コフィン・シリス症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック
コフィン・シリス症候群とは
コフィン・シリス症候群(Coffin-Siris Syndrome: CSS)は、1970年にコフィン医師とシリス医師により初めて報告された極めて稀な遺伝性疾患です。発達遅滞や知的障害、手足の第5指(小指)の爪や末節骨の形成不全、特徴的な顔貌、筋緊張低下などを主な症状とする先天異常症候群です。
本疾患は、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体と呼ばれる遺伝子発現調節機構に関わる複数の遺伝子の変異により引き起こされます。これらの遺伝子の異常により、胎児期から様々な臓器の発達に影響が及び、多彩な症状が出現します。
コフィン・シリス症候群は指定難病(難病指定185)および小児慢性特定疾病に認定されています。適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。早期診断により、合併症の早期発見・治療や、適切な療育支援を開始することが可能となります。
原因遺伝子と遺伝形式
コフィン・シリス症候群の原因となる遺伝子は複数報告されており、現在までに主に以下の遺伝子が同定されています。
主な原因遺伝子
- ARID1B遺伝子:最も頻度が高く、全体の約35-40%を占める
- SMARCB1遺伝子
- SMARCA4遺伝子
- ARID1A遺伝子
- SMARCE1遺伝子
- SOX11遺伝子
- PHF6遺伝子
- DPF2遺伝子
- その他:ADNP、ANKRD11、SMARCA2、TBC1D24など
遺伝形式と発症メカニズム
コフィン・シリス症候群は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとりますが、大多数の症例(約90%以上)は新生突然変異(de novo変異)により発症します。つまり、両親は遺伝子変異を持たず、患者さんの代で初めて遺伝子変異が生じるため、通常は家族歴がありません。
これらの遺伝子はSWI/SNF複合体と呼ばれるクロマチンリモデリング複合体の構成成分をコードしており、遺伝子発現の調節に重要な役割を果たしています。遺伝子変異により、多くの遺伝子の適切な発現が障害され、胎児期の発達に広範な影響を及ぼします。
次世代への遺伝について:
患者さんが将来子どもを持つ場合、その子どもが同じ遺伝子変異を受け継ぐ確率は50%です(常染色体優性遺伝)。ただし、現時点では、コフィン・シリス症候群の患者さんの出産例の報告は限られています。
症状と病態
コフィン・シリス症候群では、神経発達の遅れを中心に、多臓器にわたる様々な症状が出現します。症状の程度や組み合わせは患者さんごとに大きく異なりますが、以下のような特徴が認められます。
主要症状
- 発達遅滞・知的障害:軽度から重度まで様々で、中等度~重度が多い。運動発達(座る、歩くなど)や言語発達の遅れが認められる
- 第5指の異常:手足の小指の爪や末節骨(指先の骨)の形成不全または欠損。これはコフィン・シリス症候群の特徴的な所見
- 特徴的な顔貌:
- 疎な(薄い)頭髪
- 濃い眉毛と長いまつ毛
- 幅広い鼻梁と鼻先
- 厚い口唇(上下とも)
- 幅広い口
- 粗い顔立ち(年齢とともに顕著になることがある)
- 筋緊張低下:全身の筋肉の緊張が低下し、運動発達の遅れにつながる
- 多毛症:体毛が濃い、背中などに毛が生える
成長と発達
- 成長障害(低身長、体重増加不良)
- 小頭症
- 子宮内発育遅延
- 摂食障害・哺乳困難(乳児期)
- 反復性呼吸器感染症にかかりやすい
合併する可能性のある臓器異常
コフィン・シリス症候群では、以下のような臓器異常を合併することがあり、定期的な検査とフォローアップが重要です。
- 心疾患:先天性心疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)
- 消化器系:胃食道逆流症、便秘、腸管の異常
- 泌尿器系:腎臓や尿路の奇形
- 中枢神経系:脳の構造異常(脳梁の異常、脳室拡大など)、てんかん(けいれん発作)
- 眼科的異常:視力障害、斜視、眼振など
- 聴覚障害:難聴
- 骨格系:脊椎の異常、側弯症、関節の過可動性
- 歯科的異常:歯の萌出遅延、歯の形態異常
遺伝子型と表現型の相関
原因遺伝子によって、症状の特徴に若干の違いが見られることがあります。
- ARID1B遺伝子変異:最も頻度が高く、典型的な症状を呈することが多い
- PHF6遺伝子変異:女性に多く、軽度の精神発達遅滞を伴うことがある
- SMARCB1遺伝子変異:重度の知的障害を伴うことが多い
ただし、約40%の臨床的にコフィン・シリス症候群と診断される患者さんでは、既知の原因遺伝子に変異が見つからないこともあり、まだ発見されていない原因遺伝子が存在する可能性があります。
ミネルバクリニックのコフィン・シリス症候群遺伝子パネル検査の特徴
「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」とは、現在コフィン・シリス症候群の原因として報告されている11の遺伝子(ADNP、ANKRD11、ARID1A、ARID1B、PHF6、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1、SOX11、TBC1D24)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、コフィン・シリス症候群に関連する遺伝子を一度に調べられる「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でコフィン・シリス症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、コフィン・シリス症候群に関係するとされる11の遺伝子を一度に調べられる「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるコフィン・シリス症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」の場合、11の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からコフィン・シリス症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」ならば、コフィン・シリス症候群の主要な原因遺伝子11個を同時に検査できるという利点があります。ARID1B遺伝子(最も頻度が高い)をはじめ、複数の原因遺伝子を包括的に評価できます。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」では、コフィン・シリス症候群に関係するとされる11種類の遺伝子(ADNP、ANKRD11、ARID1A、ARID1B、PHF6、SMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1、SOX11、TBC1D24)をまとめて検査します。これらは国内外で報告されている主要な原因遺伝子です。
「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」は、コフィン・シリス症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【コフィン・シリス症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「コフィン・シリス症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・発達遅滞や知的障害がある方
・手足の第5指(小指)の爪や末節骨の形成不全がある方
・特徴的な顔貌(疎な頭髪、濃い眉毛と長いまつ毛、厚い口唇など)がある方
・筋緊張低下がある方
・多毛症がある方
・乳児期に摂食障害や哺乳困難があった方
・反復性呼吸器感染症を起こしやすい方
・先天性心疾患、脳の構造異常、てんかんなどを合併している方
・コフィン・シリス症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている患者さんで、遺伝リスクの評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、コフィン・シリス症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、遺伝的原因が判明した場合には、予想される合併症のモニタリングや、適切な療育支援を早期から開始することができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・合併症(心疾患、てんかん、消化器系異常など)の早期発見と予防的介入
・適切な療育支援(理学療法、作業療法、言語療法)の早期開始
・摂食障害や栄養管理の最適化
・発達支援や教育計画の個別化
・眼科的・聴覚的異常の早期発見と治療
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートグループへの接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供(将来の妊娠時)
・指定難病制度や小児慢性特定疾病制度の申請に必要な診断確定
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、患者さんの子どもが同じ疾患を発症するリスクは50%です。ただし、大多数の症例は新生突然変異によるものであるため、通常は兄弟姉妹への遺伝リスクは低いです。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
ADNP, ANKRD11, ARID1A, ARID1B, PHF6, SMARCA2, SMARCA4, SMARCB1, SMARCE1, SOX11, TBC1D24 ( 11遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・ARID1B遺伝子:
SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成成分をコードする遺伝子。コフィン・シリス症候群の原因遺伝子として最も頻度が高く、全体の約35-40%を占める。この遺伝子の変異により、多くの遺伝子の適切な発現調節が障害され、神経発達や多臓器の形成に影響を及ぼす。
・ARID1A遺伝子:
ARID1Bと同様にSWI/SNF複合体の構成成分をコードする。ARID1B遺伝子と機能的に関連しており、遺伝子発現の調節に重要な役割を果たす。コフィン・シリス症候群の原因遺伝子の一つ。
・SMARCB1遺伝子:
SWI/SNF複合体のコアとなる構成成分をコードする。この遺伝子の変異は、比較的重度の知的障害を伴うことが多い。クロマチンリモデリングにおいて中心的な役割を果たす。
・SMARCA4遺伝子:
SWI/SNF複合体のATPase活性を持つ触媒サブユニットをコードする。クロマチンリモデリングにおいてエネルギーを供給する重要な役割を果たす。コフィン・シリス症候群の原因遺伝子の一つ。
・SMARCE1遺伝子:
SWI/SNF複合体の構成成分をコードする。この遺伝子の変異もコフィン・シリス症候群を引き起こすことが報告されている。
・SOX11遺伝子:
転写因子をコードする遺伝子で、神経発達に重要な役割を果たす。SWI/SNF複合体によって調節される遺伝子の一つであり、この遺伝子の変異もコフィン・シリス症候群の原因となる。特に脳の発達と神経細胞の分化に重要。
・PHF6遺伝子:
転写調節因子をコードする遺伝子。特に女性で報告されることが多く、軽度の精神発達遅滞を伴うことがある。クロマチン修飾や遺伝子発現調節に関与する。
・DPF2遺伝子:
SWI/SNF複合体のサブユニットの一つをコードする。クロマチンリモデリング複合体の機能に寄与し、遺伝子発現調節に関わる。
・ADNP遺伝子:
神経発達に重要な転写因子をコードする遺伝子。この遺伝子の変異は、コフィン・シリス症候群に類似した症状を引き起こすことがある。
・ANKRD11遺伝子:
転写調節因子をコードする遺伝子。この遺伝子の変異は、コフィン・シリス症候群と一部症状が重複するKBG症候群の原因としても知られている。
・SMARCA2遺伝子:
SMARCA4と類似した機能を持つATPaseサブユニットをコードする。SWI/SNF複合体の構成成分として、クロマチンリモデリングに関与する。
・TBC1D24遺伝子:
小胞輸送や神経伝達に関与する遺伝子。この遺伝子の変異は、てんかんや神経発達障害を伴うことがある。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、主要な11遺伝子を対象としています。臨床的にコフィン・シリス症候群が疑われる患者さんの約40%では、既知の遺伝子に変異が見つからないことがあります。これは、まだ発見されていない原因遺伝子が存在する可能性を示唆しています。検査で病原性変異が検出されなくても、コフィン・シリス症候群の可能性を完全に除外するものではありません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 発達遅滞や知的障害がある方、手足の第5指(小指)の爪や末節骨の形成不全がある方、特徴的な顔貌(疎な頭髪、濃い眉毛と長いまつ毛、厚い口唇など)がある方、筋緊張低下がある方、多毛症がある方、乳児期に摂食障害や哺乳困難があった方におすすめします。また、コフィン・シリス症候群の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- コフィン・シリス症候群は常染色体優性遺伝形式をとりますが、大多数の症例(約90%以上)は新生突然変異によるものです。つまり、通常は両親に遺伝子変異はなく、兄弟姉妹への遺伝リスクも低いです。ただし、患者さん本人が将来子どもを持つ場合、その子どもが同じ遺伝子変異を受け継ぐ確率は50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査では主要な11遺伝子を対象としています。臨床的にコフィン・シリス症候群が疑われる患者さんの約40%では、既知の遺伝子に変異が見つからないことがあります。これは、まだ発見されていない原因遺伝子が存在する可能性を示唆しています。検査で病原性変異が検出されなくても、コフィン・シリス症候群の可能性を完全に除外するものではありません。主治医と相談して、臨床診断や追加の検査を検討することが重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後はコフィン・シリス症候群が指定難病(難病指定185)および小児慢性特定疾病に認定されているため、医療費助成制度を利用できる可能性があります。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が見つかった場合は、その遺伝子の特徴、予想される合併症、適切な経過観察の方法などについてもご説明します。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- コフィン・シリス症候群は常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんが将来子どもを持つ場合、その子どもが同じ遺伝子変異を受け継ぐ確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。ただし、現時点では、コフィン・シリス症候群の患者さんの出産例の報告は限られています。
- コフィン・シリス症候群の治療はどのように行われますか?
- コフィン・シリス症候群を根本的に治療する方法は現在ありません。治療は症状に応じて行われ、合併症の早期発見・治療あるいは予防が主体となります。具体的には、心疾患に対する薬物療法や手術、てんかんに対する抗てんかん薬、摂食障害や栄養管理、発達支援のための療育(理学療法、作業療法、言語療法)、眼科的・聴覚的異常の治療などが行われます。各分野を担う医療従事者がチームを組んで、包括的にアプローチすることが重要です。
- 予後はどうですか?
- コフィン・シリス症候群の患者さんの長期的な予後についての十分な情報はまだ得られていません。症状の程度や合併症の有無により、予後は大きく異なります。誤嚥性肺炎やてんかん発作による死亡例も報告されていますが、多くはありません。早期診断と適切な管理により、合併症を予防し、生活の質を向上させることが重要です。定期的な経過観察と、必要に応じた適切な治療・支援により、多くの患者さんが日常生活を送っています。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院ではコフィン・シリス症候群に関連する主要な11遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。遺伝カウンセリングも含めた包括的なサポートを提供しています。
- 診断がつくことでどのようなメリットがありますか?
- 診断が確定することで、指定難病制度や小児慢性特定疾病制度の申請が可能になります。また、身体障害者手帳の取得、特別児童扶養手当の申請など、様々な福祉制度を利用できるようになります。さらに、予想される合併症への備え、適切な療育支援の早期開始、将来の家族計画など、長期的な視点でお子さんの人生を考えることができます。同じ疾患を持つ患者さんやご家族とつながることもできるようになります。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら