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オフターゲット効果解明:分子標的薬の予期せぬ副作用と機会

分子標的薬におけるオフターゲット効果の全貌。本来の標的以外の分子に及ぼす影響、その副作用と新たな薬理作用の可能性、創薬標的の発見への道を解説します。

第1章:オフターゲット効果とは

オフターゲット効果の基本概念

オフターゲット効果とは、分子標的薬などが本来の標的(オンターゲット)以外の分子(オフターゲット)に対しても作用してしまう現象を指します。この効果は通常、好ましくない副作用の原因となることが多いですが、予期しない新たな薬理作用や創薬標的の発見につながることもあります[1]。

オンターゲット効果は、薬物がその作用を発揮するために意図的に選択された生物学的標的に対して起こる効果です。これは薬物の主要な作用機序であり、治療効果をもたらすために重要です。一方、オフターゲット効果は、薬物が意図せずに他の分子や受容体に作用してしまうことにより生じる効果で、これが副作用や予期せぬ反応の原因となることがあります。

分子標的薬は、病気の原因となる特定の分子やタンパク質に対して作用するように設計されています。これにより、従来の薬剤に比べて副作用を減らしつつ、効果的な治療を目指すことができます。しかし、薬剤が完全に特異的であることは難しく、オフターゲット効果による副作用が発生する可能性があります[2]。

オフターゲット効果の発生は、薬剤の分子構造や生物学的な相互作用の複雑さに起因します。薬剤が特定の標的に対して高い親和性を持つ一方で、構造的に類似した他の分子にも低い親和性で結合することがあります。このような非特異的な結合がオフターゲット効果を引き起こす原因となります。

したがって、分子標的薬の開発においては、オンターゲット効果を最大化しつつ、オフターゲット効果を最小限に抑えることが重要です。これには、薬剤の標的特異性を高めるための精密な分子設計や、オフターゲット効果を評価するための詳細な生物学的試験が必要となります。

[1] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2902.html
[2] www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/phc/phcp01.html

オフターゲット効果の原因

オフターゲット効果は、ゲノム編集や薬物治療において、意図した標的以外の部位に影響を及ぼす現象を指します。この効果は、分子の特異性と薬理学的背景に基づいて発生します。

● 分子の特異性

分子の特異性が完全ではないため、オフターゲット効果が発生します。例えば、CRISPR/Cas9システムにおいては、ガイドRNA (gRNA) がDNAの特定の配列に結合してCas9ヌクレアーゼによる切断を指示しますが、gRNAが完全に一致しない配列にも結合する可能性があります。このような場合、意図しないDNA領域が切断され、オフターゲット効果が生じます[19]。また、siRNAによる遺伝子発現抑制も、完全に一致しない配列に対しても作用する可能性があり、これがオフターゲット効果の原因となります[13][14]。

● 薬理学的背景

薬理学的には、薬物がその主要な標的以外の分子にも結合することでオフターゲット効果が発生します。これは、薬物の分子構造が複数の受容体や酵素と部分的に相互作用することによるものです。例えば、分子標的薬が本来の標的以外の分子を阻害または活性化することで、通常は好ましくない副作用の原因となりますが、予期しない新たな薬理作用や創薬標的の発見につながることもあります[16]。

● オフターゲット効果の低減

オフターゲット効果を低減するためには、分子の特異性を高めることが重要です。CRISPR-Cas9システムでは、オフターゲット効果を低減するために、ガイドRNAの設計を最適化することや、オフターゲット低減型のCas9変異体を使用することが提案されています[19]。また、薬物の場合は、標的との結合特異性を高めることや、オフターゲット作用の可能性を事前に評価することが重要です[18]。

オフターゲット効果は、ゲノム編集や薬物治療の精度と安全性に影響を及ぼすため、これを理解し、低減するための戦略を開発することが科学的および臨床的に重要です。
[13] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/347.html
[14] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2950.html
[16] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2902.html
[18] www.cerij.or.jp/service/04_medicine/oftarget_toxicity_studies.html
[19] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/gene-editing_bid_ts_6/

第2章:オフターゲット効果の影響

副作用としてのオフターゲット効果

副作用としてのオフターゲット効果は、薬物が本来の標的以外に作用してしまい、非選択的に現れる効果を指します。この現象は、低分子医薬品やRNAi治療薬など、さまざまな種類の薬物において認められています。オフターゲット効果は通常、好ましくない副作用の原因となり、治療の効果を損なうだけでなく、患者の安全性にも影響を及ぼす可能性があります[2][11]。

● 好ましくない副作用の事例と原因

オフターゲット効果による副作用の一例として、抗がん剤のチロシンキナーゼ阻害薬(TKIs)が挙げられます。これらの薬剤は、ミトコンドリアの機能維持に重要な役割を果たしているSrcファミリーキナーゼ(mSFKs)を共通の標的(オフターゲット)として阻害することが発見されました。この阻害により、NLRP3インフラマソームという炎症誘導装置が活性化され、炎症性副作用が発症するメカニズムが解明されました[8]。

また、核酸医薬品においても、オフターゲット効果による副作用が大きな課題となっています。特に、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)分子が本来の薬剤標的分子以外の分子と結合してしまうことで引き起こされる副作用が問題視されています[9]。

● 副作用管理と患者への影響

副作用管理においては、早期発見が重要であり、重篤副作用疾患別対応マニュアルや患者向け医薬品ガイドでは、初期症状を記載し患者に注意喚起が行われています[13]。近年、抗がん治療の副作用については研究が進み、副作用を抑える薬や患者自身でできる副作用対策も存在します。患者は、主治医や看護師に辛い症状を具体的に伝えることが推奨されています[12]。

副作用の影響は、日常生活に大きな影響を与えることが予測されるため、副作用管理を行うだけでなく、生活にどのような影響が出現しているのかを聴取し、患者が抱える問題に対して適切な支援を提供することが重要です[15]。

オフターゲット効果による副作用は、薬物の安全性と有効性に大きく影響を及ぼすため、これらの副作用を最小限に抑えるための研究と対策が引き続き求められています。

[2] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2902.html
[8] www.nikkei.com/article/DGXZRSP649521_W3A210C2000000/
[11] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2950.html
[12] p.ono-oncology.jp/support/feeling/treatment/sideeffect_all/01.html
[15] gunma-u.repo.nii.ac.jp/record/1894/files/HKJ29-011-020.pdf

新たな薬理作用の可能性

オフターゲット効果は、薬物や遺伝子編集技術などが本来の標的以外に作用することで生じる現象です。この効果は通常、副作用の原因となることが多いですが、予期しない新たな薬理作用や創薬標的の発見につながる可能性もあります[18]。

例えば、分子標的薬において、本来の標的(on-target)とは異なる別の分子(off-target)を阻害、あるいは活性化してしまう効果があります。これは好ましくない副作用の原因となることが多いですが、予期しない新たな薬理作用や創薬標的の発見につながることもあります[18]。

また、ゲノム編集技術においても、shRNA、miRNA、核酸医薬などの遺伝子をターゲットにする治療法では、特定のターゲット遺伝子あるいはターゲットmRNAなどを編集、発現抑制、分解することを目指していますが、オフターゲット効果により、目的とする遺伝子以外の関係のない遺伝子もしくは遺伝子発現に影響を与えるリスクがあります[20]。

このように、オフターゲット効果は副作用の原因となる一方で、新たな治療法の開発において重要な手がかりを提供することがあります。予期しない薬理作用が観察された場合、それが新たな治療標的となる可能性があるため、副作用としてのみではなく、創薬の観点からもそのメカニズムの解明が求められます。このプロセスを通じて、新たな治療法や薬剤の開発につながる可能性があります。

[18] www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/2902.html
[20] www.tmd.ac.jp/press-release/20231128-1/

第3章:オフターゲット効果の特定と評価

オフターゲット効果の検出方法

ゲノム編集や核酸医薬品の開発において、オフターゲット効果の検出は重要な課題です。オフターゲット効果とは、意図した標的遺伝子以外の場所にも変異や影響が及ぶことを指し、これが原因で予期せぬ副作用が生じる可能性があります。このため、ゲノム編集や核酸医薬品の安全性を評価する際には、オフターゲット効果を正確に検出し評価することが必要です。オフターゲット効果の検出には、ゲノム、プロテオミクス、メタボロミクスによる解析が用いられます。

● ゲノム解析

ゲノム解析によるオフターゲット効果の検出では、主に次世代シーケンサー(NGS)を使用して、ゲノム編集後の全ゲノム配列を解析します。この方法により、編集された遺伝子だけでなく、ゲノム全体での変異を検出することが可能です。特にCRISPR-Cas9などのゲノム編集技術を用いた研究では、ガイドRNAの設計段階でin silico解析を行い、オフターゲット候補遺伝子を予測し、その後実際にNGSを用いてオフターゲット効果を検証します[19]。

● プロテオミクス解析

プロテオミクス解析では、質量分析装置を用いて、ゲノム編集や核酸医薬品による治療後のタンパク質の発現変動を包括的に解析します。この方法により、オフターゲット効果によって発現量が変動したタンパク質を検出し、その影響を評価することができます。特に、蛋白質分解医薬の安全性評価においては、オフターゲット分子を蛋白質レベルで減少させるため、プロテオミクスの手法が適していると考えられます[18]。

● メタボロミクス解析

メタボロミクス解析では、核酸医薬品やゲノム編集技術による治療後の代謝物の変動を網羅的に解析します。この方法により、オフターゲット効果によって生じた代謝経路の変化や代謝物の変動を検出し、その影響を評価することができます。メタボロミクスは、特に薬物の作用機序の解明やオフターゲット効果の解明に有効です[17]。

オフターゲット効果の検出には、これらの解析方法が組み合わされることで、より包括的かつ詳細な安全性評価が可能になります。各解析方法は、それぞれ異なる側面からオフターゲット効果を検出し、評価するため、複数の手法を併用することで、より正確な安全性評価が行えるようになります。

[17] www.axcelead.com/scientist-interview/202004/
[18] www.nihs.go.jp/kanren/iyaku/20201228-mtgt.pdf
[19] www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/47.1/0/47.1_W2-4/_article/-char/ja/

オフターゲット効果のリスク評価

## オフターゲット効果のリスク評価

オフターゲット効果(Off-target effects)は、特に遺伝子編集技術において、目的とする遺伝子以外の場所で非意図的な変更が生じることを指します。これは、CRISPR-Cas9などの遺伝子編集ツールが、予定した標的部位以外にも作用する可能性があるためです。オフターゲット効果は、遺伝子編集された生物の安全性や機能に影響を及ぼす可能性があり、薬理学的リスク評価において重要な考慮事項となります[19]。

● 前臨床および臨床試験における安全性評価

前臨床試験は、創薬候補物質の有効性、安全性、毒性などを調査するための非臨床試験であり、臨床試験の開始前に行われることが多いです。これには薬物動態試験(ADME)、薬効・薬理試験、安全性試験(毒性試験)が含まれます[11]。臨床試験では、被験薬の安全性を確保するために、事前に集められた科学的知見に基づいて個々に評価されます[17]。

● 薬理学的リスク評価のフレームワーク

薬理学的リスク評価のフレームワークは、薬物の安全性と有効性をバランス良く評価するための構造化されたアプローチです。これには、以下の要素が含まれます:

1. 情報収集:薬物の安全性に関する既知の情報を集め、評価します。これには、薬物の標的表現、作用機序(MOA)、シグナリング経路、薬物動態、薬物力学、薬理学などが含まれます[1]。

2. リスクの特定と評価:オフターゲット効果を含む潜在的なリスクを特定し、それらの重症度と発生頻度を評価します。これには、オフターゲット効果のリスク評価に資するヒト遺伝子機能の抽出と分類も含まれることがあります[18]。

3. リスク管理戦略の開発:特定されたリスクを管理するための戦略を開発します。これには、リスク最小化のための実践的アプローチや、リスク管理計画(RMP)の策定が含まれます[2]。

4. リスクコミュニケーション:リスク評価の結果と管理戦略を関係者に伝え、理解を深めるためのコミュニケーションツールを使用します[2]。

5. 監視と評価の継続:薬物が市場に出た後も、安全性監視を継続し、必要に応じてリスク管理戦略を更新します[3]。

● オフターゲット効果の評価方法

オフターゲット効果の評価には、in silicoでの予測や、実験的な検出と検証が含まれます。in silicoツールは、潜在的なオフターゲット部位を全ゲノムで検索し、オフターゲット発生の可能性を計算します。一方、実験的な検出方法には、GUIDE-seq、CIRCLE-seq、HTGTSなどがあり、これらはオフターゲット部位を高感度で検出することができます[19]。

● 結論

オフターゲット効果のリスク評価は、薬物の開発過程において重要な役割を果たします。前臨床および臨床試験における安全性評価は、患者にとって安全かつ効果的な治療法を提供するために不可欠です。リスク評価のフレームワークは、これらのリスクを体系的に管理し、薬物の安全性を確保するための基盤を提供します。

[1] link.springer.com/article/10.1007/s40290-023-00465-z
[2] www.rad-ar.or.jp/finder/pharmacoepidemiology/database/pdf/cioms-working-group-ix.pdf
[3] www.fda.gov/media/152544/download
[11] answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3012/
[17] www.pref.kagawa.lg.jp/documents/7476/028_240402.pdf
[18] www.amed.go.jp/program/list/17/01/yakuzai_kakusaniyakuhin.html
[19] www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10034092/

第4章:オフターゲット効果の管理と回避

オフターゲット効果の管理戦略

薬剤開発におけるリスク管理と副作用最小化のための設計と工夫は、医薬品の安全性と有効性を確保する上で極めて重要です。オフターゲット効果とは、薬剤が意図した標的以外に作用してしまうことで、これにより予期せぬ副作用が発生する可能性があります。以下に、オフターゲット効果の管理戦略についての概要を示します。

● 医薬品リスク管理計画(RMP)

医薬品リスク管理計画(RMP)は、医薬品の開発から市販後までのリスク管理を文書化し、医薬品の安全性プロファイルを理解するために有用です。RMPには、重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、および重要な不足情報が含まれ、これらのリスクに対する管理策が定められています[1][3][4]。

● 核酸医薬品のオフターゲット効果のリスク評価

核酸医薬品の開発においては、オフターゲット効果のリスク評価が重要です。ヒト遺伝子機能の抽出と分類に関する調査を行い、オフターゲット効果のリスク評価に資する研究が進められています[2][5]。

● ゲノム編集技術とオフターゲット効果

ゲノム編集技術、特にCRISPR-Cas9システムにおいては、オフターゲット効果を最小化するための工夫が必要です。ガイドRNAのデザインの工夫や、オフターゲット効果を引き起こす配列付近のみをシーケンスで確認することが推奨されています[9][16]。

● mRNA医薬のオフターゲット効果

mRNA医薬においても、オフターゲット効果による望ましくない免疫応答が起こることがあります。治療用mRNAの塩基配列設計を改良することで、オフターゲット効果の発現可能性を最小化する戦略が提案されています[12]。

● リスクマネジメントに必要な人材

リスクマネジメントには、医薬品リスク管理計画の開始を踏まえた適切な人材が必要です。これには、リスクの掌握、対策および教育等のリスク管理を部門・部署ごとに実施する能力が求められます[8]。

● 医薬品の臨床開発におけるリスクマネジメント

臨床開発期間中を通じて治験薬の安全性情報を継続的にモニタリングし、治験に参加する被験者の安全性確保が最大の目的です[17]。

● オフターゲット効果の最小化のための設計

医薬品の設計においては、副作用の最小化を目指し、原材料の消耗を減少させるなどの工夫が行われています。また、自然機能を増加させることで副作用を抑制する設計が考慮されることもあります[13][14][15]。

● まとめ

オフターゲット効果の管理戦略は、医薬品の安全性を確保するために不可欠です。RMPの策定、核酸医薬品やゲノム編集技術におけるリスク評価、mRNA医薬の設計改良、適切な人材の確保、臨床開発におけるリスクマネジメント、そして医薬品設計の工夫が重要な要素となります。これらの戦略を通じて、医薬品の副作用を最小化し、患者の安全と治療効果を最大化することが目指されています。

Citations:
[1] www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/lofurc00000081tp-att/rmp_3.pdf
[2] www.amed.go.jp/program/list/17/01/yakuzai_kakusaniyakuhin.html
[3] www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html
[4] www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/lofurc0000007jjz-att/rmp.pdf
[5] nats.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20180226101832-02AF42D968C94B365557286B879CC221B30786493056156BB018527169D16163.pdf
[8] www.pmda.go.jp/files/000206902.pdf
[9] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/gene-editing_bid_ts_6/
[12] www.natureasia.com/ja-jp/nature/pr-highlights/14734
[13] books.google.com/books?dq=%E5%89%AF%E4%BD%9C%E7%94%A8%E6%9C%80%E5%B0%8F%E5%8C%96+%E8%A8%AD%E8%A8%88+%E5%B7%A5%E5%A4%AB&hl=en&id=LA1CDwAAQBAJ&lpg=PT22&ots=npYwqA-nOS&pg=PT22&sa=X&sig=ACfU3U3-3JtQHq4y_zmn7V_6PBHeVmGxSw&ved=2ahUKEwj62oHyhpmFAxVABUQIHZl6BFcQ6AF6BAgDEAE
[14] books.google.com/books?dq=%E5%89%AF%E4%BD%9C%E7%94%A8%E6%9C%80%E5%B0%8F%E5%8C%96+%E8%A8%AD%E8%A8%88+%E5%B7%A5%E5%A4%AB&hl=en&id=8p3tEAAAQBAJ&lpg=PA42&ots=XvZHeyCCdo&pg=PA42&sa=X&sig=ACfU3U253RPThtPOA_wiaE28OX8pqVL5Lg&ved=2ahUKEwj62oHyhpmFAxVABUQIHZl6BFcQ6AF6BAgGEAE
[15] books.google.com/books?dq=%E5%89%AF%E4%BD%9C%E7%94%A8%E6%9C%80%E5%B0%8F%E5%8C%96+%E8%A8%AD%E8%A8%88+%E5%B7%A5%E5%A4%AB&hl=en&id=aWYqDwAAQBAJ&lpg=PT20&ots=IcG-R2KXUg&pg=PT20&sa=X&sig=ACfU3U2KAg1FmTDEl6lclu_DE15nCunSwA&ved=2ahUKEwj62oHyhpmFAxVABUQIHZl6BFcQ6AF6BAgEEAE
[16] bio-sta.jp/development/1139

オフターゲット効果の回避策

オフターゲット効果は、特定のターゲットに対して設計された化合物やsiRNA、CRISPR-Cas9などのゲノム編集ツールが、意図しない他のターゲットにも作用してしまう現象を指します。この効果は、研究結果の解釈を複雑にするだけでなく、治療薬の開発においては副作用の原因となる可能性があります。したがって、オフターゲット効果の回避は、化合物設計やゲノム編集技術の精密化、特異性と選択性の向上において重要な課題となります。

● 化合物設計の精密化

化合物設計の精密化には、構造に基づくドラッグデザイン(SBDD)や分子ドッキング計算が有効です。これらの手法を用いることで、ターゲットとの結合様式を精密に予測し、特異性の高い化合物を設計することが可能になります。例えば、京都大学の研究では、二種類の高反応性化合物を精密に反応させる新手法が開発され、有機化合物にベンゼン環を導入するための手法として活用されています[17]。また、コンピュータを利用したドラッグデザインの実際においても、精密分子ドッキング計算に基づいたヒット化合物の結合様式解析が行われています[18]。

● 特異性と選択性の向上

特異性と選択性の向上には、ターゲットとの相互作用を詳細に理解し、ターゲット以外の部位との相互作用を最小限に抑える設計が求められます。siRNA医薬においては、オフターゲット効果を回避する技術が研究されており、特定の修飾を施すことで望ましくない免疫応答を回過する方法が示されています[19]。また、核酸医薬品のオフターゲット効果の予測に有効な方法として、ゲノムや転写産物のデータベースを塩基配列検索プログラムを用いて検索する方法が一般的であることが報告されています[20]。

● まとめ

オフターゲット効果の回避には、化合物設計の精密化と特異性・選択性の向上が重要です。構造に基づくドラッグデザインや分子ドッキング計算を活用し、ターゲットとの結合様式を精密に予測すること、また、siRNAやCRISPR-Cas9などのゲノム編集ツールにおいても、特定の修飾を施すことでオフターゲット効果を最小限に抑える設計が求められます。これらのアプローチにより、より安全で効果的な治療薬の開発が期待されます。

[17] www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-03-23-1
[18] www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/75/3/75_302/_pdf/-char/en
[19] www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/14734
[20] kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?id=3961&path=sys%5Cjournal%5C20210805153528-5E14DB3E5BDDF9E17A73113452FF8B4123CAFF42A22044912DEF28C9EEB99956.pdf&sid=1316&sub_id=56390

第5章:オフターゲット効果と創薬

オフターゲット効果を利用した創薬

オフターゲット効果を利用した創薬は、医薬品開発において重要な戦略の一つです。オフターゲット効果とは、医薬品が本来の標的以外の分子とも相互作用し、予期しない生物学的効果を引き起こす現象を指します。この効果は通常、副作用の原因となることが多いですが、新たな治療標的の同定や創薬に役立つ可能性もあります。

● 新たな治療標的の同定

オフターゲット効果を利用した新たな治療標的の同定は、医薬品が意図せずに相互作用する分子を特定し、その分子が関与する病態メカニズムを解明することから始まります。このアプローチにより、従来は注目されていなかった分子や経路が新しい治療標的として浮上することがあります。例えば、ある医薬品が特定の疾患に対して意外な効果を示した場合、その効果の背後にあるオフターゲット相互作用を解析することで、新しい治療標的を同定することが可能になります。

● オフターゲット効果に基づく創薬戦略

オフターゲット効果に基づく創薬戦略では、オフターゲット相互作用を意図的に利用して新しい医薬品を開発します。この戦略は、特定のオフターゲット効果が有益な生物学的効果をもたらすことが明らかになった場合に特に有効です。例えば、あるオフターゲット相互作用が炎症反応の抑制に寄与することが分かった場合、そのオフターゲットを意図的に標的とする新しい抗炎症薬の開発が可能になります。このように、オフターゲット効果を積極的に利用することで、新しい作用機序を持つ医薬品の開発が期待されます。

● まとめ

オフターゲット効果を利用した創薬は、新たな治療標的の同定や新しい作用機序を持つ医薬品の開発に貢献する可能性を持っています。オフターゲット効果は副作用の原因となることが多いですが、その相互作用を詳細に解析し、有益な効果をもたらす可能性がある場合には、創薬の新たなアプローチとして活用することができます。この戦略により、従来の創薬アプローチでは見過ごされがちな新しい治療標的や医薬品が発見されることが期待されます。

未来の創薬への展望

未来の創薬への展望では、オフターゲット効果を活かした新規薬剤開発と分子標的薬の研究・開発が重要なテーマとなっています。オフターゲット効果とは、薬剤が主要な標的以外にも作用することで、予期せぬ副作用を引き起こす可能性がある一方で、新たな治療標的の発見につながる可能性も秘めています。分子標的薬は、特定の分子標的に対して高い選択性を持つ薬剤で、がん治療などで重要な役割を果たしています。

● オフターゲット効果を活かした新規薬剤開発

オフターゲット効果を活かした新規薬剤開発では、オフターゲット効果による毒性を回避しつつ、新たな治療効果を発揮する薬剤の開発が進められています。例えば、核酸医薬品の開発においては、標的以外の配列へのハイブリダイゼーションに起因するオフターゲット効果による毒性が開発の初期段階で回避したい項目の一つです[11]。また、次世代型分子標的薬のオフターゲット作用の評価系開発においても、オフターゲット効果のリスク評価を念頭に置いたリスク遺伝子の調査が行われています[18]。

● 分子標的薬の研究・開発の未来

分子標的薬の研究・開発の未来では、より精密な標的分子の同定と、標的分子に対する効果的な化合物の発見が進められています。量子AIが創薬の新たな時代を切り拓くことが期待されており、標的分子が特定された後、AIモデルが化合物の相互作用を探索・最適化することで、与えられた標的分子に対する効果的な化合物をよりスピーディーに発見することができます[17]。また、進化しつづける分子標的治療においては、EGFR exon 20変異に対する分子標的薬の開発など、新たな治療標的に対する研究が進められています[16]。

● 結論

未来の創薬への展望では、オフターゲット効果を活かした新規薬剤開発と分子標的薬の研究・開発が重要な方向性を示しています。オフターゲット効果による新たな治療標的の発見と、分子標的薬の精密な標的分子同定による効果的な化合物の発見が、未来の医療を支える重要な鍵となるでしょう。

[11] www.axcelead.com/service/10113/
[16] taiho.co.jp/confirmation.html?returnurl=medical%2Flctop%2F202211%2Fmte.php
[17] jp.weforum.org/agenda/2024/02/ai-tekunoroji-no-wo-ku7tsuno/
[18] www.nihs.go.jp/kanren/iyaku/20201228-mtgt.pdf

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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