ヘアピンループとは
ヘアピンループはステムループともよばれ、同じ鎖の2つの領域が塩基対になって二重らせんを形成し、最後に対になっていないループを形成するものである。

この構造は、多くのRNA二次構造の重要な構成要素となっている。RNAの重要な二次構造として、RNAの折り畳みを誘導したり、メッセンジャーRNA(mRNA)の構造的安定性を守ったり、RNA結合タンパク質の認識部位を提供したり、酵素反応の基質として機能したりする。
ヘアピンループの形成と安定性
ヘアピンループ構造の形成は、結果として生じるヘリックスとループ領域の安定性に依存する。まず前提となるのは、自分自身に折り返して一対の二重らせんを形成できる配列の存在である。このらせんの安定性は、その長さ、含まれるミスマッチやバルジ(膨らんでいる部分)の数、対となる領域の塩基組成によって決まる。グアニンとシトシンのペアは3つの水素結合を持ち、2つしかないアデニンとウラシルのペアに比べて安定している。RNAでは、水素結合が2つのアデニン-ウラシルのペアは、DNAのアデニン-チミンのペアと同じである。また、塩基の芳香環のπ結合を好ましい方向に揃える塩基スタッキング相互作用も、ヘリックスの形成を促進する。
また、ループの安定性は、ステム・ループ構造の形成にも影響する。”3塩基以下のループは立体的に不可能であり、形成されない。シュードノットペアリングなどといった自身の二次構造を持たない大きなループも不安定である。最適なループの長さは、約4~8塩基の長さになる傾向がある。UUCGという配列でよく見られるループは「テトラループ」と呼ばれ、構成要素であるヌクレオチドの塩基の積み重なりによる相互作用によって特に安定している。
ヘアピンループの構造上の特徴
ヘアピンループのは、プレマイクロRNAの構造にも存在するが、最も有名なのはトランスファーRNAで、3つの真のステムループと1つのステム(軸状部分のこと)がクローバーリーフ状に合わさっている。翻訳過程でコドンを認識するアンチコドンは、tRNAの対になっていないループの1つに位置している。RNAシュードノットでは、2つの入れ子状のステムループ構造が発生し、一方の構造のループが2つ目のステムの一部を形成する。
多くのリボザイム(触媒としてはたらくリボ核酸。リボ酵素)もステムループ構造を持つ。自己切断型のハンマーヘッドリボザイムには3つのステムループがあり、それらは切断部位である中央の不対領域で合流する。ハンマーヘッド・リボザイムの基本的な二次構造は、自己切断の活性化に必要である。
ヘアピンループは、原核生物の5’UTR内によく見られる要素である。これらの構造は、タンパク質と結合したり、翻訳を制御するために転写産物を減衰させたりすることが多い。
ステムループ構造は、原核生物のRho非依存性転写終結にも重要である。ヘアピンループが転写中のmRNA鎖に形成されると、RNAポリメラーゼがDNAの鋳型鎖から解離してしまう。このプロセスは、rho非依存性または内在性の終結として知られており、関係する配列はターミネーター配列と呼ばれる。



