無ガンマグロブリン血症NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック
無ガンマグロブリン血症とは
無ガンマグロブリン血症(Agammaglobulinemia)は、原発性免疫不全症候群の一種で、免疫グロブリン(抗体)がほとんど、または全く産生されない先天性の疾患です。免疫グロブリンは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体から体を守る重要な役割を担っており、この抗体が欠損することで、患者さんは重篤な感染症を繰り返しやすくなります。
本疾患は、B細胞(抗体を産生する免疫細胞)の分化・成熟過程に障害が生じることで発症します。最も頻度の高いX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)では、X染色体上のBTK遺伝子の変異により、B細胞がプロB細胞からプレB細胞への分化段階で停止し、成熟B細胞がほとんど産生されなくなります。その結果、血清中の免疫グロブリンG(IgG)、IgA、IgMのすべてのクラスが著しく低下します。
無ガンマグロブリン血症は、厳密には免疫グロブリンが全く存在しない状態を指しますが、現在の検査技術では微量の免疫グロブリンが検出されることも多く、低ガンマグロブリン血症と合わせて「無又は低ガンマグロブリン血症」と呼ばれることもあります。本疾患は国の指定難病65(原発性免疫不全症候群)および小児慢性特定疾病の対象疾患です。わが国では約250人以上の患者さんが存在し、出生男児10万人に1人の頻度で発症すると推定されています。
症状と病態
無ガンマグロブリン血症の患者さんは、胎児期に母親から胎盤を通じて受け取った抗体(IgG)が減少する生後6ヶ月を過ぎる頃から、繰り返し細菌感染症にかかりやすくなります。特に肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌などの化膿性細菌による感染症が特徴的です。
主要症状
- 反復性の呼吸器感染症(気管支炎、肺炎)
- 反復性の副鼻腔炎・中耳炎
- 皮膚感染症(膿瘍、蜂窩織炎)
- 髄膜炎・敗血症などの重症感染症
- 消化管感染症(慢性下痢)
- 関節炎(無菌性または感染性)
- 気管支拡張症(反復性肺感染の結果)
- 成長・発達の遅れ(重症例)
診断の特徴
無ガンマグロブリン血症の診断には、以下の検査所見が重要です:
- 血清免疫グロブリンの著明な低下:IgG、IgA、IgMのすべてのクラスが正常の2%以下に低下します(IgG<200mg/dL)
- 末梢血B細胞の著しい減少:末梢血B細胞比率が2%以下になります
- ワクチン接種後の抗体産生不全:予防接種を受けても十分な抗体が作られません
- リンパ節・扁桃の低形成:身体診察でリンパ節や扁桃が小さいことが特徴的です
感染症のパターン
無ガンマグロブリン血症では、主に化膿性細菌による感染症が問題となります。一方、T細胞機能は正常に保たれているため、ウイルス感染症(水痘、麻疹など)に対しては比較的抵抗性があります。ただし、エンテロウイルス感染症には注意が必要で、慢性髄膜脳炎を引き起こすことがあります。
合併症と長期的影響
適切な治療を受けないと、以下のような合併症が生じる可能性があります:
- 気管支拡張症:反復性肺感染により、気管支が不可逆的に拡張・変形します
- 慢性副鼻腔炎:持続的な副鼻腔の炎症により、生活の質が低下します
- 中耳炎による難聴:反復性中耳炎の結果、聴力障害が残ることがあります
- エンテロウイルス脳炎:免疫グロブリン補充療法を受けていても、まれに発症することがあります
- 関節障害:マイコプラズマやウレアプラズマによる関節炎が生じることがあります
- 吸収不良症候群:腸管の慢性炎症により、栄養吸収障害が起こることがあります
遺伝形式と原因遺伝子
無ガンマグロブリン血症は、遺伝学的に多様性があり、X連鎖遺伝形式と常染色体劣性遺伝形式の両方が知られています。全体の約85%はX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)で、BTK遺伝子の変異によって引き起こされます。
X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)
最も頻度の高い病型で、BTK遺伝子の変異が原因です:
- BTK遺伝子:X染色体長腕(Xq21.3-q22)に位置し、ブルトンチロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase)という酵素をコードします。この酵素はB細胞の分化・増殖に必須で、変異によりプロB細胞からプレB細胞への分化が障害されます。
- 遺伝形式:X連鎖劣性遺伝のため、基本的に男児のみが発症します。女性保因者は通常無症状ですが、X染色体の不均等な不活化により、まれに軽度の症状を呈することがあります。
- 家族歴:約40%は家族歴がありますが、約60%は新生突然変異(de novo mutation)です。
常染色体劣性遺伝形式
XLAと同様の臨床症状を呈する常染色体劣性遺伝型も知られており、男女ともに発症します:
- IGHM遺伝子:免疫グロブリン重鎖μ鎖をコードする遺伝子。変異により、B細胞の成熟障害が生じます。
- IGLL1遺伝子:免疫グロブリンλ様ポリペプチド1をコードする遺伝子。プレB細胞受容体の構成要素です。
- CD79A遺伝子・CD79B遺伝子:B細胞受容体複合体の構成要素であるIgα、Igβをコードします。変異により、B細胞の分化・活性化が障害されます。
- BLNK遺伝子:B細胞リンカータンパク質をコードし、B細胞受容体シグナル伝達に関与します。
- PIK3R1遺伝子:ホスファチジルイノシトール3-キナーゼの調節サブユニットをコードし、B細胞の成熟・生存に関与します。
- TCF3遺伝子:転写因子E2Aをコードし、B細胞の初期発生に必須です。
その他の関連遺伝子
- LRRC8A遺伝子:容積調節性陰イオンチャネルの構成要素をコードし、B細胞の発達に関与します。
- SH2D1A遺伝子:SAPタンパク質をコードし、リンパ球の機能調節に関与します(X連鎖リンパ増殖症候群1型の原因遺伝子でもあります)。
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な10遺伝子(BLNK、BTK、CD79A、CD79B、IGHM、IGLL1、LRRC8A、PIK3R1、SH2D1A、TCF3)を対象としています。これにより、無ガンマグロブリン血症の主要な原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの無ガンマグロブリン血症遺伝子パネル検査の特徴
「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」とは、現在無ガンマグロブリン血症の原因として報告されている10の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、無ガンマグロブリン血症に関連する10遺伝子を一度に調べられる「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で無ガンマグロブリン血症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、無ガンマグロブリン血症に関係するとされる10の遺伝子を一度に調べられる「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える無ガンマグロブリン血症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」の場合、10の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から無ガンマグロブリン血症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な10の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」では、無ガンマグロブリン血症に関係するとされる10種類の遺伝子(BLNK、BTK、CD79A、CD79B、IGHM、IGLL1、LRRC8A、PIK3R1、SH2D1A、TCF3)をまとめて検査します。
「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」は、無ガンマグロブリン血症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【無ガンマグロブリン血症の個人歴または家族歴のある方】に
「無ガンマグロブリン血症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・生後6ヶ月以降に反復性の細菌感染症を繰り返す男児
・血清免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)の著明な低下がある方
・末梢血B細胞比率が2%以下の方
・反復性の肺炎、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎がある方
・髄膜炎、敗血症などの重症感染症の既往がある方
・ワクチン接種後に十分な抗体が産生されない方
・リンパ節や扁桃が小さい、または触れない方
・無ガンマグロブリン血症または原発性免疫不全症候群の家族歴がある方
・保因者診断を希望される女性(家族に患者さんがいる場合)
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、無ガンマグロブリン血症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な免疫グロブリン補充療法、感染予防、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の原発性免疫不全症候群との鑑別
・適切な免疫グロブリン補充療法の開始と最適化
・感染症予防のための抗菌薬予防内服の適応判断
・ワクチン接種スケジュールの最適化(生ワクチンは禁忌)
・エンテロウイルス感染症などの合併症リスク評価
・呼吸器合併症(気管支拡張症など)の早期発見と管理
・造血幹細胞移植や遺伝子治療の適応評価(重症例)
・疾患の予後予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・保因者診断の選択肢提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。X連鎖遺伝の場合、女性保因者の男児が発症するリスクは50%、女児が保因者となるリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親が保因者であれば、次子が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
BLNK, BTK, CD79A, CD79B, IGHM, IGLL1, LRRC8A, PIK3R1, SH2D1A, TCF3 ( 10遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・BTK遺伝子(Bruton’s tyrosine kinase):
X染色体長腕(Xq21.3-q22)に位置し、ブルトンチロシンキナーゼという非受容体型チロシンキナーゼをコードします。B細胞の分化、増殖、生存に必須の役割を果たします。BTK遺伝子の変異は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の原因となり、全無ガンマグロブリン血症の約85%を占めます。プロB細胞からプレB細胞への分化が障害され、成熟B細胞が欠損します。
・IGHM遺伝子(Immunoglobulin heavy constant mu):
免疫グロブリン重鎖μ鎖(IgM)の定常領域をコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、変異により免疫グロブリンの産生障害が生じます。B細胞の成熟過程に影響を与え、無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・IGLL1遺伝子(Immunoglobulin lambda-like polypeptide 1):
免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(λ5またはCD179b)をコードする遺伝子。プレB細胞受容体の構成要素であり、B細胞の初期発生に重要です。常染色体劣性遺伝形式で変異が伝播し、B細胞の分化障害により無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・CD79A遺伝子:
B細胞受容体(BCR)複合体の構成要素であるIgα(CD79a、mb-1)をコードします。BCRからのシグナル伝達に必須で、常染色体劣性遺伝形式の変異により、B細胞の分化・活性化が障害され、無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・CD79B遺伝子:
B細胞受容体(BCR)複合体の構成要素であるIgβ(CD79b、B29)をコードします。CD79Aと同様に、BCRシグナル伝達に重要な役割を果たします。常染色体劣性遺伝形式で、変異により無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・BLNK遺伝子(B-cell linker protein):
B細胞リンカータンパク質(SLP-65)をコードする遺伝子。BCRシグナル伝達カスケードにおける重要なアダプタータンパク質です。常染色体劣性遺伝形式で、変異によりB細胞の分化・活性化が障害され、無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・PIK3R1遺伝子:
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の調節サブユニットp85αをコードする遺伝子。B細胞の成熟、生存、機能に関与します。変異により、無ガンマグロブリン血症のほか、分類不能型免疫不全症(CVID)様の表現型を示すこともあります。
・TCF3遺伝子(E2A):
転写因子E2A(E12/E47)をコードする遺伝子。B細胞の初期発生において、B細胞特異的遺伝子の発現を制御する重要な転写因子です。常染色体優性遺伝形式または常染色体劣性遺伝形式で、変異によりB細胞の分化障害が生じ、無ガンマグロブリン血症を引き起こします。
・LRRC8A遺伝子:
ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)をコードし、容積調節性陰イオンチャネル(VRAC)の必須構成要素です。細胞容積調節に関与し、B細胞の発達と機能に影響を与えます。変異により無ガンマグロブリン血症様の表現型を示すことがあります。
・SH2D1A遺伝子(SAP):
シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)関連タンパク質(SAP)をコードする遺伝子。X連鎖遺伝形式で、主にX連鎖リンパ増殖症候群1型(XLP1)の原因遺伝子として知られていますが、一部の症例で無ガンマグロブリン血症様の免疫不全を呈することがあります。リンパ球の機能調節に関与します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
-
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、10の原因遺伝子のみを対象としています。無ガンマグロブリン血症の約85%はBTK遺伝子変異によるX連鎖無ガンマグロブリン血症ですが、残りの症例では他の稀な遺伝子変異や未同定の遺伝的原因が存在する可能性があります。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、臨床的には無ガンマグロブリン血症と同様の症状を呈する他の原発性免疫不全症候群(分類不能型免疫不全症CVIDなど)との鑑別が必要な場合があります。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 生後6ヶ月以降に反復性の細菌感染症(肺炎、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎など)を繰り返す場合、無ガンマグロブリン血症の可能性があります。特に男児で、血液検査で免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)の著明な低下やB細胞の減少が認められる場合は、早急に遺伝子検査を検討することをおすすめします。また、家族に無ガンマグロブリン血症や原発性免疫不全症候群の方がいる場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。小児の患者さんでは、頬粘膜スワブや唾液検体が負担が少なくおすすめです。
- 無ガンマグロブリン血症と低ガンマグロブリン血症の違いは何ですか?
- 厳密には、無ガンマグロブリン血症は免疫グロブリンがほぼ完全に欠損している状態、低ガンマグロブリン血症は免疫グロブリンが正常の約20%以下に低下している状態を指します。しかし、現在の検査技術では完全にゼロということは少なく、臨床的には「無又は低ガンマグロブリン血症」として一括して扱われることが多いです。原因遺伝子や治療方針は基本的に同じです。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。最も頻度の高いX連鎖無ガンマグロブリン血症(BTK遺伝子変異)の場合、女性保因者の男児が発症するリスクは50%、女児が保因者となるリスクは50%です。常染色体劣性遺伝の場合、両親が保因者であれば次子が発症するリスクは25%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。特に、患者さんの姉妹や母親の保因者診断が重要です。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 無ガンマグロブリン血症の約85%はBTK遺伝子変異によるX連鎖型ですが、残りの症例では稀な遺伝子変異や未同定の遺伝的原因が存在する可能性があります。また、臨床的には無ガンマグロブリン血症と同様の症状を呈する他の原発性免疫不全症候群(分類不能型免疫不全症CVIDなど)との鑑別が必要な場合があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床症状と免疫学的検査に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。なお、無ガンマグロブリン血症(原発性免疫不全症候群)は国の指定難病65および小児慢性特定疾病の対象疾患であり、診断確定後は医療費助成制度を利用できる可能性があります。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。病原性変異が見つかった場合は、適切な免疫グロブリン補充療法の開始や感染予防について、ご家族の保因者診断や出生前診断についてもご相談いただけます。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。X連鎖無ガンマグロブリン血症の場合、女性保因者から生まれる男児の50%が発症します。常染色体劣性遺伝の場合、保因者同士のカップルで子どもが発症する確率は25%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。保因者診断を受けた女性は、妊娠前に遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。
- 無ガンマグロブリン血症の治療はどのように行われますか?
- 現在の標準治療は免疫グロブリン補充療法です。定期的に免疫グロブリン製剤を静脈注射または皮下注射することで、感染症を予防します。また、感染症予防のための抗菌薬予防内服、生ワクチンの回避、感染症の早期発見と治療が重要です。重症例では造血幹細胞移植や遺伝子治療が検討されることもあります。適切な治療により、多くの患者さんは通常に近い生活を送ることができます。
- 予後はどうですか?
- 適切な免疫グロブリン補充療法を受けることで、多くの患者さんは感染症をコントロールし、通常に近い生活を送ることができます。定期的な補充療法と感染予防により、重篤な感染症のリスクは大幅に減少します。ただし、エンテロウイルス感染症による慢性髄膜脳炎や、反復性肺感染による気管支拡張症などの合併症には注意が必要です。早期診断・早期治療開始が予後改善の鍵となります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な10の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。小児患者さんの場合も、負担の少ない検体採取方法(唾液・頬粘膜スワブ)で検査を実施できます。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら