(更新日:2025/10/01)
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
シャルコー・マリー・トゥース病とは
シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease:CMT)は、1886年にシャルコー氏、マリー氏、トゥース氏の3人によって報告された最も頻度の高い遺伝性末梢神経疾患です。末梢神経の発達形成や機能維持に関わる遺伝子の異常により、末梢神経に障害が生じます。
末梢神経とは、脳や脊髄などの中枢神経から分かれて全身に分布する神経で、筋肉を動かす運動神経、触覚や痛み、温度などの感覚を伝える感覚神経、血圧や消化管の動きを調節する自律神経があります。CMTでは、これらの神経が障害されるため、主に四肢遠位部(手足の先)の筋力低下や感覚障害が生じます。
CMTは、遺伝性運動感覚性ニューロパチー(Hereditary Motor and Sensory Neuropathy:HMSN)、腓骨筋萎縮症(peroneal muscular atrophy)とも呼ばれます。世界的な有病率は3,300人に1人、欧米では2,500人に1人、日本では10,000人に1人と推定されており、遺伝性ニューロパチーの中で最も頻度の高い疾患です。
CMTは国の指定難病(指定難病10)および小児慢性特定疾病に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。
症状と病態
CMTの症状は年単位で緩徐に進行するため、いつ症状が出現したのかはっきりしないことが多くあります。一般的には0~20歳頃までに発症することが多いですが、60歳以降に初めて症状に気づく方もいます。
詳細な問診において、「子供の頃からかけっこが遅かった」「子供の頃から足が小さかった」「運動が苦手だった」など、小児期から軽い症状が出現していたことが明らかとなることが多いです。
主要症状
下肢から始まる遠位優位の筋萎縮・筋力低下(足・下腿の筋肉が細くなる)
「逆シャンペンボトル様」の特徴的な脚の形態
凹足(土踏まずが通常より凹んで甲高になる足の変形)
扁平足
鶏歩(つま先が上がりにくいため、太ももを大きく挙上して歩く特徴的な歩き方)
手内筋萎縮(手の筋肉が細くなる)
足趾骨間筋萎縮
感覚障害(下肢優位の手袋・靴下型の感覚低下)
腱反射の低下または消失
易疲労性(疲れやすい)
症状の特徴
CMTの症状には以下のような特徴があります:
左右対称性(両側に同じような症状が出る)
長さ依存性(長い神経ほど症状出現が早く、症状が強い)
下肢の症状が上肢よりも先に、かつ重度に出現する
上肢では手内在筋が障害されやすい
緩徐進行性(何年もかけてゆっくり進行する)
合併症
CMT全体に共通する一般的な合併症として、以下が多く見られます:
腰痛
便秘
足関節拘縮
脊柱変形
足首の捻挫や骨折(筋力低下や変形のため)
遺伝子異常のタイプによって、声帯麻痺、自律神経障害(排尿障害、空咳、瞳孔異常)、視力障害、聴力障害、錐体路障害、糖尿病、脂質代謝異常症などの合併が見られることもあります。重症例では、呼吸不全を来たし、人工呼吸器を必要とする場合もあります。
予後と生活への影響
CMTは基本的に生存期間に影響を与えるような障害はなく、重症度は様々ですが、多くの方は運動障害や感覚障害を抱えながらも仕事を含めた日常生活を継続できます。多くの患者さんは自力歩行または杖歩行が可能ですが、約20%の方は車椅子を使用され、寝たきりになる方は約1%とされています。
CMTの分類
CMTは、臨床症状、電気生理学的検査所見、神経病理所見に基づいて、脱髄型、軸索型、中間型に大別されます。これまでに100種類以上のCMT原因遺伝子が明らかになっており、同一の遺伝子でも異なる臨床型を示すことがあります。
脱髄型CMT(CMT1、CMT4)
神経線維を覆う髄鞘(ミエリン鞘)が障害されるタイプです。神経伝導速度検査では、上肢の正中神経の運動神経伝導速度(MCV)が38m/s未満(多くは20~25m/s)を示します。活動電位はほぼ正常または軽度低下を示し、神経病理所見では節性脱髄やonion bulb(玉ねぎの皮様)の形成を認めます。
CMT1A: CMTの中で最も頻度が高いタイプで、常染色体優性遺伝を示します。CMT全体の約50%、脱髄型の約70%を占めます。PMP22遺伝子の重複が原因です。
CMTX1: 脱髄型で2番目に多いタイプで、X染色体遺伝形式をとります。GJB1遺伝子(コネキシン32)の変異が原因です。男性の方が女性よりも症状が強く出る傾向があります。
その他: MPZ遺伝子、EGR2遺伝子などの変異によるものがあります。CMT4は常染色体劣性遺伝形式をとる脱髄型です。
軸索型CMT(CMT2)
神経線維の中心部分である軸索が障害されるタイプです。神経伝導速度は正常または軽度低下(38m/s以上)を示しますが、活動電位は明らかに低下します。神経病理所見では有髄線維の著明な減少を認めます。
MFN2遺伝子やGJB1遺伝子による変異が多く報告されています。
中間型CMT(DI-CMT)
脱髄型と軸索型のいずれとも分けられない場合は中間型CMTとされています。家系の中で上肢正中神経のMCVが38m/sの上下にまたがる場合もあります。
遺伝形式
CMTの遺伝形式は病型によって異なります:
常染色体優性(顕性)遺伝:両親のどちらかがCMTで、約50%の確率で子どもに遺伝する
常染色体劣性(潜性)遺伝:両親には症状がなくても、それぞれ変異遺伝子を1コピーずつ持つ保因者となっており、子どもで発症することがある
X連鎖遺伝:X染色体上の遺伝子に変異がある。男性の方が症状が強く出やすい
また、CMTでは、de novo変異(突然変異)により発症することも多く、家族歴がない症例も存在します。
ミネルバクリニックのシャルコー・マリー・トゥース病遺伝子パネル検査の特徴
「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」とは、現在シャルコー・マリー・トゥース病、遺伝性感覚性ニューロパチー、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーなどの原因として報告されている59の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、CMTに関連する遺伝子を一度に調べられる「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページ をご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関でシャルコー・マリー・トゥース病の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、シャルコー・マリー・トゥース病に関係するとされる59の遺伝子を一度に調べられる「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行えるシャルコー・マリー・トゥース病の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」の場合、CMTに関係する59の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状からシャルコー・マリー・トゥース病を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」ならば、CMTおよび類似疾患の原因遺伝子59種類を同時に検査できるという利点があります。これには、最も頻度の高いPMP22遺伝子、GJB1遺伝子、MPZ遺伝子、MFN2遺伝子などが含まれます。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」では、シャルコー・マリー・トゥース病、遺伝性感覚性ニューロパチー、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーなどに関係するとされる59種類の遺伝子をまとめて検査します。
「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」は、CMTの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【シャルコー・マリー・トゥース病または末梢神経障害の個人歴または家族歴のある方】に
「シャルコー・マリー・トゥース病 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・下肢遠位部の筋萎縮や筋力低下がある方
・足や下腿の筋肉が細い、または逆シャンペンボトル様の形態を示す方
・凹足や扁平足などの足の変形がある方
・鶏歩などの特徴的な歩き方をする方
・手足の感覚が鈍い、しびれがある方
・子供の頃から運動が苦手だった、走るのが遅かった方
・腱反射の低下または消失が認められる方
・手内筋萎縮がある方
・CMTや末梢神経障害の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、シャルコー・マリー・トゥース病の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・遺伝子型に基づいた予後予測
・将来の治療法開発における臨床試験への参加機会
・装具療法や理学療法など最適なリハビリテーション計画の立案
・合併症の予防と早期対応
・悪化させる可能性のある薬剤の回避(ビンクリスチンなど)
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
CMTは遺伝形式が多様であり、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝など様々なパターンがあります。家族を検査することでリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
詳しくはこちら
AARS, AIFM1, ATL1, ATP7A, BSCL2, COX6A1, DHTKD1, DNAJB2, DNM2, DNMT1, DYNC1H1, EGR2, ELP1, FGD4, FIG4, GAN, GARS, GDAP1, GJB1, GNB4, HINT1, HSPB1, HSPB8, IGHMBP2, INF2, KIF1A, KIF1B, KIF5A, LITAF, LMNA, LRSAM1, MARS, MED25, MFN2, MPZ, MTMR2, NDRG1, NEFL, NGF, NTRK1, PDK3, PLEKHG5, PMP22, PRPS1, PRX, RAB7A, REEP1, RETREG1, SBF1, SBF2, SH3TC2, SLC12A6, SPTLC1, SPTLC2, TRIM2, TRPV4, TTR, WNK1, YARS ( 59遺伝子 )
主な遺伝子の詳細:
・PMP22遺伝子(CMT1A):
末梢ミエリン蛋白22をコードする遺伝子。最も頻度の高いCMT1Aの原因で、PMP22遺伝子の重複(duplication)により発症します。CMT全体の約40~50%、脱髄型の約70%を占めます。常染色体優性遺伝形式をとります。
・GJB1遺伝子(CMTX1):
コネキシン32(ギャップ結合蛋白)をコードする遺伝子。CMTX1の原因で、脱髄型で2番目に多いタイプです。X連鎖遺伝形式をとり、男性の方が女性よりも症状が強く出る傾向があります。
・MPZ遺伝子(CMT1B):
ミエリン蛋白ゼロ(MPZ)をコードする遺伝子。脱髄型で3番目に多く、常染色体優性遺伝または劣性遺伝形式をとります。髄鞘の主要構成成分であり、この遺伝子の変異により脱髄が起こります。
・MFN2遺伝子(CMT2A):
ミトコンドリア融合蛋白ミトフシン2をコードする遺伝子。軸索型CMT(CMT2)で最も頻度が高いタイプです。常染色体優性遺伝形式をとります。
・その他の重要な遺伝子:
EGR2(CMT1D、CMT4E)、LITAF(CMT1C)、GDAP1(CMT2K、CMT4A)、LMNA(CMT2B1)、MED25(CMT2B2)、DNM2(中間型CMT)、YARS(中間型CMT)など、多様な遺伝子が含まれています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能 です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
詳しくはこちら
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルには59の遺伝子が含まれていますが、CMTの原因遺伝子は100種類以上同定されています。パネルに含まれていない遺伝子の変異による場合、検出できない可能性があります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
下肢の筋萎縮や筋力低下がある方、足や下腿の筋肉が細い方、凹足や扁平足などの足の変形がある方、鶏歩などの特徴的な歩き方をする方、手足の感覚が鈍い方、子供の頃から運動が苦手だった方におすすめします。また、CMTや末梢神経障害の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
CMTは遺伝形式が多様で、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝など様々なパターンがあります。患者さんの遺伝子型により、ご家族の発症リスクや保因者リスクが異なります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では59の主要な遺伝子を対象としていますが、CMTの原因遺伝子は100種類以上同定されています。検査で病原性変異が検出されなくても、パネルに含まれていない遺伝子の変異による可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。なお、PMP22遺伝子のFISH検査は健康保険が適応されています。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、遺伝形式、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
CMTの遺伝形式は病型によって異なります。常染色体優性遺伝の場合は約50%の確率で子どもに遺伝し、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで25%の確率で発症します。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
CMTの治療はどのように行われますか?
現時点で根本的な治療法はありませんが、症状の管理とリハビリテーションにより生活の質を改善できます。装具療法(足底板、短下肢装具など)、理学療法、作業療法が中心となります。筋力維持のための適度な運動、肥満の回避、定期的な評価が重要です。重症例では整形外科手術が行われることもあります。
避けるべき薬はありますか?
CMTを悪化させる可能性のある薬剤があります。特にビンクリスチンを含む化学療法は末梢神経へのダメージが大きく、CMTを著しく悪化させる可能性があります。その他にも注意が必要な薬剤があるため、新しい薬を処方される際は必ずCMTであることを医師に伝えてください。
予後はどうですか?
CMTは基本的に生存期間に影響を与えることはなく、寿命の短縮はありません。多くの方は仕事を含めた日常生活を継続できます。約80%の方は自力歩行または杖歩行が可能で、車椅子を使用される方は約20%、寝たきりになる方は約1%です。適切な管理とリハビリテーションにより、生活の質を維持できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院ではCMTに関連する59の遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。PMP22、GJB1、MPZ、MFN2など最も頻度の高い遺伝子を含む包括的なパネルです。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。
妊娠中にCMTが悪化することはありますか?
約9.3%の妊娠でCMTの新しい症状が現れたり、既存の症状(筋力低下や感覚障害、こむら返り、疼痛など)が増悪することがあり、妊娠後も持続する場合があります。CMTは妊娠・分娩中の母体合併症について独立した危険因子があると考えられています。妊娠を計画される場合は、事前に主治医と相談することをおすすめします。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得 して以来、のべ10万人以上 のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら