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繊毛病症候群(Ciliopathies)NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

繊毛病症候群(Ciliopathies)NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック

繊毛病症候群(Ciliopathies)とは

繊毛病症候群(Ciliopathies)は、細胞表面に存在する繊毛(cilia)と呼ばれる微細な毛状構造の異常によって引き起こされる遺伝性疾患群の総称です。繊毛は細胞外の情報を検知するアンテナのような役割を果たしており、ほぼすべての組織に存在します。

繊毛には、呼吸器や卵管などで自律的に運動する「動繊毛」と、ほとんどの細胞に1本だけ発達する「一次繊毛(primary cilia)」の2種類があります。一次繊毛は細胞外の液性および力学的な情報を検知する「感覚器官」として働き、細胞分裂、組織の発生、シグナル伝達など、多様な生命現象に関わっています。

繊毛病症候群は、繊毛の構造や機能に関連する遺伝子の先天的な異常により発症します。現在、200種類以上の繊毛病症候群が知られており、その多くが常染色体劣性遺伝形式をとります。症状は非常に多様で、腎臓、網膜、肝臓、脳、骨格など複数の臓器に影響を及ぼすことが特徴です。

主な繊毛病症候群

繊毛病症候群には多様な疾患が含まれますが、このパネル検査では以下の主要な疾患群を対象としています。

Bardet-Biedl症候群(BBS)

Bardet-Biedl症候群は、肥満、知的障害、網膜色素変性症、多指症、性腺機能低下症、慢性腎障害を主要症状とする常染色体劣性遺伝性疾患です。発生頻度は北米で約10万人に1人、ヨーロッパで約16万人に1人と推定されています。

主な症状には、乳幼児期からの肥満(過食を伴う)、進行性の視力障害(網膜色素変性症による)、手足の余分な指(多指症)、学習困難や認知機能の問題、腎機能障害(進行性)、性腺機能低下、糖尿病、心血管疾患、肝線維化などがあります。女性では多毛症や月経異常、多嚢胞性卵巣症候群を伴うことがあります。

Joubert症候群とその関連疾患(JSRD)

Joubert症候群は、小脳虫部の形成不全を特徴とし、頭部MRIで「臼歯徴候(molar tooth sign)」と呼ばれる特徴的な画像所見を示す遺伝性疾患です。発生頻度は8~10万人に1人程度と推定されています。

主な症状には、乳児期からの筋緊張低下、呼吸パターンの異常(頻呼吸と無呼吸が交互に生じる)、眼球運動失行(スムーズな追視ができない)、運動発達の遅れ、精神運動発達遅滞があります。合併症として、網膜変性(視覚障害)、腎嚢胞や腎機能障害、肝線維化、多指症などが見られることがあります。

有馬症候群は、Joubert症候群関連疾患の中でも重症型で、乳児期早期から重度の精神運動発達遅滞、先天性視覚障害、若年性ネフロン癆(進行性腎機能障害)、眼瞼下垂を特徴とし、小児期までに腎不全に至ることがあります。

多発性嚢胞腎(PKD)

多発性嚢胞腎は、両側の腎臓に多数の嚢胞(液体で満たされた袋状の構造)が形成され、腎機能が徐々に低下する遺伝性疾患です。常染色体優性遺伝形式をとる常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と、常染色体劣性遺伝形式をとる常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)があります。

ADPKDは比較的頻度が高く(約1,000人に1人)、成人期に症状が現れることが多いです。ARPKDはより稀で重症であり、新生児期から乳児期に発症します。症状には、腎臓の腫大、高血圧、腹痛、血尿、尿路感染、腎機能低下などがあり、進行すると透析や腎移植が必要になります。

Meckel症候群

Meckel症候群は、後頭部脳瘤(頭蓋骨の欠損部から脳組織が突出)、多発性嚢胞腎、多指症を三徴候とする重篤な常染色体劣性遺伝性疾患です。多くの症例が胎児期に診断され、周産期に死亡することが多い予後不良な疾患です。

Alstrom症候群

Alstrom症候群は、進行性の視力障害(網膜変性)、難聴、幼児期からの肥満、2型糖尿病、心筋症、腎機能障害、肝機能障害を特徴とする極めて稀な常染色体劣性遺伝性疾患です。ALMS1遺伝子の変異により発症します。

原発性線毛機能不全症候群(PCD)

原発性線毛機能不全症候群は、気道や精子、卵管などの動繊毛の運動機能障害により引き起こされる疾患群です。慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、反復性肺炎、男性不妊、女性不妊などを特徴とします。約50%の症例で内臓逆位(situs inversus)を伴い、その場合はKartagener症候群と呼ばれます。

ネフロン癆(Nephronophthisis)

ネフロン癆は、腎臓の尿細管間質の線維化と萎縮を特徴とする常染色体劣性遺伝性の腎疾患です。多飲、多尿、成長障害などの症状で発症し、若年期に末期腎不全に進行します。網膜変性症、肝線維化、骨格異常などを合併することがあります。

Leber先天性黒内障(LCA)

Leber先天性黒内障は、出生時または乳児期早期から重度の視覚障害を示す遺伝性の網膜ジストロフィーです。網膜の光受容細胞(視細胞)の機能障害により、生後まもなくから重度の視力低下、眼振、瞳孔反応の異常などが現れます。

Ellis-van Creveld症候群

Ellis-van Creveld症候群(軟骨外胚葉形成異常症)は、四肢短縮型の低身長、多指症、爪や歯の異常、先天性心疾患を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患です。EVC遺伝子またはEVC2遺伝子の変異により発症します。

COACH症候群

COACH症候群は、小脳虫部低形成(Cerebellar vermis hypoplasia)、眼球コロボーマ(Oligophrenia)、運動失調(Ataxia)、先天性肝線維化(Congenital hepatic fibrosis)、腎嚢胞(Coloboma、Hepatic fibrosis)を特徴とするJoubert症候群関連疾患の一つです。

口顔指症候群(OFD症候群)

口顔指症候群は、口腔(舌の結節、歯の異常)、顔面(顔面裂、鼻の奇形)、指(多指症、合指症)の奇形を特徴とする症候群です。複数のタイプがあり、一部はX連鎖性遺伝、他は常染色体劣性遺伝形式をとります。脳形成異常、腎嚢胞、網膜ジストロフィーなどを合併することがあります。

症状と病態

繊毛病症候群は、繊毛の機能障害により多臓器にわたる症状を呈します。以下のような症状が見られることがあります。

腎臓の症状

  • 多発性嚢胞腎(両側の腎臓に多数の嚢胞形成)
  • ネフロン癆(尿細管間質の線維化と萎縮)
  • 腎機能障害(進行性、透析や腎移植が必要になることがある)
  • 多尿、多飲
  • 高血圧
  • 血尿、タンパク尿

眼の症状

  • 網膜色素変性症(進行性の視力障害、夜盲)
  • 網膜変性、網膜ジストロフィー
  • Leber先天性黒内障(出生時からの重度視覚障害)
  • 眼球運動失行(スムーズな眼球運動ができない)
  • 眼球コロボーマ(眼球の一部欠損)
  • 眼振
  • 眼瞼下垂

神経系・発達の症状

  • 精神運動発達遅滞
  • 知的障害、学習困難
  • 小脳虫部の低形成または欠損
  • 運動失調(バランスや協調運動の障害)
  • 筋緊張低下(乳児期)
  • けいれん発作
  • 頭蓋顔面の奇形

呼吸器系の症状

  • 呼吸パターンの異常(頻呼吸と無呼吸の交互出現)
  • 慢性副鼻腔炎
  • 反復性気道感染症
  • 気管支拡張症
  • 反復性肺炎

肝臓の症状

  • 先天性肝線維化
  • 肝腫大
  • 門脈圧亢進症
  • 肝機能障害

骨格系の症状

  • 多指症(手足の余分な指)
  • 合指症(指の癒合)
  • 短指症
  • 四肢短縮型の低身長
  • 骨格の奇形
  • 側弯症

その他の症状

  • 肥満(特にBardet-Biedl症候群、Alstrom症候群)
  • 性腺機能低下症、不妊
  • 糖尿病、耐糖能異常
  • 内臓逆位(Kartagener症候群)
  • 先天性心疾患
  • 心筋症
  • 難聴
  • 歯の異常
  • 口腔の奇形(舌の結節、口腔内の過剰組織)

ミネルバクリニックの繊毛病症候群遺伝子パネル検査の特徴

「繊毛病症候群NGSパネル検査」とは、現在繊毛病症候群の原因として報告されている102の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、繊毛病症候群に関連する遺伝子を一度に調べられる「繊毛病症候群NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で繊毛病症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、繊毛病症候群に関係するとされる102の遺伝子を一度に調べられる「繊毛病症候群NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える繊毛病症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「繊毛病症候群NGSパネル検査」の場合、繊毛病症候群に関係する102の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から繊毛病症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「繊毛病症候群NGSパネル検査」ならば、主要な繊毛病症候群の原因遺伝子を包括的に検査できるという利点があります。繊毛病症候群は症状が重複することが多く、一つの疾患として診断されていても、複数の遺伝子変異が関与している可能性があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「繊毛病症候群NGSパネル検査」では、繊毛病症候群に関係するとされる102種類の遺伝子をまとめて検査します。これらの遺伝子は、Bardet-Biedl症候群、Joubert症候群、多発性嚢胞腎、Meckel症候群、Alstrom症候群、原発性線毛機能不全症、Leber先天性黒内障、Ellis-van Creveld症候群、COACH症候群、口顔指症候群、ネフロン癆など、多様な繊毛病症候群の原因遺伝子を含んでいます。

「繊毛病症候群NGSパネル検査」は、繊毛病症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【繊毛病症候群の個人歴または家族歴のある方】に
「繊毛病症候群NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・多発性嚢胞腎または腎嚢胞が認められる方
・進行性の腎機能障害がある方
・網膜色素変性症、網膜変性、または視力障害がある方
・小脳虫部の低形成または欠損が認められる方
・精神運動発達遅滞や知的障害がある方
・多指症、合指症などの指の奇形がある方
・肥満と代謝異常を伴う方
・肝線維化または肝機能障害がある方
・慢性副鼻腔炎や反復性気道感染症がある方
・内臓逆位や先天性心疾患がある方
・複数の臓器にわたる症状がある方
・繊毛病症候群の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、繊毛病症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・疾患特異的な治療法の選択
・腎機能障害の早期発見と管理
・視力障害の進行モニタリングと対策
・肝機能障害の早期発見と管理
・心血管疾患リスクの評価と管理
・呼吸器症状の適切な管理
・発達支援や療育の早期介入
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式の疾患が多いため、兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です(常染色体劣性遺伝の場合)。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ADGRV1, AHI1, AIPL1, ALMS1, ARL13B, ARL6, ATXN10, B9D1, B9D2, BBS1, BBS10, BBS12, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, C2orf71, CC2D2A, CCDC28B, CCDC39, CCDC40, CDH23, CEP104, CEP290, CFTR, CLRN1, CPLANE1, CRB1, CRX, DNAAF1, DNAAF2, DNAH11, DNAH5, DNAI1, DNAI2, DNAJB11, DNAL1, DYNC2H1, DZIP1L, EVC, EVC2, GANAB, GLIS2, GUCY2D, HYLS1, IFT43, IFT80, IMPDH1, INVS, IQCB1, KCNJ13, KIF7, LCA5, LRAT, MKKS, MKS1, MYO7A, NEK1, NEK8, NKX2-5, NME8, NODAL, NPHP1, NPHP3, NPHP4, OFD1, PCDH15, PKD1, PKD2, PKHD1, RD3, RDH12, RPE65, RPGR, RPGRIP1, RPGRIP1L, RSPH4A, RSPH9, SDCCAG8, SPATA7, TCTN1, TCTN2, TMEM216, TMEM231, TMEM67, TOPORS, TRIM32, TTC21B, TTC8, TULP1, UMOD, USH1C, USH1G, USH2A, VHL, WDPCP, WDR19, WDR35, WHRN, XPNPEP3, ZIC3 (102遺伝子)

主要な遺伝子の詳細:

Bardet-Biedl症候群関連遺伝子:
BBS1, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, BBS10, BBS12, ARL6, MKKS, TTC8, TRIM32, SDCCAG8, WDPCP, LZTFL1など。これらの遺伝子は「BBSome」と呼ばれる繊毛内タンパク質複合体の構成要素や、繊毛の形成・機能に関与するタンパク質をコードしています。

Joubert症候群関連遺伝子:
AHI1, NPHP1, CEP290, TMEM67, RPGRIP1L, ARL13B, CC2D2A, OFD1, TCTN1, TCTN2, TMEM216, TMEM231, KIF7, CPLANE1など。これらの遺伝子は小脳の発生や繊毛のシグナル伝達に重要な役割を果たしています。

多発性嚢胞腎関連遺伝子:
PKD1, PKD2(常染色体優性多発性嚢胞腎)、PKHD1(常染色体劣性多発性嚢胞腎)。これらの遺伝子は腎臓の尿細管上皮の繊毛機能に関与しており、変異により腎嚢胞形成が促進されます。

原発性線毛機能不全症関連遺伝子:
DNAH5, DNAH11, DNAI1, DNAI2, DNAAF1, DNAAF2, CCDC39, CCDC40, RSPH4A, RSPH9など。これらの遺伝子は動繊毛の軸糸構造や運動に関与するダイニン腕などの構成要素をコードしています。

Leber先天性黒内障関連遺伝子:
GUCY2D, RPE65, AIPL1, CRB1, CRX, RPGRIP1, LCA5, RDH12, IMPDH1など。これらの遺伝子は網膜の光受容細胞の繊毛や視覚サイクルに関与しています。

その他の主要遺伝子:
・MKS1(Meckel症候群)
・ALMS1(Alstrom症候群)
・EVC, EVC2(Ellis-van Creveld症候群)
・NPHP1, NPHP3, NPHP4, IQCB1(ネフロン癆)
・TMEM67(COACH症候群)

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

遺伝子特異的な注意事項:

RPGR遺伝子:
この検査は、RPGR遺伝子の重要な「ORF15」領域(NM_001034853.1)のほとんどの病原性変異を検出できます。しかし、この遺伝子座の複雑さのため、現在利用可能な検査では、この領域の一部(chrX(GRCh37):38144792-38146498)における変異の存在を完全に除外することはできません。

ZIC3遺伝子:
現在の検査方法では、この遺伝子の三塩基反復伸長は評価されません。

ATXN10遺伝子:
この遺伝子の反復伸長変異は、この検査では検出されません。反復伸長が疑われる場合は、専用の検査が必要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
多発性嚢胞腎、腎機能障害、網膜色素変性症などの視力障害、小脳虫部低形成、精神運動発達遅滞、多指症などの骨格異常、肝線維化、慢性副鼻腔炎、内臓逆位など、複数の臓器にわたる症状がある方におすすめします。また、繊毛病症候群の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
繊毛病症候群の多くは常染色体劣性遺伝形式をとるため、患者さんの兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご両親は通常無症候性保因者です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。一部の疾患(多発性嚢胞腎ADPKDなど)は常染色体優性遺伝のため、遺伝形式に応じた遺伝カウンセリングが重要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査は主要な102の繊毛病症候群関連遺伝子を対象としていますが、まだ発見されていない遺伝子や、この検査では検出できないタイプの変異が原因である可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的に繊毛病症候群が強く疑われる場合は、主治医と相談して、研究レベルの遺伝子検査や、他の診断アプローチを検討することが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は、一部の疾患(Joubert症候群関連疾患など)について指定難病制度や小児慢性特定疾病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢、フォローアップの必要性などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。複数の遺伝子変異が見つかった場合や、病的意義不明変異(VUS)が検出された場合についても丁寧に説明いたします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
繊毛病症候群の多くは常染色体劣性遺伝形式をとるため、保因者同士のカップルの場合、お子さんが疾患を発症する確率は25%です。常染色体優性遺伝の疾患(ADPKD、一部の口顔指症候群など)では、親が変異を持つ場合、50%の確率でお子さんに遺伝します。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
繊毛病症候群の治療はどのように行われますか?
繊毛病症候群の治療は主に対症療法となります。腎機能障害に対しては透析や腎移植、視力障害に対しては補助具の使用や教育的支援、呼吸器症状に対しては気道クリアランス療法や抗生物質治療、発達の遅れに対しては早期療育や特別支援教育などが行われます。疾患によっては特異的な治療法(例:PKDに対するトルバプタン治療)が利用できる場合があります。
予後はどうですか?
予後は疾患の種類と重症度によって大きく異なります。Meckel症候群のように周産期に死亡する重篤な疾患もあれば、適切な管理により比較的長期の生存が可能な疾患もあります。多くの繊毛病症候群では、腎機能障害の進行が生命予後に大きく影響します。早期診断と適切な多職種によるケアにより、生活の質の向上と合併症の予防が期待できます。
複数の遺伝子に変異が見つかることはありますか?
はい、複数の繊毛病症候群関連遺伝子に変異が見つかることがあります。これは「オリゴジェニック遺伝(oligogenic inheritance)」と呼ばれ、複数の遺伝子変異が相互作用して臨床症状を修飾することがあります。このような場合、症状の重症度や表現型が通常とは異なることがあり、遺伝カウンセリングでは個々の遺伝子変異の臨床的意義を総合的に評価してご説明いたします。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では主要な繊毛病症候群関連102遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を大幅に短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。また、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを通じて、検査結果の解釈から家族計画まで、包括的なサポートを提供いたします。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら