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先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 遺伝子パネル検査|ミネルバクリニック

先天性腎尿路異常(CAKUT)とは

先天性腎尿路異常(Congenital Anomalies of the Kidney and Urinary Tract: CAKUT、カクート)は、腎臓と尿路(腎盂・尿管・膀胱・尿道)の形態や機能に先天的な異常がある状態を包括的に表す概念です。母体内での胎児期に、腎臓や尿路が正常に発達しなかったことが主な原因とされています。

CAKUTは小児期から若年層の末期腎不全の原因疾患として最も多く、約3分の1を占めることが知られています。出生頻度は100人から500人に1人程度と推定されており、比較的頻度の高い先天異常です。近年では胎児超音波検査の普及により、出生前に診断されることも増えています。

CAKUTは腎臓そのものの異常から尿路の異常まで、多様な病態を含みます。腎臓の異常には低形成腎(腎臓が小さい)、異形成腎(腎臓の構造が異常)、無形成腎(腎臓がない)などがあり、尿路の異常には水腎症、膀胱尿管逆流、後部尿道弁などが含まれます。これらの異常は単独で存在することもあれば、複数の異常が合併することもあります。

腎異形成(腎形成不全)とは

腎異形成(Kidney Dysplasia / Renal Dysplasia)は、CAKUTの中でも重要な病態の一つです。胎児期に腎臓が正常に分化・発達せず、腎実質に原始的な尿細管、間質線維化、腎嚢胞、さらには軟骨組織などが混在する状態を指します。

腎異形成は片側性(一方の腎臓のみ)の場合と両側性(両方の腎臓)の場合があります。両側性の重度の腎異形成で出生した場合、腎機能が著しく低下しており、出生直後から透析や腎移植などの治療介入が必要となります。片側性の場合は反対側の正常な腎臓が代償的に機能するため、予後は比較的良好ですが、長期的な経過観察が重要です。

多嚢胞性異形成腎(MCDK)

腎異形成の代表的な病態として、多嚢胞性異形成腎(Multicystic Dysplastic Kidney: MCDK)があります。これは腎臓に多数の嚢胞(水が溜まった袋状の構造)が形成され、正常な腎組織がほとんど存在しない状態です。MCDKは通常片側性で、出生4,300例に1例程度の頻度で発生します。胎児期の超音波検査で発見されることが多く、嚢胞は出生後に自然に縮小することもあります。

症状と病態

CAKUTの症状は、異常の種類、程度、片側性か両側性かによって大きく異なります。軽度の場合は症状がなく、偶然の検査や健診で発見されることも多いです。一方、重症例では出生前から異常が判明し、出生後すぐに治療が必要となることもあります。

主な症状と合併症

  • 腎機能障害(血液中のクレアチニン上昇)
  • 高血圧
  • 蛋白尿
  • 血尿
  • 尿路感染症(繰り返す発熱、排尿時痛)
  • 成長障害(身長・体重の発育不良)
  • 羊水過少症(胎児期、重症例)
  • 肺低形成(両側性の重症例)
  • 腹部腫瘤(嚢胞性病変の触知)
  • 排尿障害

腎臓の異常の種類

  • 低形成腎:腎臓のサイズが通常より小さく、ネフロン(腎臓の機能単位)の数が少ない状態
  • 異形成腎:腎臓の構造が異常で、原始的な組織や嚢胞、軟骨などが混在している状態
  • 無形成腎:腎臓が完全に欠損している状態
  • 多嚢胞性異形成腎:腎臓全体が多数の嚢胞で置き換わり、機能がほとんどない状態
  • 馬蹄腎:左右の腎臓が下部で癒合している状態
  • 異所性腎:腎臓が正常な位置にない状態

尿路の異常の種類

  • 水腎症:腎盂(腎臓で尿が集まる部分)が拡張している状態
  • 腎盂尿管移行部狭窄:腎盂から尿管への尿の流れが悪い状態
  • 膀胱尿管逆流症(VUR):膀胱から尿管へ尿が逆流する状態
  • 巨大尿管:尿管が異常に拡張している状態
  • 重複腎盂尿管:一つの腎臓に複数の腎盂や尿管がある状態
  • 尿管瘤:尿管の膀胱開口部が嚢胞状に拡張している状態
  • 尿管異所開口:尿管が膀胱以外の場所に開口している状態
  • 後部尿道弁:男児の尿道に膜状の組織があり、尿の流れを妨げる状態

長期的な予後と合併症

CAKUTは小児期の慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全の最大の原因疾患です。特に低形成腎や異形成腎では、腎機能が経年的に低下し、成人期に透析や腎移植が必要となることがあります。また、高血圧や蛋白尿が持続することで、腎機能障害が進行するリスクが高まります。

早期発見と適切な管理により、腎機能の低下を遅らせることが可能です。定期的な腎機能評価、血圧管理、蛋白尿の管理、尿路感染症の予防と治療が重要となります。

遺伝形式と原因遺伝子

CAKUTの原因は多様で、遺伝的要因、環境要因、両者の複合的な関与が考えられています。単一遺伝子の変異によるものから、多因子遺伝、染色体異常まで、様々な遺伝学的背景があります。

これまでに約40種類以上のCAKUT関連遺伝子が報告されていますが、遺伝子変異が同定されるのは全症例の15~20%程度にとどまっています。特に腎臓以外の臓器にも異常を伴う症候群性CAKUTの場合、遺伝子変異が同定される確率が高くなります。

主な遺伝形式

  • 常染色体優性(顕性)遺伝:PAX2、HNF1B、EYA1、SALL1、RET、BMP4などの遺伝子変異。片方の親から変異遺伝子を受け継ぐだけで発症します。
  • 常染色体劣性(潜性)遺伝:両親がそれぞれ保因者の場合、子どもが発症する確率は25%です。
  • X連鎖遺伝:主に男児に発症します。
  • 多因子遺伝:複数の遺伝的要因と環境要因が組み合わさって発症します。

環境要因

妊娠中の母体要因も腎異形成のリスクとなることが知られています:

  • ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の服用
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
  • アルコール摂取
  • コカインなどの薬物
  • 母体の糖尿病
  • 母体の栄養不良
  • 胎盤機能不全

CAKUTに合併する主な遺伝性症候群

CAKUTは単独で発症することもありますが、多臓器に異常を伴う遺伝性症候群の一部として発症することもあります。以下に代表的な症候群を示します。

タウンズ・ブロックス症候群(Townes-Brocks Syndrome)

SALL1遺伝子の変異による常染色体優性遺伝疾患です。鎖肛(肛門閉鎖・狭窄)、耳介の形態異常、母指の奇形を三徴候とし、腎臓の異常(低形成腎、異形成腎、無形成腎、多嚢胞腎)を高頻度に合併します。聴覚障害、心奇形、尿路性器の異常も認められます。末期腎不全に至ることもあり、腎機能の定期的な評価が重要です。

分岐耳腎症候群(Branchio-Oto-Renal Syndrome: BOR症候群)

EYA1、SIX1、SIX5遺伝子の変異による常染色体優性遺伝疾患です。頸部の鰓弓異常(鰓裂嚢胞、瘻孔)、耳介の異常(耳前孔、副耳)、聴覚障害、腎臓の異常を特徴とします。腎臓の異常には低形成腎、異形成腎、腎無形成などがあり、約40%の患者さんで認められます。腎機能障害が進行し、成人期に末期腎不全に至る例も報告されています。

腎コロボーマ症候群(Renal Coloboma Syndrome)

PAX2遺伝子の変異による常染色体優性遺伝疾患です。眼のコロボーマ(虹彩や脈絡膜の欠損)と腎臓の異常(低形成腎、異形成腎、腎無形成)を特徴とします。視力障害と腎機能障害を伴い、一部の患者さんは末期腎不全に進行します。

フレイザー症候群(Fraser Syndrome)

FRAS1、FREM1、FREM2、GRIP1遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝疾患です。眼瞼癒着(まぶたの癒合)、合指症、外性器の異常、腎臓の異常を特徴とします。両側性の腎無形成や重度の腎異形成を伴う場合、肺低形成により新生児期に致死的となることがあります。

パリスター・ホール症候群(Pallister-Hall Syndrome)

GLI3遺伝子の変異による常染色体優性遺伝疾患です。視床下部過誤腫、多指症、肛門閉鎖、喉頭裂などを特徴とし、腎臓の異常も合併します。

コルネリア・デ・ランゲ症候群(Cornelia de Lange Syndrome)

NIPBL、SMC1A、SMC3、RAD21、HDAC8遺伝子の変異による疾患です。特徴的な顔貌、上肢の異常、成長障害、知的障害を特徴とし、腎臓や尿路の異常を伴うことがあります。

これらの症候群では、腎臓以外の臓器にも特徴的な異常が見られます。そのため、CAKUTと診断された場合は、他の臓器の異常の有無を評価することが重要です。特に外性器の異常、顔面の形態異常、口唇口蓋裂、聴覚障害、骨格の異常、知的障害などが合併している場合は、遺伝性症候群の可能性を考慮し、遺伝学的検査を検討すべきです。

ミネルバクリニックの先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 遺伝子パネル検査の特徴

「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」とは、現在先天性腎尿路異常や腎異形成の原因として報告されている88の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、CAKUTや腎異形成に関連する88遺伝子を一度に調べられる「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でCAKUTや腎異形成の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、CAKUTや腎異形成に関係するとされる88の遺伝子を一度に調べられる「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるCAKUTや腎異形成の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」の場合、88の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からCAKUTや腎異形成を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な88の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」では、CAKUTや腎異形成に関係するとされる88種類の遺伝子をまとめて検査します。これらの遺伝子には、腎臓や尿路の発生に関与する転写因子、成長因子、シグナル伝達分子などが含まれています。

「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」は、CAKUTや腎異形成の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【先天性腎尿路異常または腎異形成の個人歴または家族歴のある方】に
「先天性腎尿路異常(CAKUT)・腎異形成 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・胎児超音波検査で腎臓や尿路の異常を指摘された方
・腎臓のサイズが小さい(低形成腎)と診断された方
・腎臓の構造に異常がある(異形成腎)と診断された方
・片側の腎臓がない(腎無形成)と診断された方
・多嚢胞性異形成腎と診断された方
・水腎症と診断された方
・膀胱尿管逆流症と診断された方
・繰り返す尿路感染症がある方
・原因不明の腎機能障害がある方
・成長障害がある方
・外性器の異常を伴う方
・顔面の形態異常、口唇口蓋裂、聴覚障害、骨格の異常、知的障害などを合併している方
・家族にCAKUTや腎異形成の診断を受けた方がいる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、CAKUTや腎異形成の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な腎機能のモニタリング、高血圧管理、蛋白尿の管理、尿路感染症の予防、必要に応じた外科的治療を行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の腎疾患との鑑別
・腎機能低下の進行予測
・末期腎不全への進行リスクの評価
・高血圧などの合併症の早期発見と管理
・尿路感染症の予防戦略の立案
・外科的治療の適応判断
・長期的な腎機能管理計画の立案
・他臓器の異常の早期発見(症候群性CAKUTの場合)
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症するリスクは50%、常染色体劣性遺伝の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ACE, ACTG2, AFF3, AGT, AGTR1, ANOS1, ARL6, ATN1, BBS1, BBS2, BMP4, BMP7, BNC2, CCNQ, CDC5L, CENPF, CEP55, CHD1L, CPLANE1, DCHS1, DHCR7, DSTYK, EYA1, FANCB, FANCI, FANCL, FAT4, FGF20, FGFR2, FOXC1, FOXC2, FOXP1, FRAS1, FREM1, FREM2, GATA3, GLI3, GRIP1, HAAO, HNF1B, HOXA13, HOXA4, HOXB6, HPSE2, HSPA9, ITGA8, KCTD1, KYNU, LIFR, LRP4, MBTPS2, MUC1, MYH9, NAA10, NFIA, NIPBL, NRIP1, PAX2, PBX1, PDE6D, PIK3CA, PUF60, REN, RET, RMND1, RNU4ATAC, ROBO1, ROBO2, SALL1, SALL4, SIX1, SIX2, SIX5, SLIT2, SOX11, SOX17, SRGAP1, STRA6, TBC1D1, TBX18, TNXB, TRAP1, TTC8, UMOD, UPK3A, WDR35, WNT4, WT1 ( 88遺伝子 )

主要な遺伝子の詳細:
・PAX2遺伝子:
転写因子をコードし、腎臓と眼の発生に重要な役割を果たします。変異により腎コロボーマ症候群を引き起こし、低形成腎、異形成腎、腎無形成と眼のコロボーマを特徴とします。

・HNF1B遺伝子:
転写因子をコードし、腎臓、膵臓、肝臓、生殖器の発生に関与します。変異により嚢胞性腎疾患、腎形成不全、糖尿病、膵臓の低形成を引き起こします。

・EYA1遺伝子:
転写コアクチベーターをコードし、腎臓と耳の発生に重要です。変異により分岐耳腎症候群(BOR症候群)を引き起こし、鰓弓異常、聴覚障害、腎臓の異常を特徴とします。

・SALL1遺伝子:
転写抑制因子をコードし、腎臓や四肢の発生に関与します。変異によりタウンズ・ブロックス症候群を引き起こし、鎖肛、耳介異常、母指の奇形、腎臓の異常を特徴とします。

・SIX1, SIX2, SIX5遺伝子:
転写因子ファミリーで、腎臓や耳の発生に重要な役割を果たします。SIX1とSIX5の変異は分岐耳腎症候群を、SIX2の変異は腎形成不全を引き起こします。

・RET遺伝子:
受容体型チロシンキナーゼをコードし、尿管芽の成長と分岐に重要です。変異により腎無形成、低形成腎、水腎症を引き起こします。

・BMP4, BMP7遺伝子:
骨形成タンパク質をコードし、腎臓の発生と分化に関与します。変異により腎形成不全を引き起こします。

・FRAS1, FREM1, FREM2, GRIP1遺伝子:
細胞外マトリックスタンパク質をコードします。変異によりフレイザー症候群を引き起こし、眼瞼癒着、合指症、腎臓の異常を特徴とします。

・GLI3遺伝子:
転写因子をコードし、Sonic hedgehogシグナル伝達経路に関与します。変異によりパリスター・ホール症候群を引き起こし、視床下部過誤腫、多指症、肛門閉鎖、腎臓の異常を特徴とします。

・NIPBL遺伝子:
コヒーシン複合体の調節に関与します。変異によりコルネリア・デ・ランゲ症候群を引き起こし、特徴的な顔貌、上肢の異常、知的障害、腎臓の異常を特徴とします。

・WNT4遺伝子:
Wntシグナル伝達経路に関与し、腎臓と生殖器の発生に重要です。変異により腎無形成や生殖器の異常を引き起こします。

・WT1遺伝子:
転写因子をコードし、腎臓と生殖器の発生に重要です。変異によりDenys-Drash症候群やFrasier症候群を引き起こし、腎症、性分化異常、Wilms腫瘍を特徴とします。

・ROBO1, ROBO2遺伝子:
軸索ガイダンス受容体をコードし、尿管芽の発生に関与します。変異により膀胱尿管逆流症や腎形成不全を引き起こします。

・GATA3遺伝子:
転写因子をコードし、腎臓、副甲状腺、聴覚器の発生に関与します。変異によりHDR症候群(低副甲状腺機能症・難聴・腎臓病)を引き起こします。

・UMOD遺伝子:
尿中のタムホースフォールタンパク質をコードします。変異により常染色体優性尿細管間質性腎疾患を引き起こします。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

遺伝子特異的な注意事項:

・HOXA13遺伝子:現在の検査方法では、この遺伝子の三塩基反復伸長は評価されません。

・MUC1遺伝子:現在の検査方法では、MUC1関連常染色体優性尿細管間質性腎疾患に関連する可変数タンデムリピート(VNTR)領域における重複C病原性変異は検出できません。また、この遺伝子の三塩基反復伸長も評価されません。

・PIK3CA遺伝子:PIK3CA病原性変異の大部分は接合子後に生じるため、モザイクです。複数の組織を検査する必要がある場合があります。PIK3CA病原性変異が検出されなくても、示唆的な特徴を有する個人におけるPIK3CA関連分節性過成長障害の臨床診断は除外されません。

※CAKUTや腎異形成の症例では、約80~85%で既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、環境要因や未知の遺伝的要因による場合もあります。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
胎児超音波検査で腎臓や尿路の異常を指摘された方、腎臓のサイズが小さい、構造に異常がある、片側の腎臓がないなどと診断された方におすすめします。また、繰り返す尿路感染症、原因不明の腎機能障害、成長障害がある方も検査の対象となります。特に、外性器の異常、顔面の形態異常、口唇口蓋裂、聴覚障害、骨格の異常、知的障害などを合併している場合は、遺伝性症候群の可能性があるため検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
CAKUTは遺伝しますか?
CAKUTの原因は多様で、遺伝だけでなく環境的な要因など様々な要因が複雑に関与していると考えられています。したがって、「CAKUTは必ず遺伝する」と断言することはできません。一方で、CAKUTは遺伝子異常が原因になることもあり、特に腎臓以外に症状を伴う場合には遺伝子異常を伴うことが多いと言われています。遺伝形式は常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝など多様です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。常染色体優性遺伝の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
約80~85%のCAKUT症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。環境要因や未知の遺伝的要因による場合もあります。臨床症状と画像検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。常染色体優性遺伝の場合は子どもが発症する確率は50%、常染色体劣性遺伝の場合は保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
CAKUTの治療はどのように行われますか?
治療は異常の種類と程度によって異なります。軽度の場合は経過観察のみで済むこともあります。尿路感染症の予防と治療、高血圧の管理、蛋白尿の管理が重要です。尿路の閉塞や逆流がある場合は、外科的治療(尿管形成術、膀胱尿管新吻合術など)が必要になることがあります。腎機能が低下している場合は、透析や腎移植が必要となることもあります。
予後はどうですか?
予後は異常の種類、程度、片側性か両側性かによって大きく異なります。片側性で軽度の場合は、正常な生活が可能なことが多いです。両側性で重度の場合は、小児期から末期腎不全に至ることもあります。早期発見と適切な管理により、腎機能の低下を遅らせることが可能です。定期的な腎機能評価、血圧管理、蛋白尿の管理、尿路感染症の予防が重要です。
妊娠中にCAKUTを予防することはできますか?
遺伝的要因による場合は予防が困難ですが、環境要因を避けることは可能です。妊娠中はACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用を避け、アルコールや薬物の摂取を控えることが重要です。また、妊娠糖尿病の管理、適切な栄養摂取も大切です。妊娠前に遺伝カウンセリングを受けることで、リスク評価と適切な情報提供が可能です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な88の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら