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ATXN3リピート伸長遺伝子検査(脊髄小脳失調症3型)|ミネルバクリニック

ATXN3リピート伸長遺伝子検査(脊髄小脳失調症3型)|ミネルバクリニック

脊髄小脳失調症3型(マシャド・ジョセフ病)とは

脊髄小脳失調症3型(SCA3)は、マシャド・ジョセフ病(Machado-Joseph disease: MJD)とも呼ばれる遺伝性神経変性疾患です。日本において最も頻度の高い遺伝性脊髄小脳変性症で、遺伝性脊髄小脳変性症全体の約27%を占めます。

本疾患は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、第14番染色体上のATXN3遺伝子におけるCAGリピート(3塩基繰り返し配列)の異常伸長により発症します。正常では12~44回程度のCAGリピートが、患者さんでは52~86回以上に伸長しています。CAGリピートはアミノ酸のグルタミンに対応するため、異常に長いポリグルタミン鎖を持つ異常タンパク質が神経細胞内に蓄積し、神経細胞死を引き起こします。

脊髄小脳失調症3型は指定難病(難病指定18)に認定されており、適切な遺伝学的検査により診断を確定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。CAGリピート長が長いほど発症年齢が若く、症状も重症化する傾向があります。また、親から子へ遺伝する際にリピート長が伸長することにより、次世代で発症年齢が若年化し症状が重症化する「表現促進現象」が知られています。

症状と病態

脊髄小脳失調症3型では、主に小脳、脳幹、脊髄、末梢神経、基底核などの神経系が障害されます。発症年齢は幅広く、10代から70代まで報告されていますが、20~40代での発症が最も多いとされています。発症年齢や主要症状により、1型から4型に分類されることがあります。

主要症状

  • 小脳性運動失調(歩行時のふらつき、バランスの障害)
  • 構音障害(呂律が回らない、話しにくい)
  • 眼球運動障害(眼振、複視、眼球突出など「びっくり眼」)
  • 四肢の協調運動障害(手の震え、目的物をつかみづらい)
  • 痙縮(足の突っ張り、筋肉の硬直)
  • パーキンソン症状(動作緩慢、筋固縮)
  • ジストニア(身体の一部が捻れて硬直する)
  • 筋萎縮(筋肉が痩せる)
  • 末梢神経障害(しびれ、感覚障害)
  • 嚥下障害(飲み込みにくい、むせやすい)

病型による特徴

1型(若年発症型):
20代など若年で発症し、痙縮(足の突っ張り)、ジストニア(身体の捻転)、筋萎縮が目立ちます。進行が比較的速い傾向があります。

2型(成年発症型):
20~40代で発症し、最も典型的な型です。小脳失調症状に加え、眼球運動障害、痙縮、パーキンソン症状など多彩な症状を呈します。

3型(晩発型):
40代以降に発症し、末梢神経障害や筋萎縮が目立ちます。進行は比較的緩やかです。

4型:
稀な型で、パーキンソン病様の症状が前面に出ます。

疾患の経過

症状は緩徐に進行性で、初期には歩行時のふらつきや構音障害で気づかれることが多いです。病気が進行すると、車椅子が必要になり、最終的には寝たきりとなる場合があります。嚥下障害による誤嚥性肺炎や呼吸障害が生命予後に影響します。

ミネルバクリニックのATXN3リピート伸長遺伝子検査の特徴

「ATXN3リピート伸長遺伝子検査」とは、ATXN3遺伝子におけるCAGリピート配列の伸長を解析し、脊髄小脳失調症3型(マシャド・ジョセフ病)の診断を確定する検査です。

この検査では、repeat-primed PCR(rpPCR)およびアンプリコン長解析という特殊な遺伝子解析技術を用いて、CAGリピートの異常伸長を高精度で検出します。

リピート伸長検査は、通常の遺伝子配列決定(シーケンシング)では困難な繰り返し配列の異常を特異的に検出できる専門的な検査方法です。ミネルバクリニックでは、この専門性の高いリピート伸長検査をリーズナブルな料金で提供しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.確定診断が可能

脊髄小脳失調症3型は臨床症状や画像検査だけでは他の脊髄小脳変性症との鑑別が困難な場合があります。ATXN3遺伝子のCAGリピート伸長を直接検出することで、確実な診断が可能になります。

CAGリピート数が52回以上の場合、脊髄小脳失調症3型と確定診断されます。また、リピート数により発症年齢や重症度をある程度予測することも可能です。

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える脊髄小脳失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには数週間から数ヶ月かかることがあります。

当院で行う「ATXN3リピート伸長遺伝子検査」の場合、約2週間で結果を提供できます。

3.家族計画に有用

脊髄小脳失調症3型は常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。遺伝子検査により保因者かどうかを確認することで、将来の家族計画について適切な選択肢を検討できます。

オプション

リピート伸長解析 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円

検査内容

「ATXN3リピート伸長遺伝子検査」では、ATXN3遺伝子におけるCAGリピート配列の異常伸長を解析します。この検査は脊髄小脳失調症3型(マシャド・ジョセフ病)の確定診断に不可欠です。

正常なCAGリピート数は12~44回程度ですが、患者さんでは52~86回以上に伸長しています。CAGリピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症化する傾向があります。

どんな人が受けたらいいの?

【脊髄小脳失調症の症状がある方、または家族歴のある方】に
「ATXN3リピート伸長遺伝子検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・歩行時のふらつきや転びやすさがある方
・呂律が回らない、話しにくいなどの構音障害がある方
・手が震える、目的物をつかみづらいなどの協調運動障害がある方
・眼球運動障害(複視、眼振、眼球突出など)がある方
・足が突っ張る(痙縮)、筋肉が硬くなる症状がある方
・パーキンソン病様の症状がある方
・脊髄小脳失調症や脊髄小脳変性症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者リスクのある方で、遺伝カウンセリングを希望される方

この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、脊髄小脳失調症3型の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、症状に応じた対症療法、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・確実な診断の確立
・他の脊髄小脳変性症との鑑別
・症状に応じた適切な対症療法の選択
・TRH製剤などの失調症状改善薬の使用判断
・リハビリテーションの適切な実施
・嚥下障害や呼吸障害などの合併症の予防と管理
・転倒予防のための環境整備
・家族の遺伝リスクに関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
・指定難病制度による医療費助成の申請
・介護保険サービスの利用(40歳以上)

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、お子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ATXN3 ( 1遺伝子 )

遺伝子の詳細:
・ATXN3遺伝子:
第14番染色体長腕(14q32.12)に位置する遺伝子で、アタキシン3というタンパク質をコードしています。アタキシン3は、タンパク質の分解に関与するデユビキチン化酵素として機能します。

ATXN3遺伝子のエキソン10内にあるCAGリピート配列が異常に伸長すると、異常に長いポリグルタミン鎖を持つ変異アタキシン3タンパク質が産生されます。この異常タンパク質が神経細胞内に蓄積し、細胞毒性を発揮することで、小脳、脳幹、脊髄、基底核などの神経細胞が変性・脱落します。

正常なCAGリピート数:12~44回
中間型(発症リスク不明):45~51回
異常伸長(発症確実):52回以上

CAGリピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症化します。また、親から子へ遺伝する際にリピート数が増加する「表現促進現象」により、次世代で発症年齢の若年化と重症化が起こることがあります。特に父親から遺伝する場合にこの現象が顕著です。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべてのリピート伸長検査には限界があります。この解析はrepeat-primed PCR(rpPCR)およびアンプリコン長解析により実施されます。この検査の範囲はATXN3遺伝子のリピート伸長解析に限定されています。

このリピート伸長解析は、大きな伸長における正確なリピート数を明らかにできない場合があります。遺伝子配列決定および欠失・重複解析は本検査に含まれていませんが、別途注文することができます。本解析にはメチル化研究は含まれていません。

この検査では、リピート伸長以外のATXN3遺伝子変異(点変異、欠失、重複など)は検出されません。また、他の脊髄小脳失調症の原因遺伝子(SCA1、SCA2、SCA6、SCA31、DRPLAなど)の変異は検出されません。臨床症状から脊髄小脳変性症が疑われるものの本検査で異常が検出されなかった場合、他の型の脊髄小脳失調症の可能性があるため、追加の遺伝子検査を検討する必要があります。

この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

結果が出るまでの期間

2週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
歩行時のふらつき、呂律が回らない、手の震え、眼球運動障害(複視、眼振、眼球突出)、足の突っ張りなどの症状がある方におすすめします。また、脊髄小脳失調症や脊髄小脳変性症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
脊髄小脳失調症3型は常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に症状のないご家族が発症前診断を希望される場合は、十分な遺伝カウンセリングが必要です。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査ではATXN3遺伝子のCAGリピート伸長のみを検査しています。検査で病原性変異が検出されなくても、他の型の脊髄小脳失調症(SCA1、SCA2、SCA6、SCA31、DRPLAなど)の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて他の遺伝子のリピート伸長検査や遺伝子パネル検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。また、40歳以上の方は介護保険サービスを利用できます。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。CAGリピート数、診断の確定、発症リスク、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
脊髄小脳失調症3型は常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが変異を受け継ぐ確率は50%です。また、親から子へ遺伝する際にCAGリピート数が増加する「表現促進現象」により、次世代で発症年齢が若年化し症状が重症化することがあります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
脊髄小脳失調症3型の治療はどのように行われますか?
現時点では病気の進行を止める根本的な治療法はありませんが、対症療法により症状を緩和できます。運動失調症状に対してはTRH製剤(プロチレリン酒石酸塩注射薬、タルチレリン水和物内服薬)が使用されます。また、リハビリテーション(バランス訓練、歩行訓練、言語訓練など)が症状の改善と進行の遅延に有効です。転倒予防、嚥下障害への対応、呼吸管理なども重要です。
予後はどうですか?
症状は緩徐進行性で、発症から車椅子が必要になるまでの期間は平均10~15年程度とされています。CAGリピート数が多いほど進行が速い傾向があります。適切なリハビリテーションと対症療法により、生活の質を維持することが可能です。嚥下障害による誤嚥性肺炎や呼吸障害が生命予後に影響するため、早期からの適切な管理が重要です。
発症前診断は受けられますか?
脊髄小脳失調症3型の家族歴があり、まだ症状が出ていない方が将来の発症リスクを知りたい場合、発症前診断を受けることができます。ただし、発症前診断は、検査を受けることの心理的影響、就職や保険加入への影響、家族関係への影響など、多くの慎重な検討が必要です。当院では十分な遺伝カウンセリングを行い、ご本人が納得した上で検査を受けていただけるようサポートいたします。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら