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siRNA

siRNA

small-interfering RNA (siRNA) は1990年代後半に初めて発見された。siRNAは、ノンコーディング二本鎖RNA分子で、サイレンシングRNAや短干渉RNAとしても知られ、RNA干渉(RNAi)経路内で動作する。転写後のmRNAを分解して翻訳を阻止する。相補的な塩基配列を持つ特定の遺伝子の発現を妨害するマイクロRNA(miRNA)に似ており、通常20から24塩基対くらいの長さで、3’末端が水酸化され、5’末端がリン酸化されている。

siRNAとmiRNAに似ているが、miRNAはより短いステムループRNA産物に由来し、通常、翻訳の抑制によって遺伝子を沈黙させ、作用の特異性がより広いのに対し、siRNAは通常、翻訳の前にmRNAを切断することによって働き、100%の相補性を持ち、したがって非常に厳しい標的特異性を持つ。

siRNAの生成は、Dicer酵素と呼ばれる酵素によって触媒される。siRNAは転写抑制や翻訳抑制によって遺伝子発現を調節することができ、原理的には相補的な配列を持つ合成siRNAによってあらゆる遺伝子をサイレンシングすることができるるため、創薬ターゲットととなっている。

また、siRNAは遺伝子のサイレンサーであるため、遺伝子機能の検証のための重要なツールとなっており、医学研究の様々な分野にsiRNAが応用されている。

siRNAの作用機序

siRNAが遺伝子を不活性化する仕組みは以下の通りである。

  1. 二本鎖RNAがDicer酵素によって切断される。これにより、siRNAが形成される。
  2. 二本鎖のsiRNAが細胞内に入り、他のタンパク質とともにRNA誘導性サイレンシング複合体RNA-induced silencing complex (RISC)を形成する。
  3. siRNAがRISC複合体の一部となると、巻き戻され、一本鎖のsiRNAが形成される。
  4. 熱力学的に安定でない5’末端の塩基対を持つRNAの鎖は、RISC複合体の一部として残る。この鎖は、相補的なmRNAをスキャンすることができる。
  5. 一本鎖siRNA(RISC複合体の一部)が標的mRNAに結合すると、mRNAの切断を誘発する。
  6. mRNAは切断され、細胞によって異常なものとして認識される。これにより、mRNAが分解され、アミノ酸、そしてタンパク質への翻訳が行われなくなる。こうして、そのmRNAをコードしている遺伝子が沈黙(サイレンシング)する。

siRNAの臨床応用における課題

siRNAは遺伝子をサイレンシングする働きを持つため、たとえばがん遺伝子が発現増強しているためがん細胞が増殖するという場面で、がん遺伝子をsiRNAを投与することによりサイレンシングしてがんを治療することなどが考えられて期待されている。
しかし、siRNAの臨床使用には課題もある。例えば、siRNAと標的mRNAの切断部位近傍の領域のミスマッチにより、切断が行われないことがあります。また、siRNAを使用した場合、他にもRNA干渉は他の経路と交差しているため、以下のような非特異的な影響がある。

  • 哺乳類細胞がsiRNAのような二本鎖RNAをウイルスの副産物と勘違いして、免疫反応を起こす。
  • siRNAの熱力学的特性が化学的に修飾され、一塩基の特異性が失われること。
  • 意図しないオフターゲット。相補性が不完全な遺伝子を不用意にダウンレギュレートすることに起因する。これは、データ解釈の問題や潜在的な毒性などの問題につながる。
  • 導入されるsiRNAが多すぎるため、宿主の自然免疫反応の活性化につながる。これは、二本鎖RNAのセンサーであるプロテインキナーゼR (protein kinase R,PKR)の活性化などによるものであることが示唆されている。

また、siRNAの細胞内デリバリーにも継続的な課題がある。一般的な細胞への薬品の導入方法には、トランスフェクション(核酸を動物細胞内へ取り込ませる)、エレクトロポレーション(短パルスの電流を利用してDNAやRNAなどの高分子を細胞内に導入)、ウィルスを介した導入(ウイルスベクター)などがある。これらのうち最も広く適用されているのはトランスフェクションである、すべての細胞型に適合するわけではなく、in vivoでの効率は低い。しかし、siRNAは20塩基対程度とサイズが小さいため、大型の遺伝子治療薬では通過できないような体内の領域でも通過することができ、これまで薬物デリバリーの大きな課題であった血液脳関門も通過することが可能である。

参考文献

Synthetic SiRNA Delivery: Progress and Prospects Methods Mol Biol
Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells Nature
VIRmiRNA: a comprehensive resource for experimentally validated viral miRNAs and their targets

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

プロフィール

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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