ハーディー・ワインバーグの法則は、遺伝子頻度と遺伝子型頻度が一定であるという関係を説明する集団遺伝学の原理です。この法則は、特定の条件下で、ある集団において世代が変わっても遺伝子の頻度が変わらないという状態を指します。この平衡状態は、以下の条件を満たす場合に成立します:
1. 性選択がなく、任意交配が行われる。
2. 集団が十分に大きい(遺伝的浮動が無視できるほどの個体数がある)。
3. 他の集団と隔離されており、他の集団との間で個体の移動がない。
4. 突然変異が起こらない。
5. 自然選択が起こらない。
ハーディー・ワインバーグの法則が成立すると、対立遺伝子の頻度を p と q ( q = 1 – p )とした場合、次世代の遺伝子型の比は p^2:2pq:q^2 ( AA:Aa:aa )となります。そして、次世代における対立遺伝子の頻度は親世代と同じく p:q であることが数学的に示されます[1]。
この法則は、遺伝的変異を計算するために用いられる数学的方程式であり、1908年にG.H.ハーディーとウィルヘルム・ワインバーグによって独立して記述されました。ハーディー・ワインバーグ方程式は、p+q=1 より(p+q)2= p2 + 2pq + q2 = 1 と表され、 p は「A」対立遺伝子の頻度、 q は「a」対立遺伝子の頻度を表し、 p2 はホモ接合の遺伝子型 AA の頻度、 q2 はホモ接合の遺伝子型 aa の頻度、 2pq はヘテロ接合の遺伝子型 Aa の頻度を表します。
また、ハーディー・ワインバーグの法則は、集団遺伝学の研究において、ある集団で観察された遺伝子型の頻度が方程式で予測される頻度と異なるかどうかを測定するためにも使用されます。これにより、得られた集団データが正確なものであるかどうかの判定や、測定や仮説の誤りを検討する際の基準となります[5]。
ハーディー・ワインベルグの法則がどのように計算されるか
ハーディー・ワインバーグの法則の計算は、集団内の遺伝子頻度と遺伝子型頻度の関係を数学的に表現するものです。この法則によると、特定の条件下で、遺伝子頻度が一定であれば、遺伝子型の頻度も一定の比率で表されます。計算の基本は、対立遺伝子の頻度をpとq(q = 1 – p)とし、これらを用いて遺伝子型の頻度を求めることです。
遺伝子型の頻度は次のように計算されます:
– ホモ接合優性(AA)の頻度はp2
– ヘテロ接合(Aa)の頻度は2pq
– ホモ接合劣性(aa)の頻度はq2
これらの頻度は、次の方程式で表されます: (p + q)2 = p2 + 2pq + q2 = 1
この方程式は、集団内の全遺伝子型の頻度が1(または100%)に等しいことを示しています。つまり、集団内の全個体を合わせたときの遺伝子型の割合です。
例えば、ある遺伝子座における対立遺伝子Aの頻度が0.6(p = 0.6)、対立遺伝子aの頻度が0.4(q = 0.4)である場合、遺伝子型の頻度は次のように計算できます:
– AAの頻度:p^2 = (0.6)2 = 0.36
– Aaの頻度:2pq = 2×0.6×0.4 = 0.48
– aaの頻度:q^2 = (0.4)2 = 0.16
これらの計算により、次世代における遺伝子型の比率を予測することができます。ハーディー・ワインバーグの法則は、遺伝的変異や自然選択、遺伝的浮動などの影響を受けない理想的な条件下でのみ成立します[4]。