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相補的塩基対形成
相補的とは、DNAの塩基においてはアデニンAとチミンT、シトシンCとグアニンGが水素結合を介して結合することをいう。
相補性とは?
分子生物学では、相補性とは、2つの構造体がそれぞがカギと鍵穴となる関係を表す。相補性はDNAの複製と転写の基本原理であり、2つのDNAまたはRNAの配列が互いに反対向きに平行に並んでいるときに、配列の各位置のヌクレオチド塩基は相補的になるという特性を持っている。この相補的な塩基対によって、細胞は世代を超えて情報をコピーしたり、配列に保存された情報の損傷を見つけて修復したりすることができる。
2つの核酸鎖の間の相補性の度合いは、完全な相補性(各ヌクレオチドがその反対側に向かい合っている)から相補性なし(各ヌクレオチドがその反対側に向かい合っていない)まで様々である。様々なDNA修復機能や制御機能も塩基対の相補性に基づいている。
相補的塩基対形成とは?
塩基どうしが結合するときのルールはどうやってできているのかを考えてみよう。
塩基の対合のルール
プリン塩基のアデニンAは常に ピリミジン塩基のチミジンTと対合する。また、ピリミジン塩基のシトシンCは常にプリン塩基のグアニンGと対合する。
なぜプリン塩基同士、ピリミジン塩基同士でくっついてはいけないの?
これらの塩基の構造を見てみよう。
アデニンとグアニンというプリン塩基は他の塩基たちより大きいため、大きなプリン塩基同士で結合する、小さいピリミジン塩基同士で結合する、大小の分子同士で結合するという3パターンがあると、二重らせんになったときに、空間に隙間ができて不安定となるしコンパクトにたためなくなってしまう。
2重らせんの隙間は20 Å(オングストローム)と非常に小さいので、大きい分子同士で結合するにはスペースが足らない。
ピリミジン塩基同士がくっつくには、こちらは小さいので距離がありすぎて水素結合が形成できない、相手に届かない、ということとなる。
しかし、プリン塩基とピリミジン塩基が結合すればよいのならば
プリン AC
ピリミジン GT
なのだから、組み合わせとしては AC GT でも良いのではという疑問が残る。
なぜAC、GTはだめなのか?
AT、GCの間にのみ水素結合が形成できるからである。
図に示したようにATの間には2か所、GCの間には3か所の水素結合が形成される。
水素結合のための手の本数が同じ同士が安定な水素結合を可能とするためである。
この対合のルールによって1本鎖のDNAの塩基配列が分かると、もう1方のDNA鎖の相補的配列が自動的にわかることになる。
ヒトではDNAの塩基でATが各約30%合計約60%、GCが各約20%合計約40%となっている。