ATXN2リピート伸長検査(脊髄小脳失調症2型)|ミネルバクリニック
脊髄小脳失調症2型(SCA2)とは
脊髄小脳失調症2型(Spinocerebellar Ataxia Type 2: SCA2)は、進行性の小脳失調を主症状とする遺伝性神経変性疾患です。ATXN2遺伝子内のCAGリピート(3塩基配列の繰り返し)が異常に伸長することにより発症します。
本疾患は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、親から子へ50%の確率で遺伝します。日本における常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症(AD-SCD)のうち、SCA2の疾患頻度は約3.2%とされています。過去の分類法では遺伝性オリーブ橋小脳萎縮症、Menzel型遺伝性脊髄小脳変性症と呼ばれていました。
脊髄小脳失調症2型は指定難病(難病指定18:脊髄小脳変性症)に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。典型例では30歳代に発症し、10~15年の経過をたどりますが、CAGリピート数により発症年齢や重症度が異なります。
症状と病態
脊髄小脳失調症2型は、緩徐に進行する運動失調と構音障害を主症状とし、特徴的な眼症状を伴います。ATXN2遺伝子のCAGリピートが異常に伸長すると、アミノ酸としてグルタミンが異常に増大したポリグルタミン鎖が形成され、これが凝集して細胞毒性を持つことで神経細胞が変性します。
主要症状
- 進行性の小脳性運動失調(ふらふらとした歩行、バランス障害)
- 緩徐衝動性眼球運動(追視時の眼の動きが遅くなる)- SCA2に特徴的な所見
- 眼振(眼球の振るえ)
- 眼筋麻痺(一部の患者)
- 小脳性構音障害(とぎれとぎれで不明瞭な会話、酔っぱらったような話し方)
- 協調運動障害(測定障害、運動分解、企図振戦)
- 深部腱反射の変化(病初期には亢進、後期には消失)
- 錐体路徴候
合併症状
疾患の進行に伴い、以下のような症状が出現することがあります:
- パーキンソン症候(寡動、筋強剛など)
- ミオクローヌス(筋肉の素早い不随意収縮)
- 自律神経障害(排尿障害、起立性低血圧、発汗障害)
- 末梢神経障害
- 嚥下障害
- 呼吸障害
CAGリピート数と表現促進現象
正常なATXN2遺伝子のCAGリピート数は31回以下です。33回以上のCAGリピートを持つ場合、SCA2を発症します。CAGリピート数が多いほど発症年齢は若年化し、症状もより重症化します。
また、親から子に遺伝する際にCAGリピート数が増加することがあり、これを「表現促進現象」と呼びます。この現象により、次世代では発症年齢がより若くなり、症状がより重症化する傾向があります。20歳以前に発症する場合は、疾患はより急速に進行します。
※ATXN2遺伝子における27~33リピートのCAG反復配列は、孤発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症リスク因子としても知られています。
ミネルバクリニックのATXN2リピート伸長検査の特徴
「ATXN2リピート伸長検査」とは、脊髄小脳失調症2型の原因となるATXN2遺伝子のCAGリピート伸長を検出する遺伝子検査です。この検査により、SCA2の確定診断が可能となります。
脊髄小脳変性症には多くの病型があり、従来は臨床症状や画像検査だけでは確定診断が困難でした。しかし、遺伝子検査により原因遺伝子とリピート数を特定することで、確実な診断と適切な治療計画、家族への遺伝カウンセリングが可能になります。
ミネルバクリニックでは、リピート伸長検査を用いて、ATXN2遺伝子のCAGリピート数を正確に測定し、SCA2の診断をサポートします。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で脊髄小脳失調症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、ATXN2リピート伸長検査をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える脊髄小脳失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。
当院で行う「ATXN2リピート伸長検査」の場合、約2週間で結果をお知らせすることが可能です。
3.正確な診断が可能
臨床症状や画像検査だけでは、脊髄小脳変性症の病型を確定することが困難な場合があります。ATXN2リピート伸長検査により、CAGリピート数を正確に測定することで、SCA2の確定診断が可能になります。
また、CAGリピート数により発症リスクや重症度の予測、家族への遺伝カウンセリング、将来の家族計画に関する重要な情報を提供できます。
オプション
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「ATXN2リピート伸長検査」では、12番染色体長腕(12q24.12)に位置するATXN2遺伝子のCAGリピート数を測定します。この検査は、リピートプライムドPCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施されます。
正常なCAGリピート数は31回以下、33回以上で脊髄小脳失調症2型を発症します。リピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症化する傾向があります。
どんな人が受けたらいいの?
【脊髄小脳失調症2型の個人歴または家族歴のある方】に
「ATXN2リピート伸長検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・進行性の運動失調(ふらふらとした歩行、バランス障害)がある方
・緩徐衝動性眼球運動(追視時の眼の動きが遅い)が認められる方
・小脳性構音障害(とぎれとぎれで不明瞭な会話)がある方
・眼振や眼筋麻痺がある方
・協調運動障害がある方
・頭部MRIで小脳や脳幹の萎縮が認められる方
・脊髄小脳変性症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、脊髄小脳失調症2型の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・リハビリテーション治療の最適化
・転倒予防対策の実施
・嚥下障害への対応
・呼吸障害の管理
・自律神経障害への対応
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝形式のため、お子さんが同じ疾患を発症するリスクは50%です。ただし、発症年齢、重症度、症状のタイプ、疾患の進行速度は多様であり、家族歴や遺伝したリピート数で正確に予測することはできません。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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ATXN2 ( 1遺伝子 )
遺伝子の詳細:
・ATXN2遺伝子:
12番染色体長腕(12q24.12)に位置する遺伝子で、アタキシン2というタンパク質をコードしています。ATXN2遺伝子の翻訳領域におけるCAGリピートが異常伸長することにより、脊髄小脳失調症2型(SCA2)が発症します。
正常なCAGリピート数は31回以下です。33回以上のCAGリピートを持つ場合、SCA2を発症します。CAGリピート数が多いほど発症年齢は若年化し、症状もより重症化します。また、親から子に遺伝する際にCAGリピート数が増加する「表現促進現象」により、次世代では発症年齢がより若くなる傾向があります。
CAGリピートはアミノ酸としてグルタミンとなり、異常に伸長したポリグルタミン鎖が形成されることで神経細胞が変性します。このため、SCA2はポリグルタミン病の一つに分類されます。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべてのリピート伸長検査には限界があります。この分析はリピートプライムドPCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施され、ATXN2遺伝子のCAGリピート伸長の検出を目的として設計されています。
このリピート伸長分析では、大きな伸長におけるリピート数の正確な数値を明らかにできない場合があります。遺伝子シーケンシングおよび欠失/重複分析はこの検査に含まれていませんが、別途注文することができます。この分析にはメチル化研究は含まれません。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査は、ATXN2遺伝子のCAGリピート伸長の検出に特化しています。他の脊髄小脳失調症(SCA1、SCA3、SCA6など)の検査が必要な場合は、別途ご相談ください。
結果が出るまでの期間
2週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 進行性の運動失調(ふらふらとした歩行、バランス障害)、緩徐衝動性眼球運動(追視時の眼の動きが遅い)、小脳性構音障害(とぎれとぎれで不明瞭な会話)、眼振、協調運動障害がある方におすすめします。また、頭部MRIで小脳や脳幹の萎縮が認められる方、脊髄小脳変性症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 脊髄小脳失調症2型は常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが同じ疾患を発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。ただし、発症年齢や重症度は個人差が大きく、CAGリピート数だけでは正確に予測できません。
- CAGリピート数で何が分かりますか?
- 正常なCAGリピート数は31回以下、33回以上で脊髄小脳失調症2型を発症します。リピート数が多いほど発症年齢が若く、症状も重症化する傾向がありますが、個人差があります。また、27~33回のリピート数は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症リスク因子としても知られています。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- この検査ではATXN2遺伝子のリピート伸長のみを対象としています。検査で異常が検出されなくても、他の脊髄小脳失調症(SCA1、SCA3、SCA6など)の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて他の病型の遺伝子検査を受けることが重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢、リハビリテーションなどについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 脊髄小脳失調症2型は常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが疾患を発症する確率は50%です。また、親から子に遺伝する際にCAGリピート数が増加する「表現促進現象」により、次世代では発症年齢がより若くなる傾向があります。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 脊髄小脳失調症2型の治療はどのように行われますか?
- 現在、根本的な治療法はありませんが、症状に応じた対症療法と支持療法が行われます。リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)、転倒予防のための杖や歩行器の使用、住環境の整備、嚥下障害への対応、自律神経障害の管理などを総合的に行います。
- 予後はどうですか?
- 典型例では30歳代に発症し、10~15年の経過をたどります。20歳以前に発症する場合は、疾患はより急速に進行します。予後は合併症状(パーキンソン症候、自律神経障害など)の程度に影響を受けます。早期診断と適切な支持療法により、生活の質(QOL)の維持が期待できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院ではATXN2リピート伸長検査を約2週間で結果をお知らせでき、従来の検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
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