目次
本記事では、芳香族炭化水素とそのサブカテゴリである多環芳香族炭化水素(PAHs)に焦点を当て、これらが自然界、特に石油や天然ガスなどのエネルギー資源とどのように関わり、人間の健康や環境にどのような影響を及ぼすのかを探ります。また、神奈川県衛生研究所や独立行政法人などが提供する情報や取り組み、越境大気汚染への対策についても詳しく解説します。
第1章: 芳香族炭化水素の基礎知識
芳香族炭化水素とは
芳香族炭化水素は、一重結合と二重結合が交互に並び、電子が非局在化した6つの炭素原子から成る単環あるいは複数の平面環をユニットとして構成されている化合物群です[8]。これらの化合物は、特有の芳香を持っているという共通点の他、水素原子Hの数に対して、炭素原子Cの数の割合が高い(全般に1:1に近い)という特徴があります[1]。芳香族炭化水素の代表例としては、ベンゼンが挙げられます[4][5]。
芳香族炭化水素は、その化学的安定性から、様々な化学反応において、結果的に芳香族のベンゼン環を保ったまま、共鳴エネルギーを保持するように反応することが多いです[1]。また、芳香族炭化水素は、石油や天然ガスの主成分として、また合成樹脂、ナイロン、染料、農薬等に使用されるなど、多方面で製品化されています[4][6]。
芳香族炭化水素の中でも、炭化水素のみで構成されたものを指して芳香族炭化水素と呼び、環構造に炭素以外の元素を含むものを複素芳香族化合物と呼びます[14]。芳香族化合物は19世紀の発見当初、よい香りをもつ化合物が多かったために芳香族の名で呼ばれるようになりましたが、必ずしも芳香性をもつものばかりではありません[4]。
- 参考文献・出典
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[1] sekatsu-kagaku.sub.jp/aromatic-hydrocarbons.htm
[4] www.wdb.com/kenq/dictionary/aromatic-compound
[5] kotobank.jp/word/%E8%8A%B3%E9%A6%99%E6%97%8F%E7%82%AD%E5%8C%96%E6%B0%B4%E7%B4%A0-131967
[6] agus.co.jp/?p=6145
[7] www.nies.go.jp/kanko/news/28/28-4/28-4-04.html
[8] ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B3%E9%A6%99%E6%97%8F%E7%82%AD%E5%8C%96%E6%B0%B4%E7%B4%A0
[14] ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B3%E9%A6%99%E6%97%8F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
芳香族化合物の種類と特性
芳香族化合物は、その構造中にベンゼン環やその他の芳香族環を含む有機化合物の総称です。これらの化合物は、狭義にはベンゼン環を含むものを指しますが、広義にはピリジンやその同族体、ピロール、フラン、チオフェンなどの誘導体も含まれます[1]。芳香族化合物は、炭素原子が正六角形の環状構造を形成し、単結合と二重結合が交互に並ぶ特徴的な構造を持ちますが、実際にはこれらの結合は単結合と二重結合の中間の状態になっています[3]。
● 芳香族化合物の種類
芳香族化合物には、以下のような種類があります。
– ベンゼン系芳香族化合物: ベンゼン、トルエン、ビフェニル、ナフタレンなどが含まれます。これらはベンゼン環を基本とする化合物で、縮合環芳香族化合物も含まれます[4]。
– 複素環式芳香族化合物: フラン、ピロール、ピリジンなどがあり、環構造に炭素以外の元素を含む化合物です[4]。
– 非ベンゼン系芳香族化合物: アズレン、トロポンなど、ベンゼンとは異なる構造を持つものもあります[4]。
● 芳香族化合物の特性
芳香族化合物は以下のような特性を持ちます。
– 安定性: ベンゼン環は非常に安定な構造を持ち、芳香族化合物全体に高い安定性をもたらします[1]。
– 紫外線吸収: 芳香族化合物は紫外線を吸収する性質があり、この特性は分析化学などで利用されます[1]。
– 反応性: 芳香族化合物は脂肪族化合物や脂環式化合物とは異なる反応性を持ち、特有の化学反応を起こします[1]。
– 用途の多様性: 合成樹脂、ナイロン、染料、農薬など、多方面での応用が可能です[4]。
芳香族化合物は、その独特な構造と性質により、化学工業や医薬品製造、生物学的な研究など、幅広い分野で重要な役割を果たしています。
第2章: 多環芳香族炭化水素(PAHs)の重要性
PAHsの定義と主要な代表物質
多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons: PAHs)は、ベンゼン環を2個以上持つ化合物の総称であり、急性毒性が強く、強い発がん性があることが知られています[5]。PAHsは主に、タール、原油、石油に含まれており、ゴム、可塑剤、プラスチックの着色顔料に用いられています[5]。
PAHsの主要な代表物質としては、以下の15種類が挙げられます[5]:
– ナフタレン (Naphthalene)
– フェナントレン (Phenanthrene)
– アントラセン (Anthracene)
– フルオランテン (Fluoranthene)
– ピレン (Pyrene)
– クリセン (Chrysene)
– ベンゾ[a]アントラセン (Benzo[a]anthracene)
– ベンゾ[b]フルオランテン (Benzo[b]fluoranthene)
– ベンゾ[j]フルオランテン (Benzo[j]fluoranthene)
– ベンゾ[k]フルオランテン (Benzo[k]fluoranthene)
– インデノ[1,2,3-cd]ピレン (Indeno[1,2,3-cd]pyrene)
– ジベンゾ[a,h]アントラセン (Dibenzo[a,h]anthracene)
– ベンゾ[g,h,i]ペリレン (Benzo[g,h,i]perylene)
– ベンゾ[a]ピレン (Benzo[a]pyrene)
– ベンゾ[e]ピレン (Benzo[e]pyrene)
これらの物質は、環境中に広く存在し、特に燃焼過程で生成されることが多いです。そのため、大気汚染の主要な原因となり得るとともに、人間の健康に対しても様々なリスクをもたらす可能性があります。
PAHsの環境への影響
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、石炭、原油、ガス、木材、ゴミ、タバコの燃焼から自然に発生する化学物質であり、環境中に広く分布しています。PAHsは、その物理化学的性質により、空気、水、土壌に存在し、生物に影響を与える可能性があります[20]。
♦ 環境への影響
● 環境中の分布
PAHsは、石油の流出、石炭の燃焼、自動車の排気ガス、ゴミの焼却など、人間の活動によって環境中に放出されます。これらは、大気中に微粒子として存在し、雨や雪によって地表に沈着することがあります。また、食品の調理過程(特に肉の焼き方)でもPAHsが生成されることがあります[15][20]。
● 生物への影響
PAHsは、発がん性、変異原性、免疫抑制効果を持つことが知られています。特に、ベンゾ[a]ピレンなどのPAHsは、発がん性があるとされています。PAHsは、細胞内で代謝される過程で、DNAに結合する代謝物を生成し、遺伝子の突然変異や細胞の損傷を引き起こす可能性があります[3][9][12]。
● 人間への影響
人間は、大気汚染、食品摂取、皮膚接触を通じてPAHsに曝露されます。特に、タバコの煙や焼肉などの食品、工業地帯や交通量の多い地域の大気は、PAHsに富んでいます。長期間にわたるPAHsへの曝露は、肺がん、皮膚がん、膀胱がんなどのリスクを高める可能性があります[1][13][15]。
● 環境修復と変換
PAHsの環境からの除去や分解には、物理化学的方法(熱脱着、土壌洗浄)、生物学的方法(バイオレメディエーション)、化学的方法(酸化処理)などがあります。これらの方法は、PAHsの濃度を減少させることができますが、完全に除去することは困難であり、また、処理過程で新たな有毒な副産物が生成される可能性もあります[18][19]。
♦ 結論
PAHsは、その発がん性や環境への広範な分布により、公衆衛生と環境保護の観点から重要な懸念材料です。PAHsの環境への影響を理解し、適切な管理と修復策を講じることが、人間と環境の健康を守るために不可欠です。
- 参考文献・出典
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[1] www.atsdr.cdc.gov/csem/polycyclic-aromatic-hydrocarbons/health_effects.html
[3] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8199595/
[9] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7068426/
[12] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9283753/
[13] www.who.int/europe/publications/i/item/9789289056533
[15] www.cdc.gov/biomonitoring/PAHs_FactSheet.html
[18] pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2022/ra/d2ra00514j
[19] superfund.oregonstate.edu/pah-remediation-and-transformations
[20] superfund.oregonstate.edu/resources/all-about-pahs
第3章: 芳香族炭化水素の人間と環境への影響
健康への影響
芳香族炭化水素(Aromatic Hydrocarbons)と多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons, PAHs)は、人間の健康に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの化合物は、環境中に広く存在し、工業活動、自動車の排気、たばこの煙、バーベキューなどの食品の調理過程、自然発火などによって発生します。
PAHsは、二つ以上のベンゼン環を持つ化合物の総称であり、不完全燃焼によって発生し、微粒子に付着して大気中に排出されることがあります[2]。これらの化合物は、皮膚、呼吸器、消化管などを通じて人体に侵入し、健康被害を引き起こすことが知られています[7]。
特に、PAHsの中でもベンゾ[a]ピレン(BaP)は、発がん性があるとして国際がん研究機関(IARC)によって分類されています[1]。BaPは、経口暴露による非発がん影響として、ラットの中・長期毒性試験での前胃の過形成に関連しています。また、発がん性に関しては、予測最大暴露量に対応する過剰発生率をスロープファクターから求められ、一定のリスクがあるとされています[1]。
健康への影響としては、以下のような症状や状態が報告されています:
– 呼吸器系: PAHsに長期間暴露することで、呼吸器への影響が懸念されます。これには咳、息苦しさ、喉の痛みなどが含まれます[7]。
– 皮膚: PAHsは皮膚に吸収される可能性があり、発赤や炎症を引き起こすことがあります[7]。
– 目: PAHsによる刺激で目の赤みが生じることがあります[7]。
– 中枢神経系: ベンゼンなどの芳香族炭化水素は、中枢神経系に影響を及ぼし、めまい、眠気、頭痛、吐き気、痙攣、意識消失などの症状を引き起こすことがあります[5]。
– 発がん性: 特定のPAHsは発がん性を持ち、長期間の暴露はがんのリスクを高める可能性があります[1][6]。
これらの健康への影響は、PAHsの濃度、暴露期間、個人の健康状態などによって異なります。また、PAHsは環境中で長距離を移動し、越境汚染の原因となることもあります[2][8]。したがって、これらの化合物の管理とリスク評価は、公衆衛生の観点から重要です。
- 参考文献・出典
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[1] www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f05_pahs.pdf
[5] www.iloencyclopaedia.org/ja/part-xviii-10978/guide-to-chemicals/item/1172-hydrocarbons-aromatic-health-hazards
[6] www.jstage.jst.go.jp/article/taiki1995/39/3/39_3_119/_pdf
[7] www.iloencyclopaedia.org/ja/part-xviii-10978/guide-to-chemicals/item/1180-hydrocarbons-polyaromatic-health-hazards
環境問題としての芳香族炭化水素
芳香族炭化水素は、環境問題として重要な位置を占めています。これらの化合物は、主に有機物の不完全燃焼によって発生し、ススや微粒子に付着して大気中に排出されます。また、日常用いる工業製品にも揮発性の芳香族炭化水素が含まれており、これらがガスとして大気に排出されることもあります[4]。
● 多環芳香族炭化水素(PAHs)の特徴と影響
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、ベンゼン環を2つ以上有する芳香族炭化水素の総称であり、原油中に存在しており、燃焼時に副産物として発生する化合物です[2]。PAHsの中には発がん性や遺伝子変異性、内分泌撹乱作用を有するものがあるといわれています。自動車の多い都市や排ガスが多く放出される工場地帯では、PAHsを含む大量の排煙による肺がんや喘息等の疾患の増加が大きな社会問題となっています[2]。
● PAHsの環境への影響
PAHsは有機物の不完全燃焼による産物であり、ディーゼル車や暖房施設などの燃焼機関において、燃料中の直鎖炭化水素が短鎖のアルキルラジカルに変換される過程で生成されます[5]。これらの化合物は、環境中に広く分布しており、大気汚染の主要な原因の一つとなっています。特に、PAHsやその酸化で生成する派生物の多くは毒性を持ち、国際がん研究機関(IARC)は、15種のPAHが発がん性を持つ可能性があると報告しています[4]。
● 人間への影響
PAHsは、人間の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に、PAHsの摂取や吸入は、肺がんや皮膚がんのリスクを高めるとされています。また、PAHsは遺伝情報を担う遺伝子(DNA)や染色体に変化を与え、細胞または個体に悪影響をもたらす性質があり、発がんに結びつく可能性があるとされています[7]。
● 結論
芳香族炭化水素、特に多環芳香族炭化水素(PAHs)は、環境汚染と人間の健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある化合物です。これらの化合物の排出を抑制し、人間と環境への影響を最小限に抑えるためには、適切な規制と管理が必要です。
第4章: 研究と規制の現状
神奈川県衛生研究所やJOGMECによる取り組み
● 神奈川県衛生研究所による取り組み
神奈川県衛生研究所は、県民の健康保持増進や健康被害の発生予防・拡大防止を目的として、さまざまな健康危機に対応するための研究や試験を行っています。具体的には、感染症の予防、食品や医薬品の安全確保、快適で健康な生活環境の確保など、健康に関わる多岐にわたる課題に対して、調査研究や試験検査を積極的に実施しています[1][3]。また、衛生研究所は、保健所と緊密に連携し、科学的・技術的支援機関として、市民生活に密着した健康・安全・安心に関する試験検査や調査研究を行っています[15]。
● JOGMECによる取り組み
JOGMEC(独立行政法人日本石油・天然ガス・金属鉱物資源機構)は、資源・エネルギーの安定供給・確保に貢献することを目的として、地熱発電の普及に向けた地質構造調査、調査助成、金融支援、技術開発、情報収集・提供などに取り組んでいます[2][16]。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、資源開発の支援を通じて、資源・エネルギーの安定供給・確保に貢献しています[4][8][12][14]。具体的には、海底熱水鉱床の採掘技術開発や、二酸化炭素(CO2)を回収して地下に貯留する技術「CCS」の事業化支援など、脱炭素化に向けた取り組みを進めています[6][10]。
● 研究と規制の現状における課題と展望
神奈川県衛生研究所とJOGMECの取り組みは、それぞれ公衆衛生と資源・エネルギーの安定供給という異なる分野において、社会的な課題に対応するための重要な役割を果たしています。これらの取り組みは、科学的な研究や技術開発を通じて、将来の健康危機やエネルギー危機に備えるための基盤を築いています。
しかし、新興・再興感染症の発生や気候変動といったグローバルな課題に対しては、さらなる国際的な協力や研究開発の加速が求められます。また、研究成果を社会に実装するための規制環境の整備や、新技術の社会受容性の向上も重要な課題です。
今後、神奈川県衛生研究所やJOGMECは、これらの課題に対応するために、さらなる研究開発や国内外の関連機関との連携を強化していくことが期待されます。
- 参考文献・出典
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[1] www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/
[2] geothermal.jogmec.go.jp/initiatives/about/index.html
[3] www.pref.kanagawa.jp/docs/h2d/index.html
[4] www.jogmec.go.jp/about/about_jogmec_01_000018.html
[6] www.jogmec.go.jp/about/about_jogmec_10_000009.html
[8] www.jogmec.go.jp/metal/metal_10_000005.html
[10] www.jogmec.go.jp/news/release/news_01_00034.html
[12] www.jogmec.go.jp/content/300379183.pdf
[14] www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methanation_suishin/pdf/010_05_04.pdf
[15] www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/eiken/gaiyo/gai-inf.html
国内外の芳香族炭化水素に関する規制
芳香族炭化水素、特に多環芳香族炭化水素(PAHs)は、その発がん性のリスクから世界中で規制の対象となっています。PAHsは有機物の不完全燃焼によって生成される化学物質で、環境中に広く分布しており、人間の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、国内外で様々な法律や規制によってその使用や排出が制限されています。
♣ 日本における規制
日本では、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」により、PAHsを含む製品に対する規制が行われています。特に、クレオソート油を含有する木材防腐剤や木材防虫剤、およびそれらで処理された木材に対して、PAHsの含有量に関する基準値が設定されています[1]。また、神奈川県衛生研究所は、身近な製品に含まれるPAHsについての情報提供を行っており、消費者が不必要な曝露を避けるための知識を提供しています[3][5]。
♣ 欧州連合(EU)における規制
EUでは、化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規則(REACH規則)を通じて、PAHsを含むプラスチックやゴム製の消費者向け製品に対する規制を実施しています。REACH規則では、特定のPAHsに対して使用制限を設けており、これによりEU市場に出回る製品の安全性が確保されています[3]。
♣ フランスにおける規制
フランスでは、鉱物油(ミネラルオイル)の包装材や一般印刷への使用を禁止する規制が2023年1月1日から施行されました。この規制は、鉱物油芳香族炭化水素(MOAH)や鉱物油飽和炭化水素(MOSH)を含むインキの使用を制限するもので、食品安全と環境保護の観点から導入されています[6][7]。
♣ その他の国々における規制
グローバル化の中で、化学物質の管理は国際的な課題となっており、多くの国々が重金属や無機化合物の排出規制を含む環境保護法を整備しています。また、脂肪族・芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化物、エステル、アルコール類、フェノール類、窒素化合物なども規制の対象となることがあります[2]。
これらの規制は、人間の健康と環境を保護するために重要であり、国際的な合意に基づいて進められています。企業はこれらの規制に適応し、製品の安全性を確保するために、適切な化学物質管理を行う必要があります。
- 参考文献・出典
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[1] www.shimadzu-techno.co.jp/annai/tes/s01_08.html
[2] chemical-net.env.go.jp/column_kizuki_kita_bn5.html
[3] www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/eiken_news_220.pdf
[4] dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?contentNo=1&itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F11280887
[5] www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/eiken_news220.htm
[6] www.iri-tokyo.jp/site/tiri-news/202212-02-shien.html
[7] www.jetro.go.jp/biznews/2022/05/35108f752ec762d9.html
[8] www.chemical-substance.com/hokozoku/
第5章: 対策と今後の取り組み
芳香族炭化水素の排出削減への努力
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、環境中において発がん性や変異原性を持つことが知られており、その排出削減は公衆衛生上の重要な課題です。PAHsは自動車の排気ガスや工業活動、廃棄物の焼却などによって発生し、大気中に放出されることが多いです[2][7][8]。排出削減に向けた取り組みは、以下のような方法で進められています。
1. 法規制の強化:
– 例えば、日本では「ダイオキシン類対策特別措置法」の制定や「廃棄物処理法施行規則」の改正により、焼却炉からのダイオキシン類の排出量が大幅に削減されました[10]。
– 欧州ではREACH規則において、PAHsに対する含有規制が設けられています[4]。
2. 技術開発:
– 高性能集塵装置の設置や、酸化触媒を用いたディーゼル排気粒子中のPAHs排出量の削減など、排出抑制技術の開発が進められています[3][16]。
3. 国際協力:
– PAHsの問題は国境を越えるため、東アジアを中心に国際的な大気環境問題として取り組む必要があります[17]。
4. 環境モニタリング:
– 環境中のPAHsの濃度を監視し、そのデータを基にリスク評価を行うことが重要です[9]。
5. 公衆衛生への配慮:
– PAHsによる健康影響を最小限に抑えるため、公衆衛生の観点からも排出削減が求められます[5][8]。
6. エネルギー源の転換:
– 化石燃料の燃焼によるPAHsの発生を減らすため、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーへの転換が推進されています[6][14]。
7. 意識啓発と教育:
– 一般市民や関連業界への意識啓発と教育を通じて、PAHsの排出削減に向けた行動変容を促すことも重要です。
今後の取り組みとしては、これらの努力をさらに強化し、新たな技術開発や国際的な枠組みの構築、環境政策の策定などを進めていくことが期待されます。また、環境モニタリングのデータを活用して、より効果的な対策を立案し、実施していくことが求められます。
- 参考文献・出典
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[1] www.pref.saga.lg.jp/kiji0038748/3_8748_4_18-1-01_pah_.pdf
[2] www.jfe-tec.co.jp/envi-ene/kankyo/pahs.html
[3] www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/report-news/2004/mizu4.pdf
[4] dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?contentNo=1&itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F11280887
[5] webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1401900484
[6] www.enecho.meti.go.jp/category/others/carbon_recycling/pdf/tech_casebook.pdf
[7] www.nies.go.jp/kanko/news/28/28-4/28-4-04.html
[8] bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics19.html
[9] www.env.go.jp/policy/hakusyo/h13/12443.html
[10] www-cycle.nies.go.jp/magazine/kenkyu/20080204.htm
[11] www.jstage.jst.go.jp/article/taiki1966/10/6/10_6_723/_pdf
[12] www.env.go.jp/policy/kenkyu/special/houkoku/data_h23/pdf/slide/B-0905slide01.pdf
[13] patents.google.com/patent/JP5675602B2/ja
[14] www.rite.or.jp/news/press_releases/pdf/press20150325.pdf
[15] www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/132/3/132_3_325/_pdf
[16] www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/45/3/45_3_144/_pdf
[17] www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/47/3/47_105/_pdf
環境保護と健康保護のための推奨策
多環芳香族炭化水素(PAHs)は、その発がん性や環境への悪影響から、世界中で注目されている汚染物質です。環境保護と健康保護のためには、PAHsの排出を抑制し、人々がこれらの化合物に曝露するリスクを最小限に抑える必要があります。以下に、PAHsに対処するための推奨策を示します。
1. 排出源の特定と管理:
– PAHsの主な排出源は、有機物の不完全燃焼によるものです。工業プロセス、家庭での石炭や木材の使用、自動車の排気ガスなどが含まれます。これらの排出源を特定し、適切な管理と規制を行うことが重要です[9]。
2. 燃焼効率の向上:
– 燃焼プロセスの効率を向上させることで、PAHsの生成を抑制できます。例えば、暖房用石炭ボイラーの撤去や、燃焼効率の高い機器への更新が挙げられます[16]。
3. 代替エネルギーの利用:
– 再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力など)への移行を促進することで、化石燃料の使用を減らし、PAHsの排出を削減できます。
4. 公衆衛生の向上と啓発活動:
– PAHsに関するリスクを理解し、適切な予防措置を講じるために、公衆衛生の向上と啓発活動が必要です。食品の取り扱いや調理方法に関するガイドラインの提供も含まれます[10]。
5. 国際的な協力と規制:
– PAHsは国境を越えて移動するため、国際的な協力と規制が不可欠です。国際機関や各国政府が連携し、排出削減やモニタリングのための共通の基準やガイドラインを策定することが重要です[15]。
6. 研究と技術開発の促進:
– PAHsの影響を理解し、効果的な対策を開発するためには、継続的な研究と技術開発が必要です。特に、低コストで高効率の浄化技術や、新しい代替エネルギー源の開発が求められます。
これらの推奨策を通じて、PAHsによる環境汚染と健康リスクを低減し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。