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運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)|ミネルバクリニック

運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)|ミネルバクリニック

運動失調症とは

運動失調症(Ataxia)は、小脳を中心とした神経系の障害により、身体の協調運動が障害される疾患群の総称です。歩行時のふらつき、手の細かい動作の不正確さ、呂律が回らない、眼球運動の異常などが主な症状として現れます。

運動失調症は、その原因により大きく二次性(後天性)運動失調症と脊髄小脳変性症に分類されます。二次性運動失調症は、血管障害、腫瘍、感染、炎症、中毒、アルコール、薬剤などの明確な原因により生じます。一方、脊髄小脳変性症は、これらの明確な原因がなく、小脳やその関連神経系が徐々に変性していく慢性進行性の疾患群です。

脊髄小脳変性症はさらに遺伝性と孤発性に分類されます。日本における脊髄小脳変性症の約30%は遺伝性疾患であり、分子生物学の進歩により、現在では遺伝性運動失調症の70~80%において遺伝子検査で原因が確定できるようになっています。

遺伝性運動失調症は多くが指定難病に認定されており、適切な遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。早期診断により、適切な症状管理、リハビリテーション、将来の見通しの提供が可能となり、患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献します。

遺伝性運動失調症の分類

遺伝性運動失調症は遺伝形式により、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X染色体連鎖性遺伝に分類されます。当検査では主に常染色体優性遺伝形式をとる脊髄小脳失調症(Spinocerebellar Ataxia: SCA)と一部の劣性遺伝性疾患のリピート伸長変異を対象としています。

常染色体優性遺伝性脊髄小脳失調症(SCA)

脊髄小脳失調症は、ヒト遺伝子地図に登録された順番に従ってSCA1、SCA2、SCA3というように番号が付けられています。現在までに40種類以上のSCAが同定されており、その多くがDNA上の特定の塩基配列(リピート配列)の異常な伸長によって引き起こされます。

日本で頻度の高いSCAは以下の通りです:

  • SCA3(マシャド・ジョセフ病):日本で最も頻度が高い遺伝性運動失調症です。小脳失調に加え、パーキンソニズム、眼球運動障害、筋萎縮などを伴います。
  • SCA6:比較的緩徐に進行する純粋小脳失調型です。小脳症状が主体で、他の神経症状は少ないのが特徴です。
  • SCA31:日本で特に多くみられる型で、純粋小脳型の運動失調を呈します。
  • DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症):運動失調に加え、認知症、てんかん、不随意運動などを伴います。若年発症例では重症化する傾向があります。

常染色体劣性遺伝性運動失調症

劣性遺伝性運動失調症の代表的疾患はフリードライヒ運動失調症(Friedreich Ataxia: FXN)です。欧米では頻度が高い疾患ですが、日本での報告はまれです。この疾患では、FXN遺伝子のGAAリピートの異常伸長により、小脳失調、深部感覚障害、心筋症、糖尿病などが生じます。

その他の運動失調症

当検査パネルには、発作性運動失調症(CACNA1A遺伝子)、脆弱X随伴振戦/運動失調症候群(FMR1遺伝子)なども含まれます。これらは典型的な進行性小脳失調とは異なる臨床像を呈することがあります。

症状と病態

運動失調症では、小脳やその関連神経系の障害により、目的の運動に関係する様々な動きの協調性が悪くなり、円滑な動作ができなくなります。

主要症状

  • 歩行障害:起立・歩行時のふらつきが代表的な症状です。千鳥足のような不安定な歩行となり、転倒のリスクが高まります。
  • 四肢の協調運動障害:手の細かい動作が障害されます。書字が下手になる、水を満たしたコップを持つと手が震えてこぼす、ボタンの掛け外しができない、箸を使った食事が困難になるなどの症状が現れます。
  • 構音障害:呂律が回らなくなり、言葉がはっきりしなくなります(小脳性構語障害)。
  • 嚥下障害:飲み込みが悪くなり、むせて咳き込みやすくなります。誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
  • 眼球運動障害:眼振(眼球が細かく揺れる)、眼球運動失行(見たいものを正確に見られない)などが生じます。
  • 測定障害:目標物に手を伸ばす際に、距離や方向の調節が困難になります。
  • 企図振戦:目的の動作を行おうとすると手が震えます。

随伴症状

遺伝性運動失調症では、小脳症状以外にも様々な神経症状を伴うことがあります:

  • パーキンソニズム(動作緩慢、筋固縮、振戦)
  • 錐体路徴候(腱反射亢進、病的反射陽性)
  • 末梢神経障害(しびれ、筋力低下、腱反射低下)
  • 自律神経障害(起立性低血圧、排尿障害、勃起不全、発汗異常)
  • 認知機能障害、認知症
  • 不随意運動(舞踏運動、ジストニアなど)
  • てんかん
  • 視神経萎縮、網膜変性
  • 難聴
  • 心筋症(特にフリードライヒ運動失調症)
  • 糖尿病、内分泌異常

疾患特有の特徴

遺伝子型により、特徴的な症状の組み合わせが見られることがあります:

  • SCA3:小脳失調に加え、眼球突出、パーキンソニズム、筋萎縮が特徴的です。
  • SCA6:比較的純粋な小脳症状を呈し、進行が緩徐です。
  • DRPLA:運動失調、認知症、てんかん、不随意運動を伴います。若年発症例では重症化します。
  • フリードライヒ運動失調症:深部感覚障害、心筋症、糖尿病、脊柱側弯症を伴います。
  • 発作性運動失調症(CACNA1A):数分から数時間持続する発作性の運動失調を呈します。

ミネルバクリニックの運動失調症遺伝子検査の特徴

「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」とは、運動失調症の原因として最も頻度の高いリピート伸長変異を持つ15の遺伝子を、次世代シーケンサー(NGS)とリピートプライムPCR法を組み合わせて調べる検査方法です。

この検査では、まず全ゲノムデータから短鎖反復配列(STR)の長さの異常をスクリーニングし、陽性となった遺伝子についてリピートプライムPCR法により確認検査を行います。また、FGF14遺伝子については全例でリピートプライムPCR検査を実施します。

従来の検査方法では、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、運動失調症に関連する15の遺伝子のリピート伸長変異を一度に調べられる「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で運動失調症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、運動失調症に関係するとされる15の遺伝子のリピート伸長変異を一度に調べられる「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える運動失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」の場合、15の遺伝子のリピート伸長変異を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から運動失調症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」ならば、日本で頻度の高いSCA3、SCA6、SCA31、DRPLAを含む15の遺伝子のリピート伸長変異を同時に検査できるという利点があります。

オプション

リピート伸長解析 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」では、運動失調症の原因として知られる15種類の遺伝子のリピート伸長変異をまとめて検査します。これらは日本において頻度の高い遺伝性運動失調症の原因遺伝子です。

「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」は、運動失調症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【運動失調症の個人歴または家族歴のある方】に
「運動失調症遺伝子検査(リピート伸長解析)」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・歩行時のふらつきや転倒を繰り返す方
・手の細かい動作(書字、ボタンかけ、箸の使用など)が不正確になった方
・呂律が回らなくなった方
・飲み込みが悪くなり、むせやすくなった方
・眼球運動の異常がある方
・家族に運動失調症の方がいる方
・MRI検査で小脳萎縮が認められた方
・進行性の神経症状があり、原因が不明の方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、運動失調症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、早期からのリハビリテーション、症状に応じた薬物治療、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・疾患の予後予測
・症状に応じた適切な薬物治療(パーキンソニズム、自律神経障害、痙縮、てんかんなど)
・早期からのリハビリテーションの導入
・嚥下障害への対応と誤嚥性肺炎の予防
・転倒予防のための環境整備
・福祉制度(指定難病制度など)の活用
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・遺伝カウンセリングの提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、その遺伝形式により家族のリスクは異なります。常染色体優性遺伝の場合、子どもが同じ疾患を発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ATN1, ATXN1, ATXN10, ATXN2, ATXN3, ATXN7, ATXN8OS, BEAN1, CACNA1A, FGF14, FMR1, FXN, NOP56, PPP2R2B, TBP ( 15遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・ATXN3遺伝子(SCA3/マシャド・ジョセフ病):
日本で最も頻度の高い遺伝性運動失調症。CAGリピートの伸長により発症。小脳失調に加え、眼球突出、パーキンソニズム、筋萎縮などを伴う。

・CACNA1A遺伝子(SCA6、発作性運動失調症2型):
CAGリピートの伸長によりSCA6を発症。比較的純粋な小脳症状で、進行が緩徐。また、別の変異により発作性運動失調症を引き起こすこともある。

・BEAN1遺伝子(SCA31):
日本で特に多くみられる型。TGGAAリピートの挿入により発症。純粋小脳型の運動失調を呈する。

・ATN1遺伝子(DRPLA:歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症):
CAGリピートの伸長により発症。運動失調、認知症、てんかん、不随意運動を伴う。若年発症例では重症化する傾向がある。

・ATXN1遺伝子(SCA1):
CAGリピートの伸長により発症。小脳失調、錐体路徴候、末梢神経障害を伴う。

・ATXN2遺伝子(SCA2):
CAGリピートの伸長により発症。小脳失調、眼球運動緩徐、末梢神経障害を特徴とする。

・ATXN7遺伝子(SCA7):
CAGリピートの伸長により発症。小脳失調に加え、網膜変性による視力障害を伴うのが特徴。

・ATXN8OS遺伝子(SCA8):
CTGリピートの伸長により発症。純粋小脳型の運動失調を呈する。

・ATXN10遺伝子(SCA10):
ATTCTリピートの伸長により発症。小脳失調、てんかんを伴う。

・TBP遺伝子(SCA17):
CAGリピートの伸長により発症。小脳失調、認知症、パーキンソニズム、不随意運動を伴う。

・FGF14遺伝子(SCA27):
小脳失調、振戦、認知機能障害を呈する。この遺伝子については全例でリピートプライムPCR検査を実施。

・PPP2R2B遺伝子(SCA12):
CAGリピートの伸長により発症。小脳失調、振戦、認知機能障害を伴う。

・NOP56遺伝子(SCA36):
HEXANリピートの伸長により発症。小脳失調、舌萎縮、難聴を伴う。

・FXN遺伝子(フリードライヒ運動失調症):
GAAリピートの伸長により発症。常染色体劣性遺伝。小脳失調、深部感覚障害、心筋症、糖尿病、脊柱側弯症を伴う。欧米に多く、日本では稀。

・FMR1遺伝子(脆弱X随伴振戦/運動失調症候群):
CGGリピートの伸長により中年期以降に運動失調、振戦、認知機能障害を発症。X連鎖遺伝。

検査方法

この検査では、段階的アプローチを採用しています:

  1. NGSスクリーニング:全ゲノムデータからIllumina ExpansionHunterアルゴリズムを用いて、各遺伝子座における短鎖反復配列(STR)の長さの異常をスクリーニングします。
  2. リピートプライムPCR確認:スクリーニングで陽性となった遺伝子について、リピートプライムPCR法により確認検査を行います。
  3. FGF14遺伝子:全例でリピートプライムPCR検査を実施します。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

この検査は、指定された遺伝子座における短鎖反復配列(リピート配列)の伸長を検出することを目的として設計されています。以下の点にご注意ください:

検査の範囲:
・この検査の範囲は、指定された15遺伝子のリピート伸長解析に限定されています。
・遺伝子の塩基配列解析(シーケンシング)や欠失・重複解析は含まれていません。
・メチル化解析も、特に指定されない限り含まれていません。

技術的限界:
・次世代シーケンシング(NGS)技術とバイオインフォマティクス解析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の影響は大幅に減少しますが、これらが病原性変異の同定を妨げる可能性があります。
・非典型的または予期しない変化が検査対象遺伝子座に存在する場合、本手法では陽性シグナルが生成されない可能性があります。
・低品質スコアの変異については、サンガー配列決定法により確認されます。

検出できない変異:
この検査では、以下のタイプのゲノム変化は検出されません:
・転座や逆位
・リピート伸長以外の点変異や小さな挿入・欠失
・調節領域(プロモーター領域)の変化
・深部イントロン領域(エキソンから20bp以上離れた部位)の変化
・この検査は体細胞モザイクや体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

その他の注意点:
・この検査パネルに含まれない遺伝子に変異がある場合は検出されません。
・検査対象の15遺伝子以外にも、多数の運動失調症関連遺伝子が知られています。
・検査で異常が検出されなかった場合でも、運動失調症の可能性を完全には否定できません。
・臨床症状と検査結果を総合的に判断することが重要です。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み385,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
歩行時のふらつきや転倒を繰り返す方、手の細かい動作が不正確になった方、呂律が回らなくなった方、飲み込みが悪くなった方、眼球運動の異常がある方におすすめします。また、MRI検査で小脳萎縮が認められた方や、家族に運動失調症の方がいる場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝性運動失調症の多くは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんの子どもが同じ疾患を発症するリスクは50%です。また、患者さんの兄弟姉妹も遺伝子変異を持つ可能性があります。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では15遺伝子のリピート伸長変異のみを対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、他のタイプの変異(点変異、欠失、重複など)や、パネルに含まれない他の遺伝子の変異の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の遺伝子検査(全エキソーム解析など)を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。ただし、診断確定後は指定難病制度により医療費助成を受けられる可能性があります。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢、リハビリテーション、福祉制度の活用などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝性運動失調症の多くは常染色体優性遺伝形式をとるため、患者さんのお子さんが疾患を発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
運動失調症の治療はどのように行われますか?
現在のところ、進行を止める根治的治療法は確立されていませんが、症状に応じた対症療法が重要です。パーキンソン症状、自律神経障害、痙縮、てんかんなどに対する薬物治療、早期からのリハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)、転倒予防のための環境整備、嚥下訓練と誤嚥性肺炎の予防などを総合的に行います。
予後はどうですか?
予後は遺伝子型により異なります。SCA6は比較的緩徐に進行し、長期にわたり歩行可能なことが多いです。一方、SCA3やDRPLAは進行が早い傾向があります。フリードライヒ運動失調症では心筋症が予後を左右します。早期診断と適切な管理により、QOL(生活の質)の維持が期待できます。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では日本で頻度の高いSCA3、SCA6、SCA31、DRPLAを含む15の遺伝子のリピート伸長変異を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。
リピート伸長とは何ですか?
リピート伸長とは、DNAの特定の塩基配列(CAG、GAAなど)が異常に繰り返される現象です。正常な人でもこれらの配列は繰り返されていますが、一定の回数を超えると病気を引き起こします。例えば、SCA3ではCAGリピートが55回以上になると発症します。リピート回数が多いほど、一般的に発症年齢が早く、症状が重くなる傾向があります。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら