InstagramInstagram

プレプリント論文

研究者

新型コロナウイルスの流行で、プレプリントの段階です、というコメントがついたニュースをご覧になると思いますが、その意味をご存知でしょうか?
プレプリントとは、ピアレビュー前に共有される研究論文のことで、通常の論文のように「査読」を受けていません。要するに「クレジット」がない状態の学術論文を言います。疑義があれば世に出ないこともあります。

ここではプレプリント論文についてご説明したいと思います。

プレプリント論文とは?

定義
プレプリント論文とは、査読プロセスを経る前の段階で、著者自身によってプレプリントサーバーに投稿され、オープンアクセスで一般に公開される学術論文の原稿です。プレプリントは、正式な査読を受ける前の段階で、オープンアクセスプラットフォームに登録・公開される学術原稿であり、物理科学分野において長年にわたり、アイディアの提示、迅速な結果発表、他の研究者から得られるフィードバックを基に研究をさらに発展させることなどを目的として使われてきました。近年では、ライフサイエンス、社会科学、医学・ヘルスケア、教育などの分野でも利用されています[1][3][5]。

プレプリントの公開は、著者および読者(研究コミュニティ、研究費提供者、一般市民など)に多くの利点をもたらしますが、プレプリントを公開する前には慎重な検討が必要です。特に、医学やヘルスケアをはじめとする一部の領域では、プレプリントを登録する前に、研究の倫理性や情報の正確性に関する懸念があります[1]。

プレプリントサーバーは、さまざまな学術論文のデータや情報を掲載したオンライン・リポジトリであり、そこに掲載されるのはジャーナルにアクセプト(受理)されていない段階の学術論文です。論文原稿がプレプリントサーバーにアップロードされると、基本的な審査と剽窃チェックが行われ、問題がなければ公開されます。リポジトリに公開されると、閲覧可能となり、利用者はダウンロード、共有、引用できるようになります[3]。

プレプリントサーバーの例としては、生物化学、医学、生物学分野のBioRxiv、物理学、数学、コンピュータサイエンス分野のarXiv、化学分野のChemRxivなどがあります。これらのサーバーは、研究者が自分の研究成果を迅速に公開し、広く共有するためのプラットフォームを提供しています[3]。

プレプリントの公開は、学術コミュニティにおける情報の共有と研究の進展を促進する重要な手段となっていますが、公開された内容の質や信頼性については、査読を経ていないため、読者自身が慎重に評価する必要があります[1][3][5][6][7][8].

プレプリントと比較した通常の論文投稿の流れ

通常の論文投稿の流れは、研究者が研究成果をまとめた論文を学術雑誌に投稿し、編集者による初期チェックを経て、選ばれた査読者による査読プロセスを経るというものです。査読者からのフィードバックを受けて著者が修正を行い、最終的に論文が受理されると出版されます[2][3][7][8][13][14][15].

プレプリントの場合、論文は査読を受ける前に著者によってプレプリントサーバーに投稿され、一般に公開されます。プレプリントサーバーに投稿された論文は、基本的な審査と剽窃チェックを経て公開され、誰でも無料で閲覧できるようになります。プレプリントは迅速に研究成果を共有することができ、研究コミュニティからの即時のフィードバックを得ることが可能ですが、査読を経ていないため、最終的な品質保証はありません[3][5][10][12].

具体的には、通常の論文投稿の流れは以下のようになります:

1. 準備: 研究成果をまとめ、投稿する雑誌を選定します。
2. 投稿: 論文を雑誌に投稿し、編集者が初期チェックを行います。
3. 査読: 選ばれた査読者が論文を評価し、コメントや修正の要求を行います。
4. 修正: 著者が査読者のコメントに基づいて論文を修正し、再投稿します。
5. 受理: 論文が受理されると、出版のための最終的な手続きが行われます。
6. 出版: 論文が最終的に校正され、学術雑誌に掲載されます[2][3][7][8][13][14][15].

プレプリントの流れは以下のようになります:

1. 投稿: 著者が研究成果をまとめた論文をプレプリントサーバーに投稿します。
2. 基本チェック: プレプリントサーバーが基本的な審査と剽窃チェックを行います。
3. 公開: チェックを通過した論文は、プレプリントサーバー上で公開されます。
4. フィードバック: 研究コミュニティからのフィードバックを受けることができます。
5. 査読ジャーナルへの投稿: 著者はフィードバックを受けた後、査読プロセスを経るために学術雑誌に論文を投稿することができます[3][5][10][12].

プレプリントは、研究成果を迅速に共有し、早期のフィードバックを得るための手段として利用されますが、通常の論文投稿プロセスを経ることで、品質保証と学術的な信頼性が確立されます。

プレプリントのメリットとは?

メリット
プレプリントの公開には多くのメリットがあります。以下に主なメリットを挙げます:

1. 即時性: プレプリントを利用する最大の利点は、ジャーナルの出版プロセスにつきものの「遅れ」という要素がないため、研究結果が他の人にすぐに利用してもらえることです[7][8].

2. 迅速なフィードバックの受け取り: プレプリントを公開することで、著者は正式な査読前あるいは査読中の論文に対するフィードバックをいち早く受け取ることができます。これにより、研究の質を高めることが可能になります[6].

3. 研究成果の早期共有: プレプリントを利用すれば、これまで何か月もかかっていた論文掲載を数日で行うことができるため、他の研究者から即座にフィードバックを受けることが可能になります[6].

4. 研究の可視性と影響力の拡大: プレプリントの公開は、研究者の目に留まりやすくなり、影響力が拡大します。また、SNSとの親和性が高く、自身が執筆した論文をTwitterやFacebookで共有し、意見交換を素早く行うことができます[6][8].プレプリントは、発表論文に新たな読者を呼び込む役割を果たします。JAMAに掲載された研究によると、プレプリントを投稿した著者は、引用数とAltmetricのスコアが顕著に増加しています。プレプリントを投稿すると、最終的に発表された論文のAltmetric注目度スコア(インパクトファクターなどの学術論文の影響度を評価する指標)と被引用数が大幅に増加しました。

5. オープンアクセス: プレプリント・サーバーに論文を登録することは、世界中の科学者に研究を無料提供するための優れた方法です。これは、グリーン・オープンアクセスと呼ばれています[7].

6. 優先権の確立: 世界中で多くの科学者が同じ研究アイデアに取り組んでいる中、プレプリントを公開すると、アイデアや発見の優先権を主張する助けとなります。プレプリント・サーバーは通常、論文の登録された日付を記録します[7].

7. 研究の透明性の向上: プレプリントは研究の透明性を高め、人目に付きやすくして不正行為を防止する助けとなります[2].

8. 研究のエビデンスになる: 助成機関や雇用委員会から、最近の研究のエビデンスを見たいと言われることもよくあります。そのため、助成金や仕事の申し込みを検討しているときに出版に遅れが生じると、大きな不利益が生じる可能性があります。そのようなとき、プレプリントはとても役に立ちます[7].

これらのメリットは、研究者が自分の研究成果を迅速に共有し、広く普及させるための重要な手段となっています。

Citations:

プレプリントのデメリット

プレプリント論文のデメリットには以下のような点があります:

1. 査読がない: プレプリントは査読プロセスを経ていないため、研究の質や信頼性に疑問が残ることがあります。これにより、研究内容に誤りがある可能性が高まります[4].

2. 品質の保証がない: 査読を通じての品質保証がないため、研究の正確性や堅牢性に関して読者が自身で判断する必要があります[4][6].

3. 否定的なフィードバック: プレプリントは公開されると多くの研究者からのコメントを受ける可能性があり、否定的なフィードバックがつくこともあります。これは研究者にとって耳が痛いものですが、プレ査読と捉えることもできます[4].

4. 二重投稿のリスク: 一部の出版社では、プレプリントに掲載された論文を二重投稿とみなし、受理しないことがあります。これにより、プレプリントを公開した後に特定のジャーナルに投稿できなくなるリスクがあります[7].

5. 研究の誤用や誤解: プレプリントは査読されていないため、研究結果が誤って解釈されたり、誤用されたりするリスクがあります。特に医学やヘルスケアの分野では、未検証の情報が広まることで公衆衛生に悪影響を及ぼす可能性があります[1].

6. 出版プロセスの遅延: プレプリントを公開することで、ジャーナルへの正式な投稿が遅れることがあります。また、プレプリントの公開が原因でジャーナルの査読プロセスが長引くことも考えられます[8].

7. 研究の優先権の問題: プレプリントを通じて研究成果を早期に公開することで、他の研究者による類似研究の発表が加速されることがあります。これにより、研究の優先権を主張することが難しくなる可能性があります[4].

これらのデメリットは、プレプリントの利用に際して慎重な検討が必要であることを示しています。特に、研究の質や信頼性を確保するためには、プレプリントを公開する前に研究内容を十分に検証し、出版社のポリシーを確認することが重要です[1][4][6][7][8].

科学研究のためのリソース作成サービスの展望

日本語と英語の科学論文翻訳支援

現在、科学コミュニティにおける言語の障壁を解消するため、多言語での論文翻訳サービスを提供しています。このサービスは、英語の論文を日本語に、またはその逆に翻訳することで、より広範な読者に向けた科学知識の普及を目指しています。

DOI付与とレビューシステムの整備

科学研究においてDOIの付与は、その研究の認証とトラッキングを可能にし、研究の引用とレビューを容易にします。我々のシステムでは、DOIを自動で付与し、研究内容の正確なレビューと概要化を支援します。

メディアと科学コミュニケーションの融合

科学メディアプラットフォームの開発とその重要性

科学とメディアの融合は、研究の普及に欠かせない要素です。当社では、現在、科学的なリソースをメディアを通じて一般に提供するためのプラットフォームを作成しており、これにより、科学の魅力と重要性をもっと広めることができます。

科学コミュニケーションにおけるプライバシーポリシーの重要性

科学情報の共有において、プライバシーポリシーの確立は、情報の正確性と利用者の信頼を保つ上で極めて重要です。限りあるリソースを最大限に活用するためには、適切なプライバシー保護措置が必要とされます。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移