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コケイン症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

コケイン症候群NGS遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

コケイン症候群とは

コケイン症候群(Cockayne Syndrome: CS)は、1936年にイギリスの小児科医コケイン博士により「視神経の萎縮と難聴を伴い発育が著明に低下した症例」として最初に報告された極めて稀な遺伝性疾患です。DNA修復機能の障害により、若年から老化が進行する早老症の一種で、中枢神経・末梢神経、皮膚、眼、腎臓など多臓器に進行性の病変を生じます。

本疾患は常染色体劣性遺伝形式をとり、両親は通常無症候性保因者です。日本における発症頻度は100万人に2.7人と報告されており、現在約50~100人の患者さんがいると推定されています。男女差はなく、紫外線性DNA損傷の修復システム、特にヌクレオチド除去修復における転写共役修復(転写領域のDNA損傷の優先的な修復)ができないことにより発症します。

コケイン症候群は指定難病(難病指定192)および小児慢性特定疾病に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。早期診断と適切な管理により、合併症の予防とQOL(生活の質)の向上が期待できます。

症状と病態

コケイン症候群では、紫外線に対する高感受性を示し、DNA損傷の修復機能が障害されることで、全身性の進行性変性疾患として様々な症状が出現します。通常、幼少期から症状が始まり、時間の経過とともに進行します。

主要症状

  • 光線過敏症(少しの日光で日焼けや皮膚の水ぶくれ)
  • 著明な発育・発達遅延(低身長、低体重、小頭症)
  • 特有の早老様顔貌(くぼんだ眼と頬、鳥の嘴様の鼻、老人のような外見)
  • 皮下脂肪の萎縮(るいそう、体重増加不良)
  • 精神運動発達遅滞
  • 視力障害(網膜色素変性、白内障、視神経萎縮)
  • 感音性難聴(聴性脳幹反応の異常)

中枢神経・神経学的症状

コケイン症候群では、中枢神経および末梢神経の障害が特徴的です:

  • 小頭症・脳萎縮
  • 白質病変(有髄線維脱落)
  • 脳内石灰化(特に基底核の石灰化)
  • 小脳変性
  • 錐体路徴候
  • 不随意運動
  • 末梢神経伝導速度の遅延
  • 冷たい手足(血管運動神経異常)

その他の合併症状

全身性の症状として、以下のような多様な症状が認められます:

  • 内分泌異常:視床下部障害(睡眠障害、体温調節異常)、成長障害、性腺機能低下
  • 外分泌異常:う歯(唾液分泌低下)、涙液分泌低下、発汗低下
  • 腎障害
  • 骨格異常:関節拘縮、脊柱変形
  • 重度の虫歯など歯の異常

予後

コケイン症候群の予後は型により異なりますが、視力障害、聴力障害、中枢神経および末梢神経障害の進行により重度の身体障害を来たします。I型(古典型)では10~20歳代で死亡することが多く、II型(重症型)では多くが7歳までに死亡します。現在、根治的治療法はなく、対症療法、紫外線を避ける生活、合併症の管理、リハビリテーション等が行われています。

型分類

コケイン症候群は、症状の重症度や発症時期によって複数の型に分類されます。当検査では、これらすべての型の原因遺伝子を対象としています。

I型(古典型)

最も頻度の高い型で、日本ではコケイン症候群の約90%を占めます。胎生期および出生直後の成長は正常ですが、1~2歳までに発育障害や症状が出現し始めます。身長、体重、頭囲は正常の5パーセンタイルを遙かに下回り、視力障害、聴力障害、神経障害の進行により重度の身体障害を来たします。10~20歳代で死亡することが多いです。

II型(重症型・先天性)

出生時から症状が出現する重症型で、cerebro-oculo-facial syndrome(COFS)またはPena-shokeir症候群II型としても知られています。出生時からの成長障害を特徴とし、ほとんど神経学的な発達を伴いません。先天性の白内障あるいは眼の構造異常を認め、出生早期から脊柱の側彎、後彎、関節の拘縮がみられます。多くは7歳までに死亡します。

III型(軽症型・遅発型)

ほぼ正常の成長・認知機能発達あるいは遅い時期の発症を特徴とする軽症型です。成人期以降に発症することもあります。症状の進行も比較的緩徐です。

色素性乾皮症合併型(XP-CS)

色素性乾皮症(XP)の特徴である顔面の雀斑、若年で発症する皮膚癌などと、コケイン症候群の特徴である知的障害、筋緊張の亢進、低身長、性腺機能低下症を併せもつ型です。幼児期から露光部皮膚癌が生じやすいことが特徴です。ただし、コケイン症候群に特異的な骨格異常や特徴的な顔貌、中枢神経系の脱髄や石灰化はみられません。

このパネル検査では、コケイン症候群の原因遺伝子であるERCC6とERCC8の両方を同時に検査することで、全ての型に対応した効率的な診断が可能です。

ミネルバクリニックのコケイン症候群遺伝子パネル検査の特徴

「コケイン症候群 NGSパネル検査」とは、現在コケイン症候群の原因として報告されている2つの主要遺伝子(ERCC6、ERCC8)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、コケイン症候群に関連する遺伝子を一度に調べられる「コケイン症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でコケイン症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、コケイン症候群に関係するとされる2つの遺伝子を一度に調べられる「コケイン症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるコケイン症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「コケイン症候群 NGSパネル検査」の場合、コケイン症候群に関係する2つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からコケイン症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「コケイン症候群 NGSパネル検査」ならば、主要な原因遺伝子であるERCC6(全症例の約75%)とERCC8(約25%)を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「コケイン症候群 NGSパネル検査」では、コケイン症候群に関係するとされる2種類の遺伝子(ERCC6、ERCC8)をまとめて検査します。これらはコケイン症候群の原因遺伝子として同定されており、ERCC6が約75%、ERCC8が約25%の症例で変異が認められます。

「コケイン症候群 NGSパネル検査」は、コケイン症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【コケイン症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「コケイン症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・少しの日光で日焼けや皮膚の水ぶくれを生じる光線過敏症のある方
・著明な発育・発達遅延(低身長、低体重、小頭症)のある方
・特有の早老様顔貌(くぼんだ眼と頬、鳥の嘴様の鼻)を呈する方
・皮下脂肪の萎縮が認められる方
・精神運動発達遅滞のある方
・視力障害(網膜色素変性、白内障、視神経萎縮)のある方
・感音性難聴のある方
・中枢神経・末梢神経障害のある方
・脳内石灰化や白質病変が画像で認められる方
・コケイン症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、コケイン症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的対策や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・紫外線対策の徹底による症状悪化の予防
・合併症の早期発見と管理
・視力・聴力障害への対応(補聴器・眼鏡の使用)
・リハビリテーションによるQOLの向上
・関節拘縮や筋緊張への対策
・栄養管理と成長・発達のサポート
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ERCC6, ERCC8 ( 2遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ERCC6遺伝子(CSB遺伝子):
コケイン症候群B型(CSB)タンパク質をコードする遺伝子で、染色体10q11.23に位置します。ヌクレオチド除去修復系における転写共役修復に必須の役割を果たし、紫外線によるDNA損傷の修復に関与します。ERCC6遺伝子の変異はコケイン症候群の約75%を占め、最も頻度の高い原因遺伝子です。この遺伝子の異常により、転写されている遺伝子のDNA損傷修復ができなくなり、細胞の老化が促進されます。

・ERCC8遺伝子(CSA遺伝子):
コケイン症候群A型(CSA)タンパク質をコードする遺伝子で、染色体5q12.1に位置します。ERCC6と同様に、ヌクレオチド除去修復系における転写共役修復に関与します。ERCC8遺伝子の変異はコケイン症候群の約25%を占めます。この遺伝子の異常により、紫外線障害によるRNA合成の回復が起こらず、転写と共役した修復が障害されます。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※この検査パネルでは、主要な原因遺伝子であるERCC6とERCC8のみを対象としています。色素性乾皮症関連遺伝子(XPB、XPD、XPG)の検査が必要な場合は、別途ご相談ください。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
少しの日光で日焼けや皮膚の水ぶくれを生じる光線過敏症がある方、著明な発育・発達遅延(低身長、低体重、小頭症)のある方、特有の早老様顔貌を呈する方、視力障害や感音性難聴のある方におすすめします。また、コケイン症候群の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
コケイン症候群は常染色体劣性遺伝形式をとるため、患者さんの兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご両親は通常無症候性保因者です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では主要な原因遺伝子であるERCC6とERCC8のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、色素性乾皮症関連遺伝子(XPB、XPD、XPG)など他の遺伝子の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
コケイン症候群は常染色体劣性遺伝形式をとるため、保因者同士のカップルの場合、お子さんが疾患を発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
コケイン症候群の治療はどのように行われますか?
現在、根治的治療法はありませんが、紫外線を避ける生活、補聴器・眼鏡の使用、合併症に対する対症療法、関節拘縮や筋緊張を和らげるためのリハビリテーション等が行われています。早期診断により、これらの支援を適切に導入することができます。
予後はどうですか?
予後は型により異なります。I型(古典型)では10~20歳代で死亡することが多く、II型(重症型)では多くが7歳までに死亡します。III型(軽症型)は比較的予後が良好です。早期診断と適切な管理により、QOL(生活の質)の向上が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では主要な原因遺伝子であるERCC6とERCC8を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら