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妊娠高血圧腎症|妊娠高血圧腎症と子かん前症(子癇前症)
子癇前症とは?
子癇
子癇とは、「妊娠20週以降に初めてけいれん発作を起こし、てんかんや二次性けいれんが否定されるもの」、つまり明確な原因がないにも関わらず起こる妊娠中のけいれん発作のことを指します。治療しなければ通常は死に至ります。
けいれん発作の起こる時期によって、妊娠子癇、分娩子癇、産褥(分娩が終わった後の期間)子癇と分類されます。
子癇前症
日本では子癇前症ではなく妊娠高血圧腎症と呼ばれています。
「妊娠により発症した高血圧、蛋白尿、浮腫(むくみ)を症状とし、重症化すると子癇に至る」病態を英語では「preeclampsia」と呼び、日本語に直訳すると「子癇前症」となります。しかし、この呼称では上記にある英語での本来の意味ではなく、「子癇が切迫した状態」と混同されてしまう可能性があります。その為、あえてこの呼称は用いず、「妊娠高血圧腎症」という呼称を用いるようになりました。
妊娠高血圧腎症
妊娠高血圧症候群(妊娠時に高血圧を発症したもの)の分類の1つで、「妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、かつ蛋白尿を伴うもので、分娩12週までに正常に復する場合」と定義されるものです。重症化すると子癇に至るとされています。
妊娠高血圧(妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、分娩12週までに正常に復する場合)と比較すると妊婦と胎児双方の予後は悪いとされています。
原因(誘因)
誘因としては以下のものが挙げられています。
・初産婦の女性
・高齢(35歳以上)または非常に若年(17歳以下)の母体
・遺伝的要素(妊娠高血圧腎症の家族歴など)
・妊娠高血圧腎症の既往歴
・多胎妊娠
・慢性的な高血圧
・糖尿病
・肥満
・腎臓病
症状
診断基準となる症状としては高血圧、蛋白尿、血小板減少、腎機能障害、肝機能障害、上腹部痛、神経症状(頭痛、視覚障害、けいれん)、肺水腫(肺に水が溜まった状態)などが挙げられます。
この中で頭痛、視覚障害、上腹部痛は子癇に発展する可能性があると言われています。
治療
ターミネーション(妊娠の終結・中断)が唯一の治療となります。
予防
今まで様々な方法が試されており、妊娠中の定期的な運動やベッド上での安静(1日4~6時間)が妊娠高血圧腎症の発症リスクを下げたという報告はあります。
しかし、未だに非常に有用と言われる方法は存在していません。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号