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凝固障害(血友病・フォン・ヴィレブランド病)遺伝子検査|ミネルバクリニック

凝固障害(血友病・フォン・ヴィレブランド病)遺伝子検査|ミネルバクリニック

凝固障害とは

凝固障害は、血液が正常に凝固できない状態を指し、出血が止まりにくい、または止血に時間がかかる疾患群です。出血を止めるメカニズムには、血管の収縮、血小板の凝集、凝固因子の連鎖反応という3つの段階があり、凝固障害ではこの凝固因子の段階に異常が生じます。

凝固因子は、第I因子(フィブリノゲン)から第XIII因子まで複数存在し(第VI因子は欠番)、これらが順番に活性化される連鎖反応により、最終的にフィブリンという糊のような物質を形成して血栓を強固にします。凝固障害では、これらの凝固因子のいずれかが欠乏したり、正常に機能しないことで、出血傾向が生じます。

凝固障害には先天性(遺伝性)のものと後天性のものがあります。本検査で対象とする先天性凝固障害は、遺伝子変異により生まれつき特定の凝固因子が欠乏または機能不全となる疾患です。最も一般的なものは血友病A(第VIII因子欠乏)、血友病B(第IX因子欠乏)、フォン・ヴィレブランド病(フォン・ヴィレブランド因子の異常)です。また、先天性フィブリノゲン異常症など、より稀な凝固障害も存在します。

主な凝固障害の種類

血友病A(第VIII因子欠乏症)

血友病Aは最も頻度の高い遺伝性凝固障害で、血友病全体の約80%を占めます。第VIII因子をコードするF8遺伝子の変異により、第VIII因子が欠乏または機能低下します。X連鎖劣性遺伝形式をとるため、主に男性に発症します。日本では約5,500人の患者さんがいると報告されています。

血友病B(第IX因子欠乏症、クリスマス病)

血友病Bは第IX因子をコードするF9遺伝子の変異により、第IX因子が欠乏または機能低下する疾患です。血友病Aと同様にX連鎖劣性遺伝形式をとり、臨床症状も血友病Aとほぼ同じです。日本では約1,200人の患者さんがいると報告されています。血友病全体の約20%を占めます。

フォン・ヴィレブランド病

フォン・ヴィレブランド病は、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)の量的減少または質的異常により出血傾向を呈する疾患です。VWFは血小板を血管壁に粘着させる機能と、第VIII因子を安定化させる機能を持つため、VWFの異常により一次止血と二次止血の両方に障害が生じます。血友病の次に多い出血性疾患で、男女ともに発症します。常染色体優性(顕性)遺伝または劣性(潜性)遺伝の形式をとります。

フォン・ヴィレブランド病は病態により、1型(量的減少)、2型(質的異常、2A・2B・2M・2Nの4亜型)、3型(完全欠損)に分類されます。1型が最も多く、3型は重症ですが稀です。

先天性フィブリノゲン異常症

フィブリノゲン(第I因子)の異常により出血傾向を呈する疾患群で、無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、異常フィブリノゲン血症の3つのタイプがあります。常染色体劣性遺伝または優性遺伝の形式をとります。フィブリノゲンは凝固カスケードの最終産物であるフィブリンの前駆物質であり、この異常は出血症状だけでなく、一部では血栓傾向を示すこともあります。

その他の稀な凝固因子欠乏症

第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XIII因子欠乏症など、他の凝固因子の欠乏症も存在しますが、いずれも稀な疾患です。これらも遺伝性であり、常染色体劣性遺伝の形式をとることが多いです。

症状と病態

凝固障害の主な症状は出血傾向です。症状の重症度は、凝固因子の活性レベルによって大きく異なり、重症型、中等症、軽症に分類されます。

重症度分類

  • 重症:凝固因子活性が1%未満。自然出血が頻繁に起こり、軽微な外傷でも重篤な出血を来します
  • 中等症:凝固因子活性が1~5%。中等度の外傷や運動により出血が起こります
  • 軽症:凝固因子活性が5~40%。大きな外傷、手術、抜歯などの際に出血傾向が明らかになることが多いです

主要症状

  • 皮下出血:軽微な外傷で大小様々なあざ(斑状出血)ができる。乳児期後半から認められることが多い
  • 関節内出血:血友病の最も特徴的な症状。膝、肘、足首などの関節に自然出血が生じ、痛みと腫れを伴う。繰り返すと血友病性関節症となり、関節の変形や運動制限を来す
  • 筋肉内出血:筋肉内に出血し、腫れと痛みを生じる。重症例では神経や血管の圧迫を来すこともある
  • 粘膜出血:鼻出血、歯肉出血、消化管出血、血尿など。フォン・ヴィレブランド病では特に粘膜出血が多い
  • 月経過多:女性の保因者やフォン・ヴィレブランド病患者では月経量が多くなることがある
  • 手術後・抜歯後の出血:手術や歯科処置の際に止血困難となる
  • 頭蓋内出血:重症例では生命に危険を及ぼす頭蓋内出血のリスクがある

血友病性関節症

関節内出血を繰り返すことで、関節の滑膜に炎症が起こり、次第に関節軟骨や骨が破壊されます。進行すると関節の変形や可動域制限、慢性的な痛みを生じ、生活の質を著しく低下させます。適切な治療により関節症の発症や進行を予防することが重要です。

フォン・ヴィレブランド病の特徴

フォン・ヴィレブランド病では、血友病と異なり、鼻出血や歯肉出血などの粘膜出血、皮下出血が主な症状です。多くの場合、血友病よりも軽症です。女性では月経過多が重要な症状となります。抜歯や手術時の出血の多さで初めて診断されるケースもあります。一部の重症例(3型)でのみ、血友病と同様の関節出血が生じます。

ミネルバクリニックの凝固障害遺伝子パネル検査の特徴

「凝固障害 NGSパネル検査」とは、現在凝固障害の原因として報告されている24の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、凝固障害に関連する24遺伝子を一度に調べられる「凝固障害 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で凝固障害の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、凝固障害に関係するとされる24の遺伝子を一度に調べられる「凝固障害 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える凝固障害の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「凝固障害 NGSパネル検査」の場合、24の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から凝固障害を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「凝固障害 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な24の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。また、F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位検出も含まれており、血友病Aの約45~50%を占める重要な変異も検出可能です。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位検出 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「凝固障害 NGSパネル検査」では、凝固障害に関係するとされる24種類の遺伝子(F10、F11、F12、F13A1、F13B、F2、F5、F7、F8、F9、FGA、FGB、FGG、GGCX、GP1BA、KLKB1、KNG1、LMAN1、MCFD2、PLG、SERPINE1、SERPINF2、VKORC1、VWF)をまとめて検査します。

「凝固障害 NGSパネル検査」は、凝固障害の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【凝固障害の個人歴または家族歴のある方】に
「凝固障害 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・原因不明の出血傾向がある方
・軽微な外傷で大きなあざができやすい方
・関節内出血や筋肉内出血を繰り返す方
・鼻出血、歯肉出血が頻繁に起こり止まりにくい方
・手術や抜歯の際に出血が止まりにくかった方
・血液検査でAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長が認められる方
・月経過多がある女性の方
・血友病またはフォン・ヴィレブランド病の家族歴がある方
・凝固障害の保因者と診断されている方で詳細な遺伝型を知りたい方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、凝固障害の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な補充療法、出血予防策、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病などの正確な分類
・適切な凝固因子製剤の選択(第VIII因子製剤、第IX因子製剤、VWF含有製剤など)
・定期補充療法の適応判断と最適化
・インヒビター(抗体)出現のリスク評価
・血友病性関節症の予防と管理
・出血時の迅速な対応計画の立案
・手術や歯科処置時の止血管理の最適化
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。血友病の場合、X連鎖劣性遺伝のため、男性患者の娘は全員保因者となり、保因者の母親から生まれる男児は50%の確率で発症します。フォン・ヴィレブランド病の場合、多くは常染色体優性遺伝のため、子どもが発症または保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

F10, F11, F12, F13A1, F13B, F2, F5, F7, F8, F9, FGA, FGB, FGG, GGCX, GP1BA, KLKB1, KNG1, LMAN1, MCFD2, PLG, SERPINE1, SERPINF2, VKORC1, VWF ( 24遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・F8遺伝子:
血液凝固第VIII因子をコードする遺伝子。X染色体上に位置し、変異により血友病Aを発症します。重症血友病Aの約45~50%はイントロン1またはイントロン22の逆位変異によるもので、当検査ではこの逆位の検出も含まれています。

・F9遺伝子:
血液凝固第IX因子をコードする遺伝子。X染色体上に位置し、変異により血友病B(クリスマス病)を発症します。

・VWF遺伝子:
フォン・ヴィレブランド因子をコードする遺伝子。VWFは血小板を血管壁に粘着させる機能と第VIII因子を安定化させる機能を持ちます。変異によりフォン・ヴィレブランド病を発症します。

・FGA、FGB、FGG遺伝子:
フィブリノゲン(第I因子)の3つの鎖(α鎖、β鎖、γ鎖)をそれぞれコードする遺伝子。変異により無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、異常フィブリノゲン血症を発症します。

・F2遺伝子:
プロトロンビン(第II因子)をコードする遺伝子。変異により第II因子欠乏症を発症します。

・F5遺伝子:
第V因子をコードする遺伝子。変異により第V因子欠乏症(パラ血友病)を発症します。

・F7遺伝子:
第VII因子をコードする遺伝子。変異により第VII因子欠乏症を発症します。比較的軽症であることが多いです。

・F10遺伝子:
第X因子(スチュアート因子)をコードする遺伝子。変異により第X因子欠乏症を発症します。

・F11遺伝子:
第XI因子をコードする遺伝子。変異により第XI因子欠乏症を発症します。アシュケナージ系ユダヤ人に多く見られます。

・F12遺伝子:
第XII因子(ハーゲマン因子)をコードする遺伝子。変異により第XII因子欠乏症を発症しますが、出血症状を示さないことが多いです。

・F13A1、F13B遺伝子:
第XIII因子の2つのサブユニット(A、B)をそれぞれコードする遺伝子。変異により第XIII因子欠乏症を発症します。臍帯出血や創傷治癒遅延が特徴的です。

・GGCX遺伝子:
γグルタミルカルボキシラーゼをコードする遺伝子。ビタミンK依存性凝固因子の活性化に必要な酵素です。変異により複合型凝固因子欠乏症を発症します。

・VKORC1遺伝子:
ビタミンKエポキシド還元酵素複合体サブユニット1をコードする遺伝子。ビタミンKサイクルに関与し、変異により複合型凝固因子欠乏症を発症します。

・LMAN1、MCFD2遺伝子:
凝固因子の細胞内輸送に関与するタンパク質をコードする遺伝子。変異により第V因子と第VIII因子の複合型欠乏症を発症します。

・GP1BA遺伝子:
血小板糖タンパク質Ibαをコードする遺伝子。VWFの受容体であり、変異により血小板型フォン・ヴィレブランド病を発症します。

・KLKB1遺伝子:
カリクレインをコードする遺伝子。接触活性化系に関与します。

・KNG1遺伝子:
キニノゲンをコードする遺伝子。接触活性化系に関与します。

・PLG遺伝子:
プラスミノゲンをコードする遺伝子。線溶系に関与します。

・SERPINE1遺伝子:
プラスミノゲン活性化因子インヒビター1(PAI-1)をコードする遺伝子。線溶系の制御に関与します。

・SERPINF2遺伝子:
α2-プラスミンインヒビターをコードする遺伝子。線溶系の制御に関与し、変異により出血傾向を呈します。

F8遺伝子の特記事項

重症血友病Aの約45~50%は、F8遺伝子のイントロン1またはイントロン22における大きな逆位変異によるものです。この逆位変異は通常の塩基配列決定では検出できないため、特別な検査方法が必要です。当検査パネルでは、このイントロン1/イントロン22逆位の検出が標準で含まれており、血友病Aの主要な原因を包括的に検出することができます。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位(F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位を除く)、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

※F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位は当検査パネルで検出可能です。これにより、重症血友病Aの約45~50%を占める主要な変異を検出できます。

※この検査パネルでは、24の原因遺伝子のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、既知の遺伝子以外の新規遺伝子変異や、未知の疾患メカニズムによる凝固障害の可能性も残ります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
原因不明の出血傾向がある方、軽微な外傷で大きなあざができやすい方、関節内出血や筋肉内出血を繰り返す方におすすめします。また、手術や抜歯の際に出血が止まりにくかった経験がある方、血液検査でAPTTの延長が認められる方、月経過多がある女性の方も検査をご検討ください。家族に血友病やフォン・ヴィレブランド病の方がいる場合も重要な検査対象です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
血友病Aと血友病Bの違いは何ですか?
血友病Aは第VIII因子の欠乏または機能低下、血友病Bは第IX因子の欠乏または機能低下により発症します。臨床症状はほぼ同じですが、治療に使用する凝固因子製剤が異なります(血友病Aは第VIII因子製剤、血友病Bは第IX因子製剤)。血友病Aの方が頻度は高く、血友病全体の約80%を占めます。
フォン・ヴィレブランド病と血友病の違いは何ですか?
フォン・ヴィレブランド病はフォン・ヴィレブランド因子の異常により発症し、常染色体遺伝のため男女ともに発症します。血友病はX連鎖劣性遺伝のため主に男性が発症します。症状面では、フォン・ヴィレブランド病は粘膜出血(鼻出血、歯肉出血)や皮下出血が主で、多くの場合血友病より軽症です。血友病は関節内出血が特徴的です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。血友病の場合、X連鎖劣性遺伝のため、男性患者の娘は全員保因者となり、保因者の母親から生まれる男児は50%の確率で発症します。フォン・ヴィレブランド病の多くは常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが発症または保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
女性も血友病になりますか?
血友病はX連鎖劣性遺伝のため、主に男性に発症しますが、極めて稀に女性も発症します。また、保因者の女性でも、第VIII因子または第IX因子の活性が低下している場合があり、月経過多や手術時の出血傾向を示すことがあります。フォン・ヴィレブランド病は常染色体遺伝のため、男女同じ割合で発症します。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。既知の遺伝子以外の新規遺伝子変異や、未知の疾患メカニズムによる凝固障害の可能性も残ります。臨床症状と凝固検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。血友病の場合、男性患者の娘は全員保因者となり、保因者の母親から生まれる男児は50%の確率で発症します。フォン・ヴィレブランド病の多くは常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
凝固障害の治療はどのように行われますか?
血友病の治療は、不足している凝固因子を製剤で補う補充療法が基本です。血友病Aには第VIII因子製剤、血友病Bには第IX因子製剤を使用します。定期補充療法により出血を予防することで、血友病性関節症の発症を防ぐことができます。フォン・ヴィレブランド病には、VWF含有第VIII因子製剤やデスモプレシンなどが使用されます。
血友病性関節症とは何ですか?
関節内出血を繰り返すことで、関節の滑膜に炎症が起こり、次第に関節軟骨や骨が破壊される状態です。進行すると関節の変形や可動域制限、慢性的な痛みを生じ、生活の質を著しく低下させます。定期補充療法により出血を予防することで、関節症の発症や進行を防ぐことが重要です。
予後はどうですか?
現在では凝固因子製剤による適切な治療により、多くの患者さんは健康な人とほぼ同じ生活を送ることができます。定期補充療法の普及により、血友病性関節症の発症も減少しています。ただし、一部の患者さんではインヒビター(凝固因子に対する抗体)が出現することがあり、その場合は治療が困難になることがあります。
インヒビターとは何ですか?
インヒビターとは、補充療法で投与した凝固因子に対して体内で産生される抗体のことです。インヒビターが出現すると、凝固因子製剤の効果が低下し、止血管理が困難になります。出現率は血友病Aで約30%、血友病Bで約5%です。インヒビターが出現した場合は、バイパス止血製剤や免疫寛容療法などの特別な治療が必要となります。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な24の原因遺伝子を一度に検査でき、F8遺伝子のイントロン1/イントロン22逆位検出も含まれているため、重症血友病Aの主要な原因も包括的に検出できます。従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら