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ATN1遺伝子検査(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)|ミネルバクリニック

ATN1遺伝子検査(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)|ミネルバクリニック

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症とは

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(Dentatorubral-Pallidoluysian Atrophy: DRPLA)は、小脳歯状核、赤核、淡蒼球、ルイ体に神経変性をきたす進行性の神経変性疾患です。常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患で、特に日本人に多く見られることが知られています。

本疾患は12番染色体上のATN1遺伝子内のCAGリピートの異常伸長により発症します。CAG、CTG、CGGまたはGAAなどの3塩基の繰り返し配列が異常に伸長するため、トリプレットリピート病またはポリグルタミン病と呼ばれています。正常では35リピート以下ですが、DRPLAでは通常48リピート以上になります。

DRPLAは指定難病(難病指定17)および小児慢性特定疾病に認定されており、適切な遺伝学的検査により診断を確定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。発症年齢は乳児から成人後期(0~72歳)に及び、平均発症年齢は31.5歳です。罹病期間は平均8年で、死亡年齢は平均49歳です。

症状と病態

DRPLAの臨床症状は発症年齢により大きく異なり、若年型、早期成人型、遅発成人型の3型に分類されます。CAGリピート数が多いほど発症年齢が早く、症状も重症化する傾向があります。また、親から子への遺伝の際にリピート数が増加する現象(表現促進現象)が見られ、特に父親から遺伝した場合に顕著です。

基本的な臨床症候

  • 小脳失調(ふらつき、運動のぎこちなさ)
  • ミオクローヌス(不随意運動)
  • てんかん発作
  • 認知症(発症年齢が早い場合は精神発達遅滞)
  • 舞踏アテトーゼ(不随意運動)
  • 性格変化(多幸的、児戯的)
  • 精神症状(幻覚、妄想を含む)

若年型(20歳未満)

若年型では、てんかん発作やミオクローヌスなどの不随意運動が顕著に現れます。進行性ミオクローヌスてんかん症候群を呈し、以下の症状が特徴的です:

  • 運動失調
  • ミオクローヌス
  • てんかん発作(部分性または全般性間代発作)
  • 進行性の知能低下
  • 精神発達遅滞
  • 行動障害

てんかん発作が頻発する時期には、急速な臨床症状悪化と脳波基礎律動の徐波化、突発性異常波の増加が認められることがあります。

早期成人型(20歳から40歳未満)

早期成人型では、小脳失調、舞踏アテトーゼ、認知症などが主症状となり、若年型と遅発成人型の中間的な症状を呈します。

遅発成人型(40歳以降)

遅発成人型では、歩行時のふらつきなどの小脳失調が主症状となり、舞踏アテトーゼ、認知症、性格変化が見られます:

  • 運動失調(歩行障害)
  • 舞踏アテトーゼ
  • 認知症
  • 精神障害
  • 人格変化

画像所見

頭部MRIでは小脳と脳幹の萎縮が認められます。小脳萎縮は発症後徐々に進行し、10歳代後半以降に明らかになることが多いです。

病態の進行

DRPLAは進行性の疾患で、一度できていた動作ができなくなり、最終的には寝たきりとなります。てんかん発作が頻発した後に会話、経口摂取、歩行、座位保持が不能になるなど、臨床症状の著明な増悪が観察されることがあります。経過観察において歩行分析が有用なツールとなります。

ミネルバクリニックのATN1遺伝子検査の特徴

「ATN1遺伝子リピート伸長検査」とは、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の原因であるATN1遺伝子のCAGリピートの異常伸長を調べる検査です。

DRPLAは臨床症状が多様で、他のポリグルタミン病や脊髄小脳変性症との鑑別が困難な場合があります。特にCAGリピートの伸長が軽度な患者さんでは、病初期において認知症・舞踏アテトーゼ・人格変化を伴わない運動失調などの純粋な小脳症状を示す傾向があり、臨床診断が困難です。

当院のATN1遺伝子検査では、リピートプライムドPCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により、ATN1遺伝子のCAGリピート数を正確に測定し、DRPLAの診断確定を支援します。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でDRPLAの遺伝子検査を行う場合、高額な費用がかかることがあります。

当院では、ATN1遺伝子のリピート伸長検査をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるDRPLAの遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。

当院で行う「ATN1遺伝子リピート伸長検査」の場合、2週間程度で結果を得ることが可能です。

3.正確なリピート数の測定

リピートプライムドPCR(rpPCR)とアンプリコン長解析を用いることで、ATN1遺伝子のCAGリピート数を正確に測定します。ただし、非常に大きな伸長の場合、正確なリピート数を特定できない場合があります。

検査内容

「ATN1遺伝子リピート伸長検査」では、12番染色体短腕上のATN1遺伝子内のCAGリピート数を測定します。正常では35リピート以下ですが、DRPLA患者では48~93リピートの異常伸長が認められます。

「ATN1遺伝子リピート伸長検査」は、DRPLAの遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【DRPLAの個人歴または家族歴のある方】に
「ATN1遺伝子リピート伸長検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・小脳失調(ふらつき、運動のぎこちなさ)がある方
・ミオクローヌスや舞踏アテトーゼなどの不随意運動がある方
・てんかん発作がある方
・進行性の認知症や知能低下がある方
・性格変化、精神症状(幻覚、妄想)がある方
・脊髄小脳変性症と診断されているが確定診断がついていない方
・DRPLAの家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

この検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、DRPLAの診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の脊髄小脳変性症との鑑別
・症状に応じた対症療法の最適化
・てんかん発作の管理
・リハビリテーションの計画
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

DRPLAは常染色体優性遺伝形式のため、罹患者の子が伸長したCAGリピートを受け継ぐリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。また、表現促進現象により、次世代ではリピート数が増加し、より若年で発症する可能性があります。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ATN1 ( 1遺伝子 )

遺伝子の詳細:
・ATN1遺伝子:
12番染色体短腕(12p13.31)に位置する遺伝子で、アトロフィン-1というタンパク質をコードしています。このタンパク質の機能は完全には解明されていませんが、神経細胞の生存と機能に重要な役割を果たしていると考えられています。ATN1遺伝子内のCAGリピートが異常に伸長すると、異常なポリグルタミン鎖を持つタンパク質が生成され、神経細胞に毒性を示すことでDRPLAが発症します。正常なCAGリピート数は6~35回ですが、DRPLA患者では48~93回に伸長しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべてのリピート伸長アッセイには限界があります。この分析はリピートプライムドPCR(rpPCR)とアンプリコン長解析により実施されます。この検査の範囲はリピート伸長分析に限定されます。

このリピート伸長分析では、大きな伸長における正確なリピート数を特定できない場合があります。遺伝子の塩基配列決定および欠失/重複分析は本検査に含まれていませんが、別途注文することができます。本分析にはメチル化研究は含まれていません。

リピートプライムドPCRは、リピート伸長の有無を高感度に検出できますが、非常に大きな伸長(93リピート以上)の場合、正確なリピート数を特定することが困難な場合があります。また、モザイク現象(体細胞によってリピート数が異なる現象)の検出は、本検査の主要な目的ではありません。

※DRPLAと臨床的に類似した症状を呈する他のトリプレットリピート病(Huntington舞踏病、Machado-Joseph病など)の検査が必要な場合は、別途ご相談ください。

結果が出るまでの期間

2週間

料金

税込み220,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
小脳失調(ふらつき)、ミオクローヌスや舞踏アテトーゼなどの不随意運動、てんかん発作、進行性の認知症や知能低下、性格変化、精神症状(幻覚、妄想)などがある方におすすめします。また、DRPLAの家族歴がある場合も検査をご検討ください。脊髄小脳変性症と診断されているが確定診断がついていない方にも有用です。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
DRPLAは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんの子が伸長したCAGリピートを受け継ぐリスクは50%です。また、表現促進現象により、次世代ではリピート数が増加し、より若年で発症する可能性があります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
CAGリピートの伸長が検出されなかった場合、DRPLAの可能性は低くなりますが、他の脊髄小脳変性症やトリプレットリピート病の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて他の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み220,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。CAGリピート数の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。リピート数と発症年齢や症状の重症度との関連についてもご説明します。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
DRPLAは常染色体優性遺伝形式をとるため、罹患者の子が伸長したCAGリピートを受け継ぐリスクは50%です。また、表現促進現象により、親から子への遺伝の際にリピート数が増加することがあり、特に父親から遺伝した場合に顕著です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
DRPLAの治療はどのように行われますか?
現在、DRPLAの根本的治療法は確立されていませんが、症状に応じた対症療法が行われます。てんかん発作に対する抗てんかん薬、不随意運動に対する薬物療法、リハビリテーション、嚥下訓練、精神症状に対する向精神薬などが用いられます。近年、核酸医薬を用いた遺伝子治療の研究が進められており、将来的な根治的治療の開発が期待されています。
予後はどうですか?
DRPLAは進行性の疾患で、罹病期間は平均8年、死亡年齢は平均49歳です。CAGリピート数が多いほど発症年齢が早く、症状も重症化し、進行も速い傾向があります。若年発症例では進行が速く、予後が不良な傾向があります。早期診断と適切な対症療法により、生活の質を維持することが重要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院ではリピートプライムドPCRとアンプリコン長解析により、ATN1遺伝子のCAGリピート数を正確に測定します。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。また、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを提供し、検査結果の解釈や家族計画について専門的なサポートを行います。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら