目次
症候群(しょうこうぐん)とは、同時に現れる複数の症状や所見のまとまりにつけた名前です。英語では syndrome(シンドローム)といいます。パーキンソン病とパーキンソン症候群のように、「病」と「症候群」は似ているようで指しているものが違います。この記事では、症候群の意味、病気・疾患との違い、名前の付け方を整理したうえで、ダウン症候群や22q11.2欠失症候群など遺伝が原因の症候群と、その原因を調べる検査まで、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 症候群とは?
症候群とは、いくつかの症状や検査の異常が決まった組み合わせでいっしょに現れる状態に、ひとまとめの名前をつけたものです。原因は1つとは限りません。
🧬 Q. 病気(病)との違いは?
「○○病」は原因やしくみがある程度はっきりしたもの、症候群は症状のまとまりに注目した名前です。たとえばパーキンソン病は、パーキンソン症候群の原因の1つです。
🧬 Q. 名前はどう付けられる?
最初に報告した人の名前、目立つ特徴、原因となる染色体の場所などから付けられます。原因がわかると、名前がまとめ直されることもあります(22q11.2欠失症候群など)。
🧬 Q. 遺伝の症候群にはどんなものがある?
染色体の数の変化(ダウン症候群)、染色体の一部の欠失(22q11.2欠失症候群)、1つの遺伝子の変化(ヌーナン症候群)などがあり、原因に合った遺伝学的検査で確かめます。
- ➤症候群 → 症状や所見のまとまりにつけた名前。原因は1つとは限らない
- ➤病・疾患との違い → 原因・しくみがわかっているかどうかの度合いで使い分けられることが多い
- ➤名前の付け方 → 人名・特徴・染色体の場所など。原因がわかると名前が変わることもある
- ➤遺伝の症候群 → 染色体の数・微小欠失・単一遺伝子の3つに分けると整理しやすい
- ➤日本の制度 → 遺伝が原因の症候群の多くが指定難病(2026年4月時点で348疾病)に入っている
1. 症候群とは?意味・読み方・英語
症候群とは、いくつかの症状や所見(診察や検査でみつかる異常)が決まった組み合わせでいっしょに現れる状態に、ひとまとめの名前をつけたものです。米国国立医学図書館の医学用語集(MeSH)でも、症候群は「特徴的な症状の複合」と定義されています[1]。読み方は「しょうこうぐん」です。
ポイントは、症候群が「何が原因か」よりも「何がいっしょに起きているか」に注目した名前だという点です。発熱やせきのように1つだけなら「症状」と呼びますが、心臓の形の異常、顔立ちの特徴、免疫の低下といった、ふつうは別々に考える所見がいつも同じ組み合わせで現れるとき、その組み合わせ全体に1つの名前をつけて扱います。これが症候群です。
症候群という名前をつけることには、実用上の意味があります。ある組み合わせに名前がつくと、ほかの医師が同じ組み合わせを見たときに「あの症候群かもしれない」と気づけるようになり、合併しやすい問題を先回りして調べたり、患者さん同士の情報を集めたりできるからです。原因がまだわからない段階でも、名前があることで医療の道筋が立てやすくなります。
英語の syndrome(シンドローム)の語源は?
症候群は英語で syndrome(シンドローム)といい、「いっしょに走る」という意味のギリシャ語に由来します。syn-(いっしょに)と dromos(走ること・道筋)が組み合わさった言葉で、英語では1540年代から「同時に起きるいくつかの症状」という意味で使われてきました[2]。いくつもの症状が同じ道筋をいっしょに走っている、というイメージです。
この「いっしょに起きるもの」という意味から、syndrome は医学以外でも使われます。日本語でも「燃え尽き症候群」「サザエさん症候群」のように、医学の正式な病名ではない言い回しに「症候群」が使われることがあります。こうした言葉と医学の症候群は、使われ方が違う点に注意してください。
症状・徴候・所見との関係は?
症候群を組み立てている一つひとつの部品が、症状・徴候・所見です。本人が感じる不調(痛み・だるさなど)を症状、医師が診察で見つける客観的な変化を徴候(サイン)、検査や画像でみつかる異常を所見と呼び分けます。これらをまとめて「症候」と呼ぶこともあり、症候の「群れ」が症候群です。症状と徴候の違いは、徴候(サイン)とはで詳しく解説しています。
💡 用語解説:所見(しょけん)
所見とは、診察・血液検査・画像検査などで医師が確認した結果のことです。本人に自覚がなくても、心臓の超音波検査でみつかる形の異常や、血液中のカルシウムの低さなどは所見に当たります。症候群は、症状だけでなく、こうした所見の組み合わせも含めて定義されます。
2. 症候群と病気・疾患の違いは?
症候群は「症状のまとまり」、病(病気)は「原因やしくみがある程度はっきりしたもの」に使われることが多い名前です。疾患は、医学の言葉で「病気」全体を指す呼び方です。ただし、これらの言葉には法律や学会による厳密な使い分けの決まりはなく、昔からの呼び名がそのまま残っているものも多くあります。下の表は、名前の意味を理解するための目安として整理したものです。
📘 症候群・病気(病)・疾患の違い(目安)
| 言葉 | 何に注目した名前か | 原因 | 例 |
|---|---|---|---|
| 症候群 | いっしょに現れる症状・所見の組み合わせ | 1つとは限らない。原因がわかっていても名前が残ることがある | パーキンソン症候群、クッシング症候群、ダウン症候群 |
| 病(○○病) | 特定の原因・しくみ・経過 | ある程度はっきりしていることが多い | パーキンソン病、クッシング病 |
| 病気 | 健康でない状態全般を指す日常の言葉 | 問わない | — |
| 疾患 | 医学で病気を指す呼び方(病気全体の総称) | 問わない | 遺伝性疾患、先天性心疾患 |
※厳密な定義はなく、例外も多くあります。名前に「症候群」がつくかどうかだけで、原因の有無は判断できません。
違いがいちばんわかりやすいのは、同じ名前の「症候群」と「病」が並んでいる組み合わせです。次の2つの例で見てみます。
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いは?
パーキンソン症候群は、動作が遅くなるなどパーキンソン病に似た症状が出る状態の総称で、パーキンソン病はその原因の1つです。国立長寿医療研究センターの解説では、パーキンソン病はレビー小体という構造が脳にみられることを特徴とする1つの病気とされ、パーキンソン症候群の原因には、パーキンソン病のほかに、薬の副作用(薬剤性パーキンソニズム)、脳血管の病気、正常圧水頭症、ほかの神経変性疾患(進行性核上性麻痺・多系統萎縮症など)が挙げられています[3]。
つまり、目の前の症状が「パーキンソン症候群」と呼べることまではわかっても、それがパーキンソン病なのか、薬が原因なのかで、その後に考えることは変わってきます。症候群という名前は、診断の「入口」を示しているといえます。
パーキンソン病そのものについてはパーキンソン病のページにまとめています。
クッシング病とクッシング症候群の違いは?
クッシング症候群はステロイドホルモン(コルチゾール)が多すぎることで起こる症状のまとまりの名前で、そのうち脳の下垂体の腫瘍が原因のものをクッシング病と呼びます。米国国立小児保健発達研究所(NICHD)の解説でも、下垂体腺腫によるクッシング症候群がクッシング病と呼ばれ、原因としては薬(ステロイド薬)によるものが多いとされています[4]。症候群が大きな枠で、病はその中の特定の原因を指す、という関係はパーキンソンの例と同じです。クッシング症候群についてはクッシング症候群で解説しています。
原因がわかっていても「症候群」と呼ぶのはなぜ?
原因がはっきりわかったあとも、すでに広く使われている名前はそのまま残ることが多いためです。たとえばダウン症候群は、21番染色体が1本多いことが原因だとわかっていますが、名前は今も「症候群」のままです。遺伝の分野では、このように原因がわかっている症候群がたくさんあります。
そのため、「症候群=原因不明」と覚えてしまうと、遺伝の症候群を理解するときに混乱します。もともとは原因不明の症状のまとまりにつけた名前だったものが、研究が進んで原因がわかっても名前は変わらなかった、と考えると整理しやすくなります。
🩺 院長コラム【「症候群」という名前の正直さ】
症候群という言葉は、「この組み合わせでよく起きることはわかっている。でも、その奥にある原因は1つとは限らない」という状態を、そのまま言葉にした名前だと考えています。わかっていることと、まだわからないことの線引きを名前の中に残している点で、正直な言葉です。
一方で、名前がついたことで「わかった」と感じてしまうと、その先の原因を調べる機会を逃すことがあります。症候群の名前は終点ではなく、原因を確かめるための出発点だと受け止めることが大切だと考えています。
3. 症候群の名前はどうやって付けられる?
症候群の名前は、主に「人の名前」「目立つ特徴」「原因となる染色体の場所」の3つの考え方で付けられています。統一された命名のルールがあるわけではなく、時代や分野によって付け方が違うため、同じ症候群に複数の名前があることも珍しくありません。
🏷️ 症候群の名前の付け方の主なパターン
| 付け方 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 人の名前(報告者など) | ダウン症候群、ヌーナン症候群、ソトス症候群 | 昔から使われている名前に多い。名前から症状や原因は想像しにくい |
| 目立つ特徴 | 猫鳴き症候群(5p欠失症候群の別名) | 特徴が伝わりやすいが、本人や家族にとって受け止めにくい名前もある |
| 染色体の場所 | 22q11.2欠失症候群、1p36欠失症候群、5p欠失症候群 | 原因が名前に入っているので、検査結果と結びつけやすい |
| 状況・背景 | 燃え尽き症候群など(医学以外の言い回しを含む) | 医学の正式な病名でないものもある |
※同じ症候群に複数の名前があることがあります(例:5p欠失症候群と猫鳴き症候群)。
遺伝の分野では、原因となる染色体の位置を名前に入れる付け方が増えています。「22q11.2」は、22番染色体の長腕(q)の11.2という番地を表していて、名前を見れば原因の場所がわかります。この番地の読み方は、染色体の帯(バンド)の番号に基づいています。
💡 用語解説:22q11.2 の読み方
最初の「22」は22番染色体、「q」は染色体の長い腕(長腕)、「11.2」は染色体を染めたときに見える帯の番地です。短い腕(短腕)は「p」で表します。たとえば「5p欠失症候群」は、5番染色体の短腕の一部が欠けていることを表します。
原因がわかると症候群の名前は変わる?
原因がわかると、別々の名前で呼ばれていた症候群が1つにまとめ直されることがあります。代表的な例が22q11.2欠失症候群です。GeneReviews(米国の遺伝性疾患の専門的な総説)によると、22q11.2欠失症候群には、かつて別々に報告されていたディジョージ症候群、口蓋心臓顔面症候群(velocardiofacial syndrome)、円錐動脈幹異常顔貌症候群、常染色体顕性(優性)のオピッツG/BBB症候群の一部などが含まれます[5]。
これらは、心臓の病気が目立つ人、口蓋の問題が目立つ人、免疫の低下が目立つ人など、別々の診療科で別々の名前を付けられていました。その後、共通の原因として22番染色体の一部の欠失がみつかり、「原因」に基づく1つの名前にまとめられたのです。さらに同じ総説では、ディジョージ症候群という名前は、22q11.2欠失症候群に似た特徴があるのに22q11.2の欠失がみつからない人に使う名前として残す、とされています[5]。
このように、遺伝学的検査が発達するほど、症候群は「見た目の組み合わせ」による名前から「原因」による名前へと整理されていきます。昔の資料と今の資料で名前が違うときは、こうした整理の途中にあることが多いと考えてください。
4. 遺伝の症候群にはどんな種類がある?
遺伝が原因の症候群は、原因の大きさで「染色体の数の変化」「染色体の一部の欠失・重複」「1つの遺伝子の変化」の3つに分けると整理しやすくなります。原因の大きさが違うと、調べるのに使う検査も違ってきます。遺伝が関わる病気全体の分類は、遺伝性疾患とはで解説しています。
🧬 遺伝の症候群の3つのタイプ
| 原因のタイプ | 代表的な症候群 | 主な検査 |
|---|---|---|
| 染色体の数の変化 | ダウン症候群(21トリソミー) | 染色体検査(核型分析)など |
| 染色体の一部の欠失・重複(微小欠失など) | 22q11.2欠失症候群、1p36欠失症候群 | 染色体マイクロアレイ検査など |
| 1つの遺伝子の変化(単一遺伝子) | ヌーナン症候群、ソトス症候群 | 遺伝子パネル検査・エクソーム解析など |
ダウン症候群:染色体の数の変化
ダウン症候群は、21番染色体が通常より多くあることで起こる症候群で、生まれる赤ちゃんの約700人に1人にみられます。MedlinePlus Genetics(米国国立医学図書館の解説)によると、多くは21番染色体が3本ある21トリソミーによるもので、ほかに、21番染色体の一部がほかの染色体についている転座型や、一部の細胞だけに余分な21番染色体があるモザイク型がまれにあります[6]。
ダウン症候群は原因がはっきりわかっている症候群の代表です。名前に「症候群」が残っているのは、前の章で説明したように、広く使われていた名前が原因の解明後も引き継がれたためです。詳しくはダウン症候群総論をご覧ください。
22q11.2欠失症候群:染色体の一部の欠失(微小欠失)
22q11.2欠失症候群は、22番染色体のごく一部が欠けていることで起こる症候群で、染色体の微小欠失症候群の中で最も頻度が高いものです。GeneReviewsによると、米国の集団にもとづく調査で約6,000人に1人(ヒスパニックの人では約3,800人に1人)とされ、1,421人をまとめた報告では約64%に先天性心疾患がみられました[5]。日本の難病情報センターは、4,000〜5,000人に1人の頻度で発生すると説明しています[7]。
微小欠失は、顕微鏡で染色体の形を見るふつうの染色体検査ではわからないほど小さな欠失です。そのため、見つけるには染色体マイクロアレイ検査など、より細かく調べる方法が必要になります。微小欠失による症候群全体については微小欠失症候群とはで解説しています。
ヌーナン症候群:1つの遺伝子の変化(単一遺伝子)
ヌーナン症候群は、1つの遺伝子の変化によって起こる症候群ですが、原因になる遺伝子は1つではありません。MedlinePlus Geneticsによると、約1,000〜2,500人に1人にみられ、原因の約半数はPTPN11遺伝子、さらに10〜15%がSOS1遺伝子、RAF1遺伝子とRIT1遺伝子がそれぞれ約5%で、15〜20%は原因がまだわかっていません。遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝です[8]。
これは症候群という言葉の性質をよく表しています。症状の組み合わせは同じ「ヌーナン症候群」でも、その奥にある原因遺伝子は人によって違います。原因遺伝子がわかると、合併しやすい問題や家族への遺伝の考え方を、より具体的に考えられるようになります。ヌーナン症候群の特徴についてはヌーナン症候群とはで解説しています。
💡 用語解説:遺伝的異質性(いでんてきいしつせい)
同じ症状の組み合わせ(同じ症候群)が、別々の遺伝子の変化によって起こることを遺伝的異質性といいます。ヌーナン症候群のように原因遺伝子が複数ある症候群では、1つの遺伝子だけを調べても原因がみつからないことがあるため、複数の遺伝子をまとめて調べるパネル検査などが使われます。
5. 症候群の原因を調べる検査と、日本の指定難病
遺伝の症候群は、症状の組み合わせから見当をつけ、遺伝学的検査で原因を確かめることで診断がはっきりします。染色体の数の変化は染色体検査で、微小欠失は染色体マイクロアレイ(CMA)で、1つの遺伝子の変化は遺伝子パネル検査やエクソーム解析で調べる、というように、疑う原因の大きさに合わせて検査を選びます。検査の種類と結果の見方は遺伝子検査(遺伝学的検査)とはにまとめています。
原因を確かめることには、名前をつける以上の意味があります。同じ症候群でも原因によって合併しやすい問題が違うことがあり、また、原因が親から受け継いだものか、子どもに新しく起きたものかによって、次の子どもや血縁者に同じことが起こる可能性の考え方が変わるからです。
指定難病に入っている遺伝の症候群は?
日本では、遺伝が原因の症候群の多くが、国が医療費助成の対象として定める「指定難病」に入っています。指定難病は2026年4月時点で告示番号1〜348の348疾病です[9]。告示番号の順に見ると、193番から206番のあたりには、プラダー・ウィリ症候群、ソトス症候群、ヌーナン症候群、1p36欠失症候群、4p欠失症候群、5p欠失症候群、アンジェルマン症候群、スミス・マギニス症候群、22q11.2欠失症候群、脆弱X症候群など、遺伝の症候群が続けて並んでいます[10][11]。
🏥 指定難病に入っている遺伝の症候群の例(告示番号)
| 症候群 | 原因のタイプ | 告示番号 |
|---|---|---|
| ルビンシュタイン・テイビ症候群 | 単一遺伝子 | 102 |
| チャージ症候群 | 単一遺伝子 | 105 |
| プラダー・ウィリ症候群 | 15番染色体の一部(欠失など) | 193 |
| ソトス症候群 | 単一遺伝子など | 194 |
| ヌーナン症候群 | 単一遺伝子 | 195 |
| 1p36欠失症候群 | 微小欠失 | 197 |
| 4p欠失症候群 | 染色体の部分欠失 | 198 |
| 5p欠失症候群 | 染色体の部分欠失 | 199 |
| アンジェルマン症候群 | 15番染色体の一部(欠失など) | 201 |
| スミス・マギニス症候群 | 微小欠失など | 202 |
| 22q11.2欠失症候群 | 微小欠失 | 203 |
※告示番号は厚生労働省・難病情報センターの一覧(2026年10月確認)による。
指定難病には病気ごとに診断基準が定められていて、病名がつくだけでなく、その基準を満たすことが前提になります。症候群の名前を確かな診断にしておくことは、制度を利用するうえでも意味があります。
妊娠中に調べられる遺伝の症候群は?
遺伝の症候群の一部は、妊娠中にお母さんの血液を使うNIPT(新型出生前診断)でスクリーニングできます。当院のNIPT(新型出生前診断)では、すべてのプランでダウン症候群(21トリソミー)と22q11.2欠失症候群を調べます。スタンダードプランでは、このほか1p36欠失症候群、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p欠失)、猫鳴き症候群(5p欠失)、スミス・マギニス症候群、プラダー・ウィリ症候群とアンジェルマン症候群(いずれも欠失によるもの)などの微小欠失も対象です。
1つの遺伝子の変化による症候群は、ダイヤモンドプランとインペリアルプランで対象になり、ヌーナン症候群、ソトス症候群(NSD1遺伝子の変化によるもの)、チャージ症候群などを調べます。インペリアルプランでは、ルビンシュタイン・テイビ症候群なども対象です。なお、ソトス症候群のうち5q35の欠失によるタイプは、当院のNIPTの対象外です。
NIPTは確定診断ではなくスクリーニング検査なので、陽性の結果が出たときは、羊水検査や絨毛検査などの確定検査で本当にその症候群かを確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられます。NIPTで調べる微小欠失や単一遺伝子の病気については、微小欠失症候群と単一遺伝子疾患とNIPTで詳しく解説しています。
🩺 院長コラム【名前の次は、原因を確かめる】
遺伝の症候群では、同じ名前の中に違う原因が含まれていることがあります。どの原因によるものかがわかると、合併症の見通しや、次の子どもや血縁者への遺伝の考え方が具体的になります。名前がついたところで止まらず、原因まで確かめることに意味があると考えています。
ただし、検査で何がわかり、何がわからないのかを知ったうえで受けることが前提です。遺伝学的検査の結果は本人だけでなく家族にも関わる情報なので、検査の前後に臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを受けることが大切だと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 症候群とは、わかりやすく言うと何ですか?
いくつかの症状や検査の異常が、決まった組み合わせでいっしょに現れる状態に、ひとまとめの名前をつけたものです。原因は1つとは限らず、同じ症候群でも人によって原因が違うことがあります。
Q2. 症候群と病気(病)の違いは何ですか?
症候群は「症状や所見のまとまり」に注目した名前で、原因が1つに決まらないことがあります。「○○病」は原因やしくみがある程度はっきりしたものにつけられることが多く、たとえばパーキンソン病は、いろいろな原因で起こるパーキンソン症候群のうちの1つです。ただし、原因がわかったあとも「症候群」という名前が使われ続けることがあり、名前だけで原因の有無は判断できません。
Q3. 症候群の読み方と英語は?
読み方は「しょうこうぐん」です。英語では syndrome(シンドローム)といい、ギリシャ語で「いっしょに走る」という意味の言葉に由来します。
Q4. ダウン症とダウン症候群は違うものですか?
同じものです。「ダウン症」はダウン症候群を短くした呼び方で、医学の正式な名前はダウン症候群です。多くは21番染色体が3本あること(21トリソミー)によって起こります。
Q5. 症候群は遺伝しますか?
症候群によって違います。薬や脳血管の病気が原因のパーキンソン症候群のように遺伝と関係のないものもあれば、ダウン症候群や22q11.2欠失症候群、ヌーナン症候群のように染色体や遺伝子の変化が原因のものもあります。遺伝の症候群でも、親から受け継ぐ場合と、子どもに新しく起こる場合があります。
Q6. 症候群の一覧はありますか?
すべての症候群をまとめた公式の一覧はありません。日本では、国が医療費助成の対象として定める指定難病(2026年4月時点で348疾病)の中に、22q11.2欠失症候群やヌーナン症候群など、遺伝が原因の症候群が多く含まれています。
まとめ
症候群(しょうこうぐん、syndrome)とは、同時に現れる複数の症状や所見のまとまりにつけた名前です[1]。「○○病」が原因やしくみのはっきりしたものに使われることが多いのに対し、症候群は原因が1つとは限らない状態にも使われ、パーキンソン病がパーキンソン症候群の原因の1つであるように、症候群が大きな枠になる関係がよくみられます[3]。
一方で、ダウン症候群や22q11.2欠失症候群のように、原因がわかったあとも「症候群」という名前が使われているものも多く、原因がわかったことで別々の症候群が1つにまとめ直された例もあります[5]。遺伝の症候群は、染色体の数・微小欠失・単一遺伝子といった原因の大きさに合わせた遺伝学的検査で確かめることができ、日本ではその多くが指定難病に入っています。
🧬 遺伝の症候群の検査をお考えの方へ
当院は臨床遺伝専門医が常駐し、染色体マイクロアレイ検査や遺伝子パネル検査などの遺伝学的検査と、検査前後の遺伝カウンセリングを行っています。妊娠中の方は、すべてのプランで22q11.2欠失症候群まで調べるNIPTを受けられ、陽性の場合は確定検査まで院内で受けられます。検査を受けるかどうか決める前に、検査で何がわかるのかを知りたい方は遺伝カウンセリングとはをご覧ください。
参考文献
- [1] Syndrome [MeSH Descriptor D013577]. Medical Subject Headings (MeSH). National Library of Medicine. [MeSH]
- [2] Syndrome (n.) – Etymology, Origin & Meaning. Online Etymology Dictionary. [Etymonline]
- [3] 新畑豊. パーキンソン病とパーキンソン症候群:「パーキンソン病らしさ」とは? 長寿医療研究センター病院レター 第114号. 国立長寿医療研究センター, 2025. [国立長寿医療研究センター]
- [4] What causes Cushing syndrome? Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development (NICHD). [NICHD]
- [5] McDonald-McGinn DM, Hain HS, Emanuel BS, Zackai EH. 22q11.2 Deletion Syndrome. GeneReviews. 1999 (updated 2025 May 8). [GeneReviews NBK1523]
- [6] Down syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [7] 難病情報センター. 22q11.2欠失症候群(指定難病203). [難病情報センター]
- [8] Noonan syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [9] 厚生労働省. 令和8年4月時点の指定難病(告示番号1~348). [厚生労働省]
- [10] 難病情報センター. 病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 告示番号順索引(151~200). [難病情報センター]
- [11] 難病情報センター. 病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 告示番号順索引(201~250). [難病情報センター]



