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先天性肝線維症NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

先天性肝線維症NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

先天性肝線維症とは

先天性肝線維症(Congenital Hepatic Fibrosis: CHF)は、胎生期の胆管形成過程における胆管板(ductal plate)の形成異常により生じる遺伝性の肝胆道疾患です。病理学的には、門脈域の進行性線維化、胆管板形成異常、肝内門脈枝の分枝異常を特徴とします。

本疾患は胎生8週頃から始まる胆管の発生過程で、胆管板が正常に改造(ductal plate remodeling)されず、遺残胆管が残存することで発症します。肝硬変に類似しますが、小葉の構築は保たれており、門脈域間を連結する著明な線維化と肝内胆管の拡張、つぶれた門脈が特徴的です。

先天性肝線維症は、多くの場合、腎疾患を伴う繊毛病(ciliopathy)に合併します。約65%に嚢胞性腎疾患(特に常染色体劣性多発性嚢胞腎)を合併することが知られており、肝腎線維嚢胞症(hepatorenal fibrocystic diseases)として包括的に分類されます。常染色体劣性多発性嚢胞腎の頻度は出生10,000~40,000に1人とされています。

症状と病態

先天性肝線維症の症状は主に3つのタイプに分類されます。肝線維化の進行とともに門脈圧亢進症状が出現し、胆管の拡張・嚢胞化を伴う場合には胆管炎を発症することがあります。また、約65%の患者さんで腎疾患を合併します。

主要症状

  • 門脈圧亢進症状:肝脾腫、食道・胃静脈瘤、脾機能亢進(血小板減少、汎血球減少)
  • 胆管炎症状:発熱、腹痛、黄疸(主に嚢胞化した胆管病変を認める症例)
  • 肝腫大:形態異常を伴った肝腫大(剣状突起下に左葉を触れる)
  • 腎疾患合併症状:多発性嚢胞腎による腎不全症状
  • 肝肺症候群:肺実質の血管シャントによる低酸素血症
  • 門脈肺高血圧症:まれではあるが重篤な合併症

門脈圧亢進症の特徴

先天性肝線維症における門脈圧亢進症は、肝臓そのものの血流に対する抵抗の増加によって起こり、進行性の線維化と先天性の血管異常によると考えられています。特徴的なのは、肝実質の機能が相対的によく保たれていることです。つまり、肝細胞機能が温存されたまま門脈圧亢進症が起こるという点が、肝硬変とは異なる重要なポイントです。

肝線維症や門脈圧亢進症が悪化するにつれ、脾腫は進行し、血小板数や白血球数は減少し(脾機能亢進)、食道および胃静脈瘤を含む門脈体循環側副血行路が発達します。静脈瘤は大きくなるにつれ出血のリスクが増加します。乳児期以降どの年齢においても静脈瘤出血は起こりえますが、著しい門脈圧亢進症は進行するまで時間がかかり、通常は年長児や成人で起こります。

胆管病変と胆管炎

先天性肝線維症は肝内胆管の肉眼的な嚢胞状拡張を伴う場合と伴わない場合があります。胆管に連続する肉眼的な肝嚢胞を伴った先天性肝線維症は、カロリ症候群(Caroli syndrome)と呼ばれることがあります。胆管の嚢胞化がある場合、胆汁うっ滞や胆管感染のリスクが高まり、反復性の胆管炎を発症することがあります。

カロリ病(Caroli disease)は先天性肝線維症を伴わない胆管枝に連続する肝嚢胞をさし、カロリ症候群よりもまれですが、同じ家族内でともに見られることもあり、おそらく連続した疾患と考えられています。

腎疾患の合併

先天性肝線維症は腎疾患を伴う繊毛障害に合併することが最も多く、特に常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)との合併が高頻度です。腎疾患の重症度は症例によって大きく異なり、新生児期に重篤な腎不全を呈する例から、成人期まで腎機能が保たれる例まで様々です。

長期予後と合併症

先天性肝線維症と診断された場合、無症状であっても門脈圧亢進や胆管炎を引き起こす可能性があるため、定期的な診察が必要です。少なくとも年に1回の門脈圧亢進症に対する全身評価(食道静脈瘤の評価、肝肺症候群の評価、腎疾患の評価、神経学的評価など)を行います。また、成人では胆管癌の発症リスクが高くなることが知られています。

遺伝形式と原因遺伝子

先天性肝線維症は遺伝学的に多様性が高く、複数の遺伝子変異が原因となります。最も重要な原因遺伝子はPKHD1遺伝子で、常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)に関連します。その他、Joubert症候群、Bardet-Biedl症候群、Meckel-Gruber症候群、Sensenbrenner症候群など、多系統にわたる繊毛病症候群に合併することが知られています。

繊毛病(Ciliopathy)としての先天性肝線維症

先天性肝線維症の原因遺伝子産物は、いずれも細胞表面にある非運動性の一次繊毛(primary cilia)基部のbasal bodiesに局在し、一次繊毛の機能に関与しています。一次繊毛は細胞表面に存在する髪の毛のような細胞小器官で、細胞外環境を感知し、様々なシグナル伝達経路を調節する重要な役割を担っています。

胆管上皮細胞に発現している一次繊毛を構成する蛋白(特にPKHD1など)の異常により、一次繊毛の機能異常が生じ、胆管形成過程の異常に関与することが推測されています。これにより、胎生期の胆管板のremodelingが適切に行われず、遺残胆管が残存し、門脈域の線維化が進行すると考えられています。

主要な原因遺伝子

  • PKHD1遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子で、常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)と先天性肝線維症の両方に関与します。fibrocystin/polyductinをコードし、一次繊毛に局在します。周産期に重篤なARPKDや先天性肝線維症を呈する患児のほとんどはPKHD1に2つのタンパク切断型変異を持ち、新生児期を超えて生存する患児のほとんどは少なくとも1つのより軽度な病原性(ミスセンス)変異を持ちます。
  • PKD1、PKD2遺伝子:主に常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因となりますが、一部の症例で先天性肝線維症を合併することがあります。
  • NPHP遺伝子群(NPHP1、NPHP3、NPHP4など):腎髄質嚢胞性疾患(nephronophthisis)の原因遺伝子で、先天性肝線維症を合併することがあります。

繊毛病症候群と先天性肝線維症

以下の多系統疾患において、先天性肝線維症が合併することが知られています:

  • Joubert症候群:小脳虫部低形成、発達遅滞、呼吸調節異常などを特徴とする疾患で、複数の原因遺伝子(AHI1、CC2D2A、CEP290、RPGRIP1L、TMEM67など)が同定されています。
  • Bardet-Biedl症候群:網膜色素変性症、肥満、多指症、知的障害、腎機能障害などを特徴とし、複数のBBS遺伝子(BBS1、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、BBS10、BBS12など)やその他の遺伝子(ARL6、MKKS、TRIM32、TTC8など)が関与します。
  • Meckel-Gruber症候群:後頭部脳瘤、多発性嚢胞腎、多指症などを特徴とする致死性疾患で、MKS1、CEP290、TMEM67などの遺伝子が関与します。
  • Senior-Løken症候群:腎髄質嚢胞性疾患と網膜色素変性症を特徴とし、NPHP遺伝子群が関与します。
  • Ellis-van Creveld症候群(軟骨外胚葉異形成症):四肢短縮、多指症、歯牙異常、心血管奇形などを特徴とし、EVC、EVC2遺伝子が関与します。
  • 腎髄質嚢胞性疾患(Nephronophthisis):NPHP1、NPHP3、NPHP4、IQCB1などの遺伝子が関与します。

遺伝形式

先天性肝線維症の遺伝形式は原因遺伝子によって異なります:

  • 常染色体劣性遺伝:最も頻度が高く、PKHD1遺伝子変異による場合が代表的です。両親が保因者の場合、子どもが発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%、正常である確率は25%です。
  • 常染色体優性遺伝:PKD1、PKD2遺伝子変異による場合など。患者さんの子どもが発症するリスクは50%です。
  • X連鎖遺伝:OFD1遺伝子変異による場合など。

当検査パネルでは、先天性肝線維症および関連する繊毛病症候群に関与する臨床的に重要な34遺伝子を対象としています。これにより、先天性肝線維症の遺伝的原因を効率的に特定することが可能です。

ミネルバクリニックの先天性肝線維症遺伝子パネル検査の特徴

「先天性肝線維症 NGSパネル検査」とは、現在先天性肝線維症の原因として報告されている34の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、先天性肝線維症に関連する34遺伝子を一度に調べられる「先天性肝線維症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で先天性肝線維症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、先天性肝線維症に関係するとされる34の遺伝子を一度に調べられる「先天性肝線維症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える先天性肝線維症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「先天性肝線維症 NGSパネル検査」の場合、34の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から先天性肝線維症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「先天性肝線維症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な34の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「先天性肝線維症 NGSパネル検査」では、先天性肝線維症に関係するとされる34種類の遺伝子(AHI1、ARL13B、ARL6、BBS1、BBS10、BBS12、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、CC2D2A、CEP290、EVC、EVC2、GLIS2、IFT80、INVS、IQCB1、MKKS、MKS1、NEK8、NPHP1、NPHP3、NPHP4、OFD1、PKD1、PKD2、PKHD1、RPGRIP1L、TMEM67、TRIM32、TTC21B、TTC8)をまとめて検査します。

「先天性肝線維症 NGSパネル検査」は、先天性肝線維症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【先天性肝線維症の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性肝線維症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・肝腫大または脾腫がある方
・脾機能亢進性血小板減少症がある方
・原因不明の汎血球減少症がある方
・吐血または消化管出血の既往がある方
・原因不明の胆管炎を繰り返す方
・腹部画像検査で肝実質の異常(脳回様変化、不均一なエコー輝度)が指摘された方
・多発性嚢胞腎と診断されている、または疑われる方
・肝機能が比較的保たれているにもかかわらず門脈圧亢進症状がある方
・食道静脈瘤がある方
・先天性肝線維症または多発性嚢胞腎の家族歴がある方
・Joubert症候群、Bardet-Biedl症候群などの繊毛病症候群と診断されている方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、先天性肝線維症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、定期的なモニタリング、合併症の早期発見、肝移植を含む治療選択肢の検討を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の肝胆道疾患との鑑別
・合併する腎疾患の早期発見と管理
・門脈圧亢進症の適切な管理(食道静脈瘤の定期的評価と治療)
・胆管炎の予防と早期治療
・肝肺症候群、門脈肺高血圧症などの合併症の早期発見
・胆管癌などの長期合併症のリスク評価と監視
・肝移植の適応時期の判断
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合(最も頻度が高い)、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合、子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

AHI1, ARL13B, ARL6, BBS1, BBS10, BBS12, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, CC2D2A, CEP290, EVC, EVC2, GLIS2, IFT80, INVS, IQCB1, MKKS, MKS1, NEK8, NPHP1, NPHP3, NPHP4, OFD1, PKD1, PKD2, PKHD1, RPGRIP1L, TMEM67, TRIM32, TTC21B, TTC8 ( 34遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・PKHD1遺伝子(最重要):
fibrocystin/polyductinをコードする遺伝子。一次繊毛に局在し、常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)と先天性肝線維症の主要な原因遺伝子です。変異により胆管板のremodelingが障害され、門脈域の線維化が進行します。

・PKD1、PKD2遺伝子:
主に常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因となる遺伝子ですが、一部の症例で先天性肝線維症を合併します。PKD1はpolycystin-1を、PKD2はpolycystin-2(TRPチャネル)をコードします。

・NPHP1、NPHP3、NPHP4遺伝子:
腎髄質嚢胞性疾患(nephronophthisis)の原因遺伝子で、先天性肝線維症を合併することがあります。それぞれnephrocystin-1、nephrocystin-3、nephrocystin-4をコードします。

・AHI1遺伝子:
Joubert症候群の主要な原因遺伝子の一つで、一次繊毛の形成と機能に関与します。小脳虫部低形成、発達遅滞とともに先天性肝線維症を合併することがあります。

・CC2D2A遺伝子:
Joubert症候群およびMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子。一次繊毛の形成に重要な役割を果たします。

・CEP290遺伝子:
Joubert症候群、Meckel-Gruber症候群、Senior-Løken症候群など、複数の繊毛病症候群の原因となる重要な遺伝子。中心体タンパク質をコードします。

・RPGRIP1L遺伝子:
Joubert症候群およびMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子。一次繊毛の基部に局在します。

・TMEM67(MKS3)遺伝子:
Joubert症候群およびMeckel-Gruber症候群の原因遺伝子。一次繊毛の膜タンパク質をコードします。

・MKS1遺伝子:
Meckel-Gruber症候群の原因遺伝子。一次繊毛の基部に局在し、繊毛形成に関与します。

・BBS遺伝子群(BBS1、BBS2、BBS4、BBS5、BBS7、BBS9、BBS10、BBS12):
Bardet-Biedl症候群の原因遺伝子群。網膜色素変性症、肥満、多指症、知的障害、腎機能障害などを特徴とし、先天性肝線維症を合併することがあります。これらの遺伝子はBBSome複合体を形成し、一次繊毛の機能に重要です。

・ARL6(BBS3)遺伝子:
Bardet-Biedl症候群の原因遺伝子。小GTPアーゼファミリーに属し、繊毛内輸送に関与します。

・MKKS(BBS6)遺伝子:
Bardet-Biedl症候群およびMcKusick-Kaufman症候群の原因遺伝子。シャペロンタンパク質をコードします。

・TRIM32(BBS11)遺伝子:
Bardet-Biedl症候群の原因遺伝子の一つ。ユビキチンリガーゼをコードします。

・TTC8(BBS8)遺伝子:
Bardet-Biedl症候群の原因遺伝子。BBSome複合体の構成要素です。

・EVC、EVC2遺伝子:
Ellis-van Creveld症候群(軟骨外胚葉異形成症)の原因遺伝子。四肢短縮、多指症、歯牙異常、心血管奇形とともに先天性肝線維症を合併することがあります。一次繊毛の基部に局在します。

・IQCB1(NPHP5)遺伝子:
Senior-Løken症候群(腎髄質嚢胞性疾患と網膜色素変性症)の原因遺伝子。一次繊毛に局在します。

・NEK8(NPHP9)遺伝子:
腎髄質嚢胞性疾患の原因遺伝子。セリン/トレオニンキナーゼをコードします。

・INVS(NPHP2)遺伝子:
乳児型腎髄質嚢胞性疾患の原因遺伝子。インバーシンをコードし、細胞分裂と繊毛形成に関与します。

・GLIS2遺伝子:
腎髄質嚢胞性疾患の原因遺伝子。転写因子をコードし、腎臓の発生と分化に重要です。

・IFT80遺伝子:
繊毛内輸送(intraflagellar transport)に関与する遺伝子。先天性肝線維症を伴う腎疾患の原因となります。

・TTC21B(IFT139)遺伝子:
繊毛内輸送に関与する遺伝子。腎髄質嚢胞性疾患と先天性肝線維症の原因となります。

・ARL13B遺伝子:
一次繊毛の膜に局在する小GTPアーゼ。Joubert症候群の原因遺伝子の一つです。

・OFD1遺伝子:
口顔指症候群I型(Oral-facial-digital syndrome type I)の原因遺伝子。X連鎖遺伝形式で、先天性肝線維症を合併することがあります。中心体と一次繊毛の基部に局在します。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、34の原因遺伝子のみを対象としています。先天性肝線維症は遺伝学的に多様性が高く、まだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、臨床診断が重要であり、画像検査や病理組織学的検査による診断も必要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
肝腫大や脾腫がある方、原因不明の血小板減少や汎血球減少がある方、消化管出血の既往がある方、原因不明の胆管炎を繰り返す方におすすめします。また、腹部超音波検査やCT検査で肝実質の異常が指摘された方、多発性嚢胞腎と診断されている方、肝機能が比較的保たれているにもかかわらず門脈圧亢進症状がある方も検査をご検討ください。家族に先天性肝線維症や多発性嚢胞腎の方がいる場合も重要です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
多発性嚢胞腎との関係は?
先天性肝線維症は約65%の症例で嚢胞性腎疾患、特に常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)を合併します。両疾患は同じ遺伝子(特にPKHD1遺伝子)の変異により発症することが多く、肝腎線維嚢胞症として包括的に分類されます。腎疾患の重症度は症例によって大きく異なります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
最も頻度の高い遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。この場合、両親は保因者であり、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により保因者かどうかを確認でき、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
先天性肝線維症は遺伝学的に多様性が高く、まだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的に先天性肝線維症と診断されている場合、画像検査や病理組織学的所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。常染色体優性遺伝の場合、患者さんの子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
先天性肝線維症の治療はどのように行われますか?
現在のところ、胆管板形成異常や線維化に対する根本的な治療法はありません。治療は合併症に対する対症療法が中心となります。食道静脈瘤に対する内視鏡的治療、胆管炎に対する抗菌薬治療、門脈圧亢進症に対する管理などが行われます。重症例では肝移植が検討されることもあります。定期的なモニタリングと早期の合併症発見が重要です。
予後はどうですか?
予後は疾患の重症度や合併症の程度によって大きく異なります。肝機能が比較的保たれており、門脈圧亢進症が適切に管理されている場合、長期生存が可能です。重篤な腎不全を合併する場合や、コントロール困難な門脈圧亢進症がある場合は、肝移植や腎移植が必要となることがあります。定期的な評価により、合併症の早期発見と適切な管理が予後改善に重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な34の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら