先天性赤血球形成異常性貧血(CDA)NGS検査パネル|ミネルバクリニック
先天性赤血球形成異常性貧血とは
先天性赤血球形成異常性貧血(Congenital Dyserythropoietic Anemia: CDA)は、遺伝的要因により赤血球の形成過程(赤血球造血)に異常をきたし、慢性的な貧血を呈する稀少疾患群です。厚生労働省により指定難病282として指定されています。
本疾患の特徴は、骨髄における赤芽球(赤血球の前駆細胞)に特徴的な形態異常が認められ、正常な赤血球が十分に産生されない「無効造血」が生じることです。その結果、慢性的な貧血、黄疸、脾腫に加え、長期的には二次性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)が発症し、心臓、肝臓、内分泌器官に障害をきたす可能性があります。
先天性赤血球形成異常性貧血は、臨床症状や骨髄所見、原因遺伝子により複数のタイプに分類されます。主要なタイプとして、I型(CDAN1遺伝子またはC15orf41遺伝子変異)、II型(SEC23B遺伝子変異、最も頻度が高い)、III型(KIF23遺伝子またはRACGAP1遺伝子変異、最も稀)、IV型(KLF1遺伝子またはGATA1遺伝子変異)が知られています。また、ALAS2、CAD、LPIN2、COX4I2、MVK、VPS4A遺伝子の変異により、赤血球形成異常を呈する症例も報告されています。有病率は10万人あたり約2~3人程度と推定されていますが、診断が困難なため実際にはより多くの患者が存在する可能性があります。
症状と病態
先天性赤血球形成異常性貧血の主な症状は、赤血球造血の無効性に起因する慢性貧血です。症状の重症度は、原因遺伝子やその変異の種類により大きく異なります。
主要症状
- 慢性貧血(正球性~大球性、ときに小球性)
- 網赤血球数の不適切な増加(貧血の程度に比して少ない)
- 黄疸(間接ビリルビンの上昇)
- 脾腫、肝腫大
- 胆石症(溶血に伴うビリルビン結石)
- 二次性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)
- 易疲労感、倦怠感、息切れ
- 成長障害(小児期発症例)
タイプ別の特徴
原因遺伝子によって、特徴的な症状パターンが認められることがあります:
- I型(CDAN1、C15orf41遺伝子変異):大球性貧血が特徴的で、網赤血球増多は比較的軽度です。骨髄では赤芽球の核間クロマチン橋が観察されます。四肢遠位部の奇形(多指症、合指症、爪の形成不全など)を4~25%の症例で認めます。比較的重症で、約40%の症例が輸血依存性です。
- II型(SEC23B遺伝子変異、HEMPAS):最も頻度が高く、全CDAの約50%を占めます。正球性~軽度大球性貧血を呈し、肝脾腫が顕著です。骨髄では多核赤芽球が特徴的で、電子顕微鏡で二重膜構造が観察されます。胆石症の合併が多く、鉄過剰症のリスクが高いです。
- III型(KIF23、RACGAP1遺伝子変異):最も稀なタイプで、世界で約60例の報告のみです。骨髄で巨大多核赤芽球(12核以上)が特徴的です。肝腫大は軽度で、ガンマグロブリン異常血症を伴うことがあります。
- IV型(KLF1、GATA1遺伝子変異):赤血球系転写因子の異常により、赤血球形成異常に加え、血小板減少症や持続性胎児ヘモグロビン血症を呈することがあります。
- その他の遺伝子変異:ALAS2変異ではX連鎖性の鉄芽球性貧血様の所見、CAD変異では神経発達障害や痙攣を伴うことがあり、LPIN2変異ではMajeed症候群(慢性再発性多発性骨髄炎と炎症性皮膚症を伴う)、COX4I2変異では膵外分泌機能不全と頭蓋骨肥厚を、MVK変異では周期性発熱を、VPS4A変異では神経発達障害を伴うことがあります。
合併症と長期予後
先天性赤血球形成異常性貧血の重要な合併症として、二次性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)があります。これは、無効造血に伴う腸管からの鉄吸収亢進と、輸血による鉄負荷により生じます。鉄過剰は心筋症、肝硬変、糖尿病、甲状腺機能低下症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、定期的な鉄代謝のモニタリングと、必要に応じた鉄キレート療法が重要です。
予後は疾患のタイプと重症度により異なりますが、適切な管理により多くの患者は正常に近い生活を送ることができます。重症例では定期的な輸血が必要となることがあります。
遺伝形式と原因遺伝子
先天性赤血球形成異常性貧血は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体劣性(潜性)遺伝、常染色体優性(顕性)遺伝、X連鎖遺伝のいずれの形式でも発症します。現在までに10以上の原因遺伝子が同定されていますが、遺伝学的原因が特定されない症例も存在します。
常染色体劣性(潜性)遺伝形式
CDAの多くは常染色体劣性遺伝形式をとります:
- CDAN1遺伝子:CDA I型の原因遺伝子で、コダニン-1というタンパク質をコードします。このタンパク質はクロマチンの構造維持や細胞周期の調節に関与すると考えられています。
- C15orf41(CDIN1)遺伝子:CDA I型の約10~20%を占める原因遺伝子で、エンドヌクレアーゼ様タンパク質をコードします。CDAN1と協働してヒストン代謝に関与します。
- SEC23B遺伝子:CDA II型(HEMPAS)の原因遺伝子で、最も頻度が高いCDAです。SEC23Bは小胞体からゴルジ体への小胞輸送を担うCOPII複合体の構成タンパク質をコードします。
- CAD遺伝子:ピリミジン生合成経路の最初の3つの酵素活性を持つ多機能酵素をコードします。変異により赤血球形成異常に加え、神経発達障害を呈することがあります。
- COX4I2遺伝子:ミトコンドリアの電子伝達系複合体IVのサブユニットをコードします。変異により膵外分泌機能不全と頭蓋骨肥厚を伴うCDAが生じます。
- LPIN2遺伝子:脂質代謝に関与するリピン2をコードします。変異によりMajeed症候群(慢性再発性多発性骨髄炎、炎症性皮膚症、赤血球形成異常性貧血)が生じます。
- MVK遺伝子:メバロン酸キナーゼをコードし、コレステロール生合成経路に関与します。変異により周期性発熱と赤血球形成異常を呈することがあります。
常染色体優性(顕性)遺伝形式
- KIF23遺伝子:CDA III型の原因遺伝子で、細胞分裂時の細胞質分裂に関与するキネシン様タンパク質(MKLP1)をコードします。優性変異により巨大多核赤芽球が形成されます。
- KLF1遺伝子:赤血球系分化に必須の転写因子Krüppel様因子1をコードします。変異によりCDA IV型、持続性胎児ヘモグロビン血症、軽度のサラセミアなど多様な表現型を示します。
X連鎖遺伝形式
- GATA1遺伝子:赤血球系・巨核球系の分化に必須の転写因子GATA-1をコードします。X連鎖性遺伝で、変異により赤血球形成異常に加え、血小板減少症を呈することが多いです。
- ALAS2遺伝子:赤血球特異的δ-アミノレブリン酸合成酵素をコードし、ヘム生合成の律速段階を触媒します。変異によりX連鎖性鉄芽球性貧血が生じ、一部の症例では赤血球形成異常を呈します。
その他の原因遺伝子
- VPS4A遺伝子:ESCRT複合体の構成因子で、細胞質分裂や膜輸送に関与します。変異により神経発達障害を伴う症候性CDAが生じます。常染色体劣性遺伝です。
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な12遺伝子(ALAS2、C15orf41、CAD、CDAN1、COX4I2、GATA1、KIF23、KLF1、LPIN2、MVK、SEC23B、VPS4A)を対象としています。これにより、先天性赤血球形成異常性貧血の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの先天性赤血球形成異常性貧血遺伝子パネル検査の特徴
「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」とは、現在先天性赤血球形成異常性貧血の原因として報告されている12の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、先天性赤血球形成異常性貧血に関連する12遺伝子を一度に調べられる「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で先天性赤血球形成異常性貧血の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、先天性赤血球形成異常性貧血に関係するとされる12の遺伝子を一度に調べられる「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える先天性赤血球形成異常性貧血の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」の場合、12の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から先天性赤血球形成異常性貧血を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な12の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」では、先天性赤血球形成異常性貧血に関係するとされる12種類の遺伝子(ALAS2、C15orf41、CAD、CDAN1、COX4I2、GATA1、KIF23、KLF1、LPIN2、MVK、SEC23B、VPS4A)をまとめて検査します。
「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」は、先天性赤血球形成異常性貧血の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【先天性赤血球形成異常性貧血の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性赤血球形成異常性貧血 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・慢性的な貧血(正球性~大球性、ときに小球性)がある方
・網赤血球数が貧血の程度に比して不適切に低い方
・黄疸(間接ビリルビンの上昇)が認められる方
・脾腫や肝腫大がある方
・胆石症を合併している方
・鉄過剰症(二次性ヘモクロマトーシス)が認められる方
・骨髄検査で赤芽球の形態異常が認められる方
・四肢遠位部の奇形(多指症、合指症など)を伴う貧血の方
・先天性赤血球形成異常性貧血の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、先天性赤血球形成異常性貧血の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、定期的な輸血、鉄キレート療法、葉酸補充、合併症のモニタリングなど、適切な管理を行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の貧血疾患(遺伝性球状赤血球症、サラセミア、鉄芽球性貧血など)との鑑別
・適切な輸血療法の計画
・鉄過剰症のリスク評価と鉄キレート療法の適応判断
・胆石症などの合併症の早期発見と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・インターフェロン療法(CDA I型の一部)や造血幹細胞移植の適応評価
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%です。X連鎖遺伝の場合は、男児が発症するリスクや女児が保因者となるリスクが異なります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
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ALAS2, C15orf41, CAD, CDAN1, COX4I2, GATA1, KIF23, KLF1, LPIN2, MVK, SEC23B, VPS4A ( 12遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ALAS2遺伝子:
赤血球特異的δ-アミノレブリン酸合成酵素をコードする遺伝子。ヘム生合成の最初の律速段階を触媒します。X連鎖性遺伝で、変異によりX連鎖性鉄芽球性貧血(XLSA)が生じます。一部の症例では大球性貧血と赤血球形成異常を呈し、CDA様の表現型を示すことがあります。女性保因者でも症状を呈することがあります。
・C15orf41(CDIN1)遺伝子:
CDA I型の約10~20%を占める原因遺伝子で、エンドヌクレアーゼ様タンパク質をコードします。2つのヘリックス-ターン-ヘリックスドメインとヌクレアーゼドメインを持ち、DNAとの相互作用に関与します。CDAN1と同様に、ヒストンシャペロンAsf1bと相互作用し、ヌクレオソームの組み立てと分解に影響を与えると考えられています。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・CAD遺伝子:
カルバモイルリン酸合成酵素2(CPS2)、アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ(ATCase)、ジヒドロオロターゼ(DHOase)の3つの酵素活性を持つ多機能タンパク質をコードします。ピリミジン生合成経路のde novo合成の最初の3つの段階を触媒し、RNA・DNA合成、糖鎖修飾に必須です。変異により赤血球膜タンパク質の糖鎖修飾異常が生じ、CDA II型様の表現型を呈します。また、神経発達障害、痙攣性脳症、貧血を伴うことがあり、ウリジン補充により改善する可能性があります。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・CDAN1遺伝子:
CDA I型の約80%を占める最も頻度の高い原因遺伝子で、コダニン-1というタンパク質をコードします。コダニン-1の正確な機能は完全には解明されていませんが、ヒストンシャペロンAsf1aと結合してヌクレオソームの組み立てに関与し、細胞周期の調節(特にG1/S期移行)に重要な役割を果たすと考えられています。変異により赤芽球のヘテロクロマチンに異常が生じ、核間クロマチン橋の形成や多核赤芽球が認められます。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・COX4I2遺伝子:
ミトコンドリアの電子伝達系複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ)のサブユニットCOX4-2をコードします。COX4-2はCOX4の2つのアイソフォームの1つで、ミトコンドリアの呼吸鎖の最終段階を担う複合体の必須構成要素です。変異により膵外分泌機能不全、赤血球形成異常性貧血、頭蓋骨肥厚を特徴とする症候群が生じます。骨髄では赤血球過形成、巨赤芽球様変化、多核赤芽球が認められます。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・GATA1遺伝子:
赤血球系および巨核球系の分化と成熟に必須の転写因子GATA-1をコードします。GATA-1は赤血球特異的遺伝子(グロビン遺伝子など)の転写を活性化し、赤血球分化を促進します。X連鎖性遺伝で、変異により赤血球形成異常に加え、血小板減少症(GATA1関連血球減少症)を呈することが多いです。男性では重症の表現型を、女性保因者でも症状を呈することがあります。変異の種類により、赤血球形成異常、血小板減少症、先天性赤芽球性ポルフィリン症、サラセミア様の症状など多様な表現型を示します。
・KIF23遺伝子:
有糸分裂時のキネシン様タンパク質MKLP1(mitotic kinesin-like protein 1)をコードします。MKLP1は細胞分裂の最終段階である細胞質分裂(cytokinesis)に必須で、中心紡錘体と中間体の形成に関与します。CDA III型の原因遺伝子で、優性変異(特にp.P916R変異)により細胞質分裂の異常が生じ、巨大多核赤芽球(12核以上)が形成されます。常染色体優性遺伝形式をとります。
・KLF1遺伝子:
赤血球系分化に必須の転写因子Krüppel様因子1(KLF1、旧名EKLF)をコードします。KLF1は成人型β-グロビン遺伝子の発現制御、赤血球膜タンパク質の発現、ヘム合成酵素の制御など、赤血球分化の多くの側面を調節します。変異によりCDA IV型、持続性胎児ヘモグロビン血症、軽度のβサラセミア、In(Lu)血液型などの多様な表現型を示します。ハプロ不全により症状が生じることが多く、常染色体優性遺伝形式をとります。一部の変異では赤血球形成異常が顕著で、多核赤芽球が認められます。
・LPIN2遺伝子:
脂質代謝に関与するリピン2(lipin-2)をコードします。リピン2はホスファチジン酸ホスファターゼ活性を持ち、脂質代謝とグリセロリン脂質合成の調節に関与します。変異によりMajeed症候群(慢性再発性多発性骨髄炎、炎症性皮膚症、小球性赤血球形成異常性貧血)が生じます。骨髄では赤血球過形成と多核赤芽球(全赤芽球の最大25%)が認められます。リピン2と血液学的異常や自己炎症性骨疾患との関連機序は完全には解明されていません。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・MVK遺伝子:
メバロン酸キナーゼ(mevalonate kinase)をコードし、コレステロールとイソプレノイド生合成経路の初期段階を触媒します。メバロン酸を5-ホスホメバロン酸に変換する反応を触媒し、ステロイド、ドリコール、ユビキノン、ファルネシル化・ゲラニルゲラニル化タンパク質の前駆体となります。変異によりメバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)が生じ、重症型の「メバロン酸尿症」と軽症型の「高IgD症候群(HIDS)」のスペクトラムを呈します。一部の症例で赤血球形成異常性貧血を伴い、周期性発熱発作を特徴とします。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・SEC23B遺伝子:
CDA II型(HEMPAS)の原因遺伝子で、小胞体(ER)からゴルジ体への輸送小胞形成に関与するCOPII複合体の構成タンパク質SEC23Bをコードします。SEC23BはSEC23Aのパラログで、赤血球系細胞での発現が高く、タンパク質の細胞内輸送に必須です。変異により糖タンパク質の糖鎖修飾異常が生じ、赤血球膜の異常につながります。骨髄では多核赤芽球と電子顕微鏡での二重膜構造が特徴的です。CDA II型は全CDAの約50%を占め、最も頻度が高いタイプです。常染色体劣性遺伝形式をとります。
・VPS4A遺伝子:
エンドソーム輸送に必要なESCRT(endosomal sorting complex required for transport)系の構成因子であるATP分解酵素VPS4Aをコードします。VPS4Aは膜のリモデリング、多胞性エンドソームの形成、細胞質分裂の最終段階(abscission)に関与します。変異により細胞質分裂と細胞内輸送の欠陥が生じ、症候性CDA(神経発達障害、発達遅延、小頭症、赤血球形成異常性貧血)が生じます。骨髄では赤血球過形成と多核赤芽球が認められます。常染色体劣性遺伝形式をとります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、12の原因遺伝子のみを対象としています。一部の先天性赤血球形成異常性貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つからないことがあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、RACGAP1遺伝子(CDA III型の一部)など、一部の原因遺伝子はこのパネルに含まれていません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 慢性的な貧血がある方、特に網赤血球数が貧血の程度に比して不適切に低い方、黄疸や脾腫がある方におすすめします。また、骨髄検査で赤芽球の形態異常(多核赤芽球、核間クロマチン橋など)が認められる場合、鉄過剰症を伴う貧血の場合も検査をご検討ください。家族に同様の症状がある場合も重要です。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 他の貧血疾患との違いは何ですか?
- 先天性赤血球形成異常性貧血は、骨髄での赤血球形成過程に異常があり、無効造血により貧血が生じます。遺伝性球状赤血球症は赤血球膜の異常、サラセミアはグロビン鎖合成の異常、鉄芽球性貧血はヘム合成の異常が原因です。当検査により原因遺伝子を特定することで、より正確な診断と適切な管理が可能になります。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝(CDA I型、II型など)の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。常染色体優性遺伝(CDA III型の一部)の場合、子どもが発症するリスクは50%です。X連鎖遺伝(GATA1、ALAS2変異)の場合、性別により異なります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 一部の先天性赤血球形成異常性貧血症例では、既知の遺伝子に変異が見つからないことがあります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状と骨髄所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体劣性遺伝の場合、両親が保因者であれば子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%です。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 先天性赤血球形成異常性貧血の治療はどのように行われますか?
- 治療は疾患のタイプと重症度により異なります。軽症例では経過観察と葉酸補充のみで管理可能ですが、重症例では定期的な輸血が必要です。鉄過剰症に対しては鉄キレート療法を行います。CDA I型の一部ではインターフェロン療法が有効な場合があります。重症例や輸血依存性の症例では、造血幹細胞移植が検討されることがあります。
- 予後はどうですか?
- 予後は疾患のタイプと重症度により大きく異なります。軽症例では正常に近い生活が可能ですが、重症例では定期的な輸血と鉄キレート療法が必要です。最も重要な合併症は二次性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)で、適切な管理を行わないと心筋症、肝硬変、糖尿病などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。適切な管理により、多くの患者さんは長期的に良好な予後が期待できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な12の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら