シェルタリン複合体は、テロメアとして知られる真核生物の染色体の末端を保護する上で重要な役割を果たすタンパク質群である。テロメアは、直線状の染色体の末端に位置する反復DNA配列と関連タンパク質である。テロメアの主な機能は、DNA複製の際に遺伝物質が失われるのを防ぎ、染色体の安定性と完全性を維持することである。
シェルテリン複合体はいくつかのタンパク質サブユニットで構成されており、各サブユニットはテロメアの維持に関連する特定の機能を持っている。シェルテリン複合体の中心的な構成要素は以下の通りである。
- TRF1(テロメアリピート結合因子1)
- TRF1は二本鎖テロメアDNAに結合し、テロメアの長さを調節する。
- TRF2(テロメアリピート結合因子2)
- TRF2もテロメアDNAに結合するが、テロメア末端の保護に関与する。テロメアがDNA損傷部位として認識されるのを防ぎ、不要なDNA修復活動を阻害する。
- TIN2 (TRF1-Interacting Nuclear Factor 2)
- TIN2はTRF1とTRF2の両方と相互作用し、シェルタリン複合体の安定化を助ける。
- RAP1(Repressor/Activator Protein 1)
- RAP1はTRF2と結合し、DNA修復活性を阻害することによってテロメアの保護に寄与する。RAP1はシェルタリン複合体の他の構成要素とも相互作用する。
- POT1(Protection of Telomeres 1)
- POT1はテロメアDNA末端の一本鎖オーバーハングに特異的に結合する。DNA損傷応答機構の活性化を防ぐことにより、テロメアの保護に重要な役割を果たしている。
- TPP1(副腎皮質異形成ホモログ)
- TPP1はPOT1と相互作用し、テロメアの保護に貢献している。TPP1とPOT1の相互作用はテロメアの長さを維持し、テロメアが損傷DNAとして認識されるのを防ぐのに重要である。
これらのシェルテリン複合体タンパク質は協調して働き、テロメアが損傷DNAとして認識され処理されるのを防ぐ。シェルテリン複合体が適切に機能することは、ゲノムの安定性を維持し、早期老化や特定の疾患の発症といった問題を予防するために極めて重要である。
シェルテリン複合体はまた、染色体の末端に反復DNA配列を付加する酵素であるテロメラーゼの活性に影響を与えることによって、テロメアの長さを調節する役割も担っている。テロメラーゼは、細胞分裂のたびにテロメアDNAが徐々に失われていくのに対抗するのに役立っている。テロメア維持の調節不全は、しばしばシェルタリン複合体が関与しており、癌やある種の遺伝性疾患など、ヒトの様々な疾患と関連している。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号



