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ATXN7遺伝子リピート伸長検査(脊髄小脳失調症7型)|ミネルバクリニック 

ATXN7遺伝子リピート伸長検査(脊髄小脳失調症7型)|ミネルバクリニック

脊髄小脳失調症7型(SCA7)とは

脊髄小脳失調症7型(Spinocerebellar Ataxia Type 7: SCA7)は、ATXN7遺伝子のCAGリピート伸長によって引き起こされる常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性の神経変性疾患です。脊髄小脳失調症の一病型であり、小脳性運動失調に加えて網膜変性による視覚障害を伴うことが特徴的です。

本疾患は、ATXN7遺伝子内のCAG三塩基繰り返し配列が異常に伸長することにより発症します。正常では4~35リピートですが、37リピート以上に伸長すると病的意義を持つとされています。CAGリピートはアミノ酸のグルタミンをコードするため、SCA7は異常に伸長したポリグルタミン鎖が原因となるポリグルタミン病の一つに分類されます。

脊髄小脳失調症7型は指定難病(脊髄小脳変性症:難病指定18)に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。網膜変性を伴う運動失調という特徴的な症状から、早期診断と適切な管理が極めて重要です。

症状と病態

脊髄小脳失調症7型では、小脳性運動失調症状と網膜変性による視覚障害が主要な症状として出現します。発症年齢は幅広く、小児期から成人期まで様々ですが、一般的には30~40歳代での発症が多く見られます。CAGリピート数が多いほど発症年齢が早く、症状も重症化する傾向があります。

小脳性運動失調症状

  • 失調性歩行(ふらふら歩行、バランスの不安定さ)
  • 協調運動障害(手足の動きがぎこちない)
  • 測定障害(目的のところで動作を止められない)
  • 企図振戦(目標物に手が届きそうになると震える)
  • 眼振(眼球の振るえ)
  • 小脳性構音障害(ろれつが回らない、不明瞭な話し方)
  • 嚥下障害(飲み込みの困難)

網膜変性による視覚障害(SCA7の特徴的症状)

SCA7の最も特徴的な症状は網膜変性による視覚障害です。多くの場合、運動失調症状と同時期またはやや遅れて出現しますが、若年発症例では視覚障害が先行することもあります。

  • 視力低下(進行性)
  • 色覚異常
  • 暗順応障害(暗いところで見えにくい)
  • 視野狭窄(視野が狭くなる)
  • 網膜黄斑変性
  • 重症例では失明に至ることもある

その他の症状

疾患の進行に伴い、以下のような症状が出現することがあります:

  • 錐体路徴候(腱反射亢進、病的反射)
  • 筋緊張低下
  • 末梢神経障害
  • 眼球運動障害
  • 認知機能障害(重症例)

遺伝形式と予測性

SCA7は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとるため、罹患した親から子どもへ50%の確率で遺伝します。男女差はありません。また、CAGリピートは世代を経るごとに伸長する傾向(表現促進現象)があり、特に父親から遺伝した場合に顕著です。このため、世代を経るごとに発症年齢が早まり、症状が重症化する傾向が見られます。

ミネルバクリニックのATXN7遺伝子リピート伸長検査の特徴

「ATXN7遺伝子リピート伸長検査」とは、脊髄小脳失調症7型(SCA7)の原因となるATXN7遺伝子内のCAG三塩基繰り返し配列の伸長を調べる検査方法です。

この検査では、repeat-primed PCR(rpPCR)法とアンプリコン長解析を用いて、ATXN7遺伝子のCAGリピート数を正確に測定します。正常範囲(4~35リピート)を超える伸長が検出された場合、SCA7の診断確定に重要な情報となります。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.正確な診断が可能

運動失調と視覚障害を伴う症状から脊髄小脳失調症7型が疑われる場合、ATXN7遺伝子のCAGリピート伸長を確認することで確定診断が可能です。

網膜変性を伴う運動失調はSCA7の特徴的な症状ですが、他の疾患との鑑別が必要な場合もあります。遺伝子検査により正確な診断を行うことで、適切な治療方針の決定や遺伝カウンセリングに役立ちます。

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるリピート伸長検査の場合、結果が出るまでに通常数週間から数ヶ月かかることがあります。

当院で行う「ATXN7遺伝子リピート伸長検査」の場合、約2週間で結果をお知らせすることが可能です。

3.家族計画への情報提供

SCA7は常染色体顕性遺伝形式をとるため、遺伝子検査により確定診断が得られた場合、ご家族の発症リスクや将来の家族計画について重要な情報を提供できます。

また、CAGリピート数により、おおよその発症年齢や重症度の予測も可能です。これらの情報は、人生設計や医療・福祉サービスの活用において有用です。

検査内容

「ATXN7遺伝子リピート伸長検査」では、ATXN7遺伝子内のCAG三塩基繰り返し配列の長さを測定します。repeat-primed PCR(rpPCR)法とアンプリコン長解析により、正常範囲を超える伸長の有無を判定します。

正常なCAGリピート数は4~35回、中間領域(グレーゾーン)は36回、病的伸長は37回以上とされています。リピート数が多いほど発症年齢が早く、症状も重症化する傾向があります。

どんな人が受けたらいいの?

【脊髄小脳失調症7型の個人歴または家族歴のある方】に
「ATXN7遺伝子リピート伸長検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・歩行時のふらつきや協調運動障害がある方
・視力低下や網膜変性が認められる方
・運動失調と視覚障害の両方を有する方
・小脳性構音障害(ろれつが回らない)がある方
・家族に脊髄小脳失調症7型の患者さんがいる方
・脊髄小脳失調症の家族歴があり、視覚障害を伴う方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・発症前診断を希望される、家族歴のある成人の方(十分な遺伝カウンセリングが必要です)

この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、脊髄小脳失調症7型の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的対応や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・運動失調症状の管理と対症療法の最適化
・視覚障害の進行モニタリングと対策
・リハビリテーションプログラムの計画
・嚥下障害や構音障害への早期対応
・転倒予防と安全対策の実施
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体顕性遺伝形式のため、お子さんが同じ疾患を発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ATXN7 ( 1遺伝子 )

遺伝子の詳細:
・ATXN7遺伝子:
ATXN7遺伝子は染色体3p14.1に位置し、アタキシン-7というタンパク質をコードしています。このタンパク質は転写調節複合体の一部として機能し、遺伝子発現の制御に重要な役割を果たしています。

ATXN7遺伝子内のCAG三塩基繰り返し配列が異常に伸長すると、異常に長いポリグルタミン鎖を持つアタキシン-7タンパク質が産生されます。この異常タンパク質が神経細胞内に凝集体を形成し、特に小脳のプルキンエ細胞や網膜の神経節細胞に対して毒性を示すことで、運動失調と視覚障害が引き起こされると考えられています。

CAGリピート数と病的意義:
・正常範囲:4~35リピート
・中間領域:36リピート(発症の可能性あり)
・病的伸長:37リピート以上
・一般的に:リピート数が多いほど発症年齢が早く、症状が重度

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべてのリピート伸長検査には限界があります。本検査はrepeat-primed PCR(rpPCR)法とアンプリコン長解析により実施され、ATXN7遺伝子のCAGリピート伸長の検出を目的として設計されています。

本検査の範囲はATXN7遺伝子のリピート伸長解析に限定されます。大規模なリピート伸長の場合、正確なリピート数の測定が困難な場合があります。遺伝子の塩基配列解析や欠失・重複解析は本検査に含まれておりませんが、別途ご依頼いただくことが可能です。

本検査ではメチル化解析は実施しておりません。また、体細胞モザイクや体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

臨床症状から脊髄小脳失調症が疑われても、本検査でリピート伸長が検出されない場合があります。これは、他の型の脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6など)や、他の神経変性疾患の可能性を示唆します。必要に応じて、他の脊髄小脳失調症の遺伝子検査をご検討ください。

結果が出るまでの期間

2週間

料金

税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
歩行時のふらつきや協調運動障害などの運動失調症状に加えて、視力低下や網膜変性などの視覚障害がある方に検査をおすすめします。また、脊髄小脳失調症7型の家族歴がある場合も検査をご検討ください。SCA7は運動失調と視覚障害を併せ持つことが特徴的です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
脊髄小脳失調症7型は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとるため、患者さんのお子さんが同じ疾患を発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。ただし、発症前診断には十分な遺伝カウンセリングが必要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査ではATXN7遺伝子のリピート伸長のみを対象としています。検査でリピート伸長が検出されなくても、他の型の脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6など)の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて他の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。CAGリピート数、結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。リピート数により発症年齢や重症度の予測も可能です。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
脊髄小脳失調症7型は常染色体顕性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが疾患を発症する確率は50%です。また、CAGリピートは世代を経るごとに伸長する傾向(表現促進現象)があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
脊髄小脳失調症7型の治療はどのように行われますか?
現時点では根治的な治療法はありませんが、対症療法により症状の管理が可能です。運動失調に対するリハビリテーション、視覚障害に対する視覚支援、嚥下障害への対応、転倒予防などを総合的に行います。定期的な眼科検診も重要です。
予後はどうですか?
発症年齢や症状の進行速度は、CAGリピート数により異なります。一般的に、リピート数が多いほど発症年齢が早く、進行も速い傾向があります。視覚障害は進行性で、重症例では失明に至ることもあります。早期診断と適切な管理により、生活の質を維持することが重要です。
SCA7と他の脊髄小脳失調症との違いは何ですか?
SCA7の最も特徴的な点は、網膜変性による視覚障害を伴うことです。他の多くの脊髄小脳失調症では視覚障害は認められないか、あっても軽度です。この特徴により、臨床的にSCA7を疑うことができますが、確定診断には遺伝子検査が必要です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら