気管支拡張症遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
気管支拡張症とは
気管支拡張症(Bronchiectasis)は、気管支が不可逆的に拡張し、慢性的な炎症や感染を引き起こす呼吸器疾患です。気管支壁が損傷を受けて弱くなり、気管支が拡張して元の状態に戻らなくなります。拡張した気管支では粘液の増加や線毛の喪失、気道壁の損傷が起こり、感染症を繰り返すことで病状が進行します。
気管支拡張症の原因は多岐にわたり、感染症、先天性疾患、免疫異常など様々です。特に遺伝性の原因としては、原発性線毛機能不全症、嚢胞性線維症、免疫不全症、上皮ナトリウムチャネル異常などが知られており、これらの遺伝的背景を持つ患者さんでは幼少期から症状が現れることがあります。
気管支拡張症は、気道の浄化作用が低下するため、細菌が繁殖しやすく、肺炎や気管支炎を繰り返します。進行すると呼吸機能が低下し、慢性呼吸不全や肺性心などの合併症を引き起こす可能性があります。男性よりも女性に多いとされ、日本人では約25,000人が罹患していると推定されています。
症状と病態
気管支拡張症の主な症状は、慢性的な咳と膿性痰です。拡張した気管支内に分泌物が貯留し、感染を繰り返すことで、黄色から緑色の粘性が強い痰が大量に産生されます。特に朝や夜に症状が強くなる傾向があります。
主要症状
- 慢性的な咳(痰を伴う湿った咳)
- 膿性痰(黄色や緑色の粘性が強い痰)
- 血痰・喀血(咳とともに血が出る)
- 呼吸困難(息切れ、呼吸が苦しい)
- 喘鳴(ぜいぜいという音)
- 反復性の呼吸器感染症
- 発熱(感染症を合併した時)
- 倦怠感、体重減少
合併症
気管支拡張症では以下のような合併症を伴うことがあります:
- 慢性副鼻腔炎:副鼻腔の慢性的な炎症を伴うことが多く、副鼻腔気管支症候群と呼ばれます
- 肺炎:気管支の炎症や感染が肺胞まで広がることで肺炎を起こしやすくなります
- 喀血:拡張した気管支では血管が増えるため、血痰や喀血を生じることがあり、時に大量の喀血を起こすことがあります
- 呼吸不全:病状が進行すると肺機能が低下し、慢性呼吸不全に至ることがあります
- 肺性心:肺の組織が機能を失うことで心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすことがあります
疾患の進行
気管支が拡張すると、粘液が滞留しやすくなり、細菌などの感染の場となります。感染により炎症が起こり、さらに気管支壁が破壊されるという悪循環が生じ、気管支拡張が進行します。適切な治療と管理により、この悪循環を断ち切り、現在の状態を長期間安定させることが重要です。
遺伝性気管支拡張症の原因
気管支拡張症の原因には、後天的な要因(感染症、免疫異常など)と遺伝的な要因があります。遺伝的原因による気管支拡張症は、幼少期から症状が現れることが多く、早期診断により適切な管理が可能になります。
原発性線毛機能不全症(PCD)
原発性線毛機能不全症(Primary Ciliary Dyskinesia: PCD)は、気道粘膜上皮に存在する線毛の構造や機能に先天的な異常がある遺伝性疾患です。線毛は気道内の粘液を移動させて異物を排出する役割を持ちますが、この機能が障害されると粘液が滞留し、繰り返す気道感染症の原因となります。
PCDは常染色体劣性遺伝形式をとり、発症頻度は約1~2万人に1人と推定されています。50種類以上の遺伝子が原因として同定されており、代表的な遺伝子にはDNAH5、DNAI1、CCDC39、CCDC40などがあります。約半数の患者さんで内臓逆位(心臓や胃などの内臓が左右逆に配置される)を伴い、内臓逆位、慢性副鼻腔炎、気管支拡張症を呈する場合はカルタゲナー症候群と呼ばれます。日本では、DRC1(CCDC164)遺伝子の大規模欠失が最も頻度の高い原因となっています。
嚢胞性線維症(CF)
嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis: CF)は、CFTR遺伝子の変異により、全身の分泌液や粘液が著しく粘稠となる常染色体劣性遺伝疾患です。気道内の粘液が濃くなることで気道クリアランスが低下し、細菌感染が持続します。感染による慢性炎症は気道のリモデリングや線維化を促進し、次第に呼吸機能が低下します。
CFは白人に高頻度で見られる疾患であり、欧米では出生約3,000人に1人が発症します。日本人ではきわめて稀な疾患で、発症頻度は約59万~187万人に1人と推定されています。CFの診断には汗中塩化物イオン濃度の測定やCFTR遺伝子検査が用いられます。日本人では欧米で最も多いΔF508変異は通常認められず、独自の変異が散発性に認められます。
免疫不全症
原発性免疫不全症では、免疫機能の低下により呼吸器感染症を繰り返し、気管支拡張症を発症することがあります。PIK3CD遺伝子とPIK3R1遺伝子は、免疫細胞の機能に重要な役割を果たすタンパク質をコードしており、これらの遺伝子変異により活性化PI3Kδ症候群(APDS)などの免疫不全症を引き起こします。
上皮ナトリウムチャネル異常
SCNN1A、SCNN1B、SCNN1G遺伝子は、気道上皮細胞の上皮ナトリウムチャネル(ENaC)を構成します。これらの遺伝子変異により、気道表面の水分調節が障害され、粘液の粘稠化や気道クリアランスの低下を招き、気管支拡張症の原因となることがあります。
当検査パネルでは、これらの遺伝的原因に関連する18の重要な遺伝子を対象としています。遺伝学的検査により原因が判明すると、適切な診断の確立、治療方針の決定、家族のリスク評価などに役立ちます。
ミネルバクリニックの気管支拡張症遺伝子パネル検査の特徴
「気管支拡張症 NGSパネル検査」とは、現在気管支拡張症の遺伝的原因として報告されている18の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、気管支拡張症に関連する18遺伝子を一度に調べられる「気管支拡張症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で気管支拡張症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、気管支拡張症に関係するとされる18の遺伝子を一度に調べられる「気管支拡張症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える気管支拡張症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「気管支拡張症 NGSパネル検査」の場合、18の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から気管支拡張症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「気管支拡張症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な18の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「気管支拡張症 NGSパネル検査」では、気管支拡張症に関係するとされる18種類の遺伝子(CCDC39、CCDC40、CFTR、DNAAF1、DNAAF2、DNAH11、DNAH5、DNAI1、DNAI2、DNAL1、NME8、PIK3CD、PIK3R1、RSPH4A、RSPH9、SCNN1A、SCNN1B、SCNN1G)をまとめて検査します。
「気管支拡張症 NGSパネル検査」は、気管支拡張症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【気管支拡張症の個人歴または家族歴のある方】に
「気管支拡張症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・慢性的な咳と膿性痰がある方
・繰り返す呼吸器感染症(肺炎、気管支炎)がある方
・血痰や喀血がある方
・画像検査(胸部CTなど)で気管支拡張所見が認められる方
・幼少期から呼吸器症状がある方
・慢性副鼻腔炎を合併している方
・内臓逆位(心臓や胃などの内臓が左右逆)がある方
・気管支拡張症の家族歴がある方
・原発性線毛機能不全症や嚢胞性線維症が疑われる方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、気管支拡張症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な薬物療法、理学療法、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・遺伝性疾患(原発性線毛機能不全症、嚢胞性線維症など)の診断
・原因に応じた適切な治療法の選択
・適切な薬物療法(抗菌薬、去痰薬、マクロライド長期療法など)の決定
・理学療法(体位排痰法、呼吸リハビリテーションなど)の適応判断
・感染症の予防と早期治療
・合併症(喀血、呼吸不全など)のリスク評価と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。常染色体劣性遺伝(原発性線毛機能不全症や嚢胞性線維症)の場合は兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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CCDC39, CCDC40, CFTR, DNAAF1, DNAAF2, DNAH11, DNAH5, DNAI1, DNAI2, DNAL1, NME8, PIK3CD, PIK3R1, RSPH4A, RSPH9, SCNN1A, SCNN1B, SCNN1G ( 18遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
■原発性線毛機能不全症(PCD)関連遺伝子
・CCDC39遺伝子:
コイルドコイルドメイン含有タンパク質39をコードする遺伝子。線毛の内側ダイニンアームと微小管構造の維持に関与します。CCDC39遺伝子変異による原発性線毛機能不全症では、線毛の微小管構造に異常が生じます。
・CCDC40遺伝子:
コイルドコイルドメイン含有タンパク質40をコードする遺伝子。CCDC39と同様に、線毛の内側ダイニンアームと微小管構造の維持に関与します。
・DNAAF1遺伝子(LRRC50):
ダイナクチン軸索アセンブリー因子1をコードする遺伝子。線毛の外側ダイニンアームと内側ダイニンアームの組み立てに必要なシャペロンタンパク質です。
・DNAAF2遺伝子(KTU):
ダイナクチン軸索アセンブリー因子2をコードする遺伝子。DNAAF1と同様に、線毛ダイニンアームの組み立てに関与します。
・DNAH5遺伝子:
ダイニン軸索重鎖5をコードする遺伝子。原発性線毛機能不全症の最も頻度の高い原因遺伝子の一つです。外側ダイニンアームを構成し、線毛運動に不可欠なタンパク質です。
・DNAH11遺伝子:
ダイニン軸索重鎖11をコードする遺伝子。外側ダイニンアームを構成し、DNAH5と共に線毛運動を調節します。
・DNAI1遺伝子:
ダイニン軸索中間鎖1をコードする遺伝子。原発性線毛機能不全症の頻度の高い原因遺伝子の一つで、外側ダイニンアームの正常な形成と機能に必要です。
・DNAI2遺伝子:
ダイニン軸索中間鎖2をコードする遺伝子。DNAI1と同様に外側ダイニンアームの構成要素です。
・DNAL1遺伝子:
ダイニン軸索軽鎖1をコードする遺伝子。外側ダイニンアームの構成要素で、線毛運動の調節に関与します。
・NME8遺伝子:
ヌクレオシド二リン酸キナーゼ8をコードする遺伝子。線毛および鞭毛の運動に必要なエネルギー代謝に関与します。
・RSPH4A遺伝子:
放射状スポーク頭部タンパク質4Aをコードする遺伝子。線毛の放射状スポーク構造を構成し、線毛運動の調節に関与します。
・RSPH9遺伝子:
放射状スポーク頭部タンパク質9をコードする遺伝子。RSPH4Aと同様に放射状スポーク構造の構成要素です。
■嚢胞性線維症関連遺伝子
・CFTR遺伝子:
嚢胞性線維症膜貫通伝導制御因子(Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator)をコードする遺伝子。塩化物イオンチャネルとして機能し、気道、腸管、膵管などの上皮を介する塩化物イオンと水の輸送を調節します。CFTR遺伝子変異により嚢胞性線維症が発症し、気道粘液の粘稠化、気管支拡張症、膵外分泌不全などを引き起こします。現在までに2,000種類以上の変異が報告されており、日本人では欧米で最も多いΔF508変異は通常認められず、独自の変異パターンを示します。
■免疫不全症関連遺伝子
・PIK3CD遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ触媒サブユニットδをコードする遺伝子。B細胞やT細胞などの免疫細胞の機能に重要な役割を果たします。PIK3CD遺伝子の機能獲得型変異により活性化PI3Kδ症候群(APDS)を引き起こし、免疫不全による繰り返す呼吸器感染症、気管支拡張症を発症します。
・PIK3R1遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ調節サブユニット1をコードする遺伝子。PIK3CDと複合体を形成し、免疫細胞のシグナル伝達を調節します。PIK3R1遺伝子変異も活性化PI3Kδ症候群の原因となります。
■上皮ナトリウムチャネル関連遺伝子
・SCNN1A遺伝子:
上皮ナトリウムチャネルαサブユニット(ENaC-α)をコードする遺伝子。気道上皮細胞のナトリウムイオン輸送に関与し、気道表面の水分調節を行います。
・SCNN1B遺伝子:
上皮ナトリウムチャネルβサブユニット(ENaC-β)をコードする遺伝子。SCNN1Aと共に上皮ナトリウムチャネルを構成します。
・SCNN1G遺伝子:
上皮ナトリウムチャネルγサブユニット(ENaC-γ)をコードする遺伝子。これらの遺伝子変異により、気道表面の水分バランスが障害され、粘液の粘稠化や気道クリアランスの低下を招き、気管支拡張症の原因となることがあります。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、18の原因遺伝子のみを対象としています。気管支拡張症には様々な原因があり、この検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。特に日本では、原発性線毛機能不全症の原因として日本人に特有のDRC1(CCDC164)遺伝子の大規模欠失が最も頻度が高いことが知られていますが、このような大規模な構造変異の検出には限界があります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 慢性的な咳と膿性痰がある方、繰り返す呼吸器感染症がある方、血痰や喀血がある方におすすめします。特に幼少期から症状がある場合や、慢性副鼻腔炎を合併している場合、内臓逆位がある場合は、原発性線毛機能不全症などの遺伝性疾患の可能性が高くなります。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 原発性線毛機能不全症(PCD)とは何ですか?
- 原発性線毛機能不全症は、気道粘膜上皮に存在する線毛の構造や機能に先天的な異常がある遺伝性疾患です。線毛の機能が障害されることで、粘液が滞留し、繰り返す呼吸器感染症、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎を引き起こします。約半数の患者さんで内臓逆位を伴い、この場合はカルタゲナー症候群と呼ばれます。発症頻度は約1~2万人に1人と推定されています。
- 嚢胞性線維症(CF)とは何ですか?
- 嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子の変異により、全身の分泌液や粘液が著しく粘稠となる常染色体劣性遺伝疾患です。気道粘液の粘稠化により気道クリアランスが低下し、細菌感染が持続します。欧米では出生約3,000人に1人が発症する比較的頻度の高い疾患ですが、日本人ではきわめて稀で、発症頻度は約59万~187万人に1人と推定されています。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝性気管支拡張症の多くは常染色体劣性遺伝形式をとります。患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に、将来子どもを持つことを考えている保因者の方には、パートナーの検査も推奨されます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査パネルでは18の遺伝子のみを対象としています。気管支拡張症には様々な原因があり、検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、日本人に特有の原因(DRC1遺伝子の大規模欠失など)は検出が困難な場合があります。臨床症状と画像所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 気管支拡張症の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状を軽減し、病気の進行を抑えることが可能です。薬物療法(去痰薬、気管支拡張薬、抗菌薬、マクロライド長期療法)、理学療法(体位排痰法、呼吸リハビリテーション)、感染症の予防と早期治療などが行われます。遺伝的原因が判明すると、より適切な治療・管理方針を立てることができます。
- 予後はどうですか?
- 予後は原因や重症度によって大きく異なります。適切な治療と管理により、現在の状態を長期間安定させることが重要です。感染症の早期治療、定期的な理学療法、生活習慣の改善(禁煙、手洗い、マスク着用など)により、多くの患者さんは日常生活を維持できます。重症例では呼吸不全に至ることもあるため、早期診断と適切な管理が予後に影響します。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な18の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら