スーパーエロンゲーションコンプレックス(Super elongation complex;SEC)は、転写の制御、特にRNA合成の伸長期において重要な役割を果たす多タンパク質複合体である。SECはRNAポリメラーゼII(RNAPII)の転写伸長を促進し、発生や分化を含む様々な細胞内プロセスに関与する遺伝子の発現を制御している。
SECはいくつかのタンパク質サブユニットで構成されており、その主要な構成要素の一つが正転写伸長因子b(P-TEFb)である。P-TEFbはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)で、RNAPIIの最大サブユニットのC末端ドメイン(CTD)をリン酸化し、RNAPIIの転写開始期から伸長期への移行を促進する。このリン酸化イベントは、完全長RNA転写産物の効率的な合成に不可欠である。
SECに関連するタンパク質には以下のようなものがある。
- サイクリンT1(CycT1): CDK9と複合体を形成するP-TEFbの制御サブユニット。
- サイクリンT2(CycT2): CDK9と複合体を形成するサイクリンTの別のアイソフォーム。
- AFF(AF4/FMR2ファミリー)タンパク質(AF4など): これらのタンパク質はSECの重要な構成要素であり、その機能的多様性に寄与している。
- ENL(Eleven Nineteen Lysine-rich Leukemia): ENLはSECのもう一つの構成要素であり、遺伝子発現の制御に関与している。
- EAF(ELL関連因子)タンパク質(EAF1、EAF2など): これらのタンパク質は、伸長因子ELL(Eleven Nineteen Lysine-rich Leukemia)と相互作用し、SECの一部となっている。
SECは、細胞の分化と発生に重要な遺伝子の発現を制御することが知られている。SEC構成因子の調節異常は、ある種の白血病を含む様々な疾患と関連している。スーパーエロンゲーションコンプレックスの分子メカニズムを理解することで、遺伝子発現の制御に関する洞察が得られ、転写調節不全に関連する疾患の治療標的となりうる。
Super elongation complexに属する遺伝子
AFF1
AFF2
AFF3
AFF4
ELL
ELL2
ELL3
MLLT1
MLLT3




