InstagramInstagram

眼球運動失行を伴う運動失調症遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

眼球運動失行を伴う運動失調症遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック

眼球運動失行を伴う運動失調症とは

眼球運動失行を伴う運動失調症(Ataxia with Oculomotor Apraxia: AOA)は、進行性の小脳性運動失調と眼球運動障害を特徴とする遺伝性神経変性疾患です。小児期から青年期に発症し、バランス障害、歩行障害、協調運動障害が徐々に進行します。

本疾患は常染色体劣性遺伝形式をとり、両親は通常無症候性保因者です。現在までに4つの型(AOA1、AOA2、AOA3、AOA4)が同定されており、それぞれ異なる遺伝子の変異により引き起こされます。

眼球運動失行を伴う運動失調症は、小脳萎縮を伴う進行性の神経疾患であり、早期診断により適切な支援と管理が可能となります。遺伝学的検査により原因を特定することで、患者さんとご家族にとって重要な医学的情報を提供できます。

AOAの型と分類

眼球運動失行を伴う運動失調症は原因遺伝子によって複数の型に分類されます。当検査では、これら4つの型すべての原因遺伝子を対象としています。

AOA1型(APTX遺伝子変異)

APTX遺伝子はアプラタキシン(aprataxin)というタンパク質をコードしています。このタンパク質はDNA修復に関与しており、遺伝子の変異により神経細胞のDNA損傷が蓄積します。

AOA1型は小児期(平均4歳頃)に発症し、小脳性運動失調と眼球運動失行に加えて、低アルブミン血症と高コレステロール血症が特徴的です。日本を含むアジアやポルトガルで比較的多く報告されています。末梢神経障害が高頻度に認められ、手足の筋萎縮や深部腱反射の消失が進行します。

AOA2型(SETX遺伝子変異)

SETX遺伝子はセナタキシン(senataxin)というタンパク質をコードしており、DNA-RNAハイブリッドの処理やDNA修復に関与しています。

AOA2型は青年期(平均15歳頃)に発症し、世界で最も頻度の高いAOAの型です。血清α-フェトプロテイン(AFP)の上昇が特徴的で、診断の重要な手がかりとなります。小脳萎縮と軸索性の感覚運動神経障害を伴い、多くの患者さんで発症後10~15年で車椅子が必要になります。

AOA3型(PIK3R5遺伝子変異)

PIK3R5遺伝子はホスファチジルイノシトール3-キナーゼの調節サブユニットをコードしており、細胞のシグナル伝達に関与しています。

AOA3型は比較的まれで、青年期に発症します。小脳性運動失調と末梢神経障害を特徴とし、血清α-フェトプロテインの上昇は認められないことが多いです。

AOA4型(PNKP遺伝子変異)

PNKP遺伝子はポリヌクレオチドキナーゼ-ホスファターゼをコードしており、DNA修復機構において重要な役割を果たしています。

AOA4型は小児期(平均4歳頃)に発症し、小脳性運動失調、眼球運動失行に加えて、ジストニアや舞踏運動などの不随意運動が特徴的です。知的障害を伴うこともあります。

このパネル検査では、4つの型すべての原因遺伝子(APTX、SETX、PIK3R5、PNKP)を同時に検査することで、効率的な診断が可能です。

症状と病態

眼球運動失行を伴う運動失調症では、小脳の変性により協調運動障害が進行し、日常生活動作に支障をきたします。多くの患者さんで小脳萎縮がMRI検査で確認されます。

主要症状

  • 小脳性運動失調(バランス障害、歩行障害、協調運動障害)
  • 眼球運動失行(随意的な眼球運動の困難、側方注視の障害)
  • 構音障害(ろれつが回らない、言葉が不明瞭)
  • 末梢神経障害(四肢の感覚障害、筋力低下)
  • 深部腱反射の低下または消失
  • 筋萎縮(特に手足の遠位部)
  • 小脳萎縮(MRI検査で確認)
  • 不随意運動(舞踏運動、ミオクローヌス、ジストニア)

眼球運動失行とは

眼球運動失行は、目を左右に動かすことが困難になる症状です。患者さんは横を見る際に、眼球を動かすのではなく頭全体を回して視線を移動させます。この特徴的な頭部と眼球の協調運動の障害により、読書や日常生活で困難が生じます。

型別の特徴的症状

各型で特徴的な臨床所見があります:

  • AOA1型:低アルブミン血症、高コレステロール血症、早期発症(平均4歳)
  • AOA2型:血清α-フェトプロテイン(AFP)の上昇、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の上昇、比較的遅い発症(平均15歳)
  • AOA3型:生化学的異常が少ない
  • AOA4型:ジストニアや舞踏運動などの不随意運動、知的障害を伴うことがある

進行と予後

症状は徐々に進行し、多くの患者さんで発症後10~20年で車椅子が必要になります。末梢神経障害による筋力低下や筋萎縮が進行すると、日常生活動作がさらに困難になります。知能は通常保たれますが、一部の型では軽度の認知機能障害や学習困難を伴うことがあります。

ミネルバクリニックの眼球運動失行を伴う運動失調症遺伝子パネル検査の特徴

「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」とは、現在眼球運動失行を伴う運動失調症の原因として報告されている4つの遺伝子(APTX、PIK3R5、PNKP、SETX)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、眼球運動失行を伴う運動失調症に関連する遺伝子を一度に調べられる「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関で眼球運動失行を伴う運動失調症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、眼球運動失行を伴う運動失調症に関係するとされる4つの遺伝子を一度に調べられる「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行える眼球運動失行を伴う運動失調症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」の場合、4つの型すべてに関係する4つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状から眼球運動失行を伴う運動失調症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」ならば、4つの型(AOA1、AOA2、AOA3、AOA4)の原因遺伝子をすべて同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」では、眼球運動失行を伴う運動失調症の4つの型に関係するとされる4種類の遺伝子(APTX、PIK3R5、PNKP、SETX)をまとめて検査します。

「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」は、眼球運動失行を伴う運動失調症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【眼球運動失行を伴う運動失調症の個人歴または家族歴のある方】に
「眼球運動失行を伴う運動失調症NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:
・小児期~青年期に発症した進行性の運動失調がある方
・眼球を左右に動かすことが困難な方(眼球運動失行)
・小脳萎縮がMRI検査で確認されている方
・末梢神経障害(感覚障害、筋力低下、深部腱反射の低下)がある方
・手足の筋萎縮が認められる方
・低アルブミン血症または高コレステロール血症がある方(AOA1型疑い)
・血清α-フェトプロテイン(AFP)が上昇している方(AOA2型疑い)
・ジストニアや舞踏運動などの不随意運動を伴う方(AOA4型疑い)
・運動失調症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、眼球運動失行を伴う運動失調症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、予防的治療や生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病型の特定による臨床経過の予測
・リハビリテーションの早期開始
・理学療法による運動機能の維持
・作業療法による日常生活動作の支援
・言語療法による構音障害の改善
・視覚補助具や読書支援ツールの活用
・車椅子などの補助具の適切なタイミングでの導入
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝形式のため、兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

APTX, PIK3R5, PNKP, SETX ( 4遺伝子 )

各遺伝子の詳細:
・APTX遺伝子(AOA1型):
アプラタキシン(aprataxin)をコードする遺伝子。核内に局在するタンパク質で、DNA修復に関与。この遺伝子の変異により、神経細胞にDNA損傷が蓄積し、小脳や末梢神経の変性が起こる。AOA1型の原因遺伝子で、低アルブミン血症と高コレステロール血症を特徴とする。

・SETX遺伝子(AOA2型):
セナタキシン(senataxin)をコードする遺伝子。DNA-RNAヘリカーゼ活性を持ち、DNA-RNAハイブリッドの処理やDNA修復に関与。世界で最も頻度の高いAOAの型で、血清α-フェトプロテイン(AFP)の上昇が特徴的。青年期発症が多い。

・PIK3R5遺伝子(AOA3型):
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼの調節サブユニットp101をコードする遺伝子。細胞のシグナル伝達、細胞成長、生存に関与。比較的まれな型で、小脳性運動失調と末梢神経障害を特徴とする。

・PNKP遺伝子(AOA4型):
ポリヌクレオチドキナーゼ-ホスファターゼをコードする遺伝子。DNA修復機構において重要な役割を果たし、DNA鎖の切断末端を処理する。ジストニアや舞踏運動などの不随意運動を伴うことが特徴的で、知的障害を伴うこともある。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
小児期~青年期に発症した進行性の運動失調(バランス障害、歩行障害)がある方、眼球を左右に動かすことが困難な方、小脳萎縮がMRI検査で確認されている方、末梢神経障害や筋萎縮がある方におすすめします。また、血清α-フェトプロテインの上昇や低アルブミン血症がある場合、運動失調症の家族歴がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
家族も検査を受ける必要がありますか?
眼球運動失行を伴う運動失調症は常染色体劣性遺伝形式をとるため、患者さんの兄弟姉妹が同じ疾患を発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。ご両親は通常無症候性保因者です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
この検査では4つの主要な型(AOA1、AOA2、AOA3、AOA4)のすべての原因遺伝子を対象としています。検査で病原性変異が検出されなくても、まれな変異や他の運動失調症の可能性があります。主治医と相談して、必要に応じて追加の遺伝子検査を受けることが重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
眼球運動失行を伴う運動失調症は常染色体劣性遺伝形式をとるため、保因者同士のカップルの場合、お子さんが疾患を発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
眼球運動失行を伴う運動失調症の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、症状に応じた対症療法が行われます。理学療法により運動機能の維持を図り、作業療法により日常生活動作を支援します。言語療法は構音障害の改善に役立ちます。眼球運動失行に対しては、読書支援ツールや視覚補助具の活用、車椅子などの補助具の適切なタイミングでの導入が重要です。
予後はどうですか?
症状は徐々に進行し、多くの患者さんで発症後10~20年で車椅子が必要になります。知能は通常保たれますが、一部の型では軽度の認知機能障害を伴うことがあります。早期診断と適切なリハビリテーションにより、日常生活の質を維持することが可能です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では4つの型(AOA1、AOA2、AOA3、AOA4)の原因遺伝子すべてを一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも検査を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら