。HESX1遺伝子変異などが原因となることがあります。

主な症状として、視力障害(失明を含む)、眼振、斜視などの眼症状に加え、成長ホルモン欠損による低身長、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、性腺機能低下症などの内分泌症状が現れます。また、発達遅滞や学習障害を伴うこともあります。

全前脳胞症(Holoprosencephaly)

全前脳胞症は、胎児期の脳発生過程で前脳が左右の脳半球に分離しない先天異常です。重症度により、顔面中央部の形成異常(単眼症、鼻の欠損など)から軽度の顔面異常まで幅広いスペクトラムを示します。

内分泌学的には、下垂体や視床下部の形成異常により、複数の下垂体ホルモン欠損を呈することが多く、尿崩症を合併することもあります。OTX2遺伝子やその他の発生関連遺伝子の変異が関与していることがあります。

症状と病態

CPHDの症状は、欠乏しているホルモンの種類と欠乏の程度によって異なります。多くの場合、小児期から症状が現れますが、軽度の場合は成人期まで診断されないこともあります。

CPHDの主な症状には以下があります:

  • 低身長・成長速度の遅延(成長ホルモン欠乏)
  • 小陰茎(男児)
  • 二次性徴の遅延または欠如
  • 筋力低下・易疲労感
  • 腹痛
  • 体重減少または肥満傾向
  • 低血糖(新生児期・乳児期)
  • 寒さに対する不耐性(甲状腺機能低下)
  • 皮膚の乾燥
  • 無月経・不妊(女性)
  • 性欲低下・勃起障害(男性)
  • 低血圧
  • 顔面中央部の形成異常(症候群性の場合)
  • 視力障害(症候群性の場合)

成長ホルモン欠乏症では、小児期に年間成長速度の著しい低下と最終身長の低下が認められます。また、体組成の変化として体脂肪の増加と筋肉量の減少が生じます。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)欠乏では、甲状腺ホルモンの低下により、活動性の低下、寒冷不耐性、皮膚乾燥、便秘、徐脈などの甲状腺機能低下症状が現れます。

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏は生命を脅かす可能性があり、低血糖、低血圧、電解質異常、ストレス時の対応能力低下などを引き起こします。特に新生児期や乳児期の重症低血糖は脳障害のリスクとなるため、早期診断と治療が極めて重要です。

性腺刺激ホルモン(LH、FSH)欠乏では、思春期の二次性徴が遅延または欠如し、成人期には性腺機能低下症による不妊、性欲低下、骨密度低下などが問題となります。

ミネルバクリニックの複合下垂体ホルモン欠損症遺伝子パネル検査の特徴

「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」とは、現在CPHDに関係があると報告されている7つの遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、CPHDに関連する遺伝子を一度に調べられる「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でCPHDの遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、CPHDに関係するとされる7つの遺伝子を一度に調べられる「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるCPHDの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」の場合、CPHDに関係する7つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

家族歴や症状から特定の遺伝子異常を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」ならば、現在CPHDに関係すると報告されている7つの遺伝子を網羅的に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」では、CPHDに関係するとされる7種類の遺伝子をまとめて検査します。このパネルには、PROP1、POU1F1、HESX1などの主要な遺伝子を含め、症候群性CPHDに関連する遺伝子も含まれています。

「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」は、CPHDの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を最大限に高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【CPHDの個人歴または家族歴のある方】に
「複合下垂体ホルモン欠損症NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・低身長または成長障害のあるお子さん
・複数の下垂体ホルモン欠乏が確認されている方
・成長ホルモン欠乏症と診断された方で、他のホルモン異常も疑われる方
・二次性徴の遅延または欠如がある方
・新生児期・乳児期に低血糖を繰り返した方
・小陰茎などの性器発育異常がある男児
・視神経低形成、脳梁欠損、顔面中央部の形成異常などを伴う方
・CPHDや下垂体機能低下症の家族歴がある方
・原因不明の複数の内分泌異常がある方
・将来子どもを持つことを考えている方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。体細胞モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

CPHDは、ホルモン欠乏に加えて様々な合併症を伴うことがあり、臨床症状のみから診断することが困難な場合があります。遺伝子検査により原因が判明すると、適切な診断の確立や、より個別化された治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・追加の関連症状やリスクの特定
・より個別化された治療と症状管理
・成長ホルモン補充療法の適応判断
・他の欠乏ホルモンの早期発見と補充療法の開始
・合併症(低血糖、副腎不全など)の予防と管理
・思春期誘発療法の計画
・心理社会的サポートへの接続
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式により近親者のリスクも考慮する必要があります。家族を検査することでそのリスクを明らかにし、早期診断・早期治療につなげることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

GHR, HESX1, LHX3, LHX4, OTX2, POU1F1, PROP1 ( 7遺伝子 )

主要遺伝子:
・PROP1:下垂体特異的転写因子をコードし、最も頻度の高いCPHD原因遺伝子の一つ。GH、TSH、プロラクチン、LH、FSHの欠乏を引き起こす
・POU1F1(旧名PIT1):下垂体前葉のGH、プロラクチン、TSH産生細胞の分化に必須。これら3つのホルモン欠乏を引き起こす
・HESX1:下垂体および前脳の発生に重要。視神経低形成症候群の原因遺伝子の一つ
・LHX3、LHX4:下垂体発生に関与する転写因子。LHX3変異では頸部の可動域制限を伴うことがある
・OTX2:眼および脳の発生に重要。全前脳胞症や眼の異常を伴うCPHDの原因となる
・GHR:成長ホルモン受容体をコードし、成長ホルモン不応症(ラロン症候群)の原因遺伝子

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
お子さんの成長速度が遅い、低身長、二次性徴の遅延、新生児期の低血糖、小陰茎などの症状がある場合におすすめします。また、複数の下垂体ホルモン欠乏が確認されている方、視神経低形成や脳の形成異常を伴う方も検査の適応となります。CPHDや下垂体機能低下症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
患者さんで病原性変異が見つかった場合、遺伝形式によって近親者のリスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は両親・兄弟姉妹・子どもで50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹で25%のリスクがあります。ご家族の検査により、そのリスクを明らかにし、早期診断・早期治療につなげることが重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、症状がある場合は他の原因や未知の遺伝子が関与している可能性があります。主治医と相談して、引き続き適切なホルモン補充療法や経過観察を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
CPHDは遺伝形式によって異なりますが、親から子に受け継がれる可能性があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
CPHDの治療はどのように行われますか?
CPHDの治療は、欠乏しているホルモンを補充するホルモン補充療法が基本です。成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性ホルモンなど、不足しているホルモンを適切に補充します。小児の場合は成長ホルモン療法を早期に開始し、最終身長の正常化を目指します。思春期には性ホルモン補充により二次性徴の誘発を行います。
早期診断の重要性は?
CPHDの早期診断と治療開始は極めて重要です。特に副腎皮質ホルモン欠乏は生命を脅かす可能性があり、低血糖や副腎不全のリスクがあります。また、成長ホルモン療法は早期に開始するほど最終身長の改善効果が高いことが知られています。遺伝子検査により早期に診断を確定し、適切な治療を開始することで、お子さんの成長と発達を最大限サポートできます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では7遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を大幅に短縮できます。PROP1、POU1F1、HESX1などの主要遺伝子に加え、症候群性CPHDに関連する遺伝子も含む包括的な検査により、CPHDの遺伝的原因を見つける可能性を最大限に高めます。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら