無フィブリノゲン血症の遺伝子検査|ミネルバクリニック
無フィブリノゲン血症とは
無フィブリノゲン血症(Afibrinogenemia)は、血液凝固に必須のタンパク質であるフィブリノゲン(凝固因子I)が血液中にほとんど存在しないか、まったく存在しない稀な先天性血液凝固障害です。フィブリノゲンは血液凝固の最終段階で、トロンビンによってフィブリンに変換され、血栓(血の固まり)の骨格を形成する重要な役割を果たします。
本疾患は常染色体劣性遺伝形式をとり、世界的な発症頻度は約100万人に1~2人と推定されている非常に稀な疾患です。出生時から症状が現れることが多く、新生児期の臍帯出血が特徴的な初発症状として知られています。早期診断と適切な治療により、重篤な出血合併症を予防することが可能です。
フィブリノゲンは肝臓で産生される糖タンパク質で、正常な血液中には1デシリットルあたり200~400mg含まれています。無フィブリノゲン血症ではこの濃度が0.1g/L(10mg/dL)未満となり、血液凝固機能が著しく障害されます。軽症型である低フィブリノゲン血症や、フィブリノゲンの質的異常である異常フィブリノゲン血症とは区別されます。
先天性血液凝固因子異常症について
先天性血液凝固因子異常症は、血液凝固に必要な凝固因子が先天的に欠乏または機能異常を起こしている病態です。血液凝固は、I(フィブリノゲン)からXIIIまでの凝固因子が順次活性化される複雑な反応系により成立しています。
分類
先天性血液凝固因子異常症は、血漿中の凝固因子抗原量と活性の関係から以下の2つに分類されます:
- Type 1(凝固因子欠乏症):抗原量と活性がともに欠如している状態。無フィブリノゲン血症や低フィブリノゲン血症がこれに該当します。
- Type 2(凝固因子異常症):抗原量は正常範囲に存在するが、活性が欠如している状態。異常フィブリノゲン血症がこれに該当します。
遺伝形式
血友病以外の先天性凝固因子異常症は「血友病類縁疾患」と総称されます。ほとんどの疾患が常染色体劣性遺伝形式をとりますが、フィブリノゲン異常症(dysfibrinogenemia)は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとる点で例外的です。無フィブリノゲン血症は常染色体劣性遺伝形式をとります。
臨床的特徴
凝固因子欠乏症では関節内や筋肉内といった深部出血が特徴とされますが、鼻出血や皮膚の出血斑も多く認められます。特に新生児期の遷延する臍帯出血は、無フィブリノゲン血症や先天性第XIII因子欠乏症に特徴的な所見です。また、これらの疾患は習慣性流産の重要な原因となります。
症状と病態
無フィブリノゲン血症の患者さんは、フィブリノゲンの欠乏により正常な血液凝固ができないため、様々な部位で出血症状を呈します。出血は自然発症することもあれば、軽微な外傷がきっかけとなることもあります。
主要症状
- 臍帯出血:最も特徴的な初発症状で、新生児期に臍帯から持続的な出血が認められます(約75~85%の症例で出現)
- 皮膚・粘膜出血:あざができやすい、鼻出血、歯肉出血など
- 関節内出血:膝、肘、足首などの関節内に出血が起こり、痛みや腫れを生じます
- 筋肉内出血:筋肉内に血腫を形成することがあります
- 消化管出血:胃や腸からの出血
- 頭蓋内出血:脳内や頭蓋内での出血で、生命を脅かす重篤な合併症です。乳児期・小児期の主要な死因となります
- 泌尿生殖器出血:血尿や性器出血
女性特有の症状
女性の無フィブリノゲン血症患者さんでは、以下の症状が特に問題となります:
- 月経過多:月経時の出血量が多く、貧血の原因となります
- 反復流産:妊娠初期の流産を繰り返すことが多く見られます。フィブリノゲンは妊娠の成立・維持に必須の因子です
- 胎盤早期剥離:妊娠中の合併症リスクが高まります
- 分娩後出血:出産時および産後の出血量が多くなります
- 卵巣出血:排卵に伴う卵巣出血により腹腔内出血を生じることがあります
その他の症状
- 創傷治癒遅延:傷の治りが遅く、手術後の回復に時間がかかります。フィブリノゲンは組織修復に関与するためです
- 血栓症:稀ですが、矛盾的に血栓症を発症することがあります。これはフィブリノゲン以外の凝固因子による不安定な血栓形成が原因と考えられています
- 自然脾破裂:極めて稀ですが、報告されています
フィブリノゲンの多面的役割
フィブリノゲンは単なる血液凝固因子としてだけでなく、以下の重要な生理機能を持っています:
- 血小板の凝集促進
- 炎症反応の制御
- 組織修復・創傷治癒の促進
- 妊娠の成立と維持
これらの機能が失われることにより、無フィブリノゲン血症では出血症状だけでなく、創傷治癒遅延や妊娠維持困難といった多彩な症状が出現します。
重症度と予後
無フィブリノゲン血症の重症度は個人差が大きく、軽微な外傷で重篤な出血を起こす患者さんから、ほとんど無症状で経過する患者さんまで様々です。最も重篤な合併症は頭蓋内出血で、特に乳児期・小児期においては生命予後を左右する主要な死因となります。
適切なフィブリノゲン補充療法により、多くの患者さんは日常生活を送ることが可能です。しかし、外傷や手術、出産時には慎重な管理が必要となります。
遺伝形式と原因遺伝子
無フィブリノゲン血症は常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患です。つまり、両親がともに保因者(キャリア)である場合、子どもが発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、正常となる確率は25%となります。
フィブリノゲンの構造と遺伝子
フィブリノゲンは、3種類のポリペプチド鎖(Aα鎖、Bβ鎖、γ鎖)がそれぞれ2本ずつ結合した六量体(ヘキサマー)構造を持つ糖タンパク質です。この3種類の鎖は、第4染色体長腕(4q28-31)上に近接して位置する以下の3つの遺伝子によってコードされています:
- FGA遺伝子:フィブリノゲンAα鎖をコードする遺伝子。無フィブリノゲン血症の原因として最も頻度が高い遺伝子です
- FGB遺伝子:フィブリノゲンBβ鎖をコードする遺伝子
- FGG遺伝子:フィブリノゲンγ鎖をコードする遺伝子
変異のタイプ
無フィブリノゲン血症を引き起こす遺伝子変異には、以下のような様々なタイプがあります:
- ナンセンス変異(早期終止コドンの生成)
- フレームシフト変異(読み枠のずれ)
- スプライス部位の変異
- 大きな欠失変異
- その他の機能喪失型変異
これらの変異により、フィブリノゲンの合成、組立、細胞内輸送、安定性、または分泌が障害され、血液中のフィブリノゲン濃度が著しく低下します。
ホモ接合体とヘテロ接合体
- ホモ接合体(homozygote):両方の対立遺伝子に変異がある状態。無フィブリノゲン血症を発症し、血液中にフィブリノゲンがほとんど存在しません
- ヘテロ接合体(heterozygote):一方の対立遺伝子のみに変異がある状態(保因者)。低フィブリノゲン血症となり、フィブリノゲン濃度は低値を示しますが、通常は無症状または軽度の症状にとどまります
- 複合ヘテロ接合体(compound heterozygote):両方の対立遺伝子に異なる変異がある状態。無フィブリノゲン血症を発症します
血族婚との関連
無フィブリノゲン血症は常染色体劣性遺伝疾患であるため、血族婚(近親婚)が多い地域では発症頻度が高くなる傾向があります。実際、報告例の多くで家族歴や血族婚の背景が認められています。
ミネルバクリニックの無フィブリノゲン血症遺伝子検査の特徴
「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」とは、無フィブリノゲン血症の原因として知られている3つの遺伝子(FGA、FGB、FGG)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、無フィブリノゲン血症に関連する3遺伝子を一度に調べられる「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で無フィブリノゲン血症の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、無フィブリノゲン血症に関係するとされる3つの遺伝子を一度に調べられる「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える無フィブリノゲン血症の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」の場合、3つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から無フィブリノゲン血症を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」ならば、3つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」では、無フィブリノゲン血症の原因遺伝子である3種類の遺伝子(FGA、FGB、FGG)をまとめて検査します。
「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」は、無フィブリノゲン血症の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【無フィブリノゲン血症の個人歴または家族歴のある方】に
「無フィブリノゲン血症 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・新生児期に臍帯からの持続的な出血があった方
・原因不明の出血傾向(あざができやすい、鼻出血、歯肉出血など)がある方
・関節内出血や筋肉内出血を繰り返す方
・検査でプロトロンビン時間(PT)とAPTTの両方が延長している方
・フィブリノゲン濃度が著しく低値(0.1g/L未満)を示す方
・女性で月経過多や反復流産の既往がある方
・創傷治癒が遅い方
・無フィブリノゲン血症の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
・妊娠を計画している女性で家族歴がある方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、無フィブリノゲン血症の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なフィブリノゲン補充療法、出血時の対応、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の凝固異常症との鑑別診断
・適切なフィブリノゲン補充療法の計画立案
・出血時の迅速な対応と適切な補充量の決定
・手術や歯科処置前の予防的治療計画
・女性における妊娠・分娩管理計画の最適化
・頭蓋内出血などの重篤な合併症の予防
・定期補充療法の適応判断
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体劣性遺伝であるため、兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんの子どもは全員が保因者となります。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
FGA, FGB, FGG ( 3遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・FGA遺伝子:
フィブリノゲンAα鎖(Fibrinogen alpha chain)をコードする遺伝子で、第4染色体長腕(4q28-31)に位置します。FGA遺伝子の変異は、無フィブリノゲン血症の原因として最も頻度が高く、様々なタイプの変異(ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライス部位変異、大きな欠失など)が報告されています。Aα鎖はフィブリノゲン分子の構造と機能に重要な役割を果たし、トロンビンによる切断を受けてフィブリノペプチドAを放出します。
・FGB遺伝子:
フィブリノゲンBβ鎖(Fibrinogen beta chain)をコードする遺伝子で、FGA遺伝子に近接して第4染色体長腕に位置します。Bβ鎖もフィブリノゲンの重要な構成要素で、トロンビンによる切断を受けてフィブリノペプチドBを放出します。FGB遺伝子の変異も無フィブリノゲン血症の原因となり、様々な変異タイプが同定されています。
・FGG遺伝子:
フィブリノゲンγ鎖(Fibrinogen gamma chain)をコードする遺伝子で、FGA、FGB遺伝子とともに第4染色体長腕のフィブリノゲン遺伝子クラスターを形成しています。γ鎖はフィブリン重合やフィブリン網の安定化に重要な役割を果たします。FGG遺伝子の変異も無フィブリノゲン血症の原因となり、特定の変異は異常フィブリノゲン血症の原因となることもあります。
フィブリノゲンの構造と機能:
フィブリノゲンは、これら3種類のポリペプチド鎖(Aα、Bβ、γ)がそれぞれ2本ずつ集まって形成される六量体(Aα2Bβ2γ2)構造を持つ340kDaの糖タンパク質です。肝臓で合成され、正常な血漿中には200~400mg/dL含まれています。血液凝固の最終段階で、トロンビンによってフィブリノペプチドA・Bが切断されてフィブリンモノマーとなり、重合して血栓の骨格を形成します。また、血小板凝集、創傷治癒、炎症反応、妊娠維持など、多面的な生理機能を持っています。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※稀に、既知の3つの原因遺伝子(FGA、FGB、FGG)以外の遺伝的要因や、検出困難な変異タイプにより無フィブリノゲン血症が発症する場合があります。検査で病原性変異が検出されなくても、臨床的に無フィブリノゲン血症が疑われる場合は、適切な臨床管理が必要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 新生児期の臍帯出血、原因不明の出血傾向(あざができやすい、鼻出血、歯肉出血など)、関節内出血、女性における月経過多や反復流産などの症状がある方におすすめします。特に、血液検査でプロトロンビン時間(PT)とAPTTの両方が延長し、フィブリノゲン濃度が著しく低値を示す場合は、無フィブリノゲン血症の可能性が高くなります。家族に同様の症状や診断された方がいる場合も検査をご検討ください。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 低フィブリノゲン血症や異常フィブリノゲン血症との違いは何ですか?
- 無フィブリノゲン血症はフィブリノゲンがほとんど存在しない状態(0.1g/L未満)で、最も重症です。低フィブリノゲン血症はフィブリノゲンが低値(通常1.0g/L以下)ですが検出可能で、症状は軽度です。異常フィブリノゲン血症はフィブリノゲン量は正常ですが機能が異常な状態です。遺伝子検査により、どのタイプか正確に診断できます。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 無フィブリノゲン血症は常染色体劣性遺伝のため、患者さんの兄弟姉妹が発症するリスクは25%、保因者となるリスクは50%です。また、患者さんの子どもは全員が保因者となります。ご家族、特に将来妊娠を考えている方は検査を受けることで、適切な家族計画が可能になります。
- 妊娠・出産への影響はありますか?
- 無フィブリノゲン血症の女性は反復流産のリスクが高く、妊娠中・分娩時には出血のリスクが著しく高まります。しかし、適切なフィブリノゲン補充療法により、安全な妊娠・出産が可能です。妊娠前から専門医による管理計画を立てることが重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 無フィブリノゲン血症の治療はどのように行われますか?
- 現在のところ根本的な治療法はありませんが、フィブリノゲン補充療法が有効です。出血時や手術前にフィブリノゲン濃縮製剤、新鮮凍結血漿(FFP)、クリオプレシピテートなどを投与します。重症例では定期的な予防的補充療法を行うこともあります。目標フィブリノゲン濃度は状況により異なり、出血予防には60~100mg/dL以上、手術時や分娩時には150~200mg/dLを維持します。
- 生活上の注意点はありますか?
- 外傷を避けるため、接触スポーツや激しい運動は控えることが推奨されます。頭部打撲は頭蓋内出血のリスクがあるため特に注意が必要です。歯科治療、手術、注射などの医療処置の前には必ず医師に申し出て、適切なフィブリノゲン補充を受けてください。また、アスピリンなど出血リスクを高める薬剤の使用は避けてください。
- 予後はどうですか?
- 適切なフィブリノゲン補充療法により、多くの患者さんは通常の生活を送ることができます。最も重篤な合併症は頭蓋内出血で、特に乳幼児期のリスクが高いため、早期診断と適切な管理が重要です。定期的な医療フォローアップと、出血時の迅速な対応により、良好な予後が期待できます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では3つの原因遺伝子(FGA、FGB、FGG)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら