先天性白内障NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック
先天性白内障とは
先天性白内障は、生まれつき、または乳児期早期に眼球の水晶体が混濁(白く濁る)する疾患です。水晶体は眼の中でレンズの役割を果たす透明な組織で、この透明性が失われることで視力に影響を及ぼします。先天性白内障は約1万人に3〜6人の割合で発症する比較的稀な疾患ですが、治療せずに放置すると重篤な視覚発達障害を引き起こし、失明につながることもあります。
先天性白内障は、片眼性(片方の眼のみ)の場合と両眼性(両方の眼)の場合があり、混濁の程度や範囲も患者さんによって大きく異なります。水晶体全体が混濁している場合もあれば、一部のみが混濁している場合もあります。混濁の程度が軽い場合は、成長するまで気づかれないこともあります。
視覚は生後早期に急速に発達します。特に生後1ヶ月から6〜8歳頃までが視覚発達の重要な時期です。この時期に水晶体の混濁により視覚刺激が遮断されると、視覚遮断弱視となり、手術で混濁を除去しても視力が回復しない可能性があります。そのため、先天性白内障では早期発見と早期治療が極めて重要です。
症状と病態
先天性白内障の主な症状は、水晶体の混濁による視力障害です。混濁の程度や位置により、視力への影響は大きく異なります。
主要症状
- 瞳孔が白く見える(白色瞳孔)
- 視力低下または視覚発達の遅れ
- 斜視(片眼性白内障の場合、生後3〜4ヶ月頃から)
- 眼振(眼球の揺れ:両眼性白内障の場合、生後10週以降)
- 対象物に視線を固定できない
- 光に対する反応の異常
- 視覚遮断弱視(早期治療がなされなかった場合)
白内障の分類
先天性白内障は、混濁の位置や形態によって以下のように分類されます:
- 核白内障:水晶体の中心部(核)が混濁するタイプ。クリスタリン遺伝子変異で多く見られます
- 層状白内障(板状白内障):水晶体の特定の層が混濁するタイプ
- 皮質白内障:水晶体の外側部分(皮質)が混濁するタイプ
- 前極白内障:水晶体の前面が混濁するタイプ
- 後極白内障:水晶体の後面が混濁するタイプ。PAX6遺伝子変異で見られることがあります
- 縫合白内障:水晶体の縫合線に沿って混濁するタイプ
- 全白内障:水晶体全体が混濁するタイプ。緊急の手術が必要です
視覚発達への影響
先天性白内障による視覚遮断は、視覚発達に深刻な影響を及ぼします。乳幼児期は視覚刺激を受けることで視力が発達する重要な時期であり、この時期に適切な視覚刺激が得られないと、視覚遮断弱視となります。弱視は、手術で混濁を除去しても視力が正常に回復しない状態です。
特に重要なのは、全白内障の場合は生後2〜3週間以内、遅くとも生後2〜3ヶ月以内に手術を行うことです。早期手術により視覚遮断弱視のリスクを大幅に減少させることができます。
合併症
先天性白内障は、以下のような眼科的合併症を伴うことがあります:
- 小眼球症(眼球が小さい)
- 小角膜症(角膜が小さい)
- 前眼部形成異常
- 緑内障
- 網膜剥離
- 硝子体混濁
遺伝形式と原因遺伝子
先天性白内障の原因は多様で、遺伝的要因、子宮内感染、代謝性疾患、染色体異常など様々です。遺伝性の先天性白内障は全体の約25〜50%を占め、その中でも単独の白内障(非症候群性白内障)では約50%がクリスタリン遺伝子の変異によるものと報告されています。
遺伝形式
先天性白内障の遺伝形式は以下のように分類されます:
- 常染色体優性(顕性)遺伝:最も頻度が高く、約75%を占めます。親のどちらかが病原性変異を持つ場合、子どもが白内障を発症する確率は50%です
- 常染色体劣性(潜性)遺伝:約25%を占めます。両親がともに保因者の場合、子どもが白内障を発症する確率は25%です
- X連鎖遺伝:NHS遺伝子変異による場合など、稀ですが重要です
主要な原因遺伝子
先天性白内障に関連する遺伝子は、その機能により以下のように分類されます:
1. クリスタリン遺伝子(最も重要)
水晶体の透明性を維持するタンパク質をコードする遺伝子群で、単独の先天性白内障の約50%を占めます:
- αクリスタリン:CRYAA、CRYAB
- βクリスタリン:CRYBA1、CRYBA2、CRYBA4、CRYBB1、CRYBB2、CRYBB3
- γクリスタリン:CRYGB、CRYGC、CRYGD、CRYGS
2. 水晶体構造タンパク質遺伝子
- BFSP1、BFSP2:水晶体線維タンパク質(ビーディン、ファキニン)をコードします
- MIP(別名AQP0):水チャネルタンパク質をコードし、水晶体の透明性維持に重要です
- LIM2:水晶体膜タンパク質をコードします
- VIM:ビメンチンをコードし、細胞骨格の維持に関与します
3. ギャップジャンクション遺伝子
- GJA3(コネキシン46):細胞間コミュニケーションに重要です
- GJA8(コネキシン50):核白内障や重度の小眼球症を引き起こすことがあります
4. 転写因子遺伝子
- PAX6:眼球発生に必須の遺伝子で、白内障以外にも虹彩低形成、黄斑形成不全などを伴います
- PITX3:水晶体発生に重要で、小眼球症を伴うことがあります
- FOXE3:前眼部形成異常を伴います
- HSF4:熱ショック転写因子をコードします
- SIX6:眼球発生に関与します
- EYA1:眼球・耳・腎臓の発生に関与します
5. 代謝関連遺伝子
- GALK1:ガラクトキナーゼ欠損症の原因遺伝子で、ガラクトース血症により白内障を発症します
- GFER:ミトコンドリア機能に関与します
- AGK:センガーズ症候群(白内障、肥大型心筋症、骨格筋ミオパチー、乳酸アシドーシスを特徴とする)の原因遺伝子です
6. X連鎖遺伝子
- NHS:Nance-Horan症候群の原因遺伝子で、白内障、歯の異常、知的障害を伴います。X連鎖優性遺伝形式をとります
非遺伝性の原因
遺伝性以外の先天性白内障の原因として、以下があります:
- 子宮内感染:風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、梅毒などの感染症。特に風疹は先天性白内障の重要な原因です
- 代謝性疾患:ガラクトース血症、ウィルソン病、低カルシウム血症など
- 染色体異常:ダウン症候群(21トリソミー)など
- 薬剤:妊娠中の母親のテトラサイクリン系抗生物質使用など
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な56遺伝子を対象としています。これにより、先天性白内障の主要な遺伝的原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの先天性白内障遺伝子パネル検査の特徴
「先天性白内障 NGSパネル検査」とは、現在先天性白内障の原因として報告されている56の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、先天性白内障に関連する56遺伝子を一度に調べられる「先天性白内障 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で先天性白内障の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、先天性白内障に関係するとされる56の遺伝子を一度に調べられる「先天性白内障 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える先天性白内障の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「先天性白内障 NGSパネル検査」の場合、56の遺伝子を、2〜3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から先天性白内障を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「先天性白内障 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な56の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「先天性白内障 NGSパネル検査」では、先天性白内障に関係するとされる56種類の遺伝子をまとめて検査します。対象遺伝子にはクリスタリン遺伝子群、水晶体構造タンパク質遺伝子、ギャップジャンクション遺伝子、転写因子遺伝子、代謝関連遺伝子などが含まれます。
「先天性白内障 NGSパネル検査」は、先天性白内障の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【先天性白内障の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性白内障 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・生まれつき水晶体の混濁がある方
・瞳孔が白く見える(白色瞳孔)方
・乳児期早期に白内障と診断された方
・片眼性または両眼性の白内障がある方
・斜視や眼振を伴う白内障がある方
・小眼球症や小角膜症を伴う白内障がある方
・先天性白内障の家族歴がある方
・原因不明の視覚発達遅滞がある方
・白内障以外の眼球異常(虹彩低形成、黄斑形成不全など)を伴う方
