46,XY性分化疾患遺伝子検査(NGSパネル)|ミネルバクリニック
46,XY性分化疾患とは
46,XY性分化疾患(46,XY Disorder of Sex Development: 46,XY DSD)は、染色体が46,XY(通常は男性型)であるにもかかわらず、性腺の形成、ホルモンの産生や作用の異常により、外性器や内性器が典型的な男性型として発達しない先天性の疾患群です。
本疾患群は臨床的にも遺伝学的にも非常に多様性が高く、外性器の異常の程度、性腺の発達状態、ホルモン分泌パターンなどが患者さんによって大きく異なります。出生時の外陰部異常により発見されることが多いですが、思春期の二次性徴の異常や不妊症の精査で初めて診断されることもあります。
46,XY性分化疾患は、性腺形成不全症(スワイヤー症候群など)、アンドロゲン不応症、テストステロン合成障害など、様々な病態を含む包括的な疾患概念です。遺伝学的原因が判明する症例もありますが、約60~70%の症例では原因が特定されていません。適切な診断と管理のためには、臨床症状の評価とともに遺伝学的検査が重要な役割を果たします。
症状と病態
46,XY性分化疾患の症状は、原因遺伝子や病態によって大きく異なります。主な症状は外性器の異常ですが、内性器の発達、性腺の状態、ホルモン分泌パターンも様々です。
主要症状
- 外性器の女性化または不完全男性化(小陰茎、尿道下裂、二分陰嚢など)
- 性腺の発達異常(未発達精巣、索状性腺、性腺形成不全)
- 思春期における二次性徴の欠如または異常
- 原発性無月経(女性として育てられた場合)
- 不妊
- 性腺腫瘍のリスク増加
病態による分類
46,XY性分化疾患は、病態メカニズムによって以下のように分類されます:
1. 性腺形成不全型
- 完全型性腺形成不全症(スワイヤー症候群):SRY、NR5A1、DHH、MAP3K1などの遺伝子異常により、精巣が形成されず索状性腺となります。外性器は女性型ですが、子宮・卵管の発達は認められません
- 部分型性腺形成不全症:性腺が部分的に精巣組織を形成しますが、機能が不十分なため、外性器は両性性器となることが多いです
2. アンドロゲン合成・作用異常型
- アンドロゲン不応症:AR遺伝子の変異により、精巣は形成されテストステロンも産生されますが、組織がアンドロゲンに反応できないため、外性器は女性型となります
- テストステロン合成障害:AKR1C4などの遺伝子異常により、テストステロンの合成が障害され、男性化が不十分となります
3. その他の異常
- 抗ミュラー管ホルモン異常:ミュラー管遺残症候群など
- 複合的な発生異常:DMRT1、ZFPM2などの遺伝子異常により、複数の発生過程に異常が生じます
合併症と長期管理の重要性
46,XY性分化疾患では、以下のような合併症や長期的な健康管理が必要となることがあります:
- 性腺腫瘍:性腺形成不全症や部分型アンドロゲン不応症では、性腺腫瘍(性腺芽腫、ディスジャーミノーマなど)のリスクが高くなります
- 副腎不全:一部の遺伝子異常(NR5A1など)では副腎機能不全を合併することがあり、生命予後の観点から早期発見が極めて重要です
- 骨密度低下:性ホルモン分泌不全により骨密度が低下するリスクがあります
- 心理社会的問題:性同一性や性別違和に関する適切なサポートが必要です
遺伝形式と原因遺伝子
46,XY性分化疾患は遺伝学的に非常に多様性が高く、常染色体優性(顕性)遺伝、常染色体劣性(潜性)遺伝、X連鎖劣性遺伝など、様々な遺伝形式で発症します。現在までに多数の原因遺伝子が同定されていますが、約60~70%の症例では遺伝学的原因が未だ特定されていません。
主要な原因遺伝子
性腺分化に関与する遺伝子
- SRY遺伝子:Y染色体上に位置し、精巣決定因子をコードします。SRY遺伝子の欠失や変異により完全型性腺形成不全症を発症します
- NR5A1(SF-1)遺伝子:ステロイド産生因子1をコードし、性腺と副腎の発達に重要な役割を果たします。常染色体優性遺伝形式で、副腎不全を合併することがあります
- DHH遺伝子:デザートヘッジホッグをコードし、精巣の発達に関与します。常染色体劣性遺伝形式で、末梢神経障害を合併することがあります
- MAP3K1遺伝子:マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ1をコードし、性腺分化の調節に関与します
- DMRT1遺伝子:精巣発達に関与する転写因子をコードします
- CBX2遺伝子:クロモボックスホモログ2をコードし、性決定に関与します
- ZFPM2(FOG2)遺伝子:ジンクフィンガープロテイン2をコードし、性腺および心臓の発達に関与します
アンドロゲン合成・作用に関与する遺伝子
- AR遺伝子:アンドロゲン受容体をコードします。X連鎖劣性遺伝形式で、アンドロゲン不応症の原因となります
- AKR1C4遺伝子:3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素をコードし、テストステロン代謝に関与します
抗ミュラー管ホルモン関連遺伝子
- NR0B1(DAX1)遺伝子:X染色体上に位置し、性腺および副腎の発達に関与します。重複により性逆転を引き起こすことがあります
当検査パネルでは、これらの原因遺伝子のうち、臨床的に重要な10遺伝子(AKR1C4、AR、CBX2、DHH、DMRT1、MAP3K1、NR0B1、NR5A1、SRY、ZFPM2)を対象としています。これにより、46,XY性分化疾患の主要な遺伝学的原因を効率的にスクリーニングすることが可能です。
ミネルバクリニックの46,XY性分化疾患遺伝子パネル検査の特徴
「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」とは、現在46,XY性分化疾患の原因として報告されている10の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、46,XY性分化疾患に関連する10遺伝子を一度に調べられる「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で46,XY性分化疾患の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、46,XY性分化疾患に関係するとされる10の遺伝子を一度に調べられる「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える46,XY性分化疾患の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」の場合、10の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から46,XY性分化疾患を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な10の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」では、46,XY性分化疾患に関係するとされる10種類の遺伝子(AKR1C4、AR、CBX2、DHH、DMRT1、MAP3K1、NR0B1、NR5A1、SRY、ZFPM2)をまとめて検査します。
「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」は、46,XY性分化疾患の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【46,XY性分化疾患の個人歴または家族歴のある方】に
「46,XY性分化疾患 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・出生時に外性器の異常(小陰茎、尿道下裂、二分陰嚢など)が認められた方
・性別判定が困難と診断された方
・46,XYの染色体検査結果があるが、典型的な男性の外性器ではない方
・思春期に予想される二次性徴が現れない方
・原発性無月経がある方(女性として育てられた場合)
・不妊症の精査で性腺の異常が疑われる方
・性腺形成不全症(スワイヤー症候群)と診断された方
・アンドロゲン不応症の疑いがある方
・46,XY性分化疾患の家族歴がある方
・性腺腫瘍のリスク評価が必要な方
・将来子どもを持つことを考えている方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、46,XY性分化疾患の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なホルモン補充療法、性腺摘出術の適応判断、性腺腫瘍のモニタリング、定期的なフォローアップを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・病態メカニズムの理解(性腺形成不全、アンドロゲン合成・作用異常など)
・性腺腫瘍リスクの評価と適切なモニタリング計画の立案
・性腺摘出術の適応と時期の判断
・適切なホルモン補充療法の選択
・副腎機能不全のリスク評価と管理(NR5A1変異の場合)
・骨密度低下の予防と管理
・適切な性別決定のサポート
・心理社会的サポートの提供
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。X連鎖劣性遺伝の場合(AR遺伝子、NR0B1遺伝子)、保因者である母親の息子が発症するリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合(NR5A1遺伝子など)は子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
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AKR1C4, AR, CBX2, DHH, DMRT1, MAP3K1, NR0B1, NR5A1, SRY, ZFPM2 ( 10遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・AKR1C4遺伝子:
アルド・ケト還元酵素ファミリー1メンバーC4をコードする遺伝子。3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素として働き、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換に関与します。この遺伝子の異常により、男性ホルモンの活性化が障害され、外性器の男性化が不十分となります。
・AR遺伝子:
アンドロゲン受容体をコードする遺伝子。X染色体上に位置し、X連鎖劣性遺伝形式をとります。この遺伝子の変異により、アンドロゲン不応症(完全型または部分型)を発症します。精巣は形成されテストステロンも産生されますが、組織がアンドロゲンに反応できないため、外性器の男性化が障害されます。完全型では外性器は完全に女性型となり、部分型では両性性器となります。
・CBX2遺伝子:
クロモボックスホモログ2をコードする遺伝子。性決定に関与する転写調節因子で、精巣の発達に重要な役割を果たします。この遺伝子の異常により、性腺の発達が障害され、46,XY性分化疾患を引き起こします。
・DHH遺伝子:
デザートヘッジホッグをコードする遺伝子。常染色体劣性遺伝形式で、精巣の発達、特にライディッヒ細胞やセルトリ細胞の分化に関与します。この遺伝子の変異により、部分型性腺形成不全症を発症し、多くの症例で末梢神経障害(ミニフォームニューロパチー)を合併します。
・DMRT1遺伝子:
ダブルセックス・マブ関連転写因子1をコードする遺伝子。9番染色体短腕に位置し、精巣発達に必須の転写因子です。この遺伝子を含む領域の欠失により、性腺形成不全症を発症します。
・MAP3K1遺伝子:
マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ1をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、性腺分化の調節に関与します。この遺伝子の変異により、46,XY性分化疾患を引き起こし、外性器は両性性器から女性型まで様々な表現型を示します。
・NR0B1(DAX1)遺伝子:
核内受容体サブファミリー0グループBメンバー1をコードする遺伝子。X染色体短腕に位置し、性腺および副腎の発達に関与します。この遺伝子の重複により、SRYの働きが抑制され、46,XY性逆転を引き起こすことがあります。また、遺伝子の欠失や変異により、副腎低形成症を伴う低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を発症します。
・NR5A1(SF-1)遺伝子:
核内受容体サブファミリー5グループAメンバー1(ステロイド産生因子1)をコードする遺伝子。常染色体優性遺伝形式で、性腺と副腎の発達に極めて重要な役割を果たします。この遺伝子の変異により、完全型から部分型までの性腺形成不全症を発症します。重要な点として、約15%の症例で副腎不全を合併するため、生命予後の観点から副腎機能の評価が必須です。
・SRY遺伝子:
性決定領域Y染色体遺伝子。Y染色体短腕に位置し、精巣決定因子(TDF)をコードします。この遺伝子は精巣への分化を決定する最も重要な遺伝子です。SRY遺伝子の欠失や変異により、完全型性腺形成不全症(スワイヤー症候群)を発症し、性腺は索状性腺となり、外性器は女性型となります。
・ZFPM2(FOG2)遺伝子:
ジンクフィンガープロテイン、マルチタイプ2をコードする遺伝子。性腺および心臓の発達に関与する転写補助因子です。この遺伝子の変異により、性腺形成不全症を発症することがあり、一部の症例では心臓奇形を合併します。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度平均20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
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すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※この検査パネルでは、10の原因遺伝子のみを対象としています。約60~70%の46,XY性分化疾患症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、内分泌検査、画像検査などを総合的に評価することが重要です。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 出生時に外性器の異常(小陰茎、尿道下裂、二分陰嚢など)が認められた方、性別判定が困難な方におすすめします。また、思春期に予想される二次性徴が現れない方、原発性無月経がある方(染色体検査で46,XYと判明した場合)、不妊症の精査で性腺の異常が疑われる方も検査をご検討ください。家族に46,XY性分化疾患の方がいる場合も検査が推奨されます。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 性腺形成不全症(スワイヤー症候群)とは何ですか?
- 46,XYの染色体を持ちながら、精巣が形成されず索状性腺となる疾患です。SRY遺伝子、NR5A1遺伝子、DHH遺伝子などの異常により発症します。外性器は女性型で、思春期に二次性徴が現れません。性腺腫瘍のリスクが高いため、多くの場合は性腺摘出術が推奨されます。
- アンドロゲン不応症とは何ですか?
- AR遺伝子の変異により、精巣は形成されテストステロンも産生されますが、組織がアンドロゲンに反応できない疾患です。完全型では外性器は完全に女性型となり、部分型では両性性器となります。X連鎖劣性遺伝形式をとり、保因者である母親の息子が発症するリスクは50%です。
- 性腺腫瘍のリスクはどのくらいですか?
- 性腺形成不全症や部分型アンドロゲン不応症では、性腺腫瘍(性腺芽腫、ディスジャーミノーマなど)のリスクが一般集団より高くなります。リスクは病型や遺伝子変異の種類によって異なりますが、15~30%程度とされています。このため、適切な時期に性腺摘出術を行うか、定期的な画像検査によるモニタリングが必要です。
- 副腎不全のリスクについて教えてください
- NR5A1遺伝子変異では約15%の症例で副腎不全を合併します。副腎不全は生命に関わる重篤な状態であり、早期発見と適切な管理が極めて重要です。NR5A1遺伝子変異が見つかった場合は、定期的な副腎機能の評価が必要です。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。X連鎖劣性遺伝(AR遺伝子、NR0B1遺伝子)の場合、保因者である母親の息子が発症するリスクは50%です。常染色体優性遺伝(NR5A1遺伝子など)の場合、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約60~70%の46,XY性分化疾患症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状、内分泌検査、画像検査などを総合的に評価し、適切な診断と管理を行うことが重要です。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、病態メカニズム、性腺腫瘍や副腎不全などのリスク、性腺摘出術の適応、ホルモン補充療法の選択肢、ご家族への影響、心理社会的サポートなどについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 治療はどのように行われますか?
- 治療は病態や性別決定によって異なります。主な治療には、性腺腫瘍のリスクを減らすための性腺摘出術、適切なホルモン補充療法(エストロゲン、テストステロンなど)、外性器形成術(必要に応じて)、骨密度低下の予防と管理、心理社会的サポートなどがあります。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 46,XY性分化疾患の多くは不妊となりますが、遺伝形式によって次世代への影響が異なります。X連鎖劣性遺伝の場合、保因者の息子が発症するリスクは50%です。常染色体優性遺伝の場合、子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な10の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら