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先天性糖鎖合成異常症(CDG)・先天性グリコシル化異常症 遺伝子検査|ミネルバクリニック

先天性糖鎖合成異常症(CDG)・先天性グリコシル化異常症 遺伝子検査|ミネルバクリニック

先天性糖鎖合成異常症(CDG)とは

先天性糖鎖合成異常症(Congenital Disorders of Glycosylation: CDG)は、糖鎖の合成や修飾に関わる酵素の遺伝的欠損により引き起こされる、遺伝性の代謝異常症群です。糖鎖とは、タンパク質や脂質に結合する糖の鎖のことで、細胞の機能や生体の恒常性維持に極めて重要な役割を果たしています。

本疾患群は、糖鎖の合成経路の異常により、多数の糖タンパク質や糖脂質の機能が障害されるため、多臓器にわたる多彩な症状を呈することが特徴です。現在までに130種類以上のCDGが報告されており、それぞれ異なる遺伝子変異が原因となっています。

先天性糖鎖合成異常症は、1980年にベルギーのJaeken博士らによって初めて報告されました。当初は「炭水化物欠損糖タンパク質症候群」と呼ばれていましたが、現在では原因遺伝子の名称を用いて「PMM2-CDG」のように表記されます。最も頻度の高いタイプはPMM2-CDG(旧CDG-Ia型)で、全CDG症例の約70%を占めます。

症状と病態

先天性糖鎖合成異常症の症状は非常に多様で、病型や個人によって大きく異なります。多くの場合、乳児期に発症し、多臓器にわたる症状を呈します。最も頻度の高いPMM2-CDGでは、特徴的な臨床像が認められます。

主要症状

  • 精神運動発達遅滞(ほぼ全例に認められる)
  • 筋緊張低下(乳児期から顕著)
  • 体重増加不良・哺乳困難
  • てんかん発作
  • 運動失調・協調運動障害
  • 特徴的顔貌(目立つ前頭部、大きな耳介、眼瞼裂斜上)
  • 眼科異常(内斜視、眼振、視力障害、網膜色素変性症)
  • 皮膚症状(臀部脂肪沈着、乳頭陥没、オレンジ皮様の皮膚)
  • 肝機能障害・肝腫大
  • 心嚢液貯留・心筋症

神経系症状

中枢神経系の障害は本疾患群の中核的症状です。小脳低形成や萎縮が特徴的で、これにより運動失調や協調運動障害が生じます。また、末梢神経障害も認められ、深部腱反射の低下や消失が見られることがあります。

脳卒中様発作は重要な合併症の一つで、突然の意識障害や一時的な麻痺を呈します。これは血液凝固異常に関連していると考えられています。

内分泌・代謝異常

女性患者では高ゴナドトロピン性性腺機能低下症が高頻度に認められ、思春期を迎えないことがあります。男性患者では性発達は比較的正常ですが、精巣のサイズが小さいことがあります。

低血糖、蛋白漏出性胃腸症、低アルブミン血症なども重要な代謝異常です。

血液凝固異常

  • 血液凝固因子(第IX因子、第XI因子)の活性低下
  • プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの活性低下
  • 出血傾向または血栓傾向
  • コリンエステラーゼ活性低下

肝臓病変

肝機能障害は多くのCDGで認められます。肝腫大、肝線維症、胆汁鬱滞、重症例では肝硬変に至ることもあります。トランスアミナーゼ(AST、ALT)の上昇や低コレステロール血症が特徴的です。

重症度のスペクトラム

CDGの重症度は非常に幅広く、胎児水腫や多臓器不全による早期死亡例から、軽度の知的障害のみで成人期に到達する例まで様々です。劇症型では乳児期に死亡することもありますが、軽症例では精神運動発達遅滞や多動のみで比較的良好な経過をたどることもあります。

遺伝形式と原因遺伝子

先天性糖鎖合成異常症は、糖鎖の合成や修飾に関わる多数の遺伝子の変異によって引き起こされます。大部分は常染色体劣性(潜性)遺伝形式をとりますが、常染色体優性(顕性)遺伝やX連鎖遺伝の形式をとるものも存在します。

常染色体劣性(潜性)遺伝形式

大多数のCDGがこの遺伝形式をとります。両親はともに保因者(キャリア)で症状はありませんが、子どもが発症する確率は25%です。主な遺伝子には以下があります:

  • PMM2遺伝子:最も頻度の高い原因遺伝子で、ホスホマンノムターゼ2をコードします。PMM2-CDGは全CDGの約70%を占めます
  • MPI遺伝子:ホスホマンノースイソメラーゼをコードし、マンノース補充療法が有効な数少ないCDGの一つです
  • ALG6遺伝子:PMM2-CDGに次いで頻度の高いタイプで、比較的軽症例が多い傾向があります
  • ALGファミリー遺伝子群:ALG1, ALG2, ALG3, ALG8, ALG9, ALG11, ALG12, ALG13など、多数の遺伝子が脂質結合オリゴ糖鎖の合成に関与します
  • DPM1, DPM3遺伝子:ドリコール-P-マンノース合成に関与します
  • COGファミリー遺伝子群:COG1-COG8は、ゴルジ体内での小胞輸送に関与します

常染色体優性(顕性)遺伝形式

一部のCDGは常染色体優性遺伝形式をとります。この場合、患者の子どもが発症する確率は50%です:

  • GANAB遺伝子:多嚢胞性腎疾患とCDGの症状を呈します
  • PRKCSH遺伝子:多嚢胞性肝疾患の原因となります

X連鎖遺伝形式

X染色体上の遺伝子変異によるCDGもあります:

  • ALG13遺伝子:X連鎖性のN結合型糖鎖合成異常症を引き起こします
  • SSR4遺伝子:結合組織異常を伴うことがあります
  • MAGT1遺伝子:免疫不全を伴うことが特徴です

当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な40遺伝子を対象としています。これにより、先天性糖鎖合成異常症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。

ミネルバクリニックの先天性糖鎖合成異常症遺伝子パネル検査の特徴

「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」とは、現在先天性糖鎖合成異常症の原因として報告されている40の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、先天性糖鎖合成異常症に関連する40遺伝子を一度に調べられる「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で先天性糖鎖合成異常症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、先天性糖鎖合成異常症に関係するとされる40の遺伝子を一度に調べられる「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える先天性糖鎖合成異常症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」の場合、40の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から先天性糖鎖合成異常症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な40の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」では、先天性糖鎖合成異常症に関係するとされる40種類の遺伝子(ALG1, ALG11, ALG12, ALG13, ALG2, ALG3, ALG6, ALG8, ALG9, ATP6V0A2, B3GLCT, B4GALT1, COG1, COG2, COG4, COG5, COG6, COG7, COG8, DDOST, DHDDS, DOLK, DPAGT1, DPM1, DPM3, GNE, MAGT1, MGAT2, MOGS, MPDU1, MPI, PMM2, RFT1, RPN2, SEC23B, SLC35A1, SLC35C1, SRD5A3, SSR4, TUSC3)をまとめて検査します。

「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」は、先天性糖鎖合成異常症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【先天性糖鎖合成異常症の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性糖鎖合成異常症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・乳児期からの精神運動発達遅滞がある方
・筋緊張低下が認められる方
・体重増加不良・哺乳困難がある方
・てんかん発作がある方
・運動失調・協調運動障害がある方
・特徴的顔貌(目立つ前頭部、大きな耳介、眼瞼裂斜上)がある方
・眼科異常(内斜視、眼振、視力障害)がある方
・皮膚症状(臀部脂肪沈着、乳頭陥没、オレンジ皮様の皮膚)がある方
・肝機能障害・肝腫大がある方
・血液凝固異常がある方
・脳卒中様発作の既往がある方
・トランスフェリンアイソフォーム分析で異常が認められた方
・先天性糖鎖合成異常症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、先天性糖鎖合成異常症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な栄養管理、合併症のモニタリング、リハビリテーション、必要に応じた専門的治療を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の神経発達症や代謝性疾患との鑑別
・MPI-CDGの場合、マンノース補充療法の適応判断
・栄養管理の最適化(経管栄養、胃瘻の適応判断)
・血液凝固異常の管理と血栓症予防
・てんかん治療の最適化
・肝機能障害のモニタリングと管理
・内分泌異常(甲状腺機能低下症、性腺機能低下症)の早期発見と治療
・脳卒中様発作の予防と対応
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、多くは常染色体劣性遺伝のため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ALG1, ALG11, ALG12, ALG13, ALG2, ALG3, ALG6, ALG8, ALG9, ATP6V0A2, B3GLCT, B4GALT1, COG1, COG2, COG4, COG5, COG6, COG7, COG8, DDOST, DHDDS, DOLK, DPAGT1, DPM1, DPM3, GNE, MAGT1, MGAT2, MOGS, MPDU1, MPI, PMM2, RFT1, RPN2, SEC23B, SLC35A1, SLC35C1, SRD5A3, SSR4, TUSC3 ( 40遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ALG1遺伝子:
マンノシルトランスフェラーゼをコードし、脂質結合オリゴ糖鎖の合成に関与します。ALG1-CDGは重症型が多く、乳児期発症の精神運動発達遅滞、筋緊張低下、てんかんを呈します。

・ALG2遺伝子:
α-1,3-マンノシルトランスフェラーゼをコードします。ALG2-CDGは稀な疾患で、重度の発達遅滞と多臓器症状を呈します。

・ALG3遺伝子:
α-1,3-マンノシルトランスフェラーゼをコードします。ALG3-CDGは重症型で、小頭症、てんかん、視神経萎縮を伴うことがあります。

・ALG6遺伝子:
α-1,3-グルコシルトランスフェラーゼをコードします。ALG6-CDGはPMM2-CDGに次いで頻度が高く、比較的軽症例が多い傾向があります。運動失調、てんかん、内斜視が特徴的です。

・ALG8遺伝子:
α-1,3-グルコシルトランスフェラーゼをコードします。ALG8-CDGは重症型で、肝病変や腎嚢胞を伴うことがあります。

・ALG9遺伝子:
α-1,2-マンノシルトランスフェラーゼをコードします。ALG9-CDGは軽症型から重症型まで幅広く、小頭症や骨格異常を伴うことがあります。

・ALG11遺伝子:
α-1,2-マンノシルトランスフェラーゼをコードします。ALG11-CDGは知的障害と運動失調が主症状です。

・ALG12遺伝子:
α-1,6-マンノシルトランスフェラーゼをコードします。ALG12-CDGは軽症例が多く、軽度の発達遅滞と運動障害を呈します。

・ALG13遺伝子:
UDP-N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼサブユニットをコードします。X連鎖遺伝形式をとり、てんかんと知的障害が主症状です。

・ATP6V0A2遺伝子:
液胞型H+-ATPアーゼのサブユニットをコードします。ATP6V0A2-CDGは皮膚弛緩症と筋ジストロフィーを伴うことが特徴です。

・B3GLCT遺伝子:
β-1,3-グルコシルトランスフェラーゼをコードします。B3GLCT-CDGは重度の発達遅滞、低身長、免疫不全を伴います。

・B4GALT1遺伝子:
β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードします。B4GALT1-CDGは筋ジストロフィー様の症状を呈します。

・COG1-8遺伝子群:
COG(Conserved Oligomeric Golgi)複合体を構成するサブユニットをコードします。ゴルジ体での小胞輸送に関与し、各CDGは多臓器症状を呈します。COG1-CDGは肝病変と血液凝固異常、COG4-CDGは骨格異常、COG5-CDGは心臓異常が特徴的です。

・DDOST遺伝子:
オリゴ糖転移酵素複合体のサブユニットをコードします。DDOST-CDGは知的障害と小頭症が主症状です。

・DHDDS遺伝子:
デヒドロドリコール合成酵素をコードします。DHDDS-CDGは網膜色素変性症を伴うことが特徴です。

・DOLK遺伝子:
ドリコールキナーゼをコードします。DOLK-CDGは筋緊張低下、てんかん、心筋症を呈します。

・DPAGT1遺伝子:
UDP-N-アセチルグルコサミン-ドリコールリン酸GlcNAcトランスフェラーゼをコードします。DPAGT1-CDGは重度の発達遅滞、てんかん、低身長を伴います。

・DPM1遺伝子:
ドリコール-P-マンノース合成酵素をコードします。DPM1-CDGは筋緊張低下と運動失調が主症状です。

・DPM3遺伝子:
ドリコール-P-マンノース合成酵素複合体のサブユニットをコードします。DPM3-CDGは筋ジストロフィー様症状を呈します。

・GNE遺伝子:
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼをコードします。GNE-CDGは遠位型ミオパチーが特徴です。

・MAGT1遺伝子:
マグネシウムトランスポーターをコードします。MAGT1-CDGはX連鎖免疫不全症を呈します。

・MGAT2遺伝子:
N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIをコードします。MGAT2-CDGは重度の発達遅滞、てんかん、顔面異形を伴います。

・MOGS遺伝子:
マンノシル-オリゴ糖グルコシダーゼをコードします。MOGS-CDGは重症型で、乳児期に死亡することもあります。

・MPDU1遺伝子:
マンノース-P-ドリコール利用不全タンパク質1をコードします。MPDU1-CDGは知的障害、てんかん、視覚障害を呈します。

・MPI遺伝子:
ホスホマンノースイソメラーゼをコードします。MPI-CDGは蛋白漏出性胃腸症、低血糖、肝線維症が特徴で、マンノース補充療法が有効な数少ないCDGの一つです。

・PMM2遺伝子:
ホスホマンノムターゼ2をコードします。PMM2-CDGは最も頻度が高く、全CDGの約70%を占めます。精神運動発達遅滞、筋緊張低下、運動失調、特徴的顔貌、眼科異常、皮膚症状、肝機能異常が認められます。

・RFT1遺伝子:
脂質結合オリゴ糖鎖のフリッパーゼをコードします。RFT1-CDGは聴覚障害と視覚障害を伴うことがあります。

・RPN2遺伝子:
オリゴ糖転移酵素複合体のサブユニットをコードします。RPN2-CDGは軽度の知的障害が主症状です。

・SEC23B遺伝子:
COPII小胞のコンポーネントをコードします。SEC23B-CDGは先天性赤血球形成異常性貧血II型を引き起こします。

・SLC35A1遺伝子:
CMP-シアル酸トランスポーターをコードします。SLC35A1-CDGは血小板減少症、免疫不全、出血傾向が特徴です。

・SLC35C1遺伝子:
GDP-フコーストランスポーターをコードします。SLC35C1-CDGは白血球接着不全症II型を引き起こし、反復感染症、精神運動発達遅滞、特徴的顔貌を呈します。

・SRD5A3遺伝子:
ステロイド5α-レダクターゼ3をコードします。SRD5A3-CDGは眼科異常(白内障、緑内障)、小脳萎縮、肝病変を伴います。

・SSR4遺伝子:
シグナル配列受容体δサブユニットをコードします。X連鎖遺伝形式で、知的障害と結合組織異常を呈します。

・TUSC3遺伝子:
オリゴ糖転移酵素複合体の制御因子をコードします。TUSC3-CDGは非症候群性知的障害を引き起こします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

遺伝子特記事項:
ALG1遺伝子(NM_019109.4)のエキソン6-13は、高度に相同な領域の干渉により、当院の現在の検査方法では変異検出感度が低下する可能性があります。

※この検査パネルでは、40の原因遺伝子のみを対象としています。現在までに130種類以上のCDGが報告されており、検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、トランスフェリンアイソフォーム分析などの生化学的検査で糖鎖異常が確認されているにもかかわらず、既知の遺伝子に変異が見つからない場合もあります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
乳児期からの精神運動発達遅滞、筋緊張低下、体重増加不良がある方におすすめします。特にてんかん発作、運動失調、特徴的顔貌(目立つ前頭部、大きな耳介)、眼科異常(内斜視、眼振)、皮膚症状(臀部脂肪沈着、乳頭陥没)が認められる場合は、先天性糖鎖合成異常症の可能性が高くなります。また、トランスフェリンアイソフォーム分析で異常が指摘された場合や、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
PMM2-CDGとは何ですか?
PMM2-CDGは先天性糖鎖合成異常症の中で最も頻度が高く、全CDG症例の約70%を占めます。ホスホマンノムターゼ2という酵素の欠損により、糖タンパク質の合成に異常をきたします。精神運動発達遅滞、筋緊張低下、運動失調、特徴的顔貌、眼科異常、皮膚症状、肝機能異常などの多彩な症状を呈します。重症度は個人差が大きく、乳児期死亡例から軽度知的障害のみの成人例まで幅広いスペクトラムを持ちます。
治療法はありますか?
MPI-CDGに対しては、マンノース補充療法という有効な治療法があります。その他の大部分のCDGについては、現在のところ根本的な治療法はなく、対症療法が中心となります。栄養管理(経管栄養、胃瘻)、てんかん治療、血液凝固異常の管理、リハビリテーション、内分泌異常の治療などが行われます。早期診断により適切な管理を行うことで、QOLの向上が期待できます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
大部分のCDGは常染色体劣性遺伝のため、両親は無症状の保因者です。兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。患者さんで病原性変異が同定された場合、ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。また、X連鎖遺伝形式のCDGの場合は、母方の親族(叔母、いとこなど)も保因者検査を検討することがあります。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
現在までに130種類以上のCDGが報告されており、当検査パネルでは40の主要な遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状やトランスフェリンアイソフォーム分析などの生化学的検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。必要に応じて、全エクソーム解析などのより包括的な遺伝子検査をご検討いただくこともあります。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が同定された場合は、その遺伝子に関連する特異的な症状や合併症のリスク、利用可能な治療法についてもご説明します。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
大部分のCDGは常染色体劣性遺伝のため、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。患者さん本人が子どもを持つ場合、パートナーが保因者でない限り子どもは発症しませんが、全員が保因者となります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
先天性糖鎖合成異常症の予後はどうですか?
予後は病型と重症度によって大きく異なります。劇症型では乳児期に死亡することもありますが、軽症例では精神運動発達遅滞や多動のみで成人年齢に到達することもあります。PMM2-CDGでは、約20%が乳児期に死亡しますが、多くの患者さんは児童期以降も生存します。適切な栄養管理、合併症のモニタリング、リハビリテーションにより、QOLの改善が期待できます。
トランスフェリンアイソフォーム分析とは何ですか?
トランスフェリンアイソフォーム分析は、血清中のトランスフェリンに結合した糖鎖の異常を検出する検査です。多くのN結合型CDGでは、トランスフェリンの糖鎖に異常が認められるため、CDGのスクリーニング検査として有用です。ただし、O結合型CDGやGPIアンカー異常症では異常が検出されないため、臨床症状に基づいて直接遺伝子検査を行うことも重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な40の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。さらに、必要に応じて専門医療機関や患者支援団体への紹介も行います。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら