子宮外妊娠

子宮外妊娠とは、受精卵が子宮の外、通常は卵管のいずれかに着床することをいいます。

卵管とは、卵巣と子宮をつなぐ管のことです。卵管には卵管采というヒダがたくさんあって卵巣から飛び出してくる卵子を捕まえる部分とそれに続く膨大部、子宮に続く卵管とがありますが、子宮外妊娠は卵管膨大部で起こることが一番多いです。卵子が卵管に詰まってしまうと、産まれて生きられる赤ちゃんには成長出来ず、妊娠が続くと卵管が破裂して命を脅かす恐れがあります。

残念ながら、赤ちゃんを助けることはできません。通常は、薬や手術で赤ちゃんを取り除く必要があります。

子宮外妊娠は大体1％以上の妊娠で起こるとされています。

子宮外妊娠の可能性のある症状

子宮外妊娠は、必ずしも症状が出るとは限らず、定期的な妊娠検査で発見されることもあります。

症状が出る場合は、妊娠4週目から12週目の間に発症することが多いようです。

最初は何の症状も出ない人もいます。たまたま妊娠検査薬で陽性を知り、産婦人科受診して胎嚢が子宮内に超音波検査で見えない、など早期検査で問題が発見される場合がありますが、後になってより卵管破裂で腹腔内に大出血して血圧が下がるなどの深刻な症状が出るまで、子宮外妊娠であることに気づかない場合もあります。

膣からの出血

膣からの出血は、通常の生理とは少し異なる傾向があります。始まったり止まったりすることが多く、水のような色や濃い茶色をしていることもあります。妊娠中の膣からの出血は比較的一般的で、必ずしも深刻な問題の兆候とは言えませんが、性器出血がある場合は医師に相談してください。

腹痛

片側の下の方のお腹に痛みを感じることがあります。痛みは、急におこることもあれば、段々とでる場合もあり、続くこともあれば、中断する場合もあります。
おなかの痛みは、胃腸の症状だったり風邪など他にもさまざまな原因が考えられますので、必ずしも子宮外妊娠であるとは限りません。しかし、おなかの痛みがあり、妊娠しているかもしれないと思ったら、医師の診察を受けてください。

トイレの違和感

排便排尿といった排泄時に痛みを感じることがあります。下痢をすることもあります。尿路感染症や胃腸の病気で排泄時の痛みが起こることがありますが、妊娠している可能性がある場合は、医師の診察を受けることが勧められます。

肩の痛み

肩先の痛みは、腕の付け根の部分に感じる異常な痛みです。違う場所に痛みを感じることを放散痛と言います。原因はわかっていませんが、子宮外妊娠で腹腔内出血を起こしていると片方の肩先に放散痛を感じる場合があるため、妊娠の可能性のある女性はすぐに医師の診察を受けてください。

深刻な子宮外妊娠の症状

子宮外妊娠の場合、卵管が裂けるほど大きくなるケースがあります。これは破裂と呼ばれています。卵管破裂は非常に深刻であり、腹腔内出血により急激に循環不全が起こって命が危険になることもあるため、卵管を修復するための手術をできるだけ早く行う必要があります。

おなかに鋭い、突然の激しい痛みがある、強いめまいや失神を感じる、とにかく気分が悪い、顔色が悪いといった症状があり、妊娠している可能性がある場合は、すぐに医師の診断を受けてください。

子宮外妊娠の治療法

残念ながら、子宮外妊娠の場合、胎児（発育中の胚）を救うことはできません。通常、妊娠が大きくなりすぎる前に取り除くための治療が必要です。

主な治療法は以下の通りです。

待機的管理；治療が必要かどうか、あなたの状態を注意深く観察します。
薬物療法；メトトレキサートと呼ばれる薬を使って、妊娠の成長を止める。
手術；手術によって妊娠を取り除き、通常は卵管も一緒に取り除きます。

これらの選択肢にはそれぞれメリットとデメリットがあり、症状、胎児の大きさ、血液中の妊娠ホルモン（ヒト絨毛性ゴナドトロピン、hCG）の濃度などの要因に応じて、最も適した方法を選ぶことになります。医師から説明を受けて相談の上でどれを選ぶかきめます。

待機的管理

症状がない、あるいは症状が軽く、胎嚢が非常に小さい、あるいは発見できない場合は、妊娠が自然に解消される可能性が高いため、注意深く観察するだけでよい場合があります。これを待機的管理といいます。

定期的に血液検査を行い、血液中のhCGの濃度が下がっていることを確認します。
ホルモンが検出されなくなるまで必要です。ホルモンレベルが下がらなかったり、上昇したりした場合は、さらなる治療が必要になることがあります。
通常、膣からの出血があります。この出血が止まるまでは、タンポンではなく生理用ナプキンやタオルを使用してください。
おなかが痛くなることがありますが、アセトアミノフェンを飲むと楽になります。
症状が重くなった場合の対処法も教えてもらえます。
モニタリングの主な利点は、治療による副作用を感じないことです。

不利な点は、卵管の1つが裂ける（破裂する）可能性があることで、最終的には治療が必要になるかもしれません。

薬物療法

メソトレキセートの構造式

子宮外妊娠が早期に診断されたものの、積極的な経過観察ができない場合、メトトレキサートと呼ばれる薬による治療が推奨されることがあります。

メソトレキサートは、抗腫瘍薬や免疫抑制薬として古くから使用される薬ですが、胎嚢の成長を阻止する作用があります。メソトレキサートは、お尻に1回だけ注射します。

治療のために入院する必要はありませんが、治療がうまくいっているかどうかを確認するために、定期的に血液検査が行われます。

2回目の投与が必要になることもあり、効果がない場合は手術が必要になることもあります。

治療後、少なくとも3ヵ月間は確実な避妊を行う必要があります。

この期間中に妊娠すると、メソトレキセートが赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があるからです。

また、メソトレキサートの投与を受けた後すぐに飲酒すると肝臓にダメージを与える可能性があるため、安全だと言われるまでアルコールを避けることも重要です。

手術

腹腔鏡で行われる手術

ほとんどの場合、妊娠が大きくなる前に取り除くために、腹腔鏡で手術が行われます。これはおなかに小さな穴を3か所開けて、二酸化炭素ガスでお腹を膨らませて視界を確保する（気腹）ための穴、内視鏡と手術で使う鉗子を通すための穴をそれぞれ開けて手術するやり方です。大きく開腹するのに比べ、患者さんの負担が減ります。

腹腔鏡手術では全身麻酔を行い、手術中は眠っている状態です。
おなかに小さな切り込みを入れます（切開）。
腹腔鏡と呼ばれる細い管と小さな手術器具を切開部から挿入します。
他の卵管が健康であれば、妊娠している卵管全体を取り除きます。そうでなければ、卵管全体を取り除かずに妊娠を取り除くこともできます。
患部の卵管を摘出することが最も効果的な治療法であり、再び妊娠する可能性を減らすとは考えられていません。

主治医はこの点について事前に相談し、卵管を摘出することに同意するかどうかを尋ねられます。

ほとんどの女性は、術後数日で退院できますが、完全に回復するには4～6週間かかります。

卵管がすでに破裂している場合は、急激な出血を来して命に関わることもあるため、緊急手術が必要となります。

外科医は、出血をしている場合は腹腔鏡では視野が狭くて安全に手術することができない為、おなかを大きく切開して（開腹手術）、出血を止め、可能であれば卵管を修復します。

治療法によっては、将来的に自然妊娠できる可能性が低くなる場合がありますが、ほとんどの女性は妊娠することができます。