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フィロポディア

フィロポディア(Filopodia)は、細胞の移動や形態の変化に関与する細長い突起構造です。これらは細胞の表面から伸びる細いシリンダー状の構造で、細胞の探索や環境との相互作用に重要な役割を果たします。フィロポディアは、細胞骨格の一部であるアクチンフィラメントによって支えられており、細胞の先端から伸びることで周囲の環境を感知し、細胞の移動方向を決定するのに役立ちます。

フィロポディアは、特に移動する細胞において見られる突起であり、その形成は細胞の移動や形態変化、さらには細胞間のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たします。例えば、発達期の脳の神経細胞では、フィロポディアがスパインの前駆体として機能し、神経細胞間のシナプス形成に関与しています[8]。

また、フィロポディアは細胞外小胞の形成にも関与しています。フィロポディアの切断によって生じる細胞外小胞は、細胞間の情報伝達に重要な役割を果たすことが示されています[2]。これらの細胞外小胞は、細胞間でのシグナル伝達や物質の輸送に利用され、細胞の機能や相互作用に影響を与えます。

フィロポディアの研究は、細胞生物学や発生生物学、神経科学など多岐にわたる分野で進められており、細胞の動態や組織の形成、さらには疾患の発生メカニズムの理解に寄与しています。

フィロポディアの構造

フィロポディアは、主にF-アクチン束からなる動的な構造体であり、その発生と伸長は、アクチンフィラメントの集合、収束、架橋の速度によって正確に制御されている。フィロポディアの直径は60-200nmで、10-30本のアクチンフィラメントが平行に束ねられ、ファスピンなどのアクチン結合タンパクにより束ねられている。これらのフィラメントは、その刺端が膜から突出する向きになるよう配向している。

フィロポディアの形成過程
フィロポディアは、細胞の表面から伸びる細長い突起構造で、主にF-アクチン束からなる動的な構造体です[7]。これらの突起は、細胞の移動や環境との相互作用に重要な役割を果たします。フィロポディアの発生と伸長は、アクチンフィラメントの集合、収束、架橋の速度によって正確に制御されます[7]。

特に、脳の神経回路形成初期において、フィロポディアは未成熟なニューロンに豊富に見られる構造であり、バラの棘のように細長く、運動性に富みます[5][6]。これらは他のニューロンの軸索と未熟なシナプス結合を形成し、その後、スパインと呼ばれるキノコ型の形態へと成熟します[5][6]。スパインは、哺乳類の脳の興奮性シナプス中90%以上のシナプス後部構造を構成しており、フィロポディアはスパインの前駆体として重要な構造です[5][8]。

フィロポディアの形成・維持およびフィロポディアからスパインへの移行の分子機構は、テレンセファリン(TLCN、ICAM-5)という細胞接着分子によって重要な役割を果たされています[5]。TLCNは、終脳と呼ばれる脳の最も吻側の領域に存在するスパインを持ったニューロンにのみ限局して発現し、樹状突起のみに局在します[5]。TLCNがスパイン成熟の負の制御因子であることが発見され、フィロポディアの数を増やしスパイン数を減少させることが示されました[5]。また、TLCN遺伝子欠損マウスでは、フィロポディア数が減少し、スパイン成熟が早くから観察されることが明らかになりました[5]。これらの結果から、TLCNはフィロポディアからスパインへの成熟を抑制する機能を持つことが示されています[5]。

フィロポディアの機能

フィロポディアは細胞膜から細く伸びる突起で、細胞が周りの環境を感じ取るアンテナのような役割をします。これにより、細胞の移動、神経の成長、創傷の治癒などに大切な働きをします。特に神経細胞では、成長する神経の枝の基礎となります。フィロポディアは、動く細胞や細胞の集まりの端によく見られ、細胞が移動する方向を探るのに役立っています。神経の先端の成長や、線維芽細胞などの単一細胞でも特に目立つ特徴です。

フィロポディアは、細胞の移動、環境との相互作用、および細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たす細長い突起構造です。これらの機能は、フィロポディアが細胞の周囲を探索し、細胞の移動方向を決定する能力によって支えられています。フィロポディアは、細胞膜の伸展によって形成され、棒状のアクチン重合体であるF-アクチンが束となって細胞内部から細胞膜を押しのばすことで形成されます[5]。

特に、フィロポディアは神経細胞において重要な役割を果たします。発達期の脳の神経細胞に多く存在し、他の神経細胞の軸索と未熟なシナプス構造を形成することで、神経回路の形成に寄与します[1]。フィロポディアは、その後スパインと呼ばれるキノコ型の形態へと成熟し、軸索と安定なシナプス結合を形成します。この過程は、神経シナプス結合の柔軟性を調節し、学習や記憶などの高次脳機能に重要です[1][2]。

また、フィロポディアは細胞外小胞の形成にも関与しています。これらの細胞外小胞は、細胞間でのシグナル伝達や物質の輸送に利用され、細胞の機能や相互作用に影響を与えます[3]。フィロポディアから形成される細胞外小胞の分泌機構とその生理機能は、I-BARタンパク質を介して行われることが示されています[3]。

フィロポディアの形成と機能は、アクチンフィラメントの集合、収束、架橋の速度によって正確に制御されており、その直径は60-200nmで、10-30本のアクチンフィラメントが平行に束ねられています。これらのフィラメントは、ファスピンなどのアクチン結合タンパクにより束ねられ、その刺端が膜から突出する向きに配向しています。このように、フィロポディアは細胞の探索、移動、および細胞間コミュニケーションにおいて多様な機能を果たし、特に神経細胞においては神経回路の形成と機能の調節に重要な役割を担っています。
ラメリポディアとフィロポディア

フィロポディアが発生する場所はどこですか?

フィロポディアは、細胞の表面から伸びる細長い突起構造であり、特に移動性のある細胞や神経細胞において顕著に見られます。フィロポディアは、神経細胞の樹状突起の前駆体として機能し、神経突起の伸長や創傷治癒に重要な役割を果たしています。また、フィロポディアは移動性組織シートの自由な前面にあるラメリオポディウムに埋め込まれるか、そこから突出していることが知られています。

神経系においては、フィロポディアは発生・発達段階の神経細胞に多く見られ、他の神経細胞の軸索と未熟なシナプス結合を形成することで、神経回路の形成に寄与します[1][8]。発生初期の大脳皮質錐体細胞の樹状突起には、スパインがほとんどなくフィロポディアが多数見られることが報告されています[3]。

フィロポディアは、細胞が周囲の環境を探るためのアンテナとして働き、細胞の移動方向を決定するのに役立ちます。これは、細胞がランダムに突起を伸ばして自分の行き場所を探索し、ベストの場所が見つかるとそちらに進むというプロセスを通じて行われます[2]。フィロポディアは、細胞間コミュニケーションによって進む方向を決めると考えられており、このコミュニケーションを担う分子的実体の解明が研究されています[2]。

フィロポディアが発生する場所によって異なる役割があるのでしょうか?

フィロポディアは細胞の特定の場所で発生し、その位置に応じて異なる役割を果たすことがあります。フィロポディアは細胞の移動、環境との相互作用、細胞間のコミュニケーションに関与するため、発生する場所によってその機能が特化することが示唆されています。

例えば、神経細胞の発達段階では、フィロポディアは神経前駆細胞の先導突起の伸長を助け、細胞体が前進する跳躍運動を繰り返して遊走する際に重要な役割を果たします[2]。また、中枢神経系の興奮性シナプスは主に樹状突起上の微小突起であるスパイン上に形成され、フィロポディアはこれらのスパインに集積するアクチンフィラメントと関連しています[2]。このように、神経細胞においては、フィロポディアは神経回路の形成と機能の調節に不可欠な役割を担っています。

一方で、移動性のある細胞では、フィロポディアは細胞の先端に形成され、細胞の移動方向を決定するセンサーとして機能します。細胞が外界の化学物質の濃度勾配を認識して示す誘因あるいは忌避運動、すなわち走化性においても、フィロポディアは重要な役割を果たしています[4]。

さらに、フィロポディアは細胞間の物理的な接触を介して情報を伝達する手段としても機能します。細胞間コミュニケーションにおいては、フィロポディアが他の細胞との接触を介してシグナルを伝達することで、細胞の行動や運命を調節することが知られています[3]。

これらの例から、フィロポディアが発生する場所によって異なる役割を果たすことが理解されます。神経細胞の樹状突起においてはシナプス形成に関与し、移動性細胞の先端においては環境探索や走化性に関与し、細胞間コミュニケーションにおいては情報伝達の媒介として機能するなど、その位置と文脈に応じて多様な生物学的プロセスに貢献しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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