・全身疾患や症候群に伴う白内障がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、先天性白内障の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、遺伝形式が判明することで、家族への影響や再発リスクについて正確な情報を得ることができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・症候群性白内障と非症候群性白内障の鑑別
・手術時期の決定に関する情報提供
・術後の視覚予後の予測
・合併症(緑内障、小眼球症など)のリスク評価
・全身疾患の早期発見(ガラクトース血症、センガーズ症候群など)
・視覚発達支援プログラムの立案
・弱視訓練の必要性の評価
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
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ABHD12, AGK, BEST1, BFSP1, BFSP2, CAV1, CHMP4B, CLPB, COL18A1, CRYAA, CRYAB, CRYBA1, CRYBA2, CRYBA4, CRYBB1, CRYBB2, CRYBB3, CRYGB, CRYGC, CRYGD, CRYGS, CTDP1, EPHA2, EYA1, FAM126A, FOXE3, FTL, FYCO1, GALK1, GCNT2, GFER, GJA3, GJA8, HSF4, JAM3, LEMD2, LIM2, LSS, MIP, MIR184, MSMO1, NHS, P3H2, PAX6, PITX3, PXDN, RDH11, SIL1, SIPA1L3, SIX6, SLC16A12, SLC33A1, TDRD7, UNC45B, VIM, WFS1 ( 56遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・クリスタリン遺伝子群(最重要):
CRYAA(αA-クリスタリン)、CRYAB(αB-クリスタリン)、CRYBA1(βA1-クリスタリン)、CRYBA2(βA2-クリスタリン)、CRYBA4(βA4-クリスタリン)、CRYBB1(βB1-クリスタリン)、CRYBB2(βB2-クリスタリン)、CRYBB3(βB3-クリスタリン)、CRYGB(γB-クリスタリン)、CRYGC(γC-クリスタリン)、CRYGD(γD-クリスタリン)、CRYGS(γS-クリスタリン)
水晶体の透明性を維持する主要タンパク質をコードする遺伝子群。単独の先天性白内障の約50%でクリスタリン遺伝子変異が見つかります。核白内障を引き起こすことが多いです。
・水晶体構造タンパク質遺伝子:
BFSP1、BFSP2:水晶体線維タンパク質(ビーディン、ファキニン)をコードし、水晶体の構造維持に重要です。
MIP(別名AQP0):水チャネルタンパク質をコードし、水晶体の透明性と形態維持に必須です。
LIM2:水晶体膜タンパク質をコードします。
VIM:ビメンチンをコードし、細胞骨格の維持に関与します。
・ギャップジャンクション遺伝子:
GJA3(コネキシン46):細胞間コミュニケーションに重要で、核白内障や層状白内障を引き起こします。
GJA8(コネキシン50):変異により重度の小眼球症、角膜強膜、核白内障を引き起こすことがあります。
・転写因子遺伝子:
PAX6:眼球発生に必須の主要調節遺伝子。白内障、虹彩低形成、黄斑形成不全、角膜混濁などを伴います。
PITX3:水晶体発生に重要で、前極白内障や小眼球症を引き起こします。
FOXE3:前眼部形成異常を伴う白内障の原因遺伝子です。
HSF4:熱ショック転写因子をコードし、核白内障や層状白内障を引き起こします。
SIX6:眼球発生に関与し、小眼球症を伴うことがあります。
EYA1:眼球・耳・腎臓の発生に関与し、聴覚障害や腎臓異常を伴うことがあります。
・代謝・ミトコンドリア関連遺伝子:
GALK1:ガラクトキナーゼをコードし、ガラクトース血症により白内障を発症します。新生児マススクリーニングで発見されることがあります。
AGK:センガーズ症候群(先天性白内障、肥大型心筋症、骨格筋ミオパチー、乳酸アシドーシス)の原因遺伝子です。
GFER:ミトコンドリア機能に関与します。
WFS1:ウォルフラム症候群(糖尿病、視神経萎縮、難聴、白内障)の原因遺伝子です。
・X連鎖遺伝子:
NHS:Nance-Horan症候群の原因遺伝子。X連鎖優性遺伝形式で、男性では重度の白内障、歯の異常、知的障害を、女性では軽度の白内障や歯の異常を伴います。
・その他の重要遺伝子:
EPHA2:受容体チロシンキナーゼをコードし、年齢関連白内障のリスク因子でもあります。
BEST1:カルシウム依存性塩化物イオンチャネルをコードし、網膜疾患を伴うことがあります。
COL18A1:コラーゲンをコードし、Knobloch症候群(高度近視、網膜剥離、後頭蓋骨欠損)の原因遺伝子です。
CAV1:カベオリンをコードし、肺線維症を伴うことがあります。
その他多数の遺伝子:ABHD12、CHMP4B、CLPB、CTDP1、FAM126A、FTL、FYCO1、GCNT2、JAM3、LEMD2、LSS、MIR184、MSMO1、P3H2、PXDN、RDH11、SIL1、SIPA1L3、SLC16A12、SLC33A1、TDRD7、UNC45Bなど、様々な細胞機能や代謝に関与する遺伝子が含まれます。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、56の原因遺伝子のみを対象としています。先天性白内障は遺伝学的に非常に多様性が高く、約50〜75%の症例では遺伝的原因が特定されます。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、非遺伝性の先天性白内障(子宮内感染、代謝性疾患など)は本検査では検出されません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 生まれつき瞳孔が白く見える、乳児期早期に白内障と診断された、片眼または両眼に水晶体の混濁がある、斜視や眼振を伴う、小眼球症や小角膜症を伴うなどの症状がある場合に検査をおすすめします。また、先天性白内障の家族歴がある方や、原因不明の視覚発達遅滞がある方も検査対象となります。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- なぜ遺伝子検査が必要なのですか?
- 先天性白内障の原因を特定することで、症候群性白内障と非症候群性白内障を鑑別し、全身疾患の早期発見(ガラクトース血症、センガーズ症候群など)につながります。また、手術時期の決定、術後の視覚予後の予測、合併症のリスク評価、家族への遺伝リスクの評価など、治療と管理に重要な情報を得ることができます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。X連鎖遺伝(NHS遺伝子)の場合、女性保因者の男児は50%の確率で発症します。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約50〜75%の先天性白内障症例では遺伝的原因が特定されますが、残りの症例では既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、非遺伝性の先天性白内障(子宮内感染、代謝性疾患など)は本検査では検出されないため、臨床症状と他の検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 先天性白内障の治療はどのように行われますか?
- 混濁の程度や範囲により治療方針は異なります。全白内障や視力に大きく影響する白内障の場合は、生後2〜3週間から生後2〜3ヶ月以内の早期手術が推奨されます。手術では白濁した水晶体を除去し、必要に応じて眼内レンズや矯正用眼鏡・コンタクトレンズを使用します。術後は弱視予防のための視能訓練が重要です。
- 予後はどうですか?
- 予後は白内障の程度、手術時期、原因遺伝子、合併症の有無などによって大きく異なります。早期に手術が行われ、適切な視能訓練が実施された場合は良好な視力が得られることが多いです。ただし、重度の白内障で手術が遅れた場合や、視覚遮断弱視が生じた場合は、視力回復が困難なこともあります。また、合併症(緑内障、網膜剥離など)の有無も予後に影響します。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な56の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
- ガラクトース血症などの代謝性疾患も検出できますか?
- はい、本検査パネルにはGALK1遺伝子が含まれており、ガラクトキナーゼ欠損症によるガラクトース血症を検出できます。また、AGK遺伝子によるセンガーズ症候群、WFS1遺伝子によるウォルフラム症候群なども検出可能です。これらの疾患が見つかった場合、早期の食事療法や全身管理により予後を改善できることがあります。
- Nance-Horan症候群とは何ですか?
- Nance-Horan症候群はNHS遺伝子変異によるX連鎖優性遺伝疾患で、先天性白内障、歯の異常(歯の形や配列の異常)、知的障害を特徴とします。男性では重度の症状を呈しますが、女性保因者では軽度の白内障や歯の異常のみのこともあります。本検査により診断が確定することで、歯科治療や発達支援など、適切な多領域の医療支援につながります。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら