シスエレメント
シスエレメントは隣接する遺伝子の転写を制御するノンコーディングDNAの領域である。Cis-regulatory elementシス制御エレメント (CRE) または Cis-regulatory moduleシス制御モジュール (CRM)とも呼ばれる。シスエレメントは遺伝子制御ネットワークの重要な構成要素であり、進化発生生物学で研究されている胚発生の形態形成や解剖学的な発達などを制御する。
シスエレメントは、制御する遺伝子の近傍に存在する。シスエレメントは通常、転写因子と結合することにより、遺伝子の転写を制御している。一つの転写因子が多くのシスエレメントと結合することで、多くの遺伝子の発現を制御することができる。これがpleiotropy(多面発現、多面作用)、すまわち1つの遺伝子が沢山の形質に影響を与えることと可能にしていると考えられている。ラテン語の接頭辞 cis は「こちら側」を意味していて、シスエレメントは転写される遺伝子と同じDNA分子上にある。
シスエレメントは、通常100-1000塩基対の長さのDNA領域である(参考文献)。シスエレメントには多くの転写因子が結合し、近傍の遺伝子の発現を制御し、その転写速度を調整することができる。(1つのシス制御要素が複数の遺伝子を制御することができ)、逆に(1つの遺伝子が複数のシス制御モジュールを持つこともある)。シス制御モジュールは、細胞内の特定の時間・場所で活性な転写因子と関連するコファクターを統合し、この情報を読み取って出力を行うことでその機能を遂行する。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号