スルファチド(Sulfatide)は、スフィンゴ脂質の一種であり、主に神経系の白質、特にミエリン鞘に豊富に存在する脂質です。スフィンゴ脂質は細胞膜の重要な構成成分で、スルファチドはそのサブグループを形成します。スルファチドは硫酸基を持つ複合リピドで、硫酸ガラクトシルセラミド(硫酸化されたガラクトシルセラミド)です。
スルファチドの主な機能と特徴
スルファチドの主な機能と特徴は以下の通りです。
神経系の機能: スルファチドは、ミエリン鞘の正常な構造と機能に不可欠です。ミエリン鞘は、神経細胞の軸索を取り巻き、電気的絶縁を提供し、神経インパルスの伝達を高速化します。
細胞間コミュニケーション: スルファチドは、細胞間の相互作用および細胞のシグナリングプロセスに関与しています。
疾患との関連: スルファチドの代謝異常は、リソソーム蓄積症の一種であるメタクロマチック白質ジストロフィー(MLD)などの神経変性疾患と関連しています。この病気では、アリルスルファターゼAという酵素の活性が低下または欠如しており、スルファチドの分解が妨げられ、脳内に蓄積します。
生体膜の成分: スルファチドは細胞膜の構成成分としても機能し、細胞の形態と動態に影響を与えます。
免疫系への影響: 一部の研究では、スルファチドが免疫応答にも関与する可能性が示唆されています。
スルファチドは生体内で重要な役割を果たすため、その代謝の異常は神経系の機能障害やその他の健康問題につながる可能性があります。
スルファチドの構造
スルファチドは、硫酸化されたガラクトシルセラミド(硫酸ガラクトシルセラミド)です。その構造は以下の要素から成り立っています。
スフィンゴシン: これはアルキルチェーンと一つのアミン基を含む長いアルコール分子です。
脂肪酸: スフィンゴシンのアミン基にアミド結合で結合しています。
ガラクトース: スフィンゴシンの一端に結合しています。
硫酸基: ガラクトースの分子に結合しており、スルファチドの特徴的な性質を与えます。
この構造によって、スルファチドは細胞膜の重要な構成成分として機能し、特に神経系のミエリン鞘において重要な役割を果たします。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号